第81話 御大礼特別観艦式(自援絵有り)
『天皇陛下ばんざーいっ!』
『ばんざーいっ!』
1928年12月4日。
史実と同日に開催されることになった観艦式を一目見ようと、横浜港は群衆で埋め尽くされていた。
「金剛が前に出ました!」
「微速前進、金剛に続け!」
「微速前進、ヨーソロー!」
艦長の亥角喜蔵海軍大佐の号令によって、お召し艦『榛名』が東京湾内を進んでいく。先導艦は高速戦艦『金剛』、供奉艦は同型の『比叡』と海防艦『磐手』である。
「陛下、いよいよですな」
「そうだな。今回は海外からの参加もあるから楽しみだよ」
今回の観艦式は11月に実施された即位の大礼に伴う特別観艦式である。
例年の観艦式と異なり、海外からの参加もあって国際色豊かなものとなっていた。
「どちらかというと、ドーセット公が気になるのでは?」
「それは否定しないよ」
鈴木貫太郎海軍大将の指摘に苦笑する今上天皇。
今回の観艦式には英国海軍も艦艇を参加させており、ドーセット公ことテッド・ハーグリーヴスはそちらのほうに座乗していたのである。
「それでは陛下、右舷側をご覧ください」
「改装は間に合ったか。かなり無茶をしたと聞いたが?」
「率直に申しまして、浮いてるだけといったところです。見栄えだけは良いので観艦式の華にはなりましょう」
「し、辛辣だな……」
侍従長の容赦ない評価にドン引きする今上天皇。
しかし、観艦式に間に合わせるための突貫工事であったのは事実である。
戦艦『長門』『陸奥』は40サンチ連装砲塔から、当初計画されていた本来の3連装砲塔に換装。後部砲塔を1基減じながらも砲力は維持し、さらに浮いたスペースに機関を増設することで、さらなる高速力を発揮可能となっていた。
実質的に同型艦と言える『山城』『扶桑』『伊勢』『日向』に至っては、35.6サンチ4連装砲塔3基を40サンチ3連装砲塔3基に換装、機関出力増強と艦首延長も相まって30ktを発揮可能となった。
1年足らずで一線級の戦艦の改修を成し遂げたのは、平成会チートによって日本の工業力が増大したからに他ならない。その実態がハリボテであったとしても、16インチ砲搭載艦6隻が周辺国に与える影響力は絶大であった。
「陛下、左舷側をご覧ください」
「特型がこれだけ揃うと壮観だな……!」
左舷側には堂々たる艦容を誇る特型駆逐艦が停泊していた。
その数は、ざっと20隻はくだらない。それだけの特型が居並ぶのは壮観な光景であった。
「一昔前ならば、軽巡と見まがうような立派なものです。次代の海軍の主力と言えましょう」
戦艦とは打って変わってべた褒めする侍従長。
海軍水雷術の発展に貢献してきた鈴木からすれば、特型にかける期待は非常に大きいものであった。
「そうだな。従来の艦隊決戦思想は既に破綻している。あらゆる状況に対応出来る特型が多数あったほうが融通は利くだろう」
今上天皇も鈴木の意見を肯定する。
史実以上に海外領土を獲得したことによって、この世界の日本の防衛範囲は南太平洋全域にまで拡大していた。はるばる来航してくる敵艦隊を、悠長に待ち受ける余裕はなくなっていたのである。
この世界においては、ネームシップの『吹雪』が1923年に就役していた。
以後、年に10隻程度のペースで続々と建造が進められていたのである。
特型は史実に比べると最初から性能が改善されていた。
艦橋部分に対食性に優れたアルミ合金が多用されたことで重量の軽減と復元性の改善が実現していたのである。
『酸素魚雷の口径は従来のままで十分だ。これ以上何を望むと言うのだ?』
『酸素魚雷は長射程雷撃に対応しているが、その分命中率は確実に低下する。一撃必殺のためにも大口径化は必須にきまっているだろう!?』
『命中率の低下は開発中の航跡追尾で補える。大口径化したら発射管総取り換えではないか。断固反対!』
我が世の春を謳歌すると思われた水雷屋であったが、彼らは派閥を二分する勢いで対立の真っ最中であった。酸素魚雷の実用化に目途が付いたことで、より大口径化するか否かで大論争が巻き起こっていたのである。
英国からの技術供与で弾頭の炸薬にトーペックスが採用されたことも論争を泥沼化させた原因であった。従来の下瀬火薬よりも水中爆発力が高まったことで、大口径化の必然性が薄くなってしまったのである。
他の列強海軍(英国を除く)からすれば贅沢な悩みと言えたが、当の本人たちは真剣そのものであった。戦艦を沈めるためならば、駆逐艦乗りは手段を選ばないのである。
何はともあれ、特型駆逐艦の建造は順調に進んでいた。
特型とその派生型が日本海軍の主力となっていくのである。
「旦那ぁ、進路はこのままで良いんですかい!?」
「もう少し速度を落としてくれ!」
朝日新聞所有のオートジャイロ『あさどり』は、東京湾上空を飛行中であった。
もちろん、その目的は観艦式を撮影するためである。
「どれどれ……」
朝日新聞記者の尾崎秀実は、望遠レンズを装着したカメラを下方へ向ける。眼下は見渡す限りの艦、艦、艦である。
(これだけの艦が、いや、その一部だけでもオホーツクやベーリング海に展開すれば現状のソ連では対抗手段がない……)
撮影しながらも、焦燥に駆られてしまう尾崎。
極東方面における海軍力は完全に帝国海軍一強状態だったのである。
この事態に、周辺国も当然ながら黙ってはいなかった。
日本に対抗するべく、海軍力の増強を始めたのである。
中華民国は既にドイツ帝国に新型艦建造の打診をしており、ドイツ側もこれを快諾していた。建造ドックを現地に建設して建造する厚遇ぶりで、中華民国側としては願ったり叶ったりな状況であった。
満州国はドイツ帝国だけでなく、日本へも艦艇を発注していた。
ドイツよりとはいえ、中立国であるので周辺国への配慮を怠るわけにはいかなかったのである。
ソ連は極東艦隊に配備した超フ級戦艦2隻では戦力不足と判断して、アメリカに戦艦を発注しようとした。しかし、現在のアメリカはメラ手形による空前の建造ラッシュのために、ソ連からの注文に応じられない状態であった。困ったソ連は、意外な国から戦艦を調達することになる。
「……騒々しいな。いったいなんだ?」
「ブン屋のオートジャイロでしょう。このエンジン音は、うちにも配備されてるやつですね」
空母『鳳翔』艦長の北川清海軍大佐は、上空からの騒音に顔をしかめていた。飛行甲板に出ていたので、なおさらオートジャイロの騒音が気になったのであろう。
「それにしても、栄えある特別観艦式に空母は鳳翔1隻だけとはな……」
空母部隊の惨状に思わず愚痴ってしまう北川。
この世界ではワシントン海軍軍縮条約は締結されなかった。結果として、空母『赤城』『加賀』も建造されることも無かったのである。
平成会のモブの中には、赤城と加賀の建造を望む連中もそれなりにいた。
特に生前に艦〇れにハマったモブたちは、長門(史実の天城型)の船体を流用して空母建造を目論んだ。
しかし、戦艦の船体を流用するよりも純粋に空母として設計したほうが使い勝手の良い空母が作れる。長門級の建造が最終的に3隻で打ち切られたことで、その野望は潰えてしまったのである。
「まぁまぁ、艦長。今、新しい艦が建造中じゃないですか」
副官が艦長を慰めるが、どちらかというと自分に向けられた言葉であろう。
彼も冷遇されている(と感じている)空母部隊の現状にやきもきしていたのである。
「おぉ、あの艦か! 横須賀の工廠で建造しているところを見て来たが、ありゃあ良い艦だぞ!」
「それほどなのですか?」
「うん、なんたってデカいし、使い勝手も良さそうだった」
「艦長がそこまで言われるとは、相当なものなのでしょうね。楽しみです」
二人して、建造中の新型空母に思いをはせる。
新型空母は史実の雲竜型をベースにした空母であり、鳳翔のこれまでの運用実績が取り入れられて使い勝手が大幅に向上していた。空母マフィアたちからは大いに期待されていたのである。
新型空母で特筆すべきは、後部エレベーターのサイドエレベーター化である。
サイドエレベーター化は将来的な機体の大型化にも対応可能な反面、悪天候時や時化に弱いという欠点もあり採用までには紆余曲折があったものの、構造強化で対応可能との結論が出たことにより採用されていた。
新型空母に相応しい新型機の開発も進められていた。
甲板が長大化して運用上の制約が緩和されたために、高速性重視の単葉機として計画されたのである。
コンペには三菱重工、中島飛行機、平成飛行機工業の3社が参加しており、既に実機がテスト飛行を開始していた。採用をかけて各社死に物狂いでプレゼンの真っ最中であった。
「……ところで艦長。新型空母が、カジノで巻き上げた金で建造されているという噂があるのですが」
「耳が早いな」
北川は副官の質問に苦笑する。
事の真偽はともかくとして、そういう噂が流布しているのは事実なのである。
「英国駐在武官の山本大佐が、ドーセットのカジノで大勝した賞金を国庫に納めることで空母建造計画が復活したらしい」
「ドーセットって、あのドーセット公の……!?」
副官は思わず北の海域を眺めてしまう。
視認出来る距離では無かったが、その視線の先にはドーセット公が座乗している戦艦『ネプチューン』が停泊しているはずであった。
「へっくしょんっ!」
HMS『ネプチューン』艦橋では、テッドがくしゃみをしたところであった。
真新しい制服がこなれていないのか、居心地が悪そうである。
「おや、閣下。風邪ですかな?」
傍に控えていたサックヴィル・カーデン海軍元帥が声をかけてくる。
海軍軍人のコスプレをしているテッドとは違い、その立ち姿は堂に入ったものであった。
「元帥、僕は(一応)中佐ですよ? 格上扱いはやめてください」
「はっはっは! そうは言いますが、ドーセット公は海軍軍人以前に全権大使でありますからな。この老骨よりも格上扱いされるのは必然ですぞ?」
「えええええ……」
カーデンの指摘に、露骨な表情となるテッド。
貴族になってからというもの、年上から一方的に敬意を払われる状況には慣れたつもりであったが、それでも嫌なものは嫌なのである。
テッドの現在の立場はRNR士官であった。
英国海軍予備員は海軍の予備部隊であり、プロの商船船員や漁船乗組員が対象である。
この世界においても、主要港に訓練船がおかれて対象者は母港で砲術の訓練を受けた。陸上での訓練を終えた士官は、砲術と海軍での勤務に慣熟するために艦隊の大型艦に乗り込んで艦隊勤務の経験を積んだのである。
幸か不幸か、テッドはRNR士官の条件を満たしていた。
所有する大型漁船で十分過ぎる船上活動を経験していたし、領内の港では熱心に訓練を受けていた。
とどめは、世界巡幸におけるHMS『レナウン』への乗艦であった。
マルヴィナとマウントバッテン卿から逃げる――もとい、退屈しのぎに始めた艦隊勤務は、彼自身の無駄に高いスペックによって艦の幕僚から高い評価を得ていたのである。
このことを見逃すヨーク公(史実のジョージ6世)では無かった。
テッドの同人誌によって、史実よりも欲望に忠実――もとい、アクティブになった彼はテッドを海軍に引き込むべく周囲に働きかけたのである。
「それに閣下……失礼、中佐はジャパニーズネイビーを知悉していると聞いております。演習では期待しておりますぞ?」
「いやまぁ、そこは否定しませんけど僕は軍人としてはシロウトなんですけどねぇ……」
テッドが海軍士官として戦艦に乗り込んだのは、観艦式終了後に予定されている合同演習のためでもあった。帝国海軍と良好な関係を築いているテッドは、相談役&ご意見番として帝国海軍の戦術に触れることが多かったのである。
『ドーセット公が特別演習に参加するだと……!?』
『英国海軍は本気だぞ!?』
テッドが演習に参加すると知って、逆に帝国海軍側は戦々恐々であった。
彼自身が頼み込んだわけではないが、艦の内部や兵装のスペック、さらには兵棋演習まで見せて手のうちを晒してしまっていたのである。
「……それにしても、ドーセット公は噂とはだいぶ違いますなぁ。あぁ、もちろん良い意味ですぞ?」
立派な髭をさすりながらカーデンは、テッドを眺める。
目を細めている様子は、まるで観察しているようであった。
「それはどういうことです? と、いうか本国では僕のことなんて言ってるんです?」
猛烈に嫌な予感に囚われるテッド。
残念ながら、彼の予感は的中していたのである。
『前任者を陥れて全権大使の座に座った』
『本国政府の目が届かないのを良い事に酒池肉林をしている』
『日本政府の目を盗んで不正蓄財している』
その場に居た将兵に聞き取りしただけでもこの有様である。
ロクでも無いゴシップ記事ばかりではあるが、完全に間違いとは言い切れないところがアレである。
本人が遠い日本にいるので、多少好き放題書いても文句を言われることもない。
イエローペーパーにとって、テッドは格好の餌だったのである。
この問題に、関係者が何も手を打たなかったわけではない。
留守を預かる家令のセバスチャン・ウッズフォードは激怒して新聞社に何度も抗議していた。
英国政府としても、重要な同盟国に派遣している全権大使の悪評が広まることは避けたかった。厳重抗議したのであるが、新聞社側は言論の自由を盾に抵抗していたのである。
(これは一度帰国してゴミ掃除する必要があるかな……)
テッドが一時帰国の必要性を痛感したのは、この瞬間であった。
なるべく短期間に行って戻れるように、移動手段の検討を始めたのである。
「陛下が来られたぞっ!」
「敬礼っ!」
お召し艦『榛名』が視認出来る距離になると、呂号潜の乗員たち総出で敬礼をする。両舷合わせて40隻近い呂号潜の登舷礼は壮観なものであった。
この世界の帝国海軍の潜水艦隊は、呂号潜が主力であった。
広大な海外領土を獲得した日本は、侵攻よりも防衛に重きを置いた潜水艦戦力の整備を進めていたのである。
防衛主体であるならば、潜水艦を拠点に張り付けたほうが効率が良い。
小規模な潜水艦基地を多数設置して呂号潜を配備すれば、行動範囲の狭さは補える。
帝国海軍では、対馬、済州島、海南島、沖縄など比較的大きい島はもちろんのこと、小笠原諸島や南洋諸島などの比較的小さな島にまで偽装を施した潜水艦基地を整備中であった。
まるで史実の紺〇の艦隊であるが、実際に計画を策定した平成会のモブの中にファンがいたことは事実である。しかし、仮想敵がアメリカならば有効な戦略であることもまた事実なのである。
第1次大戦の戦後賠償で最新のUボートの現物を入手していたものの、技術提供を受けた英国の潜水艦のほうが性能が優れていた。そのため、この世界における日本の潜水艦技術は英国から提供されたものがベースになっていた。
呂号潜は、英国のL級潜水艦をベースにして帝国海軍が扱いやすいように改良したものとなった。伊号潜については、M級潜水艦の設計図が提供されたことにより、これを叩き台にして開発することになったのであるが……。
『拠点防衛に呂号潜を貼り付けるなら、伊号潜はいらなくね?』
『いやいや、史実海自みたく大型潜水艦を多数整備するのは有効だろう』
『偵察機を運用出来る能力は役に立つだろ!』
『レーダーが無い時代ならともかく、実用化されたら用済みなのでは?』
防衛を主体にする以上、侵攻作戦に特化した伊号潜に存在意義を見出せなかったのである。
運用する帝国海軍側でも呂号潜の性能に満足してしまい、さらなる量産を働きかけてくる始末であった。結果として、M級をベースにした伊号潜の建造は少数で打ち切られることになったのである。
『そうだ! パナマ運河があった!』
『なんだよ、藪からスティックに?』
『こちらからアメリカに喧嘩を売るつもりは無いが、戦争になったときのことを考える必要があるだろ?』
『それはまぁ、そうだが……』
『開戦序盤にパナマを爆撃出来れば、アメリカの動きを縛ることが出来る!』
史実と異なる歴史の流れを辿っているこの世界ではあるが、平成会はアメリカが戦争を仕掛けてくることを懸念していた。対米戦は避けられないのであれば、少しでも有利に戦局を運ぶための手段として伊号潜が再び注目されたのである。
『……それって、紺〇の艦隊じゃね?』
『呂号潜を大量生産している時点で今更だろうが!?』
『そりゃまぁ、そうなんだが……』
パナマ運河はアメリカのアキレス腱と言える。
このことは史実の帝国海軍も認識しており、実際に伊400型潜によるパナマ運河攻撃が計画された。しかし、作戦決行直前で終戦となり中止されたのである。
『実際にやるとしたら、伊400潜による爆撃だが……あれは片道特攻だろう。非人道的過ぎる』
『確か、アメリカで浮上後の潜水艦からパルスジェットミサイルの発射実験をやっていたぞ。これならなんとかならないか?』
『パルスジェットか。構造は簡単だから開発するのは難しく無いな』
『潜水艦からV-1を発射してパナマ運河を爆撃するのか……?』
V-1は巡航ミサイルの元祖的存在であり、ナチスドイツで開発された。
性能は微妙であるが、構造が簡単で安価に量産出来ることに平成会は目を付けたのである。
『パナマ運河を爆撃するとなれば、史実のV-1よりも高性能化する必要があるぞ』
『そうなるとV-1以上のサイズになるのは確実なのでは?』
『威力も上がるから問題無しだろう』
『いや、運用する母艦も巨大化しかねないんですけど……』
『そこらへんは実際にV-1もどきを作ってから考えるべきでは?』
かくして、この世界の伊号潜は戦略兵器として再開発されることになった。
V-1(仮称)は、史実で『かつをどり』を製作した萱場製作所で開発が進められたのである。
『しかし、これだけの巨大潜水艦となるとパナマ運河爆撃だけに用いるのはもったいなくないか?』
『ハワイに集結しているサウスダコタ級を殲滅するのに使うのはどうです?』
『それって、モロに〇碧の艦隊の艦隊殲滅戦じゃないか……』
『なにか問題があります?』
帝国海軍が〇碧の艦隊と化しているのは今更の話である。
軍部内の平成会派が実権を握るにつれて、その傾向はますます加速していくことになるのである。
「おいおい、ヤーパンの連中は俺らのことが気になるらしいぜ」
「そりゃあそうだろう。なんたったって、赤い熊を押しとどめた武勲艦なのだからな!」
「ふふっ、羨望の視線が心地よいぜ……!」
観艦式でひと際注目を浴びているのが、ドイツ帝国から参加した巡洋戦艦『マッケンゼン』であった。どちらかというと悪目立ちなのであるが、当のドイツ軍人たちがそれを知らないのは幸福なことであろう。
目立つ原因は、なんといっても垂直2連砲である。
見た目の異様さと迫力は、他の艦の追随を許さない。
『なんだあれ、良く分からんが凄く強そうな砲を積んでるぞ!?』
『戦艦と空母を同時にやれるってスゴくね?』
『さすがはドイツ帝国というべきか、我が国もうかうかしてられないんじゃないか』
そんなわけで、一般大衆からの評判は上々であった。
人気に目を付けた玩具メーカーから、ブリキ玩具として発売されたことで子供たちにも大人気となったのである。
『あんな小口径砲をたくさん積むくらいなら、素直に大口径にすれば良いのにな』
『砲を前部に集中するというアイデアは悪くないが、所詮は陸軍国の戦艦だな』
『これは無いわぁ。対抗して同等の艦を作れと言われても断固拒否するぞ』
大衆うけしているのとは裏腹に、帝国海軍側からの評判は大変に悪かった。
あまりにも海軍の常識からかけ離れた艦だったからである。
マッケンゼンは、本来は観艦式に参加する予定は無かった。
たまたま別件で中華民国に寄港していたために、急遽白羽の矢が立ったのである。
中華民国と満州国との貿易が盛んになればなるほど、長大化した貿易航路の維持にドイツ帝国は頭を痛めることになった。特に問題となったのが、中華民国における対日感情の悪化である。
航路の大半が英国と日本の影響下であるために、中華民国と日本との争いは歓迎出来るものでは無かった。しかし、うなぎ上りな対独感情とは反比例するかのように、対日感情は悪化の一途だったのである。
ドイツ帝国側は、中華民国の国民感情をガス抜きする必要に迫られた。
マッケンゼンを派遣したのは、その一環であった。
『魔法子彈射手上海寄港』
『英霊艦熱烈歡迎』
『港區人山人海』
1927年末に勃発したクリスマス開戦において、マッケンゼン級は目覚ましい活躍をしていた。中華民国の民は武勲艦マッケンゼンを熱狂的に歓迎したのである。
(人のアイデアを中途半端にパクっただけと思ったけど、いざ目にしてみれば中々なものじゃないか……)
テッドは、ネプチューンの艦橋から双眼鏡でマッケンゼンを観察していた。
何のかんの言っても、気になってはいたのである。
何を隠そう、マッケンゼンの元ネタはテッドの描いた火葬戦記同人誌であった。
その元ネタは、史実の某仮想兵器サイトからのパクリなので、パクリのパクリなのである。
史実では卑怯艦の異名で呼ばれた『フ〇ン・〇ア・タ〇』の劣化パクリが、この世界では赤軍の侵攻を押しとどめる原動力になるとは、さしものテッドも感心するやら呆れるやらで、二の句が継げなかったという。
そんなテッドの思惑なんぞお構いなしに、ドイツ帝国海軍は『航路防衛艦』の名称でマッケンゼンのコンセプトを引き継いだ艦を建造中であった。
航路防衛艦は、そこそこ高火力で足が長く、取得コストが安くて多数建造可能な長距離護衛向きの艦である。しかし、この艦の誕生は決して順調なものではなかった。計画が二転三転して、一度はロイヤルネイビーのMACシップを参考にした護衛空母に決まりかけたことさえあったのである。
すったもんだのあげく、最終的に決定した航路防衛艦の性能要求は以下の通りである。
・船体はある程度数が揃えられる1万トン以下に抑えること。
・駆逐艦程度ならば圧倒、巡洋艦とも互角以上の火力を有すること。
・水偵を多数運用出来ること。
・長大な航続力を有すること。
常時水偵を飛ばして前方を警戒、敵艦を発見すれば母艦に急報すると同時に輸送船団を退避させる。敵艦が駆逐艦程度であれば砲戦で撃沈、相手が格上ならば速力を活かして逃げるというコンセプトである。
排水量1万トン以下で、この性能を達成するのは無理があった。
しかし、ドイツ人技術者たちは無理を通して道理を引っ込めるためにゲルマン魂を炸裂させたのである。
完成した航路防衛艦は、マッケンゼンをそのままスケールダウンしたような艦となった。武装を前部に集中させて、後部は水偵運用のための格納庫で占められたのである。
搭載する砲はペーネミュンデ矢弾――の予定だったのであるが、汎用性を重視して通常タイプの艦載砲となった。しかし、垂直2連砲は引き継いでおり十分な火力を確保することに成功していた。
長大な航続力を確保するために主機は蒸気タービンとディーゼルの併用とされた。当初の計画では、Uボート用のエンジンを多数搭載して必要な馬力を確保する予定だったのであるが、出力が不足して蒸気タービンを採用することになったのである。
通商航路防衛艦はケーニヒスベルク級と呼称された。
ネームシップ『ケーニヒスベルク』の就役後は、続々と同型艦が量産されていったのである。
マッケンゼン級を縮小したようなケーニヒスベルク級は、とかく目立つ船であった。日本近海を航行することが多いために、当時の日本人に最も知られたドイツ艦となったのである。
「これはまた壮観だな……」
思わず呟いてしまうウィリアム・ハルゼー・ジュニア海軍少将。
駆逐艦『ダトゥ・カランチャウ』の艦橋からのは、停泊する多数の軍艦を見ることが出来たのである。
ハルゼーは、マハルリカ共和国軍人として観艦式に参加していた。
この世界においては、フィリピンはマハルリカ共和国として独立を果たしていたからである。
御大礼特別観艦式は、独立したばかりのマハルリカ共和国が自国をアピールする絶好のチャンスであった。就役したばかりの最新鋭艦であるダトゥ・カランチャウが派遣されたのは、そのような理由だったのである。
日本からの技術支援があったとはいえ、自力で建造した駆逐艦ということもダトゥ・カランチャウが派遣された理由であった。駆逐艦を自国で建造出来る技術力を国内外にアピールする意味もあったのである。
この世界の帝国海軍では既に特型の量産が進められており、峯風型の建造は早期に打ち切られていた。改良型の神風型に至っては建造すらされていなかったのであるが、図面だけは製作されていたのでマハルリカ共和国に技術支援の一環で提供されたのである。
ダトゥ・カランチャウの大本は史実の神風型駆逐艦であるが、国内事情に合うように改良を加えられた。運用する条件が異なり過ぎて、そのまま適用することが出来なかったのである。
外見上で最も目立っているのはハルゼーが居る艦橋である。
オリジナルは側面ガラス窓で天井はキャンバストップであったが、ダトゥ・カランチャウは特型のように固定天蓋化された。
フィリピンは台風の通り道であり、時化の最中の作戦行動が想定された。
海水が流入しないようにするために、艦橋の固定天蓋化は必須だったのである。
高温多湿な艦橋のため、艦橋を含む艦内の一部は冷房化されていた。
当時の駆逐艦としては画期的なことであるが、これもまた高温多湿なフィリピン周辺海域で運用するためには必須の装備であった。
これが帝国海軍ならば将兵に我慢を強いるところであろう。
しかし、創設期のマハルリカ共和国海軍にはアメリカから亡命してきた者が多かった。不慣れな高温多湿に加えて、時化で窓も開けられない艦内環境にダウンする者が続出して冷房装置の必要性が強く叫ばれたのである。
幸いにして、この世界では平成会の技術&資金援助により大阪金属工業所が冷凍機『ミフジレーター』が完成させていた。これを改造した冷房システムが既に国鉄の車両に採用されており、そのまま駆逐艦に搭載したのである。
冷房が採用されたのは、マハルリカ共和国海軍が帝国海軍ほど武装重視に拘っていなかったことも幸いしていた。冷房システムは重量4tに及ぶ巨大なものであり、魚雷の1本でも余分に積みたい帝国海軍からすれば論外な装備であった。
ちなみに、アイスクリーム製造装置も搭載されていた。
史実のWW2当時の米海軍でさえ装備されていたのは一部の例外を除けば大型艦のみである。駆逐艦に装備されたことは画期的であった。
アイスクリーム製造装置は、フィリピン系将兵にも大好評であった。
マハルリカ共和国海軍では、冷房とアイスクリーム製造装置が標準装備になっていくのである。
『今日わたしは初めて軍艦を見た。今までわたしが乗ってきたのは奴隷船だった』
――とは、親善のために乗艦した海軍の平成会派のモブ軍人の言葉である。
この時代には冷暖房が無いのが当たり前と思い込んでいたので、冷房とアイスクリームの存在は衝撃的だったのである。
『寒さは厚着すればなんとかなるが、暑さはどうにもならん。一部区画だけでも冷房を!』
『アイスクリームは無理でも、せめてラムネ製造機は標準装備にするべきだ!』
平成会派による『艦内環境向上委員会』が設立されたのは、それからまもなくのことであった。彼らの努力により、新型艦の性能要求に冷房の項目が追加されたことは特筆すべきことであろう。もっとも、あくまでも努力目標だったために無視されることも多かったのであるが。
ラムネ製造機は史実では大和型戦艦が有名であるが、巡洋艦以上の大型艦には二酸化炭素消火設備が備えられており、その付帯設備に過ぎない。この世界では、駆逐艦にも二酸化炭素消火設備が備えられることになり、必然的にラムネ製造機も装備されることになるのである。
『日本の観艦式 我が国からは参加無し』
『ハワイへのサウスダコタ級の配備が日本を刺激したか』
『アメリカ政府はマハルリカ共和国を断固認めない方針』
御大礼特別観艦式は、アメリカでも注目されていた。
米海軍は艦艇を派遣してはいなかったが、現地メディアでは大きく取り上げていたのである。
「日本は、我々のことを脅威に思っているようだ。敵対するつもりはないのだが……」
ホワイトハウスの執務室。
大統領ジョン・ウィリアム・デイビスは、苦々しい表情で新聞を放り出した。
「無理もありますまい、ハワイへサウスダコタ級を6隻配備しましたからな」
傍に控えていた海軍長官カーティス・ドワイト・ウィルバーの表情も険しいものであった。
「そもそも、ハワイに最新鋭の戦艦を6隻も配備する必要があったのかね?」
「わたしとしてもやりたくはなかったのですが、ヴィンソン君からの報告を無視することは出来ませんでした」
ハワイへのサウスダコタ級配備をウィルバーが決断したのは、海軍委員会の委員カール・ヴィンソンのハワイに関するレポートであった。現在のハワイは日本化が進んでおり、日本語が準公用語として通用するほどだったのである。
『アメリカ風邪のときに日本は支援してくれたのに、本土の連中は何もしてくれなかった』
『たまに来る船は酒か麻薬の密輸船だぞ。こんなの相手にしてられるか!』
『ハワイ王国を復活させて日本と協調したほうがマシな未来になるんじゃないか?』
アメリカ風邪で白人コミュニティが壊滅した結果、残されたネイティブハワイアンたちはハワイ王国の復活を望んでいた。サウスダコタ級の配備は、ハワイがアメリカのものであることを内外に示すためのものだったのである。
「……まぁ、いい。それよりもヴィンソン計画の進捗はどうなっているのかね?」
「国内の造船所をフル稼働して対応しております。今のところは予定どおりです」
ヴィンソン計画の全容は、戦艦10隻、空母10隻、重巡、軽巡、駆逐艦、その他もろもろ全て合わせて合計排水量200万トンオーバーの艦を一気に建造するというものであった。メラ手形で資金問題を解決した大統領とその一派は、凄まじい勢いで軍艦を建造していたのである。
ヴィンソン計画は旧態化した海軍の刷新の意味合いが強かった。
しかし、大統領派の本命は別のところにあった。
「よろしい。海兵隊のほうはどうかね?」
「国内では目につくので、キューバで訓練を行っております。こちらも現状では問題ありません」
大統領派の本命は錬成中の海兵師団であった。
アメリカを裏社会の住民から解放するには、軍艦ではなく兵隊が必要なのである。
しかし、陸軍はヘッドハンティングで抜け殻と化していた。
その抜け殻も買収されていて戦力としてカウント出来ないわけで、直接制圧するための戦力として海兵隊に白羽の矢が立ったというわけである。
『テッド君、送った写真は届いたかね?』
「見ましたよ。これは海兵隊の上陸訓練ですね。何処で撮ったものです?」
『キューバだ。ジャマイカ側から撮ったものらしい』
「ってことは、間違いなくアメリカの意向が絡んでますねこれは」
しかし、キューバにほど近いジャマイカは英国の植民地である。
海兵隊の訓練は即座に英国側に知られることになった。
『……それは、裏社会が関わっているということかね?』
「いや、裏社会の住民がこんなことをやるとは思えません。むしろ連中に敵対する勢力だと思います」
『裏社会と敵対するもの……候補が多すぎて絞り切れないな』
「あの国がいくら腐っているからといっても、海兵隊を動かすには公権力が必要でしょう。大統領かその周辺なのでは?」
『あり得るな……』
受話器越しに唸るロイド・ジョージ。
テッドの指摘は充分にあり得ることであった。
「例の海軍大拡張とも無関係では無いでしょう。アメリカ国内で何かが確実に進行しているのは確かです」
『アメリカ風邪で壊滅したアメリカ支部の再建を急ぐ必要があるな』
アメリカ風邪で国内のエージェントに甚大な被害が出てしまった結果、MI6アメリカ支部は事実上の壊滅状態であった。かつての情報源も裏社会に身売りしており、情報収集能力は著しく低下していたのである。
大統領一派の動きや、トロツキー率いる革命軍その他諸々。
アメリカ支部が往年の諜報力を維持出来ていれば、これらの動きも察知出来たであろう。そうなれば、未来もだいぶ変わったものになったのであるが、全てはIFの話に過ぎないのである。
御大礼特別観艦式は、様々な陣営に様々な思惑を遺して閉幕した。
しかし、英国と日本にとっては終わりでは無い。観艦式の後は合同演習が控えていたのである。
以下、今回登場させた兵器のスペックです。
マッケンゼン
排水量:33000t(常備)
全長:227.0m
全幅:30.4m
吃水:8.7m
機関:重油専燃缶32基+パーソンズ式ギアードタービン4軸推進
最大出力:92000馬力
最大速力:29ノット
航続距離:14ノット/8000浬
乗員:1227名
兵装:70口径31cm連装垂直2連砲3基
45口径15cm単装砲12基
45口径8.8cm単装砲8基
航空機20機(ハンザ・ブランデンブルク W.12 索敵・弾着観測・防空兼用)
装甲:装甲帯100~300mm
主甲板30~80mm(後部飛行甲板除く)
主砲塔270mm(前盾) 230mm(側盾) 230mm(後盾) 80mm(天蓋)
主砲バーベット部270mm(最厚部)
司令塔300mm
ドイツ海軍が建造した超フ級戦艦の1番艦。
同型艦は『プリンツ・アイテル・フリードリッヒ』『グラーフ・シュペー』『フュルスト・ビスマルク』
当初の計画では15インチもしくは16インチ砲を搭載した真っ当な巡洋戦艦になるはずであった。しかし、搭載する予定の砲は未だに設計段階であった。建造が急がれる状況で、新型砲の完成をいつまでも待つわけにもいかず技術者達を悩ませていた。
技術者達の救い?となったのが、テッド・ハーグリーヴスが描いたSF同人誌であった。生前に架〇機の〇で見た『フ〇ン・デ〇・タン 〇ァハ〇』が忘れらずに描いてしまったシロモノなのであるが、それがどういうわけかドイツにまで流れていたのである。
『連装垂直2連砲』『ペーネミュンデ矢弾』のアイデアは、ゲルマン技術者達を大いに刺激した。特にペーネミュンデ矢弾は、詳細な形状まで描かれていたために労せずに完成にまでこぎ着けた。ライフリングを廃した滑腔砲であるために製作が簡単だったことも原因である。
砲身は28cm砲をボーリングして31cmに拡大された。
ライフリングを廃して、内部はクロムメッキでピカピカに磨き上げられた。この砲を垂直に束ねたのが垂直2連砲である。この砲を連装するので砲塔につき4門、3基合計12門の火力を発揮可能であった。
ペーネミュンデ矢弾は、全長2mというこれまでの砲弾の常識を覆す長さである。
砲弾の径は100mm程度であるが、砲弾の中ほどにあるサボと後端のフィンによって砲身内で支持されている。
この砲弾はロケット推進が組み込まれており、発射されて数秒後に点火して推力を発揮した。
極めて細長く、空気抵抗の少ない形状のペーネミュンデ矢弾は、1400m/sという驚異的な初速とロケット推進により最大射程150kmという空前絶後の長射程を達成したのである。
全長は長いものの、細長く容積が小さいペーネミュンデ矢弾は艦内に大量に搭載することが可能であった。長射程と大量に搭載出来ることは、陸軍から求められた支援砲撃能力に合致するものでもあった。
本命の対艦船においては、その長射程を活かしたアウトレンジ戦法が求められた。
アウトレンジするためには敵を早期に発見すること、相対距離を維持するための速力が必要となるが、速力はともかくとして150kmという射程は見通し距離を遥かに超えており、目視以外の索敵手段が必要となった。
当時のドイツにはレーダーの概念すら存在しておらず、索敵手段は航空機に頼ることになった。本級の艦体後部には大型格納庫設けられており、マッケンゼン級は水上機母艦として20機程度の運用が可能であった。
1927年末に勃発したソ連によるドイツ侵攻(通称クリスマス開戦)において、バルト海に進出した4隻のマッケンゼン級の支援砲撃で赤軍の一部部隊を壊滅に追い込んだ。このことが世界中に喧伝されたことで、マッケンゼン級は一躍有名になった。
1928年12月4日に開催された御大礼特別観艦式には、マッケンゼンがドイツ帝国代表として参加している。その特異な砲配置は一般人には大いにうけたのであるが、本職の海軍軍人からの評価は散々だったという。
※作者の個人的意見
元ネタの『フ〇ン・〇ア・タ〇』が置いてあったサイト『架空機の館』には、あの独特の砲配置が分かるイラストとかあったんですけどねぇ。サイトが消滅して、せめて画像だけでもネットを漁っているんですけど見つかったのは一枚だけ。側面図のイラストとか出てくれば挿絵の資料になるのになぁ…( ´Д`)=3
ケーニヒスベルク
排水量:6200t(基準)
全長:174.0m
全幅:15.3m
吃水:5.56m(基準)
機関:重油専焼海軍型水管缶6基+ゲルマニア式海軍型ギヤード・タービン4基 & MAN社製W10 V26/33型2サイクルディーゼル機関2基2軸推進
最大出力:70800馬力
最大速力:32ノット
航続距離:17ノット/7300浬 19ノット/5700浬
乗員:620名
兵装:60口径15cm連装垂直2連砲2基
45口径8.8cm単装高角砲2基
航空機8機(ハンザ・ブランデンブルク W.12 索敵・防空兼用)
装甲:舷側:76~101mm(水線部)
甲板:40mm(平坦部)
砲塔:30mm(前盾)
司令塔:76~100mm
ドイツ帝国海軍が建造した『航路防衛艦』のネームシップ。
対外的には巡洋艦としての扱いを受けている。
同型艦は『カールスルーエ』『ケルン』他多数。
中華民国が親独国となり、満州国も好意的中立の立場を取るに及び、中国大陸との経済的な結びつきは強まる一方であった。産出する豊富な資源と現地の労働力は、ドイツ帝国の経済をけん引していたのである。
そうなると問題になるのが、シーレーン防衛である。
スエズ運河を経由したとしても、ドイツ本土から中国大陸に及ぶシーレーンは長大なものであった。
現状のドイツ帝国海軍の戦力では、有事の際にシーレーンを確保する見通しが立たなかった。この問題を解決するために、そこそこ高火力で足が長く、取得コストが安くて多数建造可能な長距離護衛向きの艦が計画されたのである。
本型の特徴は、武装を前部に集中して後部は航空機の運用に特化していることである。主砲はマッケンゼン級巡洋戦艦にも採用された垂直2連砲であり、15cm砲8門の火力を確保している。
砲弾はペーネミュンデ矢弾ではなく、汎用性を考慮して通常型の砲弾を使用する。
電力による機力装填により、総合的な発射速度は毎分10発以上を確保している。
船体中央部には格納庫が設置されており、運用する水偵が全て格納されている。
マッケンゼン級とは違い、露天係止しないのは長期間の航海で機体を錆びさせないためである。
一部の艦は、格納庫を旗艦設備に転用したり、練習艦として訓練生の居住区にするなど多くの派生型が存在している。
本級は活動範囲が広大なために航続力が求められていた。
当初の計画ではオールディーゼル化して航続力を確保する予定であった。しかし、必要な馬力を確保するだけのエンジン設置スペースが確保出来なかったために蒸気タービンとディーゼルの併用となっている。
船体には電気溶接を多用しているが、重量軽減のためというよりも工数削減のために採用されている。そのため、史実とは違って艦橋構造物に軽合金はほとんど使用されていない。
※作者の個人的意見
史実ケーニヒスベルクの水偵を取っ払って、煙突と艦橋を後ろに寄せて空いたスペースに主砲塔1基追加。後部の砲塔は全て取り払い、艦の真ん中付近に格納庫を設置しています。ぶっちゃけると史実の大淀もどきですねw
連装垂直2連砲を搭載しているので、火力は前部だけで15cm8門あるので駆逐艦相手には楽勝でしょう。接近する前にボコボコに出来ます。巡洋艦相手でもそうそう引けは取らないでしょうが、装甲が薄いので逃げられるなら逃げるべきでしょうね。そのためにも、水偵をたくさん積んでいるわけですし。
ハンザ・ブランデンブルク W.12
全長:8.69m
全幅:9.6m
全高:3.3m
重量:967kg
翼面積:36.2㎡
最大速度:160km/h
実用上昇限度:5000m
武装:IMG08機関銃×1(操縦席前方) パラベラムMG14軽機関銃(後部銃座)
エンジン:メルセデス D.IIIa 液冷エンジン 160馬力
乗員:2名
ケーニヒスベルク級で運用されている水上機。
マッケンゼン級とは違い、全て艦内の格納庫に収容されている。
※作者の個人的意見
この時点で性能は陳腐化してますが、小型でたくさん積めるので採用された……という設定ですw
母艦に先行して進路を警戒するだけですから、この程度でも問題ない……はず。
ダトゥ・カランチャウ
排水量:1280t(基準) 1420t(常備)
全長:102.57m
全幅:9.14m
吃水:2.9m
機関:過熱器付ロ号艦本式缶4基+艦本式タービン2基2軸推進
最大出力:38000馬力
最大速力:37ノット
航続距離:14ノット/3600浬
乗員:155名
兵装:45口径12cm単装砲4門
53cm連装魚雷発射管2基
爆雷20個
爆雷投射機2基
投下軌道2条
マハルリカ共和国海軍ダトゥ・カランチャウ型駆逐艦の1番艦。
日本から提供された神風型駆逐艦の図面を参考に建造されたが、運用するフィリピン周辺海域の事情に合わせて改良が加えられている。
外見上の特徴は固定天蓋付きの艦橋である。
フィリピン周辺海域は、季節によっては台風の通り道となる海域である。時化の中の作戦行動も想定されたために艦橋への海水の流入を防ぐために特型に似た密閉式の艦橋となった。
特筆すべき点として、艦橋と一部の区画に冷房が導入されている。
マハルリカ共和国海軍の創設期には、アメリカから亡命してきた人間が多かった。ただでさえ高温多湿な気候に不慣れだというのに、時化で窓も開けられない艦内環境にダウンする者が続出したのである。
幸いにして、この世界では平成会の資金&技術援助によって大阪金属工業が冷凍機ミフジレーターを実用化しており、国鉄では同システムを使用した冷房車も既に運用されていた。であるならば、それを艦内冷房に用いようと考えるのは必然であった。
ダトゥ・カランチャウ型に搭載されたミフジレーターによる冷房システムは、過酷な運用環境を想定して民間向けよりも頑丈な作りとなった。その分は重量に跳ね返り、4t近い重量となってしまった。
それだけの重量があれば、魚雷を1本余分に積むことも可能である。
しかし、共和国海軍は魚雷発射管を1基降ろしてまで冷房システムを搭載した。いくら重武装でも作戦行動出来なければ意味が無いのである。
実際は、初期状態が重武装だったので発射管を1基降ろしても運用上の問題は無かったようである。むしろ復元性が増して、オリジナルよりも無茶な艦隊機動が出来るということで艦長たちからは高く評価されたくらいである。
船体そのものはセブ島の造船所で建造されたのであるが、一部の艤装品については日本からの輸入に頼っているのが現状である。こちらも国産化への努力が行われており、将来的には完全国産を達成する予定である。
※作者の個人的意見
魔改造神風型です。
沿岸海域の防衛に特化するなら、お高い特型よりも神風型のほうがお得だと思います。
フィリピン……じゃなかった、マハルリカ共和国海軍がどの程度の海軍を目指すかにもよるのですが、序盤はこの手の艦を大量に備えたほうが融通が利くでしょうね。
過去話でも言及されていた観艦式を書いてみました。
次回は合同演習です。海軍軍人らしいテッド君の活躍が見られるかもしれません。多分。
>供奉艦
御召艦に御供する艦のことです。
>『磐手』
この世界でも練習艦としての運用が主になっています。
艦〇れファンなモブは、早く『鹿島』を建造したいようですが予算が厳しくてやきもきしているようです。
>艦橋部分にアルミ合金が多用
史実の特型の初期のタイプには、上部構造物の重量減のためにアルミが多用されたのですが、当時のアルミ合金は耐食性がよろしくなく強度低下の懸念もあって使用が中止されています。この世界では英国から技術提供されたので問題無くアルミが採用されています。……シェフィールド?知らんなぁ?
>魚雷弾頭部の炸薬を変更
史実の酸素魚雷の破壊力は有名ですが、炸薬自体は安全重視で威力は低めだったりします。
大口径化して炸薬を大量に詰めて力業で威力を増していたのです。下瀬火薬よりもトーペックスのほうが水中破壊力は高いので、詰め替えれば単純に威力が向上することになります。酸素魚雷化で射程もアップするので、わざわざ大口径化しなくても良いじゃん?という議論なわけです。
>開発中の航跡追尾
史実でも研究されていて実験では成功していました。
この世界の日本の技術力ならなんとかなるでしょう。多分。
>オートジャイロ『あさどり』
74話で不時着してぶっ壊れましたが、無事修理出来たようです。
オートジャイロはヘリに比べて構造が簡単なので、エンジンさえまともならそこまで修理に手間はかからないはずなんですけどねぇ…。
>長門級の建造が最終的に3隻で打ち切られた
ちなみにまだ出てこぬ3番艦は『尾張』です。
終わりだけに……って、うわなにをするやめくぁwせdrftgyふじこlp
>カジノで巻き上げた金で建造されているという噂
事が事だけに、噂は海軍内に広まっているようです。
テッド君を見る目が生暖かくなりそうですね……(哀
>新型空母に相応しい新型機の開発も進められていた。
この際なので、複葉機を卒業してスマートで高速な単葉機にシフトしたいところです。とはいえ、この時代に96艦戦相当の機体を出すのはチート過ぎるような気もしますし、悩み処ですねぇ…(´ε`;)ウーン…
>HMS『ネプチューン』
第1次大戦後に就役したクイーンエリザベス級高速戦艦。
大規模近代化改修が適用されています。
>サックヴィル・カーデン海軍元帥
史実ではガリポリの戦いの海軍指揮官にして、拙作では最も優遇されているであろうネームドの一人。どういうわけか作者に気に入られて、ちょくちょく出番をもらっています。年齢的にはもう限界なので、今回が最後の御役目ですけどね。
>『前任者を陥れて全権大使の座に座った』
陥れたんじゃなくて、陥れられたんだよなぁ……
>『本国政府の目が届かないのを良い事に酒池肉林をしている』
東京湾上のやり船に監禁されて絞られてます……
>『日本政府の目を盗んで不正蓄財している』
朝鮮半島におけるウォッチガードセキュリティの活動は日本政府の管轄外ですので……
>まるで史実の某紺〇の艦隊である。
潜水艦が活躍するんだから紺碧の艦隊で間違いない。イイネ?
>『かつをどり』
萱場製作所が研究していたラムジェットエンジン搭載の無尾翼近距離戦闘機。
開発に石原莞爾が絡んでいたりしますw
>巡洋戦艦『マッケンゼン』
超豪華なモニター艦(酷
でも決して間違っていないというか、活躍も対艦戦ではなく支援砲撃ですし……。
>駆逐艦『ダトゥ・カランチャウ』
この世界では建造されなかった神風型駆逐艦をベースにしたマハルリカ共和国海軍のフラグシップ。艦内冷房(一部)とアイスクリームで艦内環境は世界トップクラスです。
>『ミフジレーター』
現在のエアコンとは違い、冷凍庫からの冷気を通風孔とファンで送気するようなものなので効率はお世辞にもよろしくないです。
>重量4tに及ぶ巨大なもの
オリジナルは南海2001形電車に採用されたシステムで2.5tほどでした。
艦載するために信頼性やら被弾時の抗堪性も考慮したらここまで重くなってしまったという設定です。
>アイスクリーム製造装置
史実では持てる国だった米海軍といえど、基本的には巡洋艦以上に装備された贅沢装備です。マハルリカ共和国海軍では標準装備になるので、これにはハルゼー提督もにっこりですね!w
>努力目標だったために無視されることも多かった
設計段階で考慮されても、施工段階で無視されることなんて割とある話。
電線やケーブルを入れる電路が付けられてなくて、現場で途方に暮れたなんて話も……(汗
>ラムネ製造機
大和のラムネが一番美味いなんて記事がどっかにあったけど、わざわざ飲み比べした暇人がいたのかなぁ?
>メラ手形
燃えてしまいそうで不安になりますが、限界を越えたら文字通り被害国が火の海になります(白目