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ウソの記録とレンゲの決意

AKIHOさんと施設長が戻ってきたのは、10分ほど後のことだった。

ひと悶着があったようで、


「私の方でもっとここの施設長と早く話せたらよかったんだが、すまないね」


どうやらなかなか捕まらなかったらしい。

制御室に入れたのはだいぶ遅かったようだ。

今日が大盛況しているということもあるのだろう。

RBはすでに完走してしまっていた。


──RBの記録は16分31秒


画面には【本日最短記録:00:16:31:RB@Fixer】の文字。


「はーい楽勝日本TOPレベルぅ~っ。モニターを見てみろよっ、どうやら俺が今日の施設最短記録らしいぜ。公式記録じゃないのが惜しいな~ホントw」


RBは戻ってくると、ニヤニヤとした表情で私たちの方……特にAKIHOさんを見た。


「まあお前も多少はやるみたいだが……所詮は女の記録だよ。力の差が分かったら次からはイキらないことだなぁ」


「よくそんなことが言えたわね……! 魔力感知を使ってる気配もなかったけどっ?」


「オイオイ、負け犬の遠吠えかぁ?」


「……! アンタなんか、次の世界予選でぶっちぎってやる……!」


「ハァ~? 俺参加しませんけどw 俺は配信界隈の人間だぜ? 公式大会なんてかったるいもんイチイチ出ないっつーの。ま、少なくともお前とはレベルが違うってことね、コレ」


「このっ……」


憤りをあらわにするAKIHOに、


「行こう、AKIHOさん。この手の輩にイチイチ突っかかっても仕方ない」


「くっ……はい」


施設長はなだめるように言うと、項垂れるAKIHOさんを連れて観戦室を再び後にした。


「ザマァねーぜ、AKIHOのヤツw さぁーて、せっかくだしこのモニター映して配信すっか。タイトルは"【緊急】最短記録達成、イキり女に分からせちゃいましたw 13:00から"……っと」


RBはそう言ってカメラの準備をし始めた。

私も2人の後について観戦室を出る。

なんだか、後味がすごく悪い。

……よし。


「施設長、ちょっといいでしょうか」


施設長の横に追いついて、

私は小さめの声で施設長にだけ聞こえるように話しかける。


「ん? なんだいレンゲちゃん」


「AKIHOさんがちゃんと自分の実力だけで画面に載せてみせた最短記録が、彼のウソの記録に塗り潰されているのが許せません」


「まあ、それは私もそうだが……」


「ですよね、じゃあ、」


観戦室の外。

私はダンジョン入り口の部屋の方を指さす。


「私が更新してきてもいいでしょうか」


「えっ……!?」


思いのほか大きな声が出たのか、施設長がハッとした表情で口を押えるが、すでにAKIHOさんがびっくりしてこっちを振り向いていた。


「ど、どうかされましたかっ?」


「いっ、いえなんでも。そういえば昼に飲む薬を忘れていたなぁと。ちょっと失礼……」


施設長はそういうと私の手を引っ張って廊下を進みつつ、


「レンゲちゃん、それは本気で言ってるのかい?」


「……はい。あの記録を越せるのはたぶん、私くらいしかいないんですよね?」


「まあ、それはそうだろうが……いったいどうして急に?」


「私、自分にダンジョン攻略のすごい適性があると知って……でも、これが何の役に立つのかがまだ全然分からないんです。でも、今この場でなら少なくともAKIHOさんのためにはなると思ったんですっ」


「……また昨日のように注目されてしまうよ?」


「それについては大丈夫ですっ! 私にちょっと考えがあるのでっ」


結局のところ昨日は速すぎたのが問題だったのだ。

なら、調整すればいい。

RBが16分くらいだったのだから……

私は15分くらいで完走できるようにしたらいいのだ!


「ふむ……まあでも、また昨日のように配信するわけでもないし、この場の問題を解決するだけなら大丈夫か……」


施設長はしばらく悩んだようにした後、


「分かった。確かに先ほどのような不正を放置するのは道理に合わないね。では私の方でいつもの作業着と消毒銃を借りて来よう」


「あ、いえ。万が一のことがあるかもしれないので、このパーカーのフードを被ったままで行きたいのですが……ダメでしょうか?」


「いや、全然いいさ。確かに身バレの危険性はある。もちろんパーカーはそのままでいいさ。では武器はどうしようか。何か使い慣れたものは他に…………無いよね?」


「はい。でもまあ大丈夫ですっ! そちらにも考えがあるのでっ」


というわけで、昨日に引き続き私はまたダンジョンに潜ることになったのだった。

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