綺麗な防具になれよ
「グオオオオオオッ!」
再度、エメラルドドラゴンの咆哮が響きわたる。
たったそれだけで衝撃波が発生し、近辺の空気を重く揺らす。近辺が激しく振動し、ゴゴゴゴゴゴ……! という轟音が響きわたる。
音圧だけでこの影響か……
「ひゅう♪ すげぇなあいつ!」
さっきは呆気なく吹き飛ばされたけど、曲がりなりにもS級の魔物。これくらい強くないとな。
実際にも、あのエメラルドドラゴンはかなりの巨体だ。そこらへんの木々など軽く凌いでしまうほど大きいし、小さな村なら一瞬で廃村に変えてしまうくらいのパワーを持っている。
さすがはS級の魔物……といったところだな。
「よし、じゃあいくか。ラリィ、危なくなったらすぐに引けよ」
「私は大丈夫! ロアも後ろから刺されないように注意してね!」
おい、それなんか違うだろ。
というアホなやり取りはいつものこと。
俺は地を蹴ると、勢いよく駆けだした。すさまじい速度で景色が後方に流れていき、自身が風と一体化したような感覚を覚える。
「グオッ……!?」
「よう。さっきぶりだなトカゲ」
一気に距離を縮められたかのように驚愕したのか、エメラルドドラゴンが変な声をあげる。
うん。
エメラルドというだけあって、間近で見るとかなり綺麗な鱗をしているな。
高く売れそうだ。
「よし、せっかくだしあまり傷つけずに殺してやるよ。よかったな」
「ガァァァァァァァアア!」
しびれを切らしたかのように、エメラルドドラゴンが野太い腕を振り下ろしてくる。
ちなみに爪の切っ先には猛毒が仕込まれており、喰らったら最後、急速に体力が持っていかれる。しかも通常の解毒薬では効き目がないとされているので、あの爪だけ気をつけないとな。
「ひょい、と」
俺は軽いジャンプでそれをかわすと、エメラルドドラゴンの顔面近くまで近づく。
傷つけないように、そーっと……
「それ」
俺は中指でデコピンを見舞う。
「グ、グアアアアアアアアアッ!!」
パァァァァァァァァァン!
弾かれるような音とともに、エメラルドドラゴンが再び吹き飛んでいく。
「グルァァァァァァァァァァ!!」
「おっと、あんま吹き飛ぶんじゃねえよ。追いかけるの面倒くせえんだぞ?」
刹那、俺は吹っ飛んでいるエメラルドドラゴンの腹部に立っていた。肉質がかなり柔らかい場所なので、ここなら相当のダメージが入るはず。
それを見越して跳躍してきたわけだ。
「じゃあな。良い防具になれよ」
俺は呟くと。
人差し指をつきたて、俺はエメラルドドラゴンの急所と思われる場所を勢いよく突く。
「カッ…………!」
その短い悲鳴を最期に。
エメラルドドラゴンはぐったりと身体を垂らし、身じろぎもしなくなった。
「おおっと、危ねえ危ねえ」
落ちかけそうになるエメラルドドラゴンの首を片腕で掴む。
せっかく傷つけないように戦ったのに、このまま落としちゃ話にならんからな。
このままゆっくりと地面に降ろすとしよう。
「ただいまラリィ。もう終わったぞ」
「……って、あれ?」
ここまでの時間、一秒未満。
ラリィがエメラルドドラゴンの元いた位置に駆けつけるまでの間に、戦いは蹴りがついたのであった。
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