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第51話 関東大震災


「今年の9月に起きるはずの関東大震災への復興支援をしたいですと?」

「ドーセット公。貴公が日本に執着するのは分からんでもないが、いささか早計では無いかね?」

「災害が発生したら復興支援は必要でしょうが、実際に起きないことには支援の規模も決められないでしょうに」


 1923年2月。

 返礼使節団が帰国の途に就くと同時に、テッドは円卓を緊急招集して来るべき関東大震災への復興支援を訴えた。しかし、円卓の反応は鈍いものであった。


(あぁもう、やりづらいったらありゃしない。あの二人がいればこんなことにはならないのに……)


 内心でぼやくテッド。

 いつもなら同席しているはずのロイド・ジョージとチャーチルは、公務で海外に出ているため不参加であった。最大の理解者が不在の状態で孤立無援の状態だったのである。


 円卓の反応が鈍い理由は、直接の関わりの無い事案だからでもある。

 史実知識として関東大震災のことは知ってはいたものの、所詮は遠い他国のことであった。


「……史実の関東大震災では、それこそ世界中から支援が殺到しました。これに乗り遅れるのは大英帝国としてはヤバいのでは?」


 それ故に、テッドは戦法を変えることにした。

 実益重視な円卓を動かすために、別の餌を用意したのである。


「むむっ、確かに世界に冠たる大英帝国としては放っておけないな」

「最悪、同盟国を見捨てたと非難されかねませんからな」

「むしろ、真っ先に援助を表明する必要があるか……」


 先ほどとは打って変わった好感触。

 実益と同じくらいに大英帝国の名誉を重視するのが円卓なのである。


(興味を持ってくれたのは良いけど、もう一押しが必要か)


 こちら側の筋書きに乗ってくれたと安堵するテッド。

 彼は円卓が動かざるを得ない切り札を用意していたのである。


「……今回の緊急支援の鍵となるのはカナダとオーストラリアです」

「地理的には適当であるが、別の理由もあるのかね?」

「自分で言うのも何ですが、日本人は義理堅い民族です。未曾有の震災に受けた援助を忘れないでしょう」

「「「……」」」

「僕が生きていた時代に、東日本大震災で日本は甚大な被害を被りました。そんな中、台湾が莫大な義援金を送ってくれました」

「「「……」」」

「それから10年後。中国が台湾のパイナップルを全面禁輸しました。日本では台湾を救えとばかりに運動が盛り上がって過去最高の売り上げを記録しました」

「……それと同様のことが起きると?」

「そうです。日本の対オーストラリア、カナダ感情はうなぎ登りとなり、以後の輸出にも好影響を与えるでしょう」

「なるほど、悪くないな……」


 この時点で、円卓の大多数が日本への緊急支援に傾いていた。

 テッドは、とどめを刺すべくさらに爆弾を投下する。


「それに、遠い親戚より近くの他人と言います。日本との経済的な結びつきが強くなれば独立の一助となるのでは?」


 円卓の本音は、管理維持に手間がかかる植民地や自治領を手放すことであった。

 それ故に、テッドの提案に賛成こそすれ反対する理由は無くなったのであるが、彼にも誤算はあった。


「円卓はドーセット公の提案を全面的に支持する」

「ありがとうございます!」

「無論、君が全責任をもってやり遂げてくれたまえ」

「……えっ!?」


 言い出しっぺの法則で、今回の事案はテッドが責任者に任命された。

 こんなはずじゃなかったと、頭を抱える暇もなく奔走するハメになったのである。







「ぶはっ!? し、死ぬかと思った……」


 瓦礫を押しのけて開かれる地下室の扉。

 地上へ出た駐日大使チャールズ・エリオット見た光景は酷いものであった。


「これはまた酷いものですな……」


 呆然とつぶやくのは、書記官のジョージ・ベイリー・サンソムである。

 彼の目の前には、完全に倒壊した大使館があった。可能な限りの耐震補強を施したものの、関東大震災の猛威の前には無力であった。


 1923年9月1日11時58分32秒。

 奇しくも、史実と同じ時間に関東大震災は発生した。


 激しい揺れによって家屋は一瞬にして倒壊。

 生き延びた者は着の身着のままで逃げ出すしかなかったのである。


「閣下。避難民の受け入れと炊き出しのために敷地の開放をお願いしたいのですが?」

「許可する。可及的速やかに実行してくれたまえ」

「了解しました。職員は倉庫から物資を引っ張り出せ! 一刻の猶予を争うぞ。急げっ!」


 駐在武官のフランシス・ピゴット大佐は、状況を把握すると直ちに行動を開始していた。こういう時の軍人は非常に心強い存在である。彼の激に刺激されて、茫然自失だった職員も動き始める。


 史実と同様に昼食の用意をする時間帯だったために、かまどや七輪の火が火元となり大火災が発生した。しかし、平成会は事前に対策を進めており、土地区画整理事業と並行して帝都内のあちこちに公園を兼ねた避難所を整備していた。


 これらの避難所の周辺には、防風林として大量の樹木が植えられていた。

 史実で発生した火災旋風対策のためであるが、同時に火災で発生する大量の火の粉から避難民を守る効果もあった。結果として、史実よりも大幅に犠牲者を減らすことに成功したのである。


「……閣下。備蓄が心もとなくなってきました」

「だからといって、避難民を追い出すわけにもいくまい。供給を絞ってなるべく長くもたせてくれ」


 サンソムからの報告に渋い表情をするチャールズ。

 史実よりも多くの生存者がいるということは、それだけ多くの食料や医薬品が必要になるということでもあった。広大な敷地を要する英国大使館には、近隣住民が大勢避難してきており、テッドからの事前要請で大量に備蓄したはずの物資は急速に減少していたのである。


「朗報です。ドーセット公が来援しました! 現在、救援物資を陸揚げ中です」


 震災発生から5日後。

 イギリス中国艦隊所属の戦艦が東京港に入港。救援活動を開始していた。


「出迎えに行かねばなるまい。車は出せるかね?」

「すぐに手配します」


 震災による火災や、発生した大量の瓦礫によって港までの道のりは困難なものであった。しかし、装甲車のベースになれるだけの頑丈なシャシーと足回りを持つシルヴァーゴーストは、これを見事に走破した。チャールズとサンソムがテッドと対面したのは、それから2時間後のことであった。







「チャールズ卿にサンソム卿、ご無事でなによりでした」

「ありがとうドーセット公。東洋の(ことわざ)でいう地獄に仏とはこのことだな」

「事前知識があったとはいえ、まさかあれほどのものとは思いませんでした。事前に地下室に避難したので事なきを得ましたが……」


 戦艦『ウォースパイト』の貴賓室では、テッドと大使館の面々(チャールズとサンソム)が再会を果たしていた。とはいえ、現在は緊急事態であるが故に旧交を温めている場合では無かった。入港した3隻の戦艦『長門』『ウォースパイト』『マレーヤ』からは救援物資が大急ぎで陸揚げされていたのである。


「早速ですが、情報が欲しい。現状はどうなっているのです?」

「電話が不通で情報収集は芳しくありません。電信はアンテナ塔の復旧に成功したので徐々に情報が入り始めていますが……」


 乏しい情報を総合すると史実よりも犠牲者は少ない分、生存者に必要な物資が足りていない実情が浮かび上がる。


「このような状況にも関わらず、暴動や略奪はほとんど起きていないようです。事前の訓練の賜物か、それとも国民性なのか。実に興味深い」

「元日本人の僕からすれば、これが平常ですよ。日本人は災害慣れしてますし」


 サンソムからすれば、現状は格好の研究対象でもある。

 世界線を違えても、彼は日本文化研究の第一人者であった。


「……話を戻そう。先日から陸軍が現地入りして救援活動にあたっているようだ」

「ただし、その活動範囲は震災被害の外延部に止まっており、帝都の中心部分にまでは手が届かないのが現状のようです」


 平成会の仕込みにより、震災直後から陸軍は動いていた。

 史実自衛隊の災害派遣の有効性を知るが故の判断であろう。


 しかし、災害特化の自衛隊とは違い、旧軍は攻撃一辺倒なところがあるためにその効率はお世辞にも良いとは言えなかった。人海戦術に頼らざるを得ないために、瓦礫の撤去に手間取っていたのである。


「帝都中心部の救援には、海上輸送しか無いようですね。元々、それが本命でしたけど……」


 ため息をつくテッド。

 想像以上の被害の大きさと、準備が無駄にならずに済んだことが合わさって複雑な心境であった。


「本命の救援船団は既に出航しています。早ければ2週間ほどで到着するでしょう」


 事前に準備していただけのことはあり、オーストラリアとカナダから救援船団が出航していた。しかし、オーストラリアからは2週間、カナダからはそれ以上の日数がかかるのである。


「現状では、中国戦隊に動いてもらってますが香港の備蓄にも限界があります。しかし、本命が来るまではもたせることは出来るでしょう」


 震災発生時、テッドは香港にいた。

 当初の計画では、オーストラリアからの救援船団の第1便に乗るつもりであった。しかし、時間がかかり過ぎるために急遽予定を変更したのである。


 テッドは、香港を拠点とする中国戦隊司令アーサー・スーロン少将を説得して中国戦隊を動かした。震災の報が来ると同時に、虎の子のQE(クイーン・エリザベス)型高速戦艦2隻に救援物資を満載して日本へ急行、現在に至るわけである。


 ちなみに、日本へ急行中に長門とニアミスしていたりするのであるが、緊急時ということでお互いに不問とされた。QE型をぶっちぎる超高速戦艦の姿は無かったことにされたのである。







『我らの同盟国が未曾有の大地震によって、危機に瀕している! それを放っておいて良いのか!?』

『思い出せよ戦友よっ! かつて我らと肩を並べて世界大戦を戦った日本人が、塗炭の苦しみを味わっている。それを放っておいて良いのか!?』

『否! 断じて否! 我ら忘恩の徒にあらず。今こそ世界に冠たる大英帝国の一員としての義務を果たすべきであるっ!』


 震災発生時、テッドの腹心?であるヒトラーはオーストラリアに居た。

 彼はテッドの依頼により、この最果ての地に赴いていたのである。


 ノリノリなチョビ髭――もとい、演説チートな彼のメッセージは、地元ラジオ局からオーストラリア全土に伝わった。そして、それが巻き起こした効果は劇的なものであった。


 ヒトラーの演説によって、オーストラリアでは日本を救えの大合唱となった。

 白人、アボリジニ問わずに被災者に対する募金活動が行われたほか、民間企業からも大量の救援物資が集まったのである。


 飛行機がさほど発達していないこの時代、輸送の主役は船である。

 第1次大戦中、英国はアメリカのリバティシップよろしく、エンパイアシップを大量に建造していた。テッドは、港で余っているエンパイアシップを買いたたいて、オーストラリアとカナダに配置していたのである。


「チキショーメっ!? 経費で豪サラを買い放題って聞いて引き受けたが、割に合ってないぞ!?」


 文句を言いつつも、書類に承認のサインをし続ける。

 ヒトラーの目下の仕事は、ラジオに出演して日本への支援を呼びかけることと、集まった支援物資を適切に分類整頓して送り出すことであった。


 細かい実務はハーグリーヴス財団の職員が行っているのであるが、承認や決済が必要な書類は膨大なものであり、慣れないデスクワークに悲鳴を上げていた。


「こうなったら、ダースとは言わずに100頭単位で買ってやる……!」


 呪詛の言葉を吐きながらも、己の欲望に忠実なヒトラーは必死に業務をこなしていった。血統付きの名馬に比べれば格段に安い豪州産のサラブレットでも100頭も買えば相当な金額となるのであるが、そんなことは彼の知ったことでは無かったのである。


 震災復興がひと段落してからはオージービーフと小麦が主力輸出商品となった。

 これには平成会の一部のメンバーの意向が強く反映されていた。吉〇家など邪道、ら〇ぷ亭こそ至高と信じる牛丼中毒者(ジャンキー)や、某県出身のうどん狂信者がソウルフードを全国普及させるために暗躍していたのである。







「今こそテッドさんの役に立つ時! 全力全開で支援するよっ!」


 震災発生時、テッドの親友?である恋の両生類こと、ルイス・マウントバッテン伯爵(予定)はカナダに居た。テッドからの達ての願いを受け、喜び勇んでカナダへ渡っていたのである。


 演説チートなヒトラーほどでは無いにしても、一般レベルからすれば十分に弁が立つ彼は、カナダ領内の世論を日本支援に傾けることを期待されていたのである。


「きゃー!? ルイス様よー!?」

「こっち見た!? こっちを見てくれたわっ!」

「何言ってるの!? 私を見たに決まってるじゃない!」


 親が大貴族で眉目秀麗(ハンサム)とくれば、女性にモテないわけもなく。

 彼の行く先々には、女性と黄色い声が氾濫していたのである。その分、男性陣を敵に回してはいたが。


(ふっふっふ。カナダからの大規模支援を成功させて、テッドさんからご褒美をもらうんだ……!)


 ヒトラーとは別の意味で欲望に忠実なマウントバッテンの尽力により、カナダ領内でも日本を救えの大合唱となった。オーストラリアと同じく救援物資は缶詰や衣料品であったが、それらは序盤のみであった。


 カナダからの主な救援物資は石油と自動車であった。

 この世界のカナダでは、史実知識を活かしてハイバーニア油田やテラ・ノヴァ油田の開発が行われており、既に有力な産油国となっていたのである。


 自動車は、カナディアン・オースチンが無償で提供した。

 この自動車メーカーはカナダ自治領最大の自動車メーカーなのであるが、その前身はアメリカン・オースチンである。


 アメリカン・オースチンは、その名の通り英国オースチンの現地法人である。

 本国の車種を現地でライセンス生産をしていたのであるが、経営が立ち行かなくなってカナダへ移転してきたのである。


 どことなく、貴族趣味的なオースチンをマフィアはお気に召さなかったのであろう。フォードが、マフィア向けの超高級リムジンやVIPカーを大量に受注して大いに利益をあげたのとは対照的であった。


 カナディアン・オースチンが提供した自動車はオースチン7であった。

 史実ではT型フォードほどではないにしろ、ライセンスも含めて大量に生産された自動車であり、その設計は極めて優れたものであった。


 オースチン7は、最終的に3000台近い数が提供されて帝都復興の原動力となった。フォードT型よりも小型であったが、その分狭い道に入ることが可能であったために、瓦礫の山と化した帝都を走るのに適していたのである。


 その優秀性に目を付けた日産は、年内にオースチンと技術提携を締結した。

 史実よりも30年以上早く実現した技術提携によって日産の技術は群を抜く存在となり、独自路線を取ったトヨタは苦戦することになる。







「……支援物資は順次到着するでしょうが、問題はそのあとです」

「どういうことかね?」


 支援物資の目途がついているというのに、憂鬱なテッドを見たチャールズは不思議そうな顔をする。


「おそらくは平成会が事前に対策していたのでしょうけど、港湾機能はほぼ無傷です。しかも、史実よりも大規模な港が整備されている……」

「そうであれば、船を大量に受け入れられるではないですか。何か問題でも?」


 サンソムもテッドの表情に気付いたのか、怪訝な表情となる。


「救援物資が山ほどあっても、それが適切に行き渡らないと意味が無いのですよ。史実でも野晒しにして腐らせた事例がありますし」


 災害が発生して問題となるのが救援物資の取り扱いである。

 地方自治体に支援物資が殺到して、それらを整理するのに職員はデスマーチ進行を強いられるのである。


 災害救助とは直接関係の無い整理整頓に貴重な人材を浪費した挙句、管理不徹底で廃棄せざるを得なくなる。その処分費用は自治体持ちであり、せっかくの善意が負担になってしまうのである。


「そういうわけですので、最優先で現場責任者、もしくは現場に命令を下せる人間に接触する必要があります」

「分かった。こちらも人を()って調べさせよう」

「お願いします。後は……」


 話を続けようとするテッドを、無粋なノック音が中断させる。

 入室して来たのはウォースパイトの艦長であった。


「失礼します。ドーセット公に面会希望者が来ております」

「……どちら様?」

「はぁ、ヘイセイカイと言えば通じるとしか……」

「!? 急いでここに通して! 最優先でっ!」

「あ、アイアイサーっ!」


 慌ただしく去っていく艦長。

 やがて、一人の男を引き連れて来る。


「お久しぶりです。ドーセット公」

「眼鏡君!? 久しぶり!」

「そのあだ名は何とかなりませんか? そもそも私には……って、そんなことを言ってる場合じゃありませんでした」


 テッドの目の前に現れたのは、平成会の会合でテッドのホスト役を引き受けていた眼鏡君であった。彼もまた激務に晒されているのか、どことなくやつれていた。


「こちらの事情をお話したいのですが、その……」

「あ、この二人は円卓所属なので問題無いよ」

「……分かりました。現在の状況をお話いたします」


 平成会は、関東大震災に対して可能な限りの対策をしていた。

 しかし、その対策が今回は裏目に出ていたのである。







「……そもそもの原因は、陸軍が帝都内に進出出来ていないことです」


 ため息交じりに話す眼鏡君。

 陸軍の近代化を志向している平成会によって、陸軍は『弾幕はパワー』を合言葉に大火力信奉主義へと舵を切った。第1次大戦の西部戦線で英国とドイツの大火力を見た兵士達の意見も、これを後押ししていた。


 師団における重砲の充足率も格段に上がり、さらに兵士達には史実のAKをベースにした自動小銃も配備され始めた。小規模ながらも機甲師団が設立されるなど、この世界の帝国陸軍の火力は飛躍的に増していたのである。


 火力が増した半面、正面装備以外のモノは大幅に削られた。

 このことの重大さを平成会を含む軍の上層部は理解していなかったのである。


 結果として、瓦礫を除去する重機その他機材が不足して人海戦術で進路を切り開くハメになった。震災から5日経つというのに、陸軍が帝都の中心部に達していないのは、そのような理由だったのである。


「治安維持をしようにも、肝心の陸軍が来れないと意味が無いね」

「その通りです。そして、もう一つの問題がボランティアです」

「あー、まさか個人のボランティアが暴走してる?」


 平成会によって強化された通信網によって、関東大震災の詳細は即時に全国へ伝えられた。その結果、困窮した被災民を救わんとばかりに全国からボランティアが殺到したのである。


 基本的にボランティアは善意と使命感で動くものであるが、準備不足で被災地に乗り込んでも二次遭難するだけである。救助に来たボランティアが逆に避難所の厄介になってしまい、負担が増えてしまうという笑えない状況になっていたのである。


「あと1週間もあれば、帝都は陸軍の影響下に置けるでしょう。しかし、それまで凌げるかが微妙なのです」

「そういうことなら、海兵隊を使おう」

「海兵隊……ですか?」

「長門にも陸戦隊を乗せているでしょ? 少数だけど精鋭だから治安維持には使えるはず」

「なるほど。海軍上層部に打診してみます」


 テッドの提案により、英国海兵隊(ロイヤルマリーン)と海軍陸戦隊から構成される臨時の治安維持部隊が急遽設立された。


 即席で、しかも多国籍軍のために意思疎通が危ぶまれたのであるが、英語と日本語が話せるテッドが居たために何とかなったのである。おかげで、彼は通訳として馬車馬の如く働かされることになったのであるが、現地交流で名と顔を売ることが出来たので結果オーライというヤツであろう。


 治安維持部隊(彼ら)は少数ながらも、救援物資の警備や避難場所の巡回による治安維持などに大活躍した。この件で海軍陸戦隊は大いに名をあげ、日本でも海兵隊設立の機運が盛り上がることになる。


 震災直後の困難を乗り切った帝都は急速な復興を遂げていった。

 史実以上の予算を得た帝都復興院と平成会の思惑によって、帝都は魔改装されることになるのである。

この時代なら外せない関東大震災について書いてみました。

次回は平成会視点で、より細かく状況を書く予定です。


帝都が魔改造されることが確定しました。

首都高がいきなりフル規格で整備されたり、ライフラインが共同溝化されたりする……かもしれません。全ては予算次第ですw

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― 新着の感想 ―
[良い点] ちょくちょく伍長が本性現して煽動家してるの面白すぎる
[一言] 日本陸軍は海軍陸戦隊にいいところ持って行かれた形ですけど 逆に言えばいいロジの教訓になったかな?
[一言] >QE型をぶっちぎる超高速戦艦の姿は無かったことにされたのである。 長門型と言う名の実質天城型戦艦ってことですかね? 主砲が五基あるとかw
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