おま、なんてこと言うんですか
「よし、しゅうーりょー」
「って、嘘! もう倒したの!?」
「もちのろん」
ぐったりするエメラルドドラゴンに、ラリィが間抜けな表情を浮かべている。
「どうだ、キャーカッコいいって思っただろ?」
「そうね、その発言がなければ思ってたよ」
「ありま」
ちなみに現在、エメラルドドラゴンは地面に横たえてある。
なるべく傷つけたくはなかったが、さすがにこの巨体を持ち続けるのは辛いからな。
「でもほんと、相変わらず強すぎるわね……。戦いから一秒も経ってないんじゃない……?」
「はっは。ま、こんなもんよ」
これが俺が注目される所以。
建前上はSランク冒険者だが、そこいらのSランク冒険者よりもずっと強い自負がある。
しかし前述のように、この王国ではSランク冒険者ってだけで稀少な存在だからな。全員数えても10人はいないんじゃないかね。
そのなかでもダントツトップの実力を誇るのが俺――ロア・マヒロスだ。
だからみんな俺に期待する。
ロアがいれば大丈夫。
ロアさえいてくれれば万事が解決する。
俺は――その期待に応え続けなければならない。
一部の連中はそんな俺を「才能だけの人間」とか「なにも考えてないお花畑」とか中傷するけどな。
ゆえに――ロア。
「ロア? なに考えてるの?」
「いやいや。このトカゲの防具でラリィにどんなコスプレさせようか――」
「はいそこまで」
むぎゅっと。
セリフの途中にも関わらず、ラリィに両頬を寄せられた。
いちいち手厳しいお嬢さんである。
そしてラリィは俺に顔を近づけると、さもなんでもないふうを装って呟いた。
「……で、さっきから変な気配感じない? 気のせいかな」
「いやいや。気のせいじゃないと思うぞー」
周囲を気遣って、俺もラリィも小声である。
「……なんかきな臭ぇ気配だな。ぶっちぎりの悪意を感じるぜ」
「ロアがさんざん遊んだ挙げ句、ぼろぼろに捨てた女の子の悪意とか?」
「あらまあ可愛い顔してなんてこと言うんでしょうね!!」
これでも人の気持ちを踏みにじる行為はしてきてないはずだ。
純度100%の清廉潔白です。
……それでも一部の連中から叩かれるんだから、始末に負えないけどな。
「……ラリィ。気配、いくつ感じる?」
「んー。三つかなぁ……」
「ビンゴ。俺と一緒だ」
俺はふうと息を吐き、くるりと振り向くと、一歩前に踏み出した。
「俺が先陣を切る。ラリィは残りの奴をぶっ飛ばしてくれ」
「おっけ」
「……あともうひとつ言いたいんだが」
そう言いながら、俺は走りだす準備をする。
「……俺、これでも童貞なんだぜ」
「は? ちょ――」
ラリィの戸惑う声を無視し、俺は疾駆した。
目的地は茂みのなか。
背の高い雑草がいくつも生えていて、そのあたりに不審な気配がある。
……まずはそいつからしとめるか。
そう判断した俺は、さらに疾駆のスピードを速めた。
「ひっ!!」
「ははーん、やっぱてめぇかよ」
茂みのなかに隠れていたのは、かつて俺がギルドから追放した男だった。
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