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005 フローラと私

 すぐにフローラと仲良くなった。


 フローラに対して私の設定は、伝説の意識があって喋れる盾で長い眠りから目覚めたと言う事にした。

 長い間眠っていたので、この世界に対して無知だから教えてくださいと言うスタンスである。


 正直に語らなかったのは、異世界から転生したなんて信じないと思ったからだ。

 この設定にもかなり無理があるが、実際に喋る盾だから納得してもらうしかない。


 喋る伝説の剣などの存在があるらしく、初めは驚いていたがすんなりフローラが納得した。

 実際に盾には複数能力があって傷だらけだがオリハルコン製だから、本当に元は伝説の防具だったのかもしれない。


 この事をネロが知ったら取り上げられるかもしれないので、フローラと私の秘密にした。

 ネロに聞かれたら教えなくては奴隷紋に苦痛を与えられるが、聞かれなかったら喋らなければ良いだけだ。


 ネロとギルの目を盗んで、色々な鉱物を吸収して私は成長していた。大きくなった私の身体は盾の能力にあった収納で仕舞い込んだ。

 吸収した鉱物の中にある銀や銅の成分を利用して偽銅貨や偽銀貨を作ってフローラにまともな食事をさせた。

 ギルとネロの依頼で金貨以上の報酬の時に金貨を預かった。

 その金貨は収納せずに吸収して偽金貨を作ったが……本物よりも綺麗で完璧になりすぎて、逆に偽物っぽくなってしまって焦った。


 フローラが寝てる時に私の食事の排泄物である酸化した金属を外に出した。

 町のあちこちに謎の錆びた金属の塊が多く落ちていて、少し話題になったようだが未だに犯人は見つかっていない。


 フローラは野宿しかしないのだが、奴隷が泊まれる宿屋などない。酷い話だと思っていたが、この世界では当たり前の事であった。


 始めはギルやネロを酷い冒険者だと思っていたが、この世界ではまだマシな二人であって、フローラに性的な事を迫ったり死なないように多少は気を使っている。

 他の冒険者の奴隷の待遇を見る限り中の下ぐらいの対応であった。


 暇があれば思考の中だけでフローラと私は会話をして、この世界の多くの情報を得た。


 盾にある収納の機能は、高価だが中級冒険ならそんな機能がある袋や指輪などの魔道具を持っているらしく珍しいものではない事もわかる。結界に関しても同じだった。

 収納と結界の原理は、私の好奇心を刺激するので原理は考えて行こうと思っている。


 異常だったのはフローラの魔力量である。

 この世界では魔力量は生まれた時に決まると言われている。常に結界を使用しているフローラは、初めは普通の人よりも少し多い方だったと思うが更に後天的にギルとネロに囮として利用されて強化されて増えているようだった。

 魔物と戦闘を繰り返すたびにフローラの魔力が上昇しているのを私だけが知っている。

 だが、倒しているはずのネロの魔力は上がる気配がない。

 なんかしらの理由がありそうだ。


 今日は、トロールという魔物を二匹討伐に行くようだ。

 食事がまともになって、私と話ようになってからフローラが明るくなったようだ。


 目的地に徒歩で2日ほどかかるのだが、目的地につく寸前に背後から相変わらずのネロの理不尽な暴力が振われる。


 ただ歩いていただけだが、背中をネロに蹴られた。


『最近、機嫌が良いな? なんかムカつくんだよ。奴隷らしくしてろ屑』


『………はい。』


 蹴られて倒れたフローラはすぐに立ち上がってギルとネロを追いかけた。

 ダメージを受けて結界を使用する事を日常的に繰り返している。

 この積み重ねの結果が現在の異常なまでのフローラの魔力量の秘密なのかもしれない。


『いたぞ! 依頼にあったトロールだ!』


 フローラの視界に二匹の豚を人間にしたような身長2メートルほどの魔物が、手に斧を持って歩いていた。

 トロールの会話が聞こえる。


「ブヒューブヒュー」(良い食物がないな)

「ビャビャブヒュー」(怒られるな)


 ゴブリン達と一緒でトロールも食糧を集めているだけのようだ。近くにダンジョンがあるのだろうか?


『右の奴は俺がやる。左をフローラとネロで頼む』

『任せて! おら屑! さっさと行け』


 右のトロールにギルが斬りかかるが、トロールの持っていた斧で弾かれる。

 元の世界で例えればアクション映画を見ているような剣と斧を使った戦闘が行われていた。


 左のトロールに大楯を構えてフローラが突っ込み、トロールの手斧の攻撃を盾で防ぐ。


 ギャリン! ガリガリ!


 大楯と斧がぶつかって激しい火花を散らすが、斧が劣化していくが大楯に新しい傷が付くことはなかった。


 攻撃を受けるたびに大楯に新しい傷がつかないので、どうやって私の擬態しているオリハルコン製の大楯が傷だらけになっのか気になるところである。

 実際は擬態してるだけなので大盾の傷は消せるんだが、ネロに絡まれそうだからあえて残したままにしていた。


 フローラが稼いだ時間でネロが詠唱を終えて魔法を発動させた。


『ファイヤバースト』


 バヒュ!


 トロールとフローラの間で大爆発が発生して吹き飛ばされた。

 結界がなければフローラの手足が無くなる程の爆風だった。


 巻き込まれたトロールを見ると斧を持った手が吹っ飛んで無くなっていて、お腹肉が三分の一ほど吹き飛ばされて前面が焦げた状態で虫の息で倒れていた。


 フローラは、結界のおかげでダメージはなかったが、煤けて正面が真っ黒になっている。

 盾の俺も表面が真っ黒だ。


 フローラが右を見ると、ギルが苦戦していた。

 すぐにフローラが戦っているトロールに盾を構えたまま突っ込んで行く。

 気がついたトロールがフローラに斧を振り上げた隙に、後ろに回り込んだギルがトロールの背中に斬りかかるが、浅く斬れただけで背後から斬りつけるギルを無視したままフローラを攻撃した。


『舐めやがって』


 ギルがフローラの方へ移動したと思ったらフローラを掴んで、トロールの盾がわりに突っ込んだ。

 掴まれたフローラは、上手く盾を構えられずにトロールの斧がフローラの顔面を捉えて吹っ飛ぶ。

 その吹っ飛んだフローラによる隙を狙って、正面からギルがトロールの叫んでいる口に剣を差し込んだ。


 口に剣が刺さったままにトロールが息絶えた。


『全身脂肪で剣が通らないが口はダメだったみたいだな』


 ギルが捨て台詞を吐いた。


 私の見立てだと力不足でギルの剣が通らないだけだと思うんだが、毎回フローラを利用して勝つけど捨て台詞が言い訳だった。


 吹き飛ばされたフローラは、ネロの魔法に対して結界で防いだ時と顔面に受けたギルの剣による衝撃を結界で防ぐ為に、かなりの魔力が持っていかれて魔力欠乏になっていた。


 時間で魔力は回復するのだが、一気に使うと回復が追いつかずに魔力欠乏になる。

 魔力欠乏になるとどのような状態になるかと言えば、例えるなら運動不足の人が100mダッシュを10回繰り返した感じだな。


 私にもかなりの魔力があって、変形するのも魔力による物のようだ。

 苦しそうにしているフローラの為に、結界の魔力を私がサポートすると呼吸が少し落ち着いたようだ。


 毎回の戦闘を見る限りギルとネロって、フローラがいなくなったらトロールすら倒せなくなるんじゃないかな?

 だが、逆にフローラの動きが悪いせいでギリギリの戦いだったと、ギルとネロは毎回勘違いしているようだった。


『テメー! フローラの誘導が悪いから時間かかっただろうが! 俺がトロールを斬りやすい様にするのがお前の役目なのに、俺側にトロールの一番防御がたかい背中が見える様に戦いやがって! 俺が工夫してお前を誘導したから口に剣を刺せたから良かったが、もっと勉強しろ屑!』


『本当に屑ですね。俺の魔法の威力が半減する様な立ち位置にトロールを持ってくるなんて最悪です。本当ならトロールが爆発する様に倒せるはずだったのに! まだ生きてるじゃないですか!』


 自己中な二人だな。

 もう慣れてしまっていてフローラからの思考を読むと、その通りですと思い込んでいるようだ。

 洗脳されてる感じなのかな?


 ギルとネロが愚痴を言っていると背後からおそろい気配がした。


「ギャーーーーーウオォォ」(誰だ貴様ら)


 ネロが急いで振り向くと身体が3メートル程の黒いトロールが巨大なハンマーを持って立っていた。

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