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天上の桜   作者: 乃平 悠鼓
第一章
11/199

第一部 出会い、そして西へ《六》

如意金箍棒は漢字で出るのに、キン斗雲のキンの漢字が出てこないなんて! スマホさ〜ん((T_T))

 丁香(ていか)は、宿屋から出てくる女の姿に目を見張った。紫黒(しこく)色だっだ長い髪は灰簾石(タンザナイト)色に輝き、同じく黒檀(こくたん)色の双眸(そうぼう)も極上の灰簾石色に変わっていたからだ。髪と双眸は自らが信奉する神の色であるにも関わらず、今まさに目の前で変わろとしている衣の色は、この世界では愛染朱(あいぜんしゅ)と呼ばれ、愛染明王を信仰する仏閣や愛染明王の加護を得たもののみに現れる色。

 そしてさらに丁香を混乱させたのは、彼女が右手に持つ白刃(はくじん)だっだ。その(ジエン)の剣格には、阿修羅王のお印である宝相華(ほうそうげ)白金(プラチナ)色に輝く右手首の腕釧(ブレスレット)と左腕の上腕の臂釧(アームレット)にも宝相華の図柄がつけられている。宝相華を身に付けられる者は、阿修羅一族のみ。


「どう言うことだい、これは」


 丁香が驚愕(きょうがく)に口を開くのも、致し方ないことだっだ。神仏混合、そんな者がこの世界に存在するのだろうか。そもそも、目の前の女は神仏なのか。丁香の前をとおり過ぎるおり


「命が惜しくば、決して私と目を合わせるな」


 と、女は言った。命を奪い取る神仏など、いるはずがない。

 旅人達が此処(ここ)に集まったことを確認していた八戒は、足早に宿屋の玄関先にやって来る。いつの間にか丁香の隣には、玄奘も来ていた。


「玄奘と黄道士(こうどうし)はしばらく此処で、私達が前に出ます」

「なぜだ」

「これは私の感ですが、奴等は多分、上から来ます」


 そう言って空を見上げた八戒に釣られるように、玄奘も空を見つめた。空には星が瞬き、美しい下弦(かげん)の月がその姿を現していた。

 旅人が集まった宿屋は中央に大きな庭園があり、その庭園を囲むように正面、左側、後ろ側が宿屋になっている。宿屋は四階建てだ。右側は馬屋で、宿屋の左側の一階と地下の一部が蔵という造り。

 中央の庭園には正面玄関の向かいに扉が設けられ、その扉を開ければ玄関から庭園に行くことができる。今、扉は開け放たれており、庭園に集められた旅人達からは、玄関先にいる丁香と玄奘がよく見えていた。


「上か、厄介だな」

「出来うる限りは撃ち落としますが、翼を傷つけられた者達は、一斉にこちらにやって来ることになるでしょう。玄奘と黄道士には、此処で奴等を食い止めて欲しいと思いまして。今さら、血濡れることを躊躇(ちゅうちょ)することも無いでしょうし」

「言ってくれる、いいだろ。黄道士」

「わかった。だが、()()()は確かなのかい」


 丁香の言葉に、“そうですね、どう思いますか” と、八戒は前方に進み出ている女に尋ねた。


「当たりだ。封印されていたのは翼を持つ妖怪、そして()()()()()()()()()()()()者達だ。おそらく、神の戦いに巻き込まれ利用され、その姿を変えられた者達」

「悪趣味なこった」


 話を聞いていた悟浄はそう言うと、革帯(ベルト)につけていた飾りのような下がり物を引き抜く。すると、たちまちそれは大きくなり、(クン)に姿を変えた。長さは二尺半(60センチ)程ある短棒を三本つなぎ合わせた三節棍(さんせつこん)


「上からならオレが行った方がいい」


 尋ねるように悟空が八戒を見た。八戒は、“そうですね” と言うと、さっさと前方に歩みを進めた女の後ろ姿を見つめ


「私達が最前線に、その後に上から悟空、地上に悟浄。そして、宿屋の前に玄奘と黄道士。これでも、宿屋のすべてを護りきれるかどうか。特に、上からが」


 と、言葉を濁した。どう考えても、上の護りが手薄だ。宿屋の真上までいかれたら、どうしようもない。


(アレ)がハムに渡した物で、(しばら)くの間は持つだろう」

「あたしの弟子達もいる。武闘派と言われるほどには、多少の力はあるつもりだよ」


 玄奘と丁香の言葉に、“わかりました” と八戒は言うと


「悟空、上は任せます」


 と、声をかけた。“任された” 悟空はそう言うと、右手で左耳の耳墜(みみかざり)を掴み取り


「キン斗雲 (とうん)


 と言いながら、空に向かって投げた。投げられた耳墜はたちまち大きくなり、藍白(あいじろ)色の雲となって悟空の前に戻って来た。続いて悟空は左手で右耳の耳墜を掴み取ると


如意金箍棒(にょいきんこぼう)


 と呟く。すると小さな棒状の耳墜だっだそれは、神珍鉄(しんちんてつ)製の両端に金色の箍がはめられた棒になった。重さ一万三千五百斤(やく8トン)、長さは持ち主の意に従い自在に伸縮する、悟空が東海龍王の龍宮より奪い取った物である。


「来るぞ!」


 女の声に、八戒は女の隣にやって来ると、そっと自らの左手を胸の高さまで真っ直ぐに上げた。そして身体を横に向け向けると、静かに呟いた。


孔雀弓(くじゃくきゅう)


 その声に反応するかのように、左手中指にはめられていた孔雀石(マラカイト)のような指環(ゆびわ)が輝きはじめ、指環の(てのひら)側から握り部分が現れ、それを握りしめるとその握り部分の上下から(まがり)(しょう)が現れ、(つる)がかけられた。見まごうことなき(ゴン)である。

 その弓の弦にそっと右手を近づけると右手人差し指と細い鎖のようなもので繋がれた小指の二つの銀製らしき指環の間から三本の(せん)が現れた。


「来ました!」


 そう言うと、八戒は美しい夜空を真っ暗に染めるように押し出してくる妖怪達に弓を引き


雪華弾(せっかだん)


 と、その三本の箭を放った。


お印→徽章、シンボルマーク

下弦の月→月を弓に見立てての名前、新月から23日頃の月

神珍鉄→??? すみません、わかりませんでした

箭→矢



次回更新は25日か26日が目標です。


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