本音を出す相手
数分後。
なんとかラリィとの格闘試合を終えた俺は、息も切れ切れにソファで休息を取っていた。
「ったく……」
――下手したらさっきの戦闘より疲れたぞ。頼むからすこしは休ませろ。
「ぷん」
テーブルを挟んだ向こう側では、ラリィがまだ頬を膨らませている。
「ロアのばか。あほ。おたんこなす」
「はいはい。もう、そういうことでいい……」
普段のラリィは、剣聖の末裔として、もっとキリッとした態度なんだけどな。
仕事とプライベートで言動がまるで違うから、最初はそれこそ困惑したもんだ。
「うふ、あなたたちは本当に仲がいいわねぇ」
そんな艶っぽい声を発するのは、さっき現れた女性冒険者――ルーニャ・セバス。
そこが特等席とばかりに、俺のソファの肘置きに腰かけている。
この《控え室》に来ているだけあって、彼女も例に漏れずSランク冒険者だ。鞭を自由自在に操るほか、ほとんどの魔法をそつなく使いこなすことができる。
俺とラリィが近距離での戦いを得意とする一方、ルーニャは中距離戦に優れているイメージだな。
歳は21。
俺やラリィより年上ではあるものの、だとしても大人びすぎている。
銀髪に彩られた長髪に、ぷっくり赤く塗れた唇、翡翠にきらめく瞳……
そしてラリィに負けず劣らずの、抜群のスタイル。
そう、人呼んで――
「《童貞殺し》のルーニャ先輩こそ、いったいなんのご用で」
「あら、あなたに会いにきたのよ? 《千人斬りのロア君》」
なんのアピールか、ルーニャは自身の唇に人差し指をあてがい、小さくウィンクする。
……この仕草だけを見ても、彼女がなぜ《童貞殺し》の異名を拝借しているかおわかりいただけるだろう。
「ふふ。ロア君、あなたやっぱり最高にかっこいいわね。《千人斬り》と言われるだけあって……一緒に遊びたくなっちゃう」
「おーけー。枕投げなら負けないぜ」
「あら。どちらかと言うとトランプが好みなのだけど」
くだらないやり取りはここまで。
ルーニャは自身の髪を片手ですかしながら、俺の手の甲を優しく握りしめる。
「……まあ、正直なところ用なんてないわ。正確にはなくなったのだけど」
「ん……?」
どういうことだろうか。
ルーニャは俺の手を撫でながら、言葉を続ける。
「正直言うとね、ロア君のことだから落ち込んでると思ったのよ。ほら、タンバが捕まったって聞いて」
――マシかよ。
相変わらずというべきか、ルーニャの人を見る目は誰よりも鋭い。
他の連中が気づきもしない俺の内面を、ずばり当ててきやがる。
「でも――その心配はいらなかったみたいね」
言いながら、ルーニャはラリィをちらと見やる。
「ロア君、たまには自分を晒しだしてみなさいな。気楽に話せる相手は――もう見つかったみたいだし?」
「それってそこのクソ女のことか?」
「えいっ!」
「馬鹿おまえ、いい加減変なもん投げるのはやめろ!!」
【恐れ入りますが、下記をどうかお願い致します】
すこしでも
・面白かった
・続きが気になる
と思っていただけましたら、ブックマークや評価をぜひお願いします。
評価はこのページの下側にある【☆☆☆☆☆】をタップすればできます。
今後とも面白い物語を提供したいと思っていますので、ぜひブックマークして追いかけてくださいますと幸いです。
あなたのそのポイントが、すごく、すごく励みになるんです(ノシ ;ω;)ノシ バンバン
何卒、お願いします……!




