表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/170

AKIHO×RENGE配信(魔力爆発)その3

『──これも研究途中ですが、お姉……RENGEが使っている魔力爆発とAKIHOさんの使用している魔力爆発は原理が少し違うと思うんです』


"どろーん"からナズナの声が響く。

ナズナが解説を始めた理由、

それはAKIHOさんが、


「殴るモーションも身体強化もなく、あの威力ってどういうことっ!? 何か秘訣があるのっ!? すごいわもう1回よく見たいっ!」


と、これが"こらぼ"動画の収録だということを完全に忘れ去り、キラキラした目で私の両手を握って質問攻めにしてきたので……それについての回答だ。


『AKIHOさんは先ほど指パッチンの要領と言いました。恐らくそこまでは合っています』


「だとすると、違う点って……?」


『魔力の状態変化です。魔力は自らの状態を変化させることができます。さながら水が氷にも水蒸気にもなるように、魔力は火にもなれば、それ以外にもなる』


ナズナは淀むことなく説明を続ける。


『RENGEは魔力を体外へ押し出す瞬間に、周りの空気全てを押しやってしまうほどの莫大な体積を持つナニカに状態変化させているんでしょう』


「な、ナニカって……?」


『……不明です。それが未知の物質か、あるいは今現在魔法学の最小単位だと定義されている"魔素"……さらにその内側にある"素粒子"のようなナニカに無理やり分解することで起こるエネルギーなのか……』


「……なんでRENGEちゃんは、自分で意識せずにそんなことができるのかしら……」


『何も考えていないからこそ、ですかね……』


ナズナがため息を吐いた。

な、なんだか呆れられてる……?

ヒドいなぁ。


「……ふぅ、しかし……まだまだ奥が深いってことはつまり、それだけ私もまだまだ強くなれるチャンスがあるってことよね」


AKIHOさんは心底楽しそうに、笑顔を"どろーん"へと向けた。


「私は今日、初めてアイスゴーレムを倒したわ。しかも素手でっ! もちろんこんなの初めての体験だったよ。私は確信した……私たちはね、もっともっと上に行けるって」


グッと拳を握り締めて、


「視聴者のみなさん、私はちゃんとわかってます。今の界隈ではまだまだ女流(私たち)が受け入れられていないこと。それに、新しい風に戸惑い、怯え、排斥しようとする流れもまた在ることも」


界隈?

新しい風?

はいせき……?

何の話かは分からない。

でも、AKIHOさんは笑顔でありつつ、真剣だった。


「でも断言します。今回の世界大会で私たちRTA走者は1つ、いえ、もしかしたらもっと上の段階に至る。新しい世界が間近に迫っているの……だから、みんな私たちから目を放さないで」


そう言うと、AKIHOさんは私を手招きする。

なんだろう?

トコトコと、近づくと……

AKIHOさんが肩を抱いて、引き寄せてくる。


「あっ、AKIHOさんっ!?」


「今日はありがとうね、RENGEちゃん。こっち、真っ直ぐカメラを見て?」


「はっ、はいっ」


ドギマギしつつ、言われた通りにする。


「RENGEちゃんは世界大会に参加する。それを妨げる権利なんて誰にもない! もしあったとしても、私は絶対に真っ向から歯向かうからねっ! そして私は私で、この世界大会予選で証明してみせます。このRTA界隈は衰退なんてせず、よりいっそう面白いものにできることを。そのためにもまずは──」


ビシッと。

AKIHOさんは4本の指を立てる。


「今回の日本予選、私は女性走者として初めて、日本代表の4枠の1人として内定してみせますっ!」


そう言い切った。

そして私に目配せをしてくる。

私は頷き返した。


「わ、私もがんばりたいと思いますっ!」


「うんっ。予選じゃライバル……って言うのは、今のままじゃさすがに私がおこがまし過ぎるけど、でも私も予選まで精一杯努力するからっ! お互い代表内定目指してがんばろうねっ!」


AKIHOさんに肩を引き寄せられたまま、固く握手をする。


「視聴者のみなさん、私たちに全力で乗っかってね? 今回の世界大会は"荒れる"んじゃない、RENGEちゃんと私に"沸く"大会にしてみせるからっ! ぜひお楽しみにっ!」


それではご視聴ありがとうございました、と。

そう区切ってその日の収録は終わった。




──世界大会予選は11月の中旬。その日はすぐそこに迫っていた。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

もしここまでで

「おもしろい」

「続きが気になる」

など感想を持っていただけたら、ブックマークや評価ポイントをいただけると嬉しいです。

よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] どうしても上を目指したいと頑張る人とマイペースにちょっと言われたからやってみようと思ってる人という温度差と言うか意気込みの違いに笑ってしまう これがこの作品の面白さだよなぁと思いつつ周囲の…
[良い点] 常識の壁なんて最初から無いほうが遠くまで行けるのだ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ