第87話 Kの法則が発動したドイツ帝国
「えぇい、忌々しい。偉大なる大韓で彼奴らは好き勝手しておる。このままにはしておけぬ!」
大韓帝国の景福宮。
その玉座の間では、閔妃が金切声をあげていた。
「だが、どうすれば良いのだ?」
玉座に座る大韓帝国皇帝高宗は、落ち着きの無い様子で閔妃に問いかける。
(それを今考えてるんじゃないの。この無能が!?)
夫の無能ぶりに罵声を浴びせようとした閔妃であったが、辛うじて自制する。
そんなことに労力を使っている暇はないのである。
(ソ連は論外、満州国も現状では期待薄。別の手段で英国の影響力を削る必要がある)
位置関係的に真っ先に選択肢にあがるのはソ連と満州国であろう。
しかし、閔妃は過去の素敵な体験により両国を信用出来なかった。半島で我が物顔な大英帝国(閔妃視点)を掣肘するためには、別の手段を取らざるを得なかったのである。
(国際社会に英国の非道を訴える。これしかない……!)
熟考の末に閔妃が出した結論は、Kの国の十八番である告げ口外交であった。
まともにぶつかっても勝ち目が無い以上、これはこれで戦略と言える。有効かどうかは別として。
「……と、いうわけで半島の連中が良からぬことをたくらんでいるみたいです」
閔妃の企みは数日も経たないうちにテッド・ハーグリーヴスが知ることになった。こういう時に備えて、常日頃から朝鮮宮廷内で金をばらまいているのである。
『我が国に仕掛けてくるというが、あの連中に何が出来るというのかね?』
電話先の英国宰相ロイド・ジョージは半信半疑であった。
彼からすれば、大韓帝国など極東にある吹けば飛ぶような小国に過ぎないのである。
「生前の経験から言わせてもらえば、わが国の非道を訴えて世界各国の同情を買う作戦に出るかと」
『それでは単なる嫌がらせではないか』
「その嫌がらせが問題なんですって。人の神経を逆なですることにかけては世界一の民族だし」
『……君の懸念については理解した。その上で、どのように対応したら良いのかね?』
テッドがここまで警戒するのがロイド・ジョージには理解出来なかった。
しかし、備えておくに越したことはないと判断したのである。
「あちらさんの言うことは無視して事実のみを公表すること。連中は感情的に喚いているだけなので、理詰めで攻めれば必ず勝てます」
そう言いながら、テッドは生前のKの国の所業を思い出して血圧を上げていた。
好き放題に嘘をまき散らし、事実を突きつければ捨て台詞を吐いて遁走する。しかし、間をおけば別の話題で同じことをやらかすのである。
『事前に資料集めが出来れば有利だな。今回の争点について予想はつくかね?』
「大韓帝国政府と極東朝鮮会社との契約内容でしょう。おそらくですが、不平等条約と主張するはずです」
客観的に見れば、FEKCと大韓帝国政府の契約は公平とは言い難いものではあった。そう言う意味では大韓帝国側の言い分も理解出来なくはないが、最終的に双方が納得したうえで契約を交わしているので文句を言われる筋合いは無いのである。
『ふむ、当時の議事録や契約書類などを公表すれば問題ないな』
「新聞で大々的に公表して世論を味方に付けることも必要ですよ」
K国民にとって議事録は天敵と断言出来る。
契約書は偽造と言い張ることも出来るが、経過を詳細に記載した議事録を出されるとぐうの音も出ない。史実でも議事録を公開されると都合が悪いので、過去の条約で自国側の議事録を非公開にしているくらいである。
『問題は時期と場所だな。いつ仕掛けてくるのやら』
「根回しと世界に発信することを考えると国際会議でやらかす可能性が高いでしょう」
『3月にロンドンの戦災復興機構本部で総会が予定されている。そのタイミングかもしれぬな』
「ロンドンに各国の代表者が集うと。なるほど、たしかに連中にはおあつらえ向きですね」
WROは英国が主導して設立された第1次大戦による戦災からの復興を支援する組織である。実際のところは、戦災復興の名の下に英国が多額のポンド借款を実施して各国への影響力を強めるためにも利用されていたのであるが。
国家間の紛争の調停機関としての側面もあり、この世界においてWROは史実の国際連盟の代わりと言うべき存在である。史実で国連の威を借ることが大好きだったKの国にとっては、利用しない手は無いと言える。
「……適当な理由をつけて出禁に出来れば一番手っ取り早いんですけどね。そうすれば史実のハーグ密使事件の再現で終わるんですけど」
『ハーグ密使事件とやらを儂は知らんが、出禁にするのは不可能だぞ。我が国は大韓帝国を正当な国家と認めているからな』
条約は国家間で結ばれるものである。
それ故に、英国は大韓帝国を国家として承認せざるを得なかった。とはいえ、その立ち位置は微妙なものであったが。
「あ、じゃあ密使じゃなくて特使扱いになるのか。ロンドン特使事件かぁ」
史実の大韓帝国は日本から外交権をはく奪されていたため、正式な特使として扱われず密使扱いされた。それ故のハーグ密使事件なのである。
『まぁ、連中の対応は我々に任せておきたまえ。君にはロマノフ公の接待に専念してもらいたいし』
「それこそ、そっちで対応してくださいよ!? 最近じゃ元皇太后さまも入り浸ってるんですよ!?」
ジョージ5世の従弟であるロマノフ公は、家族共々ドーセット領に入り浸っていた。必要な物は何でもそろう便利さと、周囲に気兼ねすることなく過ごせる快適さも相まって勝手知ったる我が家状態になっていたのである。
『あの方は領地も無いし、かといってロンドンに居ると他の貴族が委縮するのでな。テッド君のところで預かってもらえると助かるのだよ』
「はぁ、分かりました。正直言って、あいつらを相手にするよりはロマノフ公のほうがマシですし」
『前々から思っていたのだが。君、どれだけ朝鮮人が嫌いなのだね?』
「聞かないでください。生前はあいつらの存在自体がストレスだったんですよ……」
電話を切ったテッドは安堵していた。
K国人と直接関わることを避けれるならば、それに越したことは無かったのである。
「英国の横暴は目に余ります! このようなことを国際社会が放置すべきではないのです!」
口から泡を飛ばす勢いでまくしたてる大韓帝国代表。
面会に応じたフランス共和国代表は辟易していた。
「しかし、双方が納得いく形で条約を結んだのだろう?」
「あんなのは不平等条約です!」
「たとえ不平等であろうとも、一度結ばれた条約は順守するのが近代国家というものだ。不満があるならば、直接イギリスと交渉するべきだろう」
「もういい! あなたとは話にならないっ!」
大韓帝国代表は、激昂して退室していく。
その様子をフランス共和国代表は呆れた様子で見守ったのであった。
1930年3月。
WRO総会が開催されているロンドンにおいて、大韓帝国代表は各国の代表と面会していた。
史実のように面会拒否はされなかったが、大韓帝国代表の主張に同意する国は存在しなかった。それだけKの国の主張がアレだったわけであるが。
(こうなったら、議場で直接に訴えてやる。われら大韓の正義を世界に知らしめるのだ……!)
その主張に何の根拠も無いが、必勝の信念があった。
大韓帝国代表は自信満々にWRO総会に臨んだのである。
「我が国は英国に速やかなる条約改正を求めます!」
翌日のロンドンのWRO総会議場。
壇上に立った大韓帝国代表は、声高に英国の不正を糾弾していた。
「「「おおおおおお!」」」
周囲からは大きな拍手が聞こえてくる。
その様子に大韓帝国帝国代表は勝利を確信していた。
しかし、彼は気付かなかった。
列強の代表が誰一人拍手していないことを。
「議長、発言を許可願えるかな?」
「イギリス代表、どうぞ」
続いて檀上に立ったのは、英国代表であった。
涙ながらに絶叫していた大韓帝国代表とは違い、彼は淡々と主張をし始める。
「……今、皆様方にお配りしている資料の5ページ目をご覧ください。これは我が国と大韓帝国との条約締結の際の両国の批准書の写しとなります」
各国代表に配られた資料には、写真撮影したと思われる両国の批准書が印刷されていた。英国側の批准書には英国王ジョージ5世の署名と英国版国璽が、大韓帝国側の批准書には大韓帝国皇帝高宗の署名と国璽がはっきりと映っていたのである。
批准書は双方で作成されて条約締結の際に交換される。
では何故、大韓帝国にあるはずの英国の批准書の写しが存在するのか?
その答えは、当時のテッドの用心であった。
Kの国民の性格からして、いずれ不平等条約と言い出すのは確実。そうなった時に備えて条約締結時に双方の批准書を写真撮影していたのである。
「おい、どういうことだ?」
「話と違うじゃないか」
「さっきの涙の訴えはなんだったんだよ……」
先ほどとは一転して、大韓帝国側に非難が集まる。
焦った大韓帝国代表は、とっさに口走ってしまった。
「こんなのは偽造だ! 偽造に決まっている!」
顔面キムチレッドで絶叫する大韓帝国代表。
国の代表が自国の批准書を偽造呼ばわりするのは前代未聞であろう。
「えー、それでは資料の10ページ目をご覧ください。両国が条約締結に至った議事録を掲載しております。なお、大韓帝国側の議事録には英語で翻訳したのを追加しております」
壇上の英国代表は、醜態をさらす大韓帝国代表を一顧だにせず主張を続ける。
もちろん、そんなものが存在するのはテッドの以下略である。
「朝鮮王が了承したと議事録には書いてあるぞ。どこが不平等条約を押し付けられたんだか」
「というか、最初の大韓帝国側の要求酷すぎるだろ。ほぼ総取りとか条約締結する気あるのか?」
「ここから逆に自国優位にもっていったイギリスの交渉術が凄すぎるだろ……」
涙に騙されて拍手していた国の代表も、大韓帝国の代表を非難し始めた。
議場の雰囲気は完全に一変したのである。
「うあああああああああああああっ!?」
突然、絶叫し始める大韓帝国代表。
そのあまりの異常さに、列席していた各国代表は慌てて距離を取る。
「くそ……なんで……くそ……くそくそくそっ! なんで、なんでこうなるんだぁぁぁぁぁぁっ!?」
絶叫しながらテーブルの上にあるものを薙ぎ払い、椅子を放り投げる。
しかし、無双状態は長く続かなかった。
「うっ……」
火病を起こした大韓帝国代表は、過呼吸を起こしてぶっ倒れた。
騒然となった議場であったが、駆け付けた救急隊に搬送されたことで落ち着きを取り戻したのである。
「は? 満州国境から作業機械と人員が入ってきている? どういうことさ?」
1930年5月某日。
大使館の執務室で、テッドはウォッチガードセキュリティの最高責任者からの国際電話を受けていた。
『分かりません。直接問い質しましたが、彼らは大韓帝国政府の許可を得たと言っています』
現地の本部長も困惑していた。
軍が弱体な大韓帝国では、国境警備も実質ウォッチガードセキュリティの担当なのである。
通常であれば、国境を通過する事案があれば事前に大韓帝国政府から連絡が来る手筈になっている。しかし、満州国境で待機している集団についての事前連絡は無かったのである。
現状はウォッチガードセキュリティが実力で阻止している状態であり、このままではヤバいと判断した本部長がテッドに連絡を寄越したのである。
「とりあえず通過させて」
『宜しいのですか?』
「大韓帝国政府が認めている以上、僕らがそれを阻むことは出来ないよ」
『分かりました。彼らを入国させます』
足止めを喰らっていた作業機械と人員が国境を通過していく。
作業機械のオペレーター、地質学者、輸送車両のドライバー、採掘に従事する作業員など300人以上の集団が大韓帝国に足を踏み入れたのである。
「……外交ルートで確認が取れたよ。大韓帝国はドイツ帝国と手を結んだらしい」
『なるほど、あの集団はドイツから来た人間たちでしたか』
3日後。
テッドはコネを総動員して今回の事態を調べ上げていた。
「今回の一件は、朝鮮半島における我が国の影響力を削ぐことが目的なだと思う」
『一大事ではありませんか!? ただちに抗議するべきです!』
ロンドンでの工作が失敗に終わったことを知った閔妃は、すぐさま次の手を打った。それこそがドイツ帝国への事大――もとい、接近であった。
朝鮮半島にドイツ帝国の勢力が駐屯することになれば、英国側とお互いにけん制しあうことになる。結果的に半島における英国の影響力を削ぐことになるわけである。
「植民地や自治領ならば多少強引な手も取れるけど、大韓帝国はれっきとした独立国だからそうもいかないよ。せいぜい外交ルートで抗議するくらいだね」
受話器片手に器用に肩をすくめるテッド。
もっとも、その目はちっとも笑っていなかったが。
大英帝国と大韓帝国は資源採掘に関して条約を結んでいる。
それすなわち、大英帝国が大韓帝国を一端の国家として認めていることを意味するのである。
この世界の大英帝国は自治領や植民地の独立を画策していた。
対外政策で迂闊なことをしようものなら将来の独立に悪影響が出てしまう。余程のことが無い限り、強硬策はご法度であった。
『では、今回の件はこのまま泣き寝入りですか?』
「まさか。連中が簡単に資源採掘出来ると思う?」
『それはまぁ、そうですな』
大韓帝国の関係者――この場合は閔妃であるが、彼女が半島内の資源採掘の実情を知らないことは確実である。知っていれば、こんな密約を結ぶはずが無い。
「ドイツは安価に資源を得ることが出来ると判断したのだろうけど、如何に甘い考えだったか思い知らせてやらないとね」
ニヤリと笑うテッド。
彼の自信の根拠は、この世界の経済構造に根差していた。
この世界の経済は4つのブロックに分かれていた。
同じブロック内ならば関税は無料か極めて安価に設定されているが、違うブロックへの輸出入は困難であった。中立国を介すれば可能であるが、高額な関税がかかる。
大韓帝国は特定の経済ブロックに所属していないので関税がかからない。
それ故に、半島での資源採掘はドイツ帝国にとって魅力的な話であった。採掘した資源を満州国側へ輸送、そこから船便で本国まで送ることが出来るからである。
『では、当分は様子見ですな』
「放置しておいて構わないよ。もちろん、うちの施設にちょっかいを出さなければ、だけど」
『念のため、警備出動させておきます』
「それでよいと思う。あちらさんも護衛のための戦力くらい持ってきてるだろうし、いざとなれば派手に動いて構わない」
半島内にドイツ帝国の勢力が加わったことにより、今までの英国一強状態が崩れたのは事実である。ここまでは閔妃の計算通りであった。
「あ、忘れるところだった。連中がやらかしたら証拠を押さえて欲しい」
『なるほど、介入の口実にするのですな?』
「そんなところかな」
『良い退屈しのぎになりそうですな。了解です』
テッドが本部長に頼んだ案件は嘘は言っていないが本当のことを全て語ってはいない。介入の口実なのは間違いないが、実際に介入するわけではない。そこらへんの説明が面倒なので端折ったのである。
(この筋書きを描いたのは閔妃と高宗だろうけど、禍根は元から絶たねば。ドイツも巻き添えになるけど、Kの法則が発動したと思ってあきらめてもらうしかないな)
テッドは自分からK国人に関わろうとは思っていない。
しかし、関わることが避けられないのであれば徹底的に殺るつもりだったのである。
「よーし、上げろー!」
朝鮮半島のとある場所。
ボーリング工事で地中深く打ち込まれたパイプがクレーンで引き上げられていく。
「……ダメだ。鉱床にカスりもしてない」
採取されたサンプルを確認した技術者が落胆する。
本日10数度目の落胆っぷりである。
ドイツ帝国資源採掘部隊は、半島内の様々な場所をボーリング調査していた。
それこそ、資源がありそうな場所は片っ端から掘っていたのである。
「主任、ライム野郎が採掘している場所の近辺を調査したほうが良いんじゃないですかい?」
「それは最後の手段だ。まだ発見されていない資源を見つけることが先決だろう」
主任と呼ばれた技術者は、そう言って作業員を宥める。
彼自身もそれが最善と理解はしていたが、技術者としてのプライドが邪魔をしていたのである。
しかし、彼は知らなかった。
確かに英国が手を付けていない鉱床を見つけることが出来れば丸儲けであるが、半島にそのような場所は存在しないのである。
テッドの史実知識に加えて、平成会から提供された朝鮮半島の資源分布図のおかげで朝鮮半島の資源開発率はじつに95%に達していた。残り5%は採算性を考慮して手を出さなかった場所なのである。
「……やむを得ん。本当にやむを得ないがイギリスが採掘している近くを掘ろう」
主任が考えを改めたのは、通算1000本目のスカを達成した瞬間であった。
鉄の意志を持つゲルマン民族と言えど、残り5%の鉱床にたどり着くことは出来なかったのである。
「部長。キャベツ野郎どもが、うちの鉱山の近くを掘っています」
ドイツ側の動きは、すぐさま英国側に察知されることになった。
鉱山の警備はウォッチガードセキュリティが請け負っていたからである。
「放っておけ。こちらからは手を出すなとボスからの指示だ」
「なんだつまらないなぁ……」
「おいおい。こちらからは手を出せんが、あちらさんが仕掛けてきたら話は別だぞ?」
獰猛な笑みを浮かべる部長。
傷だらけの容貌で笑うと赤子が泣き出しそうなくらいに凄みがある。
「まさか、あいつらがここを襲撃するってんですかい?」
「少なくても俺はそう思ってる。だからこそ、こんな僻地まで出張ったんだ」
ドイツ側が採掘を始めた場所近くの鉱山には、ウォッチガードセキュリティの部隊が駐屯していた。あくまでも警備目的ではあったが、その目的にはそぐわない重火器が配備されていたのである。
「主任、このまま採掘を続けたらライミーの鉱山を侵犯してしまいますぜ」
「なんだと? この奥へ行けば、確実に高品位な鉱石が取れるのだぞ!?」
朝鮮半島における有望な鉱床はほぼ全てイギリス側が押さえていた。
ドイツ側に取れる選択肢はクズ鉱石で我慢するか、イギリスが採掘している鉱山へ侵犯して高品質な資源を採掘するかの二択だったのである。
ちなみに、この問題に際してドイツ帝国の認識は以下の通りであった。
1.ドイツ帝国は大韓帝国政府の要請により資源採掘を任されている。それ故に優先権はわが国にある。
2.大韓帝国政府に確認したところ、(イギリスの)排除については関知しないとの回答を受けた。
3.資源採掘の障害となる非軍事組織を義勇軍で排除するので、正規の戦闘行為ではない。
1項についてであるが、駐満州ドイツ大使と閔妃によって結ばれた密約が根拠になっている。朝鮮半島内での資源採掘をほぼ無条件に認めており、ドイツ帝国が半島に進出するきっかけとなっていた。
2項についてであるが、言い方を変えれば自己責任でやれということである。
閔妃にしてみれば、双方が足を引っ張り合って消耗するのが望ましいのである。
3項についてであるが、ドイツ帝国はウォッチガードセキュリティが非軍事組織であると信じ込んでいた。特段の条約その他取り決めが無い状態で主権国家に他国の軍隊が駐屯するようなことがあれば、それすなわち侵略行為に他ならない。
ドイツ帝国側もその辺は考慮していて、正規軍の投入は避けていた。
その代わりに、現地民から志願者を募って中華人民義勇軍として送り込んでいた。お互いに正規軍じゃないのだから正規の戦闘行為には当たらないという解釈である。
ドイツ帝国側の不幸の始まりは、ウォッチガードセキュリティの存在を甘く見たことであろう。赤軍の精鋭部隊を一方的に殲滅するような非軍事組織などあるはずがない。彼らが5年前の朝鮮事変のことを調べていれば、強硬策に出ることは無かったはずである。
「ほれ見ろ! 俺の予感は当たるんだよ!」
「うわぁ、本当に攻め込んで来やがった。どんだけ資源欲しいんだよ」
1週間後。
ウォッチガードセキュリティが警備していた鉱山は、ドイツ帝国の軍勢に包囲されていた。
彼我の兵力差は、ざっと10倍である。
普通ならば降伏を考える戦力差なのである。
「死ぬには良い日だ」
「先の大戦では死に損なったが、ここなら派手に死ねるだろうか?」
「歓迎してやろう。盛大になぁ!」
しかし、ウォッチガードセキュリティの隊員たちは普通じゃないのが大半であった。戦力差に怯えるどころか、逆に奮い立ったのである。
1930年5月上旬。
朝鮮半島内において、中華人民義勇軍によるウォッチガードセキュリティへの攻撃が開始された。
『ふふふ、馬鹿どもの潰し合いが始まりおった。お互い滅びるまで戦い続けるがよいわ』
紛争ぼっ発の報を聞いた閔妃は高笑いしたという。
彼女は国内が戦場になっているというのに、歯牙にもかけなかった。
たとえ国土が蹂躙されようと、英国の影響力を削れれば良しなのである。
事大主義ここ極まれりであろう。
しかし、事態は彼女の想像を遥かに超えて進展していった。
朝鮮半島内にとどまらず、世界に影響を与えることになるのである。
「吶喊!」
「「「うおおおおおおおおっ!」」」
中華人民義勇軍の部隊が、ウォッチガードセキュリティが守備する鉱山に向けて攻撃を開始する。武器どころか服装すら統一されていない集団が突撃する様子は、軍隊というよりは大人数のゲリラ如しであった。
「もぬけの殻だと?」
部下の報告を聞いた指揮官が顔を歪ませる。
最小限の損害で占領したと聞いたときは思わず快哉を叫んだものだが、最初から放棄されていたとなると話は違ってくる。
「どういうことだ!?」
「そ、それが……」
放棄された場所を攻撃して何故損害が出ているのか。
詳細を部下に確認しようとした指揮官であったが、室内に仕掛けられていたブービートラップによってまとめて爆殺されたのであった。
「トラップはちゃんと作動しているようだな」
「そりゃまぁ、これだけ爆発音が聞こえてきますから確実に動いてるでしょうよ」
スカーフェイスな部長は、薄暗い空間でほくそ笑む。
その様子を見た部下たちは呆れかえっていたが。
「馬鹿野郎、このまま何もせずにケツをまくったらカッコ悪いだろうが!?」
「だからといって、ブービートラップに凝り過ぎて逃げる時期を逸したのは、もっとかっこ悪いと思うんですがねぇ?」
「しょうがないだろう。徹底抗戦するつもりが急に予定変更になっちまったんだからな!」
ひそひそ声で口論する部長と隊員たち。
緊迫している状況なはずなのに、どこか余裕すら感じさせるのは彼らがまともじゃないからであろう。
「部長、車は全部無事です」
「そうか。連中も程よく混乱しているみたいだし、逃げるなら今だな」
彼らが潜んでいるのは、突貫工事で作り上げた隠し部屋であった。
急ぎ仕事だったので偽装は適当だったりするのであるが、薄暗い坑内ならば問題は無かったのである。
「よぅし、ずらかるぞ! 決戦の場所は用意されている。こんなところで死ぬんじゃないぞ!」
「「「イエッサー!」」」
ステンガン片手に気勢を上げるウォッチガードセキュリティの隊員たち。
その後、混乱する敵を相手にワンサイドゲームを決めて全員生還したのであった。
ウォッチガードセキュリティが守備する鉱山では、上述のような状況が度々見受けられた。当初の予定では各鉱山で防衛戦をする予定だったのであるが、中華人民義勇軍の規模が想定を超えていたために急遽作戦変更となったのである。
『……と、いうわけで撤退作戦は順調に遂行されています』
「ご苦労さま。損失が出ていないようで安心したよ」
本部長からの報告を受けて、テッドは安堵していた。
急な作戦変更による人員の損失を彼は危ぶんでいたのである。
「ところで、集結場所は予定通り雲山金鉱なのかな?」
『はい。人員と装備を集結させて決戦に臨みます。欲の皮が突っ張った連中ですから、あの金山を必ず奪い取ろうとするはずです』
雲山金鉱は東洋一の金山であり、豊富な金を産出していた。
ドイツ帝国の意を受けた中華人民義勇軍が放っておくはずが無いのである。
「……こんなことを言うのはなんだけど、死なないで欲しい。そのためならば、僕は何でもするからさ」
戦場でしか生きられない社会不適合者の集団。
それがこの世界のウォッチガードセキュリティである。
隊員たちが死に場所を求めていることをテッドは知っていた。
しかし、こんな場所でK国人の思惑で死ぬのはあんまりだろうと思っていたのである。
『そういうことならば、全ての隊員たちにクリティカルする言葉がありますが? 言って聞かせれば、それこそ死に物狂いで生き残ることでしょう』
「そんなのがあるの!? 是非お願いするよ!」
『直接、閣下が確約するのが宜しいかと。スピーカーに繋いで隊員に直接聞かせれば、なお頑張ることでしょう』
「わかった。で、何を確約すれば良いの?」
自分の言葉一つで隊員たちが奮闘するとなれば安いものであろう。
しかし、本部長の言葉にテッドは苦悶することになった。
『日本への慰安旅行です』
「ふぁっ!?」
テッドに3年前の悪夢が鮮やかに蘇る。
リアル桃鉄をやらかそうとして日本のスジ師や鉄道関係者に絶大なダメージを与え、日本各地の観光地が特需に踊り狂い、テッド自身のSAN値がガリガリと削られたあの慰安旅行である。
『ほら、スピーカーに繋ぎましたよ? 既に隊員たちは集結しているのです。急いでください。ハリー!ハリー!ハリー!』
容赦なく追い込みをかけてくる本部長。
既にテッドには選択肢は残されていなかった。
「……この戦いに生き残ったら日本への慰安旅行を実施する。だから、皆生きろ。生きて日本で落ち合おう!」
『『『うおおおおおおおおっ!』』』
受話器から聞こえる隊員たちの歓喜の声。
喜びに沸く隊員たちを他所に、テッドは膨大な出費が確定したことに頭を悩ませるのであった。
『この場所は我々に管理を任されている。直ちに退去したまえ!』
『大人しく退去するのであれば、攻撃は加えない!』
1930年5月某日。
雲山金鉱を包囲した中華人民義勇軍は、立てこもるウォッチガードセキュリティに対して降伏を勧告していた。
「万を超える大軍で包囲しておるのだ。余程の馬鹿でもない限り降伏に応じるだろう」
義勇軍の総司令官は楽観的であった。
兵力差は10倍以上あるのである。まともにやれば負けることはあり得ない。
「……だと良いのですが」
しかし、副官は不安に囚われていた。
退却するウォッチガードセキュリティの追撃は全て失敗してしまい、手痛い反撃を受けていたのである。
(噂では第1次大戦を生き残った歴戦の兵だと聞く。可能ならまともに相手にしたくないものだが……)
少数のウォッチガードセキュリティを相手にしてこの体たらくである。
まとまった数を相手にするとなると、どれだけの損害が出るか分かったものでは無い。
「ぎゃぁぁぁぁぁっ!?」
「うわぁぁぁぁぁっ!?」
副官の思考を中断したのは、義勇兵たちの絶叫であった。
同時に、肉が潰れるような音と何かを破砕するような音も聞こえてくる。
発せられる閃光に、遅れて到達する轟音。
かなり遠方で起きたと思われる爆発と、ボトボトと落下してくる物体。
「ひぃっ……」
それを直視した総司令は腰を抜かしていた。
たとえ軍人であっても、そのような反応になってしまうであろう。落ちて来たのはバラバラになった手足だったのである。
「第1射良い所に落ちました!」
「よぅし、次行くぞ!」
「イエッサー! カタパルト設置確認。モータースタート!」
「定常回転数に到達。カタパルト偏差調整完了!」
「パンジャンドラム発射っ!」
重量2tの鉄輪がカタパルトで撃ちだされる。
強烈なトップスピンをかけられたパンジャンドラムは空中で急速落下する軌道をとって接地、その瞬間にロケットブースターが作動して高速で転がっていく。
暴走するパンジャンドラムは、周辺の義勇兵たちを盛大に巻き込んで5体バラバラな肉塊を生産していった。ある程度疾走したところで本体に仕掛けられた時限信管が作動。巨大なクレーターを作り出したのである。
「「「……」」」
生き残った義勇兵たちは唖然としていた。
目の前の光景に理解が追いつかない。しかし、事態は彼らを待ってはくれなかった。
『タリホー! 逃がしはしないぜ!』
完全に浮足立っている中華人民義勇軍に対して、フェアリー FB-1A改 ジャイロダインが攻撃を開始する。コクピットがサイドバイサイドから完全なタンデム配置となった機体はスリム化しており、史実の戦闘ヘリのような外観となっていた。
『全機、攻撃を開始せよ!』
ジャイロダインの主翼に装備されたロケット弾で大地が耕される。
爆風で木の葉のように人間が舞い、追撃で機首に装備された機銃で地上を掃射していく。
『おぉっと、こっちも忘れちゃ困る。せっかくのお披露目なんだから派手にいくぜ!』
ジャイロダインよりも巨大な機体――フェアリー ロートダインが戦場の空に侵入してくる。旅客機並みなサイズでありながらも、巨大なローターでホバリングする姿に義勇兵たちは度肝を抜かれることになった。
「そろそろ、おっぱじめるぞ! 準備はよいか!?」
「発射準備完了!」
「いつでもいけます!」
このロートダインは史実のガンシップに準拠する改造をされていた。
機体後方の窓を撤去し、窓と同じ高さにミニガンが設置されていたのである。
「よし、左旋回を開始する。弾切れまで撃ちまくれ!」
「「「イエッサー!」」」」
ロートダインが低速で旋回すると同時に、ミニガンから大量の弾丸が発射された。
毎分3000発以上の発射速度を誇るミニガンが3丁、曳光弾が混じっているために見た目はレーザービームの如しである。
光が当たった部分は、どんなものであろうとも穴が穿たれて粉砕されていく。
たとえ、それが人であったとしても例外は無いのである。
「一応降伏勧告をしておけ」
「部長、仮に降伏されてもあれだけの捕虜なんて取れませんよ?」
「心配するな。そこらへんが分かってる指揮官なら、そもそも数で押すなんて愚策は取らん」
この時点で、ウォッチガードセキュリティは中華人民義勇軍に降伏勧告を行う。
しかし、義勇軍側はこれを拒絶した。
「……まぁ、分かってはいたが。よし、とどめといくか。ヘルフレイム用意」
「狙いはどうします?」
「あまり死体を増やしても処理がめんどくさいことになる。中心部は外せ」
「イエッサー!」
オペレーターの操作によって多数の飛翔体がコンマの時間差を付けて発射されてゆく。義勇軍の上空に達した飛翔体は、それぞれが適切な間隔を保ちつつ地上すれすれでさく裂した。
弾頭の中身はサーモバリック爆薬であった。
広範囲に瞬間的に発生した超高温と熱風で焼かれて死ぬか、それに伴う急速な酸素減少によって酸欠で死ぬかを強制的に選ばされるわけである。
ここまで来ると戦闘ではなく虐殺である。
完全に戦意を喪失した中華人民義勇軍は、雪崩を打って潰走したのであった。
『……現在の朝鮮半島は紛争状態であると認められる。我々ロイズは周辺海域を航路定限外海域と認定し、船舶保険の対象外とする』
1930年5月中旬。
世界中に衝撃が走った。
ロイズはロンドンに所在する世界的な保険市場である。
創業1688年と、他の世界的保険会社に比べても圧倒的な歴史を誇る。
特に海上保険に関しては独壇場であり、世界の海運に絶大な影響力を及ぼしてきた。そのロイズが動いたことを知った関係者たちは、対応に大わらわすることになったのである。
「これは貴様の差し金かっ!?」
ロイズの発表を知るや否や、駐日ドイツ大使のエルンスト・アルトゥル・ヴォレチュは英国大使館に怒鳴り込んでいた。
「……人聞きの悪い。朝鮮半島で争乱が起きているのは事実でしょ」
対するテッドは余裕綽々である。
まるで来るのを予期していたか如くであった。
「ふざけるなっ!? 朝鮮半島周辺だけならともかく、渤海や黄海まで船舶保険の対象外になるとはどういうことだ!?」
通常の船舶は、様々な理由で損害が生じたときに備えて船舶保険に加入している。しかし、船舶保険は安全に航行可能な海域に対してのみ適用対象である。
船舶保険が適用出来る海域は航路定限と呼ばれている。
適用できない海域は航路定限外、もしくは除外水域となるわけである。
無保険でも航海出来ないこともないが、損害を被ったら相手への保障も含めて全額自腹になるのは言うまでも無い。無保険の場合、場合によっては入港を拒否されてしまうのである。
中華民国と満州国からドイツ帝国へ向かうタンカーは、その全てが渤海と黄海内に航路が設定されている。この海域で海難事故でも起きようものなら、その損害は全てドイツ帝国が負うことになるのである。
「半島で暴れている中華人民義勇軍とやらの物資や人員が当該海域を行き来してるからに決まってるでしょう」
「んなっ!?」
驚愕するヴォレチュに、テッドは調査資料を投げ出す。
その資料には半島へ向かう不審な船舶と積荷について詳細に記されていた。
雲山金鉱における決戦で大敗した中華人民義勇軍は建て直しに必死であったが、朝満国境はウォッチガードセキュリティによって完全封鎖されて国境からの戦力補充は不可能であった。苦肉の策が半島への海上輸送だったのである。
「でもまぁ、ちょうど良かった。来てくれなかったら記者会見を開いて暴露大会をしなきゃならんかったからね」
「き、貴様……!」
殺意で人が殺せたら殺人鬼になれそうなくらいに殺気立つドイツ大使。
そんな殺意を柳に風と受け流すテッドもタダ者では無い。さすがはチートオリ主である。
「まぁ、半島の紛争状態が解除されれば元に戻るだろうから、それまで待てば?」
「冗談ではない! それまで本国への資源輸出が滞ることになるではないか!?」
ロイズの発表の翌日だというのに、中華民国と満州国の港には出航できないタンカーであふれかえっていた。船会社の株価も軒並み下落して空前の損失を記録していたのである。
「中華人民義勇軍とやらが半島から引き上げてくれれば、紛争は解決すると思うけどね」
「……仮にそうなったとしても判断するのはロイズだろう。すぐに事態が動くとは思えん」
「そうとも限らないよ? 僕ならロイズに口聞けるし」
「……本国に確認を取る。約束は忘れるな」
怒鳴り込んで来た時とは対照的に、力なく去っていくヴォレチュ。
ロイズが渤海と黄海を航路定限海域に戻したのは、それから3日後のことであった。
『現在、半島内における組織的な抵抗は見られません』
「ご苦労さま。やっと終わった。ひたすらに不毛だったなぁ……」
本部長からの報告に心底安堵するテッド。
Kの国ともう関わらなくて済むと分かっただけでも気分が軽くなったのであるが……。
『ところで、慰安旅行の日取りですが』
本部長の言葉で現実に引き戻された。
テッドとしては、永遠に忘れていたい事案であった。
「……正直、まだ計画すら立ててないよ。現時点で確定しているのはリアル桃鉄は二度とやらないってことだけ」
『ではどうやって移動するのです?』
「クルーズ船をチャーターして、日本各地の港によってから公共交通機関で移動かな」
『では、部下たちにそう伝えておきます。なるべく早めにお願いしますね』
通話を終えてため息をつく。
一難去ってまた一難。テッドの憂鬱な日々はまだまだ続くのであった。
以下、今回登場させた兵器のスペックです。
パンジャンドラム
種別:自走式陸上爆雷
直径:3m(車輪部分)
重量:2.3t
最大射程:200m前後(カタパルトによる射出距離も含む)
炸薬:TNT火薬orトーペックス1.8t
信管:衝撃信管or時限信管
史実のパンジャンドラムを使えるようにするべく、テッドが考えたアイデアをDMWD(Department of Miscellaneous Weapons Development、多種兵器研究開発部)の主任研究員であるネヴィル・シュートが具現化させたものである。
カタパルトで射出出来るように一部改修されているものの、構造そのものはオリジナルと大差無い。モーターで回転させる機構には、史実でアップキープ爆弾を開発したバーンズ・ウォリス博士が関わっている。
実用性に疑問を呈されながらも、ウォッチガードセキュリティの一部の人間によって改良が続けられている。
1930年の中華人民義勇軍の鎮圧においては威力もさることながら、敵に対して多大な心理的悪影響を与えることが判明したことでさらなる改良が施されることになる。
※作者の個人的意見
その昔、某ネット小説の掲示板にぶん投げたパンジャンドラムのアイデアをクリンナップしたものです。某憂鬱の戦後編でパンジャンドラムが採用されたときは大興奮したものですが、最終的に無難なロケット砲となってしまいました。残念無念……!
火葬戦記でパンジャンドラムを戦力化するあたって、最大の問題が直進性の確保です。真っ当にやったら直進なんて不可能なのですよアレは。
ジャイロで両輪を制御すると複雑高価になってしまい、安価な自走爆雷のコンセプトが成り立たないし、そこまでやっても直進性がどこまで維持出来るか微妙。だったらギリギリまで飛ばせば良いじゃん!ということです。
強烈なトップスピンをかけてジャイロ効果で空中での姿勢制御と、下向きの力を発生させて素早く接地、さらにロケットブースターで加速。素晴らしい!!(英国面
フェアリー FB-1A改 ジャイロダイン
全長:7.62m
全幅:1.27m(主翼除く)
翼幅:5.38m
全高:3.07m
ローター径:15.768m
機体重量(自重/全備):1829kg/3377kg
最大速度:250km/h
航続距離:430km
上昇限度(実用/限界):3150m/2180m(地面効果なしのホバリング限界)
武装:RP-3ロケット弾×6(主翼兵装架)
:M2重機関銃(機首)
:兵員4~5名or貨物1000kg(機体内貨物室)
エンジン:ロールス・ロイス マーリン 軸出力1500馬力+ガスジェネレーター(チップジェット用)
乗員:2名(パイロット+ガンナー)
ウォッチガード・セキュリティによって試験運用されている複合ヘリコプター。
FB-1A型の改良型であり、スペックに変更は無いもののコクピット周りがサイドバイサイドからタンデム形式に再設計された。
1930年の中華人民義勇軍の鎮圧において満足な運用実績を残し、翌年から英陸軍への納入が開始されている。
※作者の個人的意見
見た目はヒューイコブラに主翼を付けて推進用プロペラを付けたような感じです。
ここまでやるなら普通に戦闘ヘリを作ったほうが早いような気もしますけどね(苦笑
フェアリー ロートダイン
全長:17.9m
全幅:2.37m(主翼除く)
翼幅:14.17m
全高:6.76m(ローターパイロンまでの高さ含む)
ローター径:27.43m
機体重量(自重/全備):9979kg/14969kg
最大速度:310km/h
航続距離:750km
上昇限度(実用/限界):4200m
武装:7.62mm多銃身電気式ガトリング銃×3(機内)
:兵員40~48名
エンジン:ネイピア エランド 軸出力3700馬力×2 + ガスジェネレーター×4(チップジェット用)
乗員:2名
ウォッチガード・セキュリティによって試験運用されている複合ヘリコプター。
この時代では下手な旅客機よりも大きい機体であり、その輸送量と垂直離着陸能力に大きな期待がかけられている。
1930年の中華人民義勇軍の鎮圧時には、急遽ガンシップ仕様に改装されて実戦投入されている。地表に叩きつける圧倒的な弾幕によって、敵兵の士気を効果的にへし折ることに成功している。
※作者の個人的意見
FB-1Aジャイロダインと同じく、テッド君が召喚しています。
この手の大型VTOL機があれば、いろいろと使い道があるので早めに実用化させることにしました。
ガンシップ仕様にする際には史実のはAC-47を参考にしています。
召喚したミニガンを解析して量産したものを機内に据え付けています。
ヘルフレイム
種別:燃料気化爆弾
口径:178mm
砲弾:40kg
砲身:24連装
最大射程:400m前後
弾頭:サーモバリック
信管:時限信管or有眼信管orVT信管
朝ソ国境付近に駐屯するウォッチガード・セキュリティに配備されている面制圧兵器。ヘッジホッグの投射機を流用して、装薬を増量&砲弾を大型化しただけのお手軽仕様であるが、その威力は絶大である。
※作者の個人的意見
ヘッジホッグにテッド君が召喚したサーモバリック爆薬を組み合わせたものです。
戦前から実用化が急がれていたのですが、円卓の技術陣がサーモバリック爆薬の組成解析に手間取ってしまい、第1次大戦には間に合わなかったという設定です。
本編で直径100m程度の範囲と描写されていますが、これは1発辺りの危害半径を20mで計算しています。RPG7のサーモバリック弾頭が弾頭直径105mm、重量4.5kgで危害半径10m程度なので、ヘルフレイムの弾頭に仕込んだサーモバリック爆薬の量ならば十分に達成出来る数値だと思います。
史実のMLRSの200m×100mの範囲に比べれば、ヘルフレイムの攻撃範囲は狭いですが、その分は数で補えば良いかと。システムがヘッジホッグの流用で軽量コンパクトなのでいくらでも設置出来ますし。
ドイツ帝国にKの法則が発動してしまいました(南無
そして悪夢の慰安旅行再びです。本編で書くか、自援SSで書くかは悩み中だったりします。
>K国民にとって議事録は天敵と断言出来る。
双方の議事録を突き合わせれば嘘がバレてしまいますからね。
>最近じゃ元皇太后さまも入り浸ってるんですよ!?
史実だと姉と折り合いがつかずに出生国のデンマークに戻ってしまいましたが、この世界ではロマノフ公一家と仲良く暮らしています。
>この世界の経済は4つのブロックに分かれていた。
自援SS『変態アメリカ国内事情―世界恐慌勃発編―』参照。