第44話 持ち出しが多過ぎるビジネス
「……!」
大盛りご飯に玉ねぎと牛肉、隠し味にワインが入った特製ダレ。
ご丁寧に史実の某牛丼チェーンのどんぶりまで忠実に再現したそれを、七味と醤油をぶっかけて貪り喰う。金髪碧眼でダブルスーツを着こなした紳士が、胡坐をかいてどんぶりを掻っ込むのは質の悪い三文小説の如しである。
「ふぅ、美味しかった」
食後に爪楊枝でシーハーする姿は、どうみても日本人である。
いや、実際中身は日本人なのであるが。
そんな彼を固唾をのんで見守るMob一同。
言うまでも無く紳士はテッド・ハーグリーヴスで、Mob一同は平成会の面々である。
「いやぁ、まさかこの時代に吉〇家が食べれるとは思わなかった。再現するの大変だったんじゃ?」
「それはもう。この時代の日本にまともな肉牛はいませんので、海外から導入するしかありませんでしたし」
「コシヒカリも無いので、品種改良を進めていますがこれがなかなか……」
テッドの称賛に安心したのか、堰を切るように話し始める平成会の面々。
とはいえ、その表情は固く憂鬱であった。
過激派のやらかしで、完全にマウントを取られた形となった平成会は無条件降伏するしか無かった。なにせ相手は世界最強の大英帝国である。その気になれば、平成会の面々を制裁することも不可能ではない。彼らは今後の処遇が気になってしょうがなかったのである。
「あー、今回のやらかしについて責任を問うつもりは無いよ? 不幸な行き違いだった。イイネ?」
「「「アッ、ハイ」」」
テッドの言質を取ったことでようやく安堵する平成会のMobたち。
しかし、次に放たれたテッドの言葉で凍り付く。
「あぁ、そうそう。僕の名を使った売名行為にはペナルティを課すので悪しからず」
「ぎくっ……」
「許可した覚えも無いのにドーセット公お薦めなんて同人誌があったし、極めつけは腐った掛け算もあったし……」
「それはほら、表現の自由というか……」
「だまらっしゃい! よりによって、僕とマウントバッテン卿の掛け算とかヤバすぎるだろ! 本人が知ったらどうするんだ!?」
『これ幸いと既成事実化してくるだろうが』という言葉を辛うじて飲み込む。
平成会としても、やらかしてくれた過激派を庇うつもりは一切無く、彼らの身柄はテッド預かりとなったのである。
(よしっ、人材ゲットだぜ!)
何のかんの言っても、中身は史実21世紀の日本人であるから、スキルも教養もこの時代の水準からすれば飛びぬけて高い。性格が腐っていることに目をつぶれば有能な人材であろう。表面上はともかく、内心はガッツポーズなテッド・ハーグリーヴスであった。
「平成会がその名の如く平成の住みよい世の中を再現しようとしているのは、この牛丼が証明してくれた」
「では……!?」
「僕個人の意見だけど、パートナーとするには不足無い。円卓を説得する材料もある」
「円卓……ですか?」
「あ、そこから説明しなきゃいけないのか。英国には平成会と同様に史実知識を活用している秘密機関があるんだよ」
「「「な、なんだってー!?」」」
テッドの口から、さらっと出てきた円卓の存在に混乱状態となる平成会の面々。
「……確かに史実知識を扱ってはいるが、平成会とは全く違う組織だよ」
「というと?」
「某艦隊シリーズの後〇世界だと思えば良いかな」
「なんとなく分かったような、分からないような……」
平成会には某艦隊シリーズのファンはいないようである。
たまたま、会合に参加していないだけかもしれないが。
「この世界の住民には、前世の史実知識が眠っているのだけど、何らかの原因でその一部が顕現する……らしい」
「全部では無く?」
「個人差はあるのだけど、前世の史実知識の欠片であってそれ単体だと役に立たない。それを長い時間をかけて収集・体系化したのが円卓なんだよ」
ようやく合点がいった表情となる平成会の面々。
安堵しているように見えるのは、英国に自分たちのような存在が大量に存在するわけでないことを知ったからであろう。
「なるほど、平成会とは全然違うのですね」
「こっちも聞きたいのだけど、平成会はどうやって転生者を見つけ出しているわけ?」
「それは簡単です。新聞の広告にそれとなく史実21世紀を連想させるものを仕込むのですよ。あとは当人が勝手に連絡してきます」
「それで広告を見てコンタクトしてきたのか」
新聞に掲載されたメッセージの広告主が、テッドであることを知った主流派は争う愚を理解した。彼らは過激派にくぎを刺す一方で、テッドとコンタクトを取るべく動いた。折しも、シドニー・ライリーの要請で大日本帝国中央情報局が仲立ちに動いていた時期であり、まさに渡りに船だったのである。
「……で、ここから本題なのだけど。とりあえず要望を出して欲しい。可能な限りかなえるから」
「「「良いのですか!?」」」
「平成会の窮状は理解してる。ここらで実績を挙げて足場固めをしてくれないと今後のビジネスも出来なくなるからね」
テッドの言葉に驚喜する平成会。
あっという間に要望書が積みあがっていく。
「元老院の増員が不可能になって、事実上無力化したのは事実だったんだなぁ」
「はい。元老院は、今や松方公と西園寺公のお二人だけです」
「そして史実通りならば、松方公は数年後には……」
「そうなれば、西園寺公が最後の元老となります。公が如何に有能であっても、お一人では出来ることも限られるでしょう」
「西園寺公が亡くなれば元老院は消滅。後ろ盾を失った平成会も空中分解しかねない、か」
史実通りならば、二人の元老のうち松方正義は1924年に没することになる。
残る西園寺公望は1940年まで生きるが、一人では出来ることも限られる。平成会は後ろ盾が無効化する前に独り立ちすることを迫られていたのである。
「そこを何とかするための今回の案件なんだけどね。平成会が無くなって、日本が史実ルートに突入するとこっちも困るし」
「しかし、我らの力だけでは史実ルートの回避は困難です。イギリスからの援助は絶対に必要です」
「うん、分かるんだよ。史実の日本が如何にチートであったかも。それでも不足しているものが多かったことも。でも……」
目の前にそびえる壁。
言うまでも無く要望書の山である。
「これを通さなきゃいかんのか。全権を任されてるからなんとかなる……といいなぁ」
「ドーセット公にはご苦労をおかけしますが、うちらも必死なんです」
「それは分かるけど、しかしこれは……」
「いくら21世紀の知識があったとしても、それを実現する基礎技術が無いと絵に描いた餅なんです」
ため息をつくテッド。
史実よりはだいぶマシとはいえ、この世界の日本はイタリアよりマシといった程度でありドイツやフランスと比べると一部を除き全体的に劣っていた。もちろん英国と比べるのは論外である。
(嗚呼、これ全部通すとしたら円卓からの要求を丸呑みするしか無いな。後でどれだけ無茶ぶりされるかなぁ……)
心の中で涙する。
悲しきは宮仕えであった。
「よっしゃぁ! これでアニメが作れるっ!」
「化学繊維の開発でコスプレが捗るわっ!」
「俺が生きているうちにファミコンを作るっ! そしてマ〇オをやるんだぁぁぁぁっ!」
要望を全部通すとの言葉に狂喜する平成会のMobたち。
欲望丸出しの発言に、テッドはドン引きであった。
「……やっぱ止めたほうが良いかな?」
「すみませんすみません! こいつらはちょっとアレですが有能なんです。勘弁してくださいっ!」
テッドの呟きに反応して必死に謝罪する眼鏡くん。
「TPOを弁えろって言っただろうがボケどもがぁぁぁ!」
「「「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!?」」」
言うが早いが、バカ騒ぎをするMob達をしばきたおす。
絵に描いたような生真面目キャラな眼鏡くんは、今回のテッドの接待を始めから担当しており、場の雰囲気が悪くなって会談がぶち壊しにならないように必死であった。まさに今回の会談の成否は彼にかかっていたのである。
「……要望は全部通すけど、こっちでも確認させてもらいたいことがあるよ」
「なんでしょう?」
「平成会はどの程度の影響力を持っているか、ということ」
いくら援助しても、それを有効に活かせないのならば意味は無い。
まして、この時代は21世紀よりも既得権益持った者が強く、その圧力を跳ね返せるだけの地力が無いと容赦無く潰される。これからテコ入れするにしても、影響力の多寡によって取れる手法も異なってくるのである。
今までは後ろ盾の元老院の威光によって、多少の無理も通すことが可能であったが、逆に元老院の名前が先行し過ぎて平成会単体の知名度はほとんど無かった。
基本的に21世紀のMobキャラの互助会である平成会に、ガツガツとした上昇志向などあるはずもはなく、好きなことを好きなだけやっていた。当然、地位や権力には無頓着であった。
「……そうですね。では、民、官、軍、それと政府関係の順でご説明しましょう」
「頼むよ」
例によって、説明キャラと化している眼鏡くん。
会ってまだ短い時間でしかないが、テッドは彼を信用していた。同じ苦労人のにおいを感じ取ったのかもしれない。
「まずは民間ですが、かなりの数の新興企業があります。ただし、軽工業がメインで重工業はこれからです」
「それはまぁ、しょうがないか。造船などは金もかかるし工員の確保が大変だからなぁ……」
「後発な分、大規模で設備も新しく出来ますので競争力はあります。今後発展していくでしょう」
平成会によって興された企業はかなりの数になるが、基本的に元手が少なくて済む軽工業が多かった。元老院の口利きによる資金調達にも限度があるし、手っ取り早く稼ぐためのアイデア商法がメインだったこともある。現在は、大戦景気で荒稼ぎした利益で積極的なM&Aを繰り返して影響力を拡大中であった。
重工業には膨大な初期投資が必要となるので後回しにされがちであったが、第1次大戦後に平成会傘下の造船所が完成。同じく完成した石油化学コンビナートにも、入居企業のかなりの割合で平成会傘下の企業が入っており、今後の発展が期待されていた。
「続いては官のほうですが、各省庁に中堅どころの官僚が入っています」
「ある程度は融通を利かせられると?」
「現場レベルならなんとかなるかと」
平成会では積極的に転生人の官僚のスカウトを行っていた。
新聞広告には飽き足らず、霞が関に平成会直営のアンテナショップを出店する力の入れようである。実際これにひっかかった官僚は数多く、平成会は霞が関における影響力を強めていた。とはいえ、省庁のトップではなく中堅クラスがせいぜいであり、その影響力は限定的なものであった。
「軍のほうですが、陸海軍ともに大佐クラスがせいぜいです」
「大佐なら艦長とか部隊指揮官クラスだから、それはそれで凄いことだと思うんだけど……」
「そのとおりですが、史実ルートを回避するには将官クラスを送り込まないことにはどうにもなりません」
平成会では軍人のスカウトも行っていたが、こちらは順調とは言えなかった。
軍隊という世俗から隔離された組織に食い込むのは、如何な平成会でも難しかったのである。さらに言えば、転生人が軍隊を嫌ったという事情もある。生前に嫌というほど反戦教育を受けてきたのに、わざわざ軍隊に行くのは酔狂な人間だけであろう。
「最後に政府関連ですが、それなりの数の国会議員を送り込んでいます」
「それは凄い」
「金は出しているのだから、その分しっかり仕事はしてもらいたいですね」
時代を問わず選挙には金がかかる。
戦前は被選挙権を満たすのが大変なのに加えて、供託金もべらぼうに高額で庶民が立候補するのは不可能であった。豊富な資金をバックにした平成会だからこそ当選させることが出来たのである。
彼らは『日本平民党』を結党し、史実知識を活用した斬新な法案を提出して国会内でも注目の的であった。その分他党からの勧誘や買収話も多く、平成会の中で最も生臭い部署なのであるが、快適な平成の世(アニメとコミックとゲームの楽園)を求める転生人たちは見向きもしなかった。おかげで、日本平民党は高潔な議員の集う場所として誤解されていたりするのであるが、彼らはひたすらに己の欲望に忠実なだけであった。
「……うん、現状については分かった。それで今後の方針なのだけど、平成会としてはどのようなビジョンを描いているわけ?」
「対英協調しつつ、既存の元老院の立ち位置を保持します」
「表には出ずに影響力を確保すると。それって、某水葬戦記の秘密結社じゃね?」
「あれより難易度高いですよ。あちらは参加者が一応ネームドで方々に影響力がありましたが、こちらはMobの集まりですし……」
平成会のメンバーは、史実の偉人や著名人にかすりもしない文字通りのMob軍団であり、影響力を確保するには実績を積み重ねるしかなかった。
平成会に皇族クラスの人材がいれば、また話は別なのであるが、Mobな皇族など存在しようがないのでどうしようもない。しかし、このことが回りまわって、テッドに災難として降りかかることになろうとは、このころの彼は想像しようもなかった。
「今後のことなのだけど、僕は平成会との窓口を一任されているので、正規ルートを使わない連絡手段を確保してもらいたい」
「具体的には?」
「ドーセットに領事館を建てて欲しい」
「なるほど。大使館のあるロンドンからは距離はありますし、適当でしょう。すぐに手配させます」
テッドの要請によって、ドーセットの地に日本領事館が設置された。
表向きの業務も取り扱うが、本来の業務は英国における平成会の窓口である。当然のことながら、主な人員は全て平成会のメンバーで占められた。領事館からの非公式な情報は、平成会の立場を強化するのに大いに役立つことになる。
「あとは移民かな?」
「と言いますと?」
「いや、文字通りの意味なんだけど。ドーセットはオイルマネーで好景気に沸いているのだけど、常に人手不足なんだ」
「なるほど。先の大戦で対英感情は良好ですし、待遇を良くすれば問題無いでしょう」
「大陸や南洋に移民するよりも良い待遇にするよ! あと料理人は大歓迎! なんだったら、開店資金を全額援助するよ!」
「それが本音ですか……」
現在のドーセットに日系人が多い理由が、テッドの日本食恋しさであったことは意外と知られていない事実である。この世界の日本は、戦争によって獲得した台湾、海南島、樺太、カムチャッカ半島、南洋諸島への移住は盛んに行っていたが、海外への移民は消極的であった。そのため、ドーセットは数少ない日系人の居住する地として歴史に名を遺すことになる。
海外移民に消極的な理由は、当然ながら平成会が原因である。
史実よりも大勝ちして広大な海外領土を手に入れたことで、わざわざ外国に移民させる必要が無くなったこともあるが、平成会が史実日本の戦後の政府開発援助を知悉していたことも大きかった。
史実のODAにもいくつか形態があり、平成会が重視したのはタイド(ひも付き援助)であった。タイドとは、開発プロジェクトに必要となる資材や役務の調達を、援助国に限定することを条件に供与することである。
開発プロジェクトの大規模な資材発注が国内企業への利益となり、さらに輸出振興にまで繋がるのである。援助を受ける側も新たな雇用を確保することが出来るわけで、双方Win-Winな取引であった。
当然ながら裏もあり、この手の援助は受ける側にとっては産業育成の妨げとなった。工場施設をメンテナンス出来るのは日本人技師だけであり、必要となる保守部品や燃料まで全て日本製であった。援助を受ければ受けるほど、雁字搦めになっていくのである。
史実中国の一対一路政策のマイルド版とでも言える政策によって、日本は武力による海外進出をする必然性が低下した。しかし、それを軍部が納得するかは別問題である。資源を貿易で手に入れるよりも奪い取ったほうが早いと考える輩はいくらでもいるのである。政策に不満を覚える彼らは軍部を焚きつけ、やがて行動を起こすことになる。
(はぁ、分かってはいたけど、こちらからの持ち出しが多過ぎるな。少しでも取り戻したいのだけど……)
平成会の足場固めのために多少の出血は覚悟していたが、いくら何でも多過ぎる。
多少こちらから要求しても問題は無いであろう。問題は何を要求するのかであるが……。
(……あれがあったな。長期的に見れば多大な利益が見込めるし、何よりも前世の恨みもあるし)
公人として赴いたのであるから、公の利益を追求するのは当然である。
しかし、ちょっとばかり私怨が入っても神様は咎めないはずである。多分。
「あんな厄介者を引き受けてくれるなら大歓迎です!」
「かの地にイギリスの影響が及ぶなら国防上大助かりです!」
「史実と違って保護国じゃないので、思いっきりやっちゃってください!」
テッドの提案は平成会に諸手を挙げて歓迎された。
平成会でも処遇に苦労していたのである。放置出来れば放置したいというのが本音であり、英国で面倒を見てくれるなら言うことなしである。
「……まぁ、うん。分かってた」
「それはそうでしょう。この世界でも散々に我々の手を焼かせてますし」
「え? 直接の往来は無いんじゃないの?」
「済州島経由で密航してくるんです。本当にどうしようもないですよ……」
盛大にため息をつく眼鏡くん。
Kの国の民と欠片も関わりたくない平成会は、大韓帝国との直接の往来を禁じていた。唯一の例外が租借した済州島であるが、無駄にバイタリティのある彼らは筏などで済州島に渡り、その後に日本の船で密航してきたのである。
間が悪いことに、済州島に建設中の潜水艦基地のために大量の資材が必要であり、船舶がひっきりなしにやってきていた。おかげで密航手段に事欠かなかったのである
平成会の誤算は、良い意味で正義と人道主義を拗らせていたこの時代のマスコミが密航者を救えと大合唱したことであった。おかげで野垂死にさせることも出来ずに保護するハメになったのである。潜在的な反政府勢力を税金で養う罰ゲームの始まりであった。
「まぁ、あのクズどもを住まわせている場所は関東大震災で住民ごと更地になるんですけどね」
「……意外と腹黒いね眼鏡くん」
生真面目キャラの意外な腹黒さにドン引きしたテッドであるが、同時に大いに納得もしていた。
「そういうことであれば、一切の容赦は不要だね。前世の恨み&人の作品を冒とくしてくれたクソ野郎どもに死を」
「えぇ、植民地支配のお手本を見せてください。存分に……!」
テッドの帰国後、極東朝鮮会社(FEKC Far East Korea Company)が設立された。この世界の大韓帝国は保護国化されておらず、建前上は独立国であったために民間での開発という形を取る必要があった。そのため、テッドとロスチャイルド家が連名で発起人となり、これに英国内の企業が出資する形となった。
合本会社の形式を取ってはいるものの、英国政府が20%の株式を所有しており、事実上の国策会社であった。
史実の東インド会社に範を取ったこの会社の最初の仕事は、大韓帝国政府との交渉であった。なお、契約内容は以下の通りとなる。
・利益の取り分は英国が5、大韓民国が5。
・開発に必要な資金は英国側が負担する。
・大韓帝国側は、開発に必要な労働者の確保に便宜を図る。
・英国側は朝鮮人労働者の衣食住を保障する。
・大韓帝国側は、英国関係者の無条件の国内移動の自由を認める。
一見すると英国側が損をしているように見えるが、その他の条項で定められた特約による抜け穴があり、実質的には5:5どころか8:2の利益配分であった。ここらへんの手腕は、さすがは英国紳士といったところであろうか。
極東朝鮮会社が最初に手をつけたのは、雲山金鉱の開発である。
高麗時代から操業し、朝鮮時代は官営操業されていたこの金山は、その莫大な埋蔵量とは裏腹に人力で細々と掘られていた。そこに英国が、機械力を導入した大規模な坑道掘りを導入したのである。
大規模な機械掘りを導入した結果、金の採掘効率は飛躍的に跳ね上がり、莫大な収入を英国にもたらした。その後、タングステンやモリブデンを始めとするレアメタルやその他の鉱物資源の採掘も始まり、その一部は友好価格で日本へも輸出された。
北部の資源採掘から遅れること数年。
半島南部の開発も進められた。史実では朝鮮総督府が主導した産米増殖計画で農業の近代化が進められて稲作が盛んとなったが、手を加えられていない土壌は痩せており、そのままでは耕作には適さなかった。
農業には適さない土地であるため、半島南部の主力産業は畜産業となった。
痩せた土地に牧草を繁茂させて牛の餌にしたのである。その後の土壌改良で紅茶の栽培が可能となり、半島南部からは牛肉と紅茶が輸出されることになる。鉱石と違って保存に問題のある生ものであるため、距離の近い日本へ大部分が輸出された。
農業でも鉱業でも労働力の確保が問題となるのであるが、朝鮮半島の場合さして問題にならなかった。元々、生産性が低い土地で飢えた人間が大量にいたからである。
給料無しで1日16時間労働、月の休みは3、4日有るか無いかという、過酷な労働条件であったが、サボタージュやストライキ、デモ等の抗議行動は一切起きなかった。これはドーセット公が史実知識を活かしたKの国の民の取り扱い方を全面的に導入したためと言われている。
『とにかく、考えさせないこと。ひたすら扱き使って考えることをやめさせることが重要である』
その言葉通り、ひたすら労働させてサボった者は容赦なく鞭打つ。
その代わり衣食住は保障され、タバコや甘味等の嗜好品の配給もあった。
特に食事は、質はともかく量は充分過ぎるほどにあった。
もちろん大量の唐辛子粉もついていた。食事をたらふく食べれる環境に満足し、厳しい労働で考えることを辞めさせられたKの国の民が、不満を抱くはずもなかったのである。
というわけで、平成会との心温まる?交渉の一幕でした。
ここから日本の技術チートが始まります。
その分、敵も強くなりますけどね(酷
テッド君の要請で、ドーセットに領事館が出来ることに。
日本人が移民すれば、ドーセットで日本食が流行ること間違いなしでしょう。
ついでに、英国料理を魔改造してテッド君の舌を唸らせることも確定でしょうw
後半のKの国関連ですが、リスペクト元の自作支援SSから一部表現を拝借して、掲示板でいただいた問題点を修正して改変したものとなっています。英国の植民地支配の手腕をもってすれば、Kの国の民に恨まれることなく搾り取ることが出来るでしょう。平成会への莫大な援助もこれで回収出来るはず。
欧州から遠く離れた場所なので、秘密の実験とかが捗ることでしょう。
そういえば、半島北ではウランが取れたような……(ボソッ




