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第69話 ウォッチガードセキュリティ壊滅す!(自援絵有り)


「うぅ、頭痛い……」


 目覚めは最悪であった。

 テッドは、二日酔いで痛む頭を押えようとして――。


「か、躰が動かない!? 金縛り!?」


 ……体が動かないことに気付く。

 慌てて下を見て絶句する。背後から伸びる褐色でマッシブな両腕に捕らわれていたのである。


「ということは……」


 左右を振り返って再び絶句する。

 背中に当たるのは、柔らかい肉の感触であった。


「だ、抱き枕にされてるーっ!? って、痛たたたた……」


 思わず絶叫してしまったせいで、さらなる頭痛に襲われる。

 深酒しないように心がけていたはずが、いつの間にか酒に飲まれてしまっていた。口当たりが良くてカパカパ飲めるのが日本酒の恐ろしさである。


「うぅ~ん……」


 テッドの声に反応したように、背後から聞こえる艶っぽい声。

 同時に、テッドの視点が天井から布団に移動する。マルヴィナが寝返りを打ったのであろう。


「テッドぉ……好きぃ……」


 寝言を言いながら、テッドの髪をクンカクンカする。

 はっきり言って変態である。


(こういうところは本当にかわいいんだよなぁ……)


 対するテッドも、十分にアレであるが。

 ある意味余裕の表れとも言えるが、それも長くは続かなかった。


「ちょっ!? マルヴィナっ!?」

「うふふふ……」


 ミシミシと、テッドの(からだ)に回された褐色の剛腕が締まっていく。

 まさに乙女が抱き枕に思いっきり抱き着くが如しである。問題は乙女の膂力(りょりょく)が半端ないことと、抱き枕が生身ということであるが。


「ちょ、締まる……締まる……」

 

 脱出しようにも、逆向きのベアハッグのような状態で両腕ごと抱え込まれており身動き出来ない状態であった。


 このままだと、テッドの身に不幸なことが起きるであろう。

 しかし、天は彼を見捨ててはいなかった。


「ドーセット公、大変です!」

「あなたが神か!」


 (ふすま)を開けて入室してくる平成トラベルのツアコン。

 思わぬ救世主の登場に目を輝かせるテッド。


「……あ、お楽しみ中でしたか。失礼しました」

「ちょ、助けて!? ヘルプミーっ!?」


 しかし、無情にも襖は閉められた。

 リア充死すべし慈悲は無い。


挿絵(By みてみん)


「ぐぇ……ちょ、マル、ヴィナ……本当に、ヤバ……い……」


 締め付けられると同時に、肺も圧迫される。

 呼吸しづらくなり、発声も困難になっていく。


「……抜けたっ!?」


 不意に右腕が抜ける。

 おそらく、汗で滑ったのであろう。


「!?」


 テッドがマルヴィナの左親指を掴むと、動きが一瞬硬直する。

 いわゆる柔術の指取りである。そのまま一気に脱出する。


「し、死ぬかと思った……」


 その後、テッドが目にしたものは野戦病院の如き光景であった。

 宴会場は、二日酔いでのたうち回るウォッチガードセキュリティの面々であふれていたのである。


「……一応、今日出発の予定だったんですけどね。ドーセット公もお楽しみのようでしたし、他の方もこの有様なんで翌日以降で良いですか?」


 絶句するテッドのもとにやってくるツアコン。

 何故か顔面にアザを作っている彼は、完全にさじを投げていた。


「あー、うん、しょうがないよね……ところで、こいつらの介抱を手伝ってくれない?」

「お断りします! 背後に立ったら、いきなり殴られたんですよ!? 酒癖悪すぎでしょこの人たち!?」

「えぇー……しょうがないなぁ……」


 問答無用で拒絶するツアコンであるが、こればかりは彼が正しい。

 第1次大戦を潜り抜けた猛者たちを相手に、平成会のモブがどうこう出来るわけが無い。結局、復活したマルヴィナと介抱してまわることになったのである。


「俺の背後にぃ……立つんじゃねぇっ!」

「ほいっ」

「ぐげぇっ!?」


 酔っているにもかかわらず、ノールック&ノーモーションで放たれる鋭い裏拳。

 テッドはあっさり回避して、軸足をキャッチしてテイクダウンに持ち込む。


「……」

「ぐがっ!?」


 リーチを活かした脳天唐竹割りを叩き込むマルヴィナ。

 圧倒的なスピードで、しかも寸止めしていないので下手をしたらダメージが残る恐れがあるが、鍛えているウォッチガードセキュリティの隊員なら問題無いはずである。多分。


 ウォッチガードセキュリティの隊員は、ガタイが良くて鍛えているのが大半である。鎮圧――もとい、介抱するにはこれが一番手っ取り早い。ツアコンにドン引きされたのが、テッドには不可解であった。


 さすがに、宴会で全員酔いつぶれましたなどと公表出来るはずもなく。

 当たり障りのない適当な理由がでっち上げられて、エスケーピングコリアン号の出発は延期されたのであった。







「このタイミングで車両故障とか、ふざけんなぁぁぁぁぁぁっ!?」

「どーすんだおい!? 苦心して組んだダイヤが全部台無しになっちまったぞ!?」

「出発時刻すら分からんとか、ダイヤ修正どころじゃないぞ!?」


 『車両故障』によるエスケーピングコリアン号の出発延期が決定して、真っ先に悲鳴をあげたのがスジ屋たちであった。この世界の日本の鉄道は標準軌で統一され、鉄道省と私鉄各社&地下鉄の相互乗り入れが実現している。事故が発生すると影響は極めて広範囲に及ぶことになるのである。


「え? 少なくても今日中の出発は無い?」

「良かった。〇っとけダイヤをしなくて済んだな……」

「翌日以降に計画されたダイヤで動いてくれれば問題無いな」


 せめてもの救いは、当日の出発が無くなったことであろうか。

 日程だけスライドすれば問題無いわけで、K〇クォリティを日本全国の鉄道省&私鉄に拡大適用するという悪夢は避けられたのであるが……。


「あああああああっ!? それなら閉塞中の路線を開放しないと!? 10や20じゃ効かねーぞ!?」

「しまった、それがあったか!?」

「閉塞を解除しないと、後続列車が動かせませんよ!?」


 閉塞は鉄道における信号保安の基本である。

 線路を一定区間(閉塞区間)に区切り、1つの閉塞区間に同時に2つ以上の列車が入らないようにすることで安全を確保する。


 閉塞することで衝突や追突を回避することが出来る。

 逆に言えば、閉塞を解除しないと列車の運行が出来ない。


 エスケーピングコリアン号は、リアル桃鉄の如く他社路線に豪快に乗り入れるルートを取っており、閉塞が必要な路線は多岐に渡る。そして、閉塞は該当列車が通過するまで解除出来ないのである。


「駄目です。電話がつながりませんっ!?」

「かけ続けろっ! いや、直接駅に出向いて閉塞を解除しろ!」

「ちょ、ここからどんだけ距離があると思ってるんですか!?」


 史実21世紀の日本ならば、スマホやインターネットなど連絡手段には事欠かない。しかし、この世界は昭和初期である。直接の連絡手段は固定電話以外にあり得なかった。


 ちなみに、平成会は電話の普及に力を入れていた。

 出前を頼むのにも、コンサートを予約するにも、とにかく電話が無いと始まらないのである。


 史実1930年の全国の電話契約数は70万件であり、そのうち東京が10万件を占めていた。当時の日本の人口を6440万人、東京の人口を540万人で計算すると、全国の電話普及率は1%ちょい、東京は2%弱となる。


 固定電話の普及を妨げているのは、高額な電話加入権であった。

 平成会は、内閣調査部を通じて段階的に加入権料を引き下げるように逓信省に働きかけていたが、それでも普及率は10%を超えていなかったのである。


 次善の策として、平成会は公衆電話の大量設置に踏み切った。

 都市部には、何処かでみたようなガラス張りでモダンなデザインの電話ボックスが、そこかしこに建てられたのである。


 史実と異なるのは、電話番号が明記されていることであった。

 固定電話から電話ボックス、あるいは電話ボックスから電話ボックスに電話をかけることが可能なのである。


 電話ボックスの大量設置は、電話の利便性を周知するのに大いに役立った。

 しかし、平成会は肝心なことを見落としていた。電話を増やしても、回線容量を増やさないと意味が無いのである。


 劇的に増えた通信量に対して、回線は常に逼迫(ひっぱく)していた。

 当日はエスケーピングコリアン号の出発日であったために、興味本位その他諸々の問い合わせで回線がパンクしてしまったのである。


「そうだ、電報を使いましょう!」

「その手があったか!」


 電報を使うことを思い付いたのは、意外なことに平成会所属のスジ屋であった。

 平成の世では、電報は廃れていたが式典や結婚式などの祝電は例外であった。生前の彼はリア充だったのである。


「え、でも電報で長文を送ると金額がヤバいことになるんじゃ……」

「ことは急を要する。必要経費だから、ドーセット公に請求すれば問題無いっ!」


 電報にかかる金額は、距離ではなく文字数で設定されている。

 長文で何十通もの電報を送ると金額がヤバいことになるのであるが、そんなことを言っている場合では無かったのである。


「……え? これ全部電報で送るんですか?」

「一刻を争うんだ。なんなら特急料金を払うから、とにかく急いでくれ!」

「わ、分かりました」


 下関郵便局の電報受付は絶句していた。

 便箋にびっしりと書かれた文字と数字は、電報の域を超えていたのである。


 電報は午前中に配達されて閉塞は解除された。

 結果として、2時間あまりの大遅延が発生したのであるが、鉄道各社のスジ屋の奮闘によってその日のうちに解消されたのである。


『電報代はともかくとして、遅延損害金ってなんだ……って、本当の理由がバレてるー!?』


 後日、大使館に送られてきた請求書にテッドは絶叫することになる。

 どう考えても自業自得なため、泣く泣く支払ったのであった。







「あ、お姉さんも撮影に来たんですか? ここは良い場所なんですよ!」

「凄い! グラフレックスの本物を始めて見た!」

「日本語がお上手ですね。何処からいらしたのですか?」

「え、えぇと……」


 山陽本線小郡(おごおり)駅近郊。

 エスケーピングコリアン号を撮影するべくやって来たアグネス・スメドレーであったが、既に大勢の先客がいた。


 スメドレーが外国人なためか、最初は遠慮がちで距離を置かれていた。

 しかし、日本語が話せると分かると寄ってたかって質問攻めにしてきたのである。


(どうしてこうなったの……)


 内心で頭を抱えるスメドレー。

 彼女としては、撮影したらさっさと撤退するつもりだったのである。このままだと、撮影が終わるまで延々と話し続けるハメになるであろう。


 彼らに悪意は無いのであるが、付き合わされる側としては迷惑この上ない。

 うっかり機密を漏らしてしまうリスクもある。では、どうするか。


「……ところで、皆さん素敵なカメラをお持ちね?」


 全員が同じカメラを持っていることに気付いて話題を振るスメドレー。

 こちらから話題を振って、そちらに意識を集中させてしまえば情報漏洩のリスクは低減出来るのである。


「これですか? 『()れルンです』って名前のカメラで最近の流行なんですよ!」


 案の定と言うべきか、若者の一人が嬉々として反応する。

 それを見た周囲の人間もカメラの話題に加わり始める。


「でも、これって正確にはカメラじゃないらしいぞ」

「あぁ、なんかカメラレンズ付きフィルムとか言ってたなぁ」

「え? 使い捨てカメラじゃないのか?」

「どっちでも良いじゃん。貧乏人な俺たちが写真を撮れるってのが重要なんだよ!」


 彼らが手にしているのは、全て同じタイプのカメラであった。

 ぱっと見では、木箱にレンズを付けただけな簡素なシロモノである。


 『撮れルンです』は、史実で言うところの使い捨てカメラである。

 当然、こんなものを作るのは転生者以外にあり得ない。


 カメラの構造は史実のコニカ製『チェリー手提暗函』を参考にしていた。

 名刺判(5.4cm×8.3cm)の乾板5枚をあらかじめカメラに詰めて順次撮影していく簡易マガジン式カメラである。


 あくまでも構造を参考にしただけであり、コスト低減のために徹底的に簡素化されていた。コスト高を嫌って外箱の塗装はされていないどころか、白木のままである。保持の仕方が悪いと、ささくれた表面を触って怪我することなど日常茶飯事であった。


「ほら、これ。良く撮れてるだろう?」

「わ、凄い! でもわたしのも負けてないよっ!」

「なんの。(わし)のぷりてぃな尊顔を見よっ!」


 いつの間にかに、話題はカメラ本体から写真に移行していた。

 各人が、自分の写真を自慢し合う。


 『撮れルンです』は社会現象を巻き起こした。

 当時のカメラは、サラリーマンの月収の数倍はする超高級品であり、写真撮影は写真屋に頼むことが常識であった。庶民の手に届く値段で、自分が好きな対象を好きな時に撮影出来ることは衝撃的なことだったのである。


 このカメラは、設計段階では本体にゼンマイ式セルフタイマーを組み込み、オプションに自撮り棒が設定されていた。しかし、信頼性とコスト高の問題を解決出来ずにボツとなった。では、どのようにして自撮りするのか?


 答えは簡単。

 友人知人に撮影してもらうのである。


 クロスコープ式のシャッターは操作が独特であったが、慣れれば難しい操作では無かった。場合によっては、道行く人々に頼んで撮影してもらうこともあったという。


 専用の工具が必要であるが、『撮れるんデス』は再利用が可能な構造になっていた。意外なようであるが、史実の使い捨てカメラは直接の再利用を前提にしていない。メーカー側はリサイクルを強調していたが、部品をそのまま使うのではなく溶かして再利用していたのである。


 撮れルンです(カメラ本体)を格安で販売しても、現像の際に必ず戻ってくる。

 フィルムを詰め替えれば、本体の製造コストはそのまま丸儲けである。


 ちなみに、外箱が白木なのは名前記入対策でもあった。

 カメラ本体に名前を書き込んで持ち込むユーザーがいるので、再利用の際に表面を(かんな)で削り取るのである。


 転生者本人が経営する写真屋と、契約した写真屋のみが『撮れるんデス』を取り扱った。契約した写真屋からはマージンがもらえるので、莫大な利益となる。このままいけば、野生の転生者は大富豪になっていたであろう。


 しかし、ここに落とし穴があった。

 生産が追いつかないほど人気が出たのであるが、それを見た同業他社が真似し始めたのである。最終的に粗製乱造の風評被害を受けて、この世界初となった使い捨てカメラは大量のデッドストックを抱えて討ち死にすることになるのである。


「……それにしても、来ないわね。とっくに時間だというのに」


 気が付けば、30分ほど経っていた。

 にもかかわらず、エスケーピングコリアン号の影も姿も見えない状況に、スメドレーは眉をひそめる。


「あ、お姉さんも例の列車を狙っていたのですか? なんか今日は来ないらしいですよ」

「そうそう。さっき、駅員が言ってたな」

「なんでだろうねぇ?」


 彼らにとって、エスケーピングコリアン号は珍しい被写体ではあったが、それ以上では無い。皆で和気あいあいと語らうも良し、写真を自慢し合うも良し、お互いに自撮りするも良しなのである。


「それを先に言いなさいよぉぉぉぉぉぉっ!?」


 延々と会話に付き合った苦労はなんだったのか。

 思わず絶叫するスメドレーであった。







「はい、松田屋で御座います……えっ!?」


 唐突にかかってきた電話に女将は驚愕する。

 その内容は、とんでもない凶報であった。


「はい……はい……。いえいえ、それでは失礼致します」


 動揺した姿を仲居たちに見せるわけにはいかない。

 女将は鉄の精神力で平静を装いつつ、足早に番頭の居る部屋へ向かう。


「今日の貸し切りのお客さんが来れなくなったですと!?」

「しっ! 声が大きいですよ番頭さん! 皆に聞かれたらどうすんですか!?」


 山口線湯田駅近くに立地する松田屋。

 史実21世紀では、100年以上の歴史を誇る由緒ある旅館である。


 ウォッチガードセキュリティ御一行は、夕方にチェックインする予定であった。

 しかし、先ほどの電話で無情にもキャンセルを告げられたのである。ただのキャンセルではなく、後日改めて予約すると言ってくれたのが、せめてもの救いであった。


「す、すまない。しかしだな、300人の完全貸し切りなんだぞ? 相手が相手だけに違約金を請求しづらいし……」

「請求すれば良いじゃないですか?」

「外国の企業なんだぞ? どうやって請求すれば良いのか分からないじゃないか」

「食材やお酒はもう仕入れているんです。とりっぱぐれたら、うちは潰れますよ!?」


 一般宿泊ならばともかく、貸し切りを当日キャンセルしようものなら100%キャンセル料を取られたって文句は言えない。しかし、番頭は及び腰であった。


「会社に請求する必要は無いんです。わたしに良い考えがあります」

「そ、そうなのかね?」


 対する女将は強気であった。

 彼女は英会話は出来ないし、イギリスの商習慣も知らなかった。それでもなお、当てがあったのである。


「英国大使館に請求書を送れば一発ですよ」

「なっ、本当にそんなことをして大丈夫なのかね!?」

「大丈夫です。テッドさんは日本語ペラペラですし、とてもお優しい方なので上手く取り計らってくれますよ!」


 自信満々に言い切る女将。

 その自身の根拠は不明であるが、ここまで断言されると考え直さざるを得なかった。


「そういうことなら女将さんに任せよう。うまくやってくださいよ?」

「任せてください!」


 鼻歌交じりで去っていく女将の姿を見て不安になったが、他に有効な手立ては無かった。番頭は頭を切り替えて、残った問題を片づけることにしたのである。


「……と、いうわけで本日予定していたお客様は来れなくなりました」

「「「ええええええええええ!?」」」


 唐突に集められた板前や仲居は何事かと訝しんでいたが、番頭の状況説明を聞くと絶叫した。この日のために、さんざんに準備をしてきたのである。


「これだけの食材を捨てろって言うんですかい!?」

「上客が来ると聞いたから、粗相(そそう)のないように服装に気合入れたんですよ!?」

「いや、本当に済まない。とにかくそういうことだから……」


 自身が悪いわけでは無いのに平謝りする番頭。

 そういう態度を取らざるを得ないほど、皆の怒りは深かったのである。


「……そうだ、どうせ捨てるしかないだから、皆で食べませんか?」


 ギスギスした空気が一変したのは、とある仲居の言葉であった。

 彼女の意見は、もろ手を挙げて歓迎されたのである。


(もう、どうにでもなれ……)


 この時点で、番頭は事態の収拾をあきらめていた。

 自分一人が反対したところで、どうしようも無かったのである。


「完全貸し切りで客は来ないんだから、近所から人を呼んだらどうだ? うちらだけじゃ食べきれねぇよ」

「いいねぇ! さっそく呼んでくらぁっ!」


 近隣住民を巻き込んだどんちゃん騒ぎは、その日の夜遅くまで続いた。

 手紙を出して戻ってきた女将はもちろんのこと、開き直った番頭も率先して参加したのであった。


 後日、当日キャンセルの請求書が英国大使館に届いて、テッドは悶絶することになる。しかし、こんなのは序の口に過ぎなかった。


 ウォッチガードセキュリティのゆかいな仲間たちがやらかす度に、山のような請求書が届けられて彼の胃壁はゴリゴリと削られていくのである。







「おい、もう少し速度を落としてくれ。揺れて電文が打ちづらい」

「渋滞でも無いのに速度を落とすと目立ちますよ。いっそ、路駐しましょうか?」

「いや、それは悪手だろう。官憲に出くわしたら面倒なことになる」

「分かりました。なるべく丁寧に運転しますから、厄介ごとは早めにお願いします」


 走行中のタクシーの車内に、トンツー音が響き渡る。

 大阪朝日新聞の記者にして、コミンテルンの一員である尾崎秀実(おざき ほつみ)電鍵(でんけん)を叩くのに忙しかった。


 暗号電文は暗号表(ブック)で変換する手間があるので送信に時間がかかる。

 しかし、平文で打電して傍受(ぼうじゅ)されるリスクを考えるとやむを得ない措置であった。


 テッド・ハーグリーヴスが、ウォッチガードセキュリティと行動を共にしていることを知ったコミンテルンは、彼の暗殺計画を立案していた。


 じつは、テッドの暗殺はかねてから試みられていた。

 その当時、満州で好き勝手していた日本の動きを封じるためである。


 日本が大陸で勢力を拡大していけたのは、日英同盟のおかげと言っても過言では無い。史実とは異なり、この世界の日英同盟は対等な立場による相互防衛条約であった。


 要するに、日本に敵対すれば世界最強の大英帝国がしゃしゃり出てくるわけである。そのことを理解していたからこそ、ソ連は日本に対して正面から敵対することを避けて日英離間に腐心していた。テッドの暗殺はその一環であった。


 英国のロイヤルファミリーと極めて親しい関係にあり、日本国内における人気も抜群なテッド・ハーグリーヴスを暗殺することが出来れば、日英関係に亀裂を入れることが出来るというわけである。


 過去の暗殺計画は、刺客を大使館の職員として潜入させる形で実施された。

 しかし、十数回にも及ぶ暗殺計画は全て失敗。ターゲットの姿を捉えることすら出来なかった。


 そんなわけであるから、ソ連政府とコミンテルン本部は千載一遇の機会とばかりにテッドの命を狙っていた。警戒厳重な英国大使館よりは暗殺しやすいと判断していたのである。


 暗殺を確実なものにするためには、列車の編成やターゲットの乗車位置、正確な時刻表が欠かせない。それらの情報は、アグネス・スメドレーからもたらされるはずであったが……。


『特別列車は予定時刻を過ぎても通過せず。運航計画が急遽変更された模様』


 事前に公開されていた情報によれば、下関駅を出発したエスケーピングコリアン号は山陽本線を東進して小郡駅(史実の新山口駅)から山口線に乗り入れして北上するはずであった。しかし、現地で待機していたスメドレーがいくら待っても特別列車は来なかったのである。


『同志スメドレーが、関係者に取材するも原因は不明。暗殺計画が漏洩した可能性も考えられる』


 公式発表では車両故障による遅延であり、国内のメディアもそのように報道した。スメドレーは取材を継続したのであるが、車両故障が原因ではないことが判明しただけであった。


『英国側が何らかの対抗手段を打ってくる可能性も否定できず。暗殺計画の中止を進言する』


 尾崎自身は、暗殺計画には否定的な立場であった。

 暗殺が成功したとしても日英の離間が成功するか怪しいものであったし、余計な混乱を引き起こしかねないと考えていたのである。


『万難を排して特別列車の位置を特定せよ』


 しかし、数日後に届いた返信は彼の思いを裏切るものであった。

 コミンテルン本部は、暗殺計画の続行を指示してきたのである。


 現在のソ連は、ドイツ帝国と『オーストリア・ハンガリー帝国及び南欧諸国連邦』(以下、二重帝国諸国連邦)から圧力をかけられて、その対応に苦慮していた。西ヨーロッパで国境を接する両国の軍拡が著しく、対抗措置として戦力を集中せざるを得ない状況であった。


 ちなみに、二重帝国諸国連邦は、オーストリア・ハンガリー帝国(二重帝国)が戦後になって再編成された国家である。この世界の二重帝国も史実同様に分離独立祭りに巻き込まれるはずであったが、時の皇帝であるカール1世の大胆な決断によって回避することに成功していた。


 カール1世は帝国内の諸民族の完全自治を認め、国境は維持しつつも移動の自由も認めた。完全独立を目論む勢力からすれば満額回答では無かったものの、眼前のソ連の脅威を鑑みて妥協せざるを得なかったのである。


 もう一つの理由として、英国によるポンド借款があった。

 恐ろしく低利で、条件さえ満たせば返済の必要が無いという事実上の無償援助だったのであるが、英国紳士はそこまでお人よしでは無かった。厳しい罰則事項も設定されていたのである。


 この借款は、戦後復興と対ソ共闘のための軍事力整備に目的が限定されていた。

 勢いに任せて独立しようものなら、対ソ共闘する意思無しと判断されてレモンのタネが泣くまで搾り取られる可能性がある。罰則事項のあまりのえげつなさに、独立を目論む勢力はドン引きしたと言う。


 現状では、両国との国境沿いにシベリア方面から抽出した戦力まで配備して軍事バランスを拮抗させている状態であった。スターリンを筆頭とするソ連上層部は、極東方面で武力衝突が起こった場合に迅速な対応が出来ないことを懸念しており、時間稼ぎをする必要性を痛感していた。


 時間稼ぎしても、状況が好転するとは限らない。

 しかし、パビェーダ計画が実現出来るまで時間が稼げれば問題無い。


 パビェーダ計画は、ソ連版〇作戦とでも言うべき計画である。

 大量生産基地外(ヘンリー・フォード)の主導で進められており、実現すれば質を維持したまま数の暴力が可能になる。将来的に東西からの挟撃を受ける可能性を考慮すると、是が非でも実現する必要があった。


 テッドの暗殺が成功すれば、日本と英国は混乱して動けなくなる。

 中華民国と満州国は弱体で現状でソ連と敵対することはあり得ないわけで、貴重な時間を稼ぐことが出来るであろう。


 赤軍を動かすことなく実行可能なうえに、失敗しても現場の人間をしっぽ切りすれば済む。今のソ連にとって、テッドの暗殺は魅力的な作戦だったのである。







『第25班、反応無し』

『第5班、未だ反応捉えられず』

『第66班、情報提供された場所に急行するも、それらしいものは発見出来ず』


 大阪府警公安課の特別捜査本部に続々と寄せられる捜査状況。

 とはいえ、その内容は芳しいものでは無かった。


 ちなみに、この時代の史実における大阪の警察組織は大阪府警察部であるが、平成会による警察組織の刷新によって大阪府警として再編成されていた。


 本来であれば、公安も特別高等警察(特高)になるはずであったが、こちらも史実の悪名を嫌った平成会が介入して名称を変更していたのである。


 現在の公安課の任務は、大阪市内で発信されている怪電波の発信源特定である。

 しかし、この手の捜査は大阪府警は未経験だったために内務省に応援を要請していた。


 雲の上でどのような駆け引きがあったのかは不明であるが、生贄――もとい、派遣されてきたのは平成会のモブであった。生前の彼は、アマチュア無線方向探知(ARDF)競技参加者で、この手の経験が豊富ということで抜擢されたのである。


 ARDFは、屋外のフィールド内に設置された無線送信機(TX)を、受信機を用い探し出す競技である。今回の捜査にうってつけであり、自分の得意分野ということで自信満々なモブであったが……。


「……まだ電波の発信源は特定出来ないのかね?」

「もっと人手と予算をください。現状ではこれで手一杯ですよ!?」

「予算は申請しているが時間がかかる。それに、これは君のアイデアだろう?」

「それはまぁ、そうですが……」


 その自信は早々に打ち砕かれた。

 とはいっても、彼のせいではない。あまりにも前提条件が悪すぎたのである。


 史実の日本アマチュア無線連盟(JARL)の競技ルールでは、競技者の健康を害する恐れがなく、探知に著しく影響を及ぼす物がない場所と定められている。当然ながら、徒歩が前提である。


「それでも、大阪市内全域を探査するのに捜査員が100人足らずって少なすぎますよ!?」


 そもそも、投入する捜査員が少なすぎるのが問題であった。

 大阪市内全域をカバーするのであれば、桁違いのマンパワーが必要なのである。


「これでも公安課で出せる限りの人員を出しているのだ。申し訳ないが、現状でなんとかしてくれたまえ」

「あああああああ……」


 思わず頭を抱えてしまう平成会のモブ。

 前述しているが、ARDFのフィールドの範囲は徒歩が前提である。当然ながら、競技に必要な道具も携帯出来るものに限られる。


 これらの道具は、史実21世紀ならば自作も含めて安価に調達出来るものである。しかし、この時代の受信機は重く嵩張り、かつ非常に高価なものであった。


 重く嵩張るために自転車に積載する必要があり、自転車とセットで調達すると費用が跳ね上がって数が揃えられない。装備の数が捜査員の上限なのである。


 編成された部隊は銀輪部隊と称された。

 重装備で運転しづらい自転車で、大阪市中を走り回る隊員の苦労は大変なものだったという。


『第37班、反応捉えるも失探す』


 とんでもないブラック部署に来てしまったとぼやくモブであったが、飛び込んできた捜査報告に顔をほころばせる。


「……まぁ、それでも時間をかければ見つかるはずですよ」

「その根拠は何処にあるのかね?」


 多少、詰問めいた口調になる公安課の課長。

 得体の知れない人間に好き勝手させたあげく、予算を浪費することになりそうなのである。彼の態度も致し方なしであろう。


「さっき37班からの報告で、探知したけどすぐに失探したと報告があったじゃないですか。おそらく発信源は移動しています」

「それは……自動車に無線機を載せて、移動しながら発信しているということかね?」

「自転車に載せている可能性もありますが、それだと目立ち過ぎます。間違いなく自動車だと思います」

「なんてことだ……」


 呻く公安課長。

 大阪市内に走る多くの自動車の中から発信源を特定することの困難さを想像してしまったのであろう。


「いや、場所を転々とされるよりも、自動車のほうが絞りやすいです」


 モブは逆に楽観していた。


「自動車なら道路しか走りません。道路に捜査員を複数配置していれば、必ず電波を捉えることが出来るはずです」

「しかし、電波を捉えても発信源である自動車を特定出来なければ意味は無い。そこのところはどうするのかね?」

「電波を検知したら、後ろで検問をすれば良いかと」

「なるほど。自転車で大阪中を走り回るよりも、よほど建設的だな」

「とはいっても、大阪市内の全ての道路を一度にカバー出来ませんので、すり抜けられるリスクはありますけどね」


 モブの進言によって、公安課は捜査方針を変更。

 主要な幹線道路にネズミ捕りを仕掛けることになる。


 しかし、その成果をモブは見ることは無かった。

 これ以上の横紙破りを嫌った公安側と本人の希望が一致した結果、早々にモブは帰還してしまったのである。


『装備を持った警官が道路に並んでいたら、アホでも何かあると察しそうなものだけどなぁ……』


 後に事の顛末を知ったモブが、このような言葉を遺している時点で結果はお察しであろう。事態を重く見た平成会側は、主要な都市部に電波監視システムの整備を急ぐことになるのである。







(まさか、深夜の出発になるとはなぁ……)


 ため息をつく金髪碧眼の男。

 言うまでも無く、テッド・ハーグリーヴスである。


 終電が過ぎて静寂に包まれているはずのホームが、この日に限って賑やかである。テッドを横目に、手荷物を持ったウォッチガードセキュリティの隊員たちが続々と乗車していく。


『今回は出発直前だったから良かったものの、今後もこのようなことが頻発するようだとダイヤ修正どころじゃないぞ……』

『いざというときに電話がつながらないことも分かったし、逝っとけダイヤは無理なのでは?』

『最悪は電報でなんとかなるが、受付にめっちゃ睨まれたしなぁ……』


 今回の事態の収拾かかった手間と労力は、関係者を及び腰にするには十分であった。それでも、エスケーピングコリアン号の出発は、日程をずらすだけでダイヤそのものは変更せずに対応する予定だったのである。テッドに同行していた平成トラベルのツアコンが、真相をチクり――もとい、報告するまでは。


『というか、機関車故障が原因じゃなかったのかよ!?』

『二日酔いで全滅とかロシア軍かよ……』

『ほぼ全裸な褐色爆乳な美人な嫁さんにハグされてた? パルパルパルパル……!』


 機関車故障ならば運が悪かったで済まされるだろうが、二日酔いで出発出来なかったのであれば完全に自業自得である。かかった諸費用は、容赦なく英国大使館に請求されることになったのである。


『今後もこのようなことが頻発する可能性がある。だとすれば、ダイヤ調整の意味が無いぞ』

『今回は出発前だったから良かったものの、日中に事故が発生したらスジ屋が過労死しかねませんよ?』

『もういっそ、深夜帯に移動してもらいませんか? 日中は駅構内の引き込み線にでも待機してもらえばよいでしょう』

『都市部に乗り入れる際は、その都度検討すれば良いのでは?』

『幸いにして、あの列車は寝台列車だからな。それで問題無いだろう』


 そんなわけで、エスケーピングコリアン号は列車が動かない深夜帯に移動することになった。デスマーチから解放されたスジ屋たち歓喜の瞬間である。代わりに、深夜作業が確定となった鉄道関係者からは怨嗟の声が漏れることになったが……。


「エンジンの調子はどうだ?」

「ばっちりでさぁ! このまま最後までいけるでしょうぜ」


 列車の先頭では、機関士たちが最終チェックを行っていた。

 チェックリストを片手に、各項目を確認していく。


 エスケーピングコリアン号を牽引する機関車は、この時代ではありえない特急牽引型ディーゼル機関車であった。もちろん、戦前の大規模召喚(テッドによるやらかし)と円卓技術陣の仕業である。


『デルティックじゃねーかっ!?』


 ――とは、現物を見た平成会の鉄オタの第一声である。

 史実では、性能や実績よりも英国面的な意味で有名な機関車であった。


 この世界のデルティックは、イスラエル海軍の魚雷艇への搭載から始まり、信頼性と出力を向上させていった。鉄道用のデルティックは長時間の連続運転が前提になっているために、信頼性を確保するためにデチューンされていたが、それでもエンジン単体で2000馬力を発揮することが可能であった。


 イギリス鉄道省が開発した『クラス2型ディーゼル機関車』(史実国鉄55形相当)は、この強力無比なデルティックを2基搭載することで4000馬力を発揮可能であった。史実日本の蒸気機関車の3重連か、それ以上の出力を達成していたのである。


「何をしているの? 貴方が乗るのはこっちでしょう?」

「マルヴィナ、気配を絶って不意に出てくるの止めてくれない? 心臓に悪いんだけど……」


 物思いにふけっている最中に、いきなり背後から声をかけてくるマルヴィナ。

 思わず抗議するテッドであるが、彼女はそんなものは意に介さない。


「あっ、ちょっと……!?」


 抵抗する間もなく、軽々とテッドを肩に担ぐ。

 目指すは最後尾の特別車両である。


「次の目的地には早朝の到着なのでしょう? それまで楽しめるわね」

「えぇ!? いや、出発前にもう少し雰囲気に浸りたいというか……!?」


 搾り取られる未来が確定してしまい、思わずジタバタするテッド。

 当然ながら無意味な抵抗であった。


「へ、ヘルプミーっ!」


 ホームに響き渡るテッドの悲鳴はガン無視された。

 誰だってマルヴィナ(大魔神)は怖いのである。


「……よし。全員乗ったな?」

「駅から出発許可出ました!」

「よし、発車するぞ」


 デルティックエンジン2基合計で72個のピストンと、それを受け止める6本のクランクシャフト、それらを統合する120個の歯車が唸りを上げる。全長320mに達する長大編成にもかかわらず、軽々とエスケーピングコリアン号は動き出す。


 強力なライトが闇を切り裂き、エスケーピングコリアン号は山陽本線を疾走する。深夜でダイヤを無視出来るので、クラス2型の俊足を遺憾なく発揮することが出来たのである。


 クラス2型の運用最高速度は170キロに設定されていた。

 線路の状態と夜間運転ということで速度を落としてはいたが、それでも史実の特急『燕』よりも早く山陽本線を駆け抜けたのである。


 あまりの速さに、乗り入れ作業のために小郡駅で待機していた鉄道作業員は深夜にたたき起こされ、受け入れる湯田駅の鉄道関係者もてんやわんやであった。しかし、遅延するよりは早着するほうが良いに決まっている。いわゆる、コラテラル・ダメージというやつである。


「……あら、もう着いたの?」

「た、助かった……!」

「こんな時間に降りてもしょうがないじゃない。あと1戦くらいはいけるわね」

「の、Nooooooooooo!?」


 エスケーピングコリアン号が寝台列車であることも好都合であった。

 多少、早着しても車内で待機していれば良いのであるから。


 エスケーピングコリアン号が夜間運転することになって、困惑したのがコミンテルンの関係者であった。列車の位置が分からないと、テッドの暗殺どころでは無い。本部から指令を受けた尾崎とスメドレーは、情報収集のために全国を飛び回ることになるのである。






以下、今回登場させた兵器のスペックです。


イギリス鉄道省型ディーゼル機関車 クラス2型


全長:21.18m  

全幅:2.68m  

全高:3.94m  

重量:101t  

速度:170km/h 

軸配置:Co-Co(補助輪無し3軸×2)

動力伝達方式:電気式

機関:ネイピア デルティック2基

出力:4000馬力

乗員:2名(交代含む)


テッドが召喚した国鉄55形ディーゼル機関車を、円卓の技術陣が改良したもの。

史実ではイギリス国鉄によって運用されたが、この世界では鉄道省が開発と生産を行い、実際の運用は各鉄道会社に任されている。そのため、同型であっても鉄道会社によって名称は異なっている。


搭載されているデルティックは、耐久時間が1万時間に延長されて信頼性は高かった。構造が複雑でメンテナンスが面倒な問題は、エンジン丸ごと交換か、アッセンブリ単位で交換することで解決している。


クラス2型は、非電化区間の特急牽引機用としてHSTが開発されるまで大いに活躍した。


なお、現在開発中のHSTには、デルティックの発展型であるターボ・コンパウンド・デルティックが搭載される予定である。


ちなみに、エンジンを1基だけにして小型化されたモデルが最初に造られており、『ベビー・デルティック』と呼ばれてローカル線に投入されている。



※作者の個人的意見

エンジンの名前が、そのまま名称になってしまった英国面の権化たる存在。

よくもまぁ、こんな変態エンジンを列車に無理やり押し込んで運用したものだと呆れてしまいます(誉め言葉


この世界のデルティックは、長年の運用で信頼性はばっちりなのであらゆる面で使い倒す予定です。


時代が進めば、無茶過給で普通の構造でも馬力が出せるようになってしまいますので、そうなったら普通のディーゼルがメインになってしまいますが、特殊用途で長らく生き延びることでしょう。

国内初日で二日酔いで全滅。

ロシア軍か(ry


>リア充死すべし慈悲は無い。

人生一度で良いから、『リア充にはリア充の苦労があるんだよ!』と、言ってみたいです。


>リアル桃鉄

ドイツとかイタリアとかだと新在直通といって、新幹線に相当する高規格路線と在来線が共通で走る区間があります。路線が標準軌で統一されているからこそ出来る芸当ではありますが、高速化を阻む原因になったりしています。


>公衆電話

平成の世で、町中のそこら中にあったデザインですね。

この世界だと、ボックス内にでっかく番号が明記されているので、一般電話から公衆電話にかけることが可能になっています。


>電報

結婚式のお約束。

る〇剣でもネタになっていましたが、距離ではなく文字数で課金するので長文をしたためると料金がとんでもないことに。今回のケースは、複数の駅に長文の電報を送ったために、とんでもない金額が発生しています。


>撮れるんデス

転生者なら考え付きそうな使い捨てカメラネタです。

ちなみに、今回の失敗で多額の借金を背負うことになった野生の転生者ですが、借金の肩代わりと引き換えに平成会へドナドナされました。南無ぅ( ̄人 ̄)ちーん


>松田屋

史実では松田屋ホテルとして現在も営業中です。


>女将

じつはテッド君と面識があります。

詳細は次回にっ!


>当日キャンセルの請求書

300人以上の完全貸し切りで当日キャンセル。

全額請求されたって、文句は言えませんよね。


>余計な私信

女将からの熱い、熱い……(以下略


>パビェーダ計画

アメリカに嫌気が差してソ連へ渡ったヘンリー・フォードが進めている計画。

ソ連の全ての工場にフォード・システムの導入と、工員の教育も行うという大規模プロジェクト。実現すれば史実の米帝さまの真似事が可能に。


>ARDF

日本語に訳すとアマチュア無線方向探知。

受信機片手に、電波発信源を発見する速さを競う競技。


>電波監視システム

史実日本の総務省が全国の主要都市に整備しているデューラスシステムが元ネタです。これが機能するようになれば、ゾルゲ事件なんぞ簡単に解決ですね!(フラグ


>深夜帯に移動

結局のところ、ここらへんが落としどころでしょう。

日中にリアル桃鉄とかされたら、冗談抜きでスジ屋たちが死んでしまいます(汗


>『デルティックじゃねーかっ!?』

デルティックを御存じない?

それはいけませんね……


迷列車で行こう 海外編 Episode 20 前編 ~変態!変態!変態!~

https://www.nicovideo.jp/watch/sm14434259


迷列車で行こう 海外編 Episode 20 後編 ~変態という名の紳士~

https://www.nicovideo.jp/watch/sm14589470


この二つの動画を見るのです。早急にっ!


>史実日本の蒸気機関車の3重連か、それ以上の出力

当時の最大馬力であった3シリンダー機のC53の出力が1250馬力なので、余裕で3倍を超えています。


>クラス2型の運用最高速度は170キロ

オリジナルである55型の運用最高速度は160キロですが、出力向上とギア比の調整で170キロ運転が可能になっています。この世界のディーゼル機関車としては、間違いなく世界最速です。

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― 新着の感想 ―
[一言] ばけ、、、もの?(筋肉量が) 面白い作品だねー 天皇陛下万歳
[一言] デルティック……かっこいいなぁ。
[気になる点] マルヴィナさん、ちとガタイ良過ぎィ。 [一言] 平成会がデルティックを知ってしまった。 ライセンス生産すんのかね。ベビーでも十分だと思うが。
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