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009 襲撃

 町からだいぶ移動して次の人がいる村に到着した。


 前回は鎧事件でゆっくり出来なかったので、フローラには宿屋にでも泊まってもらいたい。


 村に着くまでに金属成分が多そうな岩を見つけて吸収して、いらない物は排出する作業をくりかえていたので、偽銀貨を数枚作る金属成分はあるからお金の心配もなさそうだ。


 村の前で手作りっぽい木製の槍と鎌を持った村人が二人いた。


「お前たちは何者だ?」

「おい、騎士様っぽいぞ」

「そ、そうだな。あなた達はどなた様ですか?」


「旅の途中の者です。休憩で一夜泊めていただきたいのですが可能ですか」

「………。」


 村人が話しかけて来たが、人見知りするフローラは無口なので私が対応した。


「あいにく宿屋がない村でして、騎士様を泊めるような場所はございません」

「ならば、食料を譲って頂きたいのですが? あ、お金は払います」


「それなら! どうぞ!」


 結構、すんなり村に入れたが、二人のフローラを見る目が人間として見ていない気がした。


 フローラの外見は手ぶらで薄手の布服と革の靴で、ボロボロである。

 逆に私の姿は、鎧に傷もなくピカピカだから偉い騎士と奴隷にしか見えないのかな?

 フローラにまともな服装をしてもらって、見かけは商人とその護衛にならないとフローラが可哀想だな。


 村に入ってフローラの服や新しい靴を手に入れて、次の町までの食料を偽銀貨と偽銅貨で購入して村を出た。


 これで大商人の娘さんとその護衛に変身だ。

 と思っていたのだがこれ外見的な結果は偉い騎士さんとその従者だった。

 鎧が立派過ぎるのか?


 村を出る際に、盗賊が多いので注意するように言われた。

 だから村の前に見張りの人がいたんだな。

 お金を支払うと外貨を非常に喜んでくれて、村で一番良い状態の服をフローラに譲ってくれたので、村は大変貧しいようだった。


 この村は貧しいが故に盗賊などに旨みがないから襲われない感じなのか?


 村を出てしばらくたって、欲しかった物が作れるぐらいの金属成分が溜まった気がしたので、想像力で剣を創り出してみた。


 しかし……ナマクラで外見は子供の落書きにようで、逆にどうやったら作れるか謎の剣が出来上がる。


 黒歴史だな。ひっそり収納にしまった。


 村で鞄をフローラに買ったのだが、初めての自分の鞄にフローラが上機嫌で珍しい草を見つけては鞄にしまっていた。


 地球にアクセスした為か草の種類がわかった。

 フローラ…… それは毒草だ。


 野宿しやすい開けた場所に到着すると、草の影から数人の武装した男達が現れた。


「お前たちは、どこからきたんだ?」


「王都に向かって旅をしている。どこといっても向こうから来た感じか?」


 全く地理など知らん。答えたくても答えられないと言うか逆に教えてくれ。


「お前馬鹿にしてるのか? 騎士かもしれないが武器も無しで、この人数に勝てると思っているのか?」


 さらに、武装集団が現れた。

 全部で10人ほどで、囲まれてしまった。


「どうしたいんだ?」


「持ってる金を全て出して、そこの女をよこせば見逃しても良い」(殺して鎧をひん剥いてやる)


 言葉に乗った思考が伝わってくる。見逃すつもりはないようだ。

 こいつから村で聞いた盗賊だろうか?


 実は、鎧の姿になってから間もないので、鎧に擬態中の動きに慣れてなかった。この姿で10人を相手にした場合、フローラを守り切る自信がない。フローラの結界も、フローラは私から離れているので発動しない。


 悩んだが、すぐに閃いた!

 フローラの手を握る。


『フローラ。目をつぶっていて』

『わかりました』


 素直にフローラが目をつぶったのを確認したら擬態を解除してフローラを包みこんだ。


 そして、収納した私の体を全部だして中心だけフローラ用の隙間を作った巨大なメタルスライムになった。

 これで私の体を突破しなければフローラを襲えない。


 前回からさらに大きくなって6メートルほどの身体である。


「な!」

「なんだこりゃ」

「魔物!」

「さっきの奴らは?」

「幻覚か?」


 殺すつもりだったのだから殺されても文句は言えないよな?

 自分の体重が重くて動けないので想像力で体から触手を出して盗賊に襲いかかった。


 触手は上手く作れたと思ったが太さが不均等で、やはり残念な結果だったが、逆にそれが不気味な触手になった。


「なんじゃこりゃ」

「化け物だ」


 パン! グチャ! メキ!


 触手で盗賊たちを撫でると、潰れたり吹っ飛んだり裂けた。

 手加減なんか出来なかった。だって動かすのが精一杯だった。

 私達の情報を持って逃がすわけには行かないと思いながら、殺さずにすむ方法がないか悩んだが無理だった……


 一人だけ逃げ足が速く触手を逃れてしまいそうだ。

 既に触手が届かない。


 触手で落ちている盗賊の剣を掴むと、逃げていく盗賊へ投げた。


 ビュッン!


 風切り音がして、逃げていく盗賊へ剣が到達した。

 僅かに狙いがずれて盗賊に掠ったが、盗賊はそのまま視界から消えていく。


 不味いことになった。一人だけなら誰も信じないかもしれないが、追うべきか考えた。


 全身鎧の姿に戻って、盗賊が残した金属性の武器を吸収する。

 すぐに剣を創り出した。

 吸収した剣や盾は、錆びていたり傷があったが、創り出した物は新品同様に光り輝く。

 僅かに大楯のオリハルコンを混ぜたのが良いのか、かなりの強度の合金製だ。

 ついでに盾も創り出した。


 フローラは、目をつぶったまま立っていた。


 剣を腰に帯剣して、フローラには結界の機能が付いた盾を渡す。

 これで、次回安心だ。


 不思議な事に、結界の機能を創り出した盾に付与したら、私は結界を使えなくなった。


 付与した際にメタルスライムだから感じるのか、魔力であるナノマシンの移動を感じた。

 結界の機能をするナノマシンが移動した感じか?

 再び地球にアクセスすればわかるのだろうが、しばらくはこのまま行こうと思う。アクセスによって何が起きるか予測がつかないからだ。前回は1週間も意識が飛んだしな。


 逃げ出した盗賊は、最後に投げた剣で怪我をしたようだ。

 血痕が逃げた道に付いていた。


 追うか無視するか考えたが、先ほど通過した貧しい村を思い出して追う事にした。


 途切れ途切れの血痕で、フローラと二人で調べながらなんとか見失わないで、彼等の根城のような建物に到着した。


 立派な屋敷で、私がいた世界の大昔にいた貴族の別荘のようにも見えるが盗賊がいるようには見えない。


 血痕は屋敷の門まで続いていて、入り口のドアにも付いていた。


「フローラ。行こうと思うがどうする?」

「ガーディアンさんについていきますよ」


 今まで生きた世界が修羅場だったから落ち着いているフローラを見て、この世界の闇を感じる。


 元の世界も平和ではなかったかもしれないが、今の世界は本当に殺伐としている。ギルやネロみたいな奴が普通だったからな。


 実際は遥か未来の地球が今の世界だが、元の世界と比べて科学は著しく衰退している。

 この状態では治安などないに等しい脆さだ。

 弱肉強食を肌で感じた。


 屋敷の門は開いていたので、そのまま入り口の血痕が付いたドアまで行くと、ドアノックがあったのでノックをした。

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