第35話 ヘッドハンティング
「おはようございます。お加減は如何ですかな?」
「おぉ、セバスチャン殿。おかげさまですこぶる快調です。ここは水も空気も良いですからな」
「これから、いつもの場所へ?」
「えぇ。夕方には戻りますので」
画材を抱えて意気揚々と歩き去る男を見送るセバスチャン。
彼の姿が見えなくなると、ため息をつきつつ独り言る。
「あのお方が来られてから既に一か月。旦那さまと奥方さまは今頃何をしているのやら……」
ドーセット公爵夫妻がハネムーンに出発して二月程経ったある日。
一人の男がセバスチャンを訪ねてきた。その男は、テッド直筆の紹介状と夫妻の肖像画を所持しており、紹介状には賓客としてもてなすよう書かれていた。当然、事の次第を問い質したセバスチャンであったが、その経緯は驚くべきものであった。
時を遡ること1917年12月。
ハネムーンでオーストリア=ハンガリー帝国を旅行するドーセット公爵夫妻は、帝都ウィーンのホーフブルク宮殿の観光に勤しんでいた。
ホーフブルク宮殿は、ハプスブルク王朝の歴代君主の居城にして政治中枢であるが、現在のオーストリア皇帝『カール1世』の方針で宮殿の一部が開放されていた。
史実よりも早期に第1次大戦が終結したことで辛うじて崩壊を免れた二重帝国であったが、その財政は火の車であった。見物料を取ることで、少しでも国庫の足しにする必要があったのである。
先帝フランツ・ヨーゼフ1世が、頑迷なまでに日常生活の形を崩そうとしなかったのに対して、カール1世は『思いつきのカール』と宮廷であだ名されるほど即時即決の人であった。庶民には手が出ないほどの高額な入館料にしたにもかかわらず、裕福な商人や貴族などで宮殿観光は大人気となり、彼の思い付きは見事に的中したのであった。
「……こ、これは凄い! ここまできっちり細かく、しかも水彩画で描き込むとはっ?!」
「おぉ、あなたは見る眼があるな! ご同業か?」
「同人作家やってます!」
「ド、ドージン……?」
テッド・ハーグリーヴスが足を止めたのは、宮殿の入口近くで絵描きが売り出していた絵が目に入ったからであった。生前はもとより、この世界でも同人作家をやっているだけあって、常人よりも目は肥えていた。その精緻で綿密な描き込みに彼は興味を惹かれたのである。
「……最近の印象派どものデッサン軽視は実に嘆かわしい。まぁ、君のような漫画家に言ってもしょうがないことだが」
「ちょっと待った! 漫画がデッサン軽視とは誤解も甚だしい。如何な作品、作風であってもデッサンは絶対に必要です!」
「意外だな。漫画家なんて適当に描いているものかと思っていたが」
「とんでもない。むしろ漫画こそデッサンを重視していると声を大にして言いたいです」
「そうなのか?」
「〆切に間に合わせるために早描きしなくてはならないから、当たりを付けて素早くラフる! これはデッサン力を鍛えないと不可能なのですっ!」
「な、なるほど……」
意気投合した二人は、カフェに場所を移して絵画について幅広く話し合った。
当然、連れであるマルヴィナは、その間放置されていたのであるが…。
「……!」
王宮の如く華麗な空間に、舞踏会のドレスを着た御婦人方の如く並ぶ色とりどりのケーキ。彼女は彼女で、目の前の圧倒的なスイーツに心を奪われていたのである。
彼らが立ち寄ったカフェは、宮殿近くのカフェ・ツェントラルであった。
ウィーンで最も象徴的なカフェであり、史実でも数々の著名人が通い詰めた。当時のウィーンを代表する知識人、文化人たちが集い、親交を深める場所でもあった。
元が宮殿のためか建物全体が豪華な造りになっており、特に各階の天井は極めて高くなっていた。天井は数多くの美しく装飾されたアーチで構成され、カフェの内部は多くの小さな丸テーブル、窓際のボックス席、そして簡素ながらも洗練されたシャンデリアを持つ典型的なヨーロッパのカフェであった。
「……あんたに、手足を描くときに自分の手足を鏡に映してラフる苦労が分かるかっ!?」
「お、おぅ……」
「脱稿が遅れて、〆切ギリギリで持っていったときの印刷所の冷たい視線があんたに分かるかーっ!?」
「それはどう考えても、おまえが悪いだろ!?」
悩み抜いた末に、プンシュトルテ、カフェ・ツェントラル・トルテ、さらにアインシュペンナーを選択するマルヴィナ。横で大の男二人が激論を交わすのを完全に無視して、心行くまでスイーツを堪能するのであった。
「……うん、僕はあなたを気に入りました。あなたのパトロンになろうと思います」
「ほ、本当か!?」
「とは言っても、僕はここの貴族じゃないのですけどね」
「全然構わない! 何処へだって赴こう!」
「でも、その前にお願いが……」
二人の議論は、歴史や化学の分野にも及んだ。
お互いに歴史や科学に対して豊富な知識を持っており、話題に事欠かなかった。彼を大いに気に入ったテッドは、彼のパトロンになることにしたのである。
二人が激論の果てに友誼を結んだ翌日。
疲れた表情を見せるテッドと、対照的にツヤツヤしているマルヴィナを見て何となく察した男であるが、敢えて聞こうとはしなかった。賢明な判断であろう。
テッドが彼に頼んだことは肖像画の制作であった。
当然のことであるが、肖像画は写真のように即日完成なんてことは不可能である。そうなると完成まで足止めされるわけであるが、そのことがマルヴィナには不満であった。さらに言うならば、裏の世界で活躍していた彼女は、素顔を残すのにストレスを感じていた。だからといって、テッドとのツーショットを描いてもらえるチャンスを逃そうとも思わなかったが。
『……ハネムーンでわたしを無視して、男と語り合うとは。これはおしおきね』
『ちょ!? マルヴィナだってスイーツを堪能していたじゃないかっ!?』
『それはそれ。これはこれというやつよ』
『ちょ、やめっ!? っあー!?』
溜まりに溜まったストレスは、毎晩のプロレスごっこで発散した。結婚して一切の遠慮が無くなったマルヴィナは、容赦なく搾り取っていたのである。
「……やつれているが大丈夫かね?」
「だ、大丈夫だ。問題無い」
「……そうか」
日々やつれていくテッドを見て使命感に駆られた絵描きによって、比較的短期間に肖像画が描きあがったのは幸いであった。
1週間後。
3人は、帝都の中心部からやや外れた場所に立地するウィーン西駅のホームにいた。
「……この紹介状をドーセット公爵家のセバスチャンに渡せば、後は上手く取り計らってくれるでしょう」
「何から何まで申し訳ない。しかも列車のチケットまで用意してもらえるとは……!」
「いえいえ、むしろ礼を言うのはわたしのほうです。英国まで使い走りさせるようなものですし」
「そうか。では、わたしは一足先に向かうとしよう」
「僕とマルヴィナは、もう少し観光してから戻るとセバスチャンに伝えてください。あとロンドンでの買い物も忘れずに」
「了解した」
発車する列車を見送る二人。
彼がドーセットに到着したのは、それから4日後のことであった。
そして時系列は戻る。
ドーセット公爵邸を出た男は、徒歩で30分ほどの場所へたどり着いていた。
辺り一面畑と農家しかない絵に描いたような農村風景である。
油田の発見でオイルマネーに沸くドーセットであったが、全体でみると畑が大半のド田舎であることに変わりは無かった。
この高台は、見晴らしが良くお気に入りの場所である。
適当な場所にイーゼルとキャンバスを置いて気ままに描くのが、彼の楽しみであった。
(それにしても、名乗ったときのドーセット公の顔は見物だった。似た名前の知り合いでもいたのだろうか?)
絵を描きながら想うのは、自分を後援してくれるという物好きな貴族のことである。彼は芸術家として身を立てるべくウィーン美術アカデミーを受験したものの、入学は果たせなかった。
その後、第1次大戦に従軍して軍に居場所を見出したが、大戦末期に冤罪によって投獄された。最終的に容疑は晴れたものの、既に戦争は終結していた。多少なりとも罪悪感があったのか、軍の上層部からは遺留されたが既に未練は無くなっていた。
軍への未練は消滅したが、芸術家への未練は断ち切れなかった。
ウィーンに移り住み、独学で絵を学び直しているときに、テッド・ハーグリーヴスと出会ったのである。
彼のテッドに対する第一印象は、『怪しいヤツ』であった。
品の良い仕立て服を着こなせていない様子が、胡散臭さに拍車をかけていた。しかし、テッドが絵の描き込みの精緻さを見抜いたのと同じく、彼もまた見抜いていた。その利き腕に出来たペンだこに気付いたのである。
(それにしても、どれほどの絵を描き上げれば、あのような手になるというのだ……)
人間工学を駆使してデザインされたペンが主流の史実21世紀では、ほとんどお目にかかることの無いペンだこであるが、この時代で筆を使う職業に就いている人間ならば、誰しもが経験する症例であった。
しかし、一枚の絵を完成させるのに時間をかける絵描きとは違って、テッドは曲りなりにも売れっ子作家である。〆切に追われる生活を続けるうちに、年に見合わない立派なペンだこが出来ていた。その後の絵画に関する議論でも、豊富な知識を披露したことで彼はテッドを信用したのであった。
「ただいま~!」
「今、戻りました」
「おぉ、旦那さまに奥方さま。遅いお戻りですな……」
「それを言われると耳が痛い……」
帰還したドーセット夫妻に、ジト目でツッコむセバスチャン。
「と、ところで僕のゲストは何処?」
セバスチャンの冷たい視線を避けつつ、話題を変えるテッド。
「あの方なら、絵を描きに出られています。夕方には戻ると」
「なら、晩餐はいっしょに取れるね」
「では、そのように手配致します」
テッドがセバスチャンに宛てた書状には、ゲストがベジタリアンであり、提供する食事に注意する旨が記載されていた。そのため、調理には手間暇がかかり、最近はコックの愚痴を聞くのがセバスチャンの役目であった。
賓客である以上、提供する食事に手を抜くことは出来ない。
贅を尽くしたフルコースを作るだけでも手間がかかるのに、ベジタリアンであることを考慮すると毎日のメニューの作成も一苦労であった。
数日程度ならともかく、一月以上もこんなことをさせられたら、コックがストライキを起こしても不思議では無かった。セバスチャンが必死になってなだめたおかげで最悪の事態は回避していたのである。後にそのことを知って、彼に頭が上がらなくなったテッドであった。
「……頼まれていた物は多分これだと思うが」
「おぉぉぉっ!? これですよこれっ! ありがとうございますっ!」
晩餐後に絵描きはテッドの書斎を訪れていた。
『使い走り』の戦利品を渡すためである。目的の作品を手に入れて狂喜乱舞するテッド。
「……言われたとおり、コミケとやらで探してきたのだが、凄い人出だった。ロンドンではあんなことをやっているのだな」
「夏と冬の年2回だけですけどね。ちなみに、企画したのは僕です」
「そうだったのか!? どうりで詳しいわけだ」
「まぁ、初回イベントの立ち上げだけで、後は運営委員会を作って丸投げしたんですけど」
この世界において、コミケ発祥の地は英国であった。
現在では、ロンドンで夏と冬の年2回開催されており、年を追うごとに規模を拡大していたのである。
「それにしても、あれだけの数の中で、どうやって目的の品が分かったのだ?」
「それはこれですよ」
テッドが取り出したのは、冬コミのパンフレットであった。
史実と同様に、ブースの配置や頒布品の内容がイラスト付きで分かりやすく記載されていた。
「これは凄いな!? こんなのがあるのか!?」
「これが無いと目的の品が探せませんよ? でもまぁ、敢えてパンフ無しで彷徨うのも、それはそれで有りですね」
彼は食い入るようにパンフレットを読み進めていく。
エ〇い内容があるのには閉口したが、とある箇所で目が止まる。
「……画集の販売なんてのもあるのか」
「ありますよ。此処のは、人気サークルで即日完売しちゃうんですよ」
「そんなに人気があるのか!?」
自作のポストカードを細々と売って生計を立てていた身からすれば、画集の即日完売など理解出来ないことであった。同時に興味が湧いた。
「わたしもコミケに参加出来るだろうか?」
「もちろんです。歓迎しますよ。我々は同志だ……!」
二人は固い握手を交わす。
絵描きは、同人画家へジョブチェンジしたのであった。
テッドがハネムーンから帰国して数日後。
ドーセット公爵邸を、ロイド・ジョージとチャーチルが訪問していた。
挨拶もそこそこに、本題を切り出したのはロイド・ジョージであった。
「……で、彼を連れてきたのは、どういう思惑があってのことなのかね?」
「どういう思惑と言われても困ってしまうのですが……」
眼光鋭く質問するロイド・ジョージに、たじろくテッド。
「茶化さないでくれ。あの男の動向は、MI6に常にマークさせていた。不確定要素になる前に処断出来るようにな」
チャーチルも葉巻を吸ってはいるが、目は笑っていない。
史実の偉人二人に睨まれて、テッドは内心チビりそうであった。
「ウィーンで路上販売している『彼』に出会って意気投合しちゃったんですよ。後で名前を知ってビックリしました」
「君のいた時代でも、彼の所業は伝わっているだろう。何故連れてきた?」
「彼がこの世界でも同じになるとは限らないでしょう。この世界の歴史は、だいぶ史実と剥離していますし」
「何らかのきっかけで、歴史が史実に近づいてしまうかもしれない。些か軽率では無いか?」
史実知識がある故に、懸念するチャーチル。
彼の気持ちもテッドには理解出来た。しかし、それでも譲るつもりは無かった。
「それは否定しませんが……。先年の信任投票で、ヴィルヘルム2世が支持されました。ここから急激に国家体制が変わるとは思えません」
1917年10月に、ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世は国民に対して信任投票を実施。一部のリベラル層を除いた圧倒的多数から支持を受け、あらためてドイツ皇帝として君臨してした。
現在のヴィルヘルム2世は、国家体制の刷新が必要と考えており、英国に範をとった制限君主制への移行を目指していた。第1次大戦で総力戦を経験した彼は、一人で全ての案件を処理することの無謀さを学んでいたのである。
「国家には、国民から支持されるシンボルが必要です。英国なら国王、日本ならエンペラー、ドイツはカイザー。史実ドイツは、シンボルを失ったことで団結が崩れてヒトラーの台頭に繋がった」
「つまり、カイザーが健在なうちは、あの伍長に陽の目は無いということか」
「なるほど、納得出来る理屈ではある……」
「これは、僕だけの持論では無いです。実際に史実第2次大戦後の連合国首脳会談で発せられた言葉でもあります」
テッドの意見に納得してしまう二人。
『国王は君臨すれども統治せず』の理念を、世界に先駆けて実現させた英国の政治家であるからこそ、理解も早かった。
「良いだろう。だが、もしも彼が政治的野望を抱くようなことがあったら……」
「……分かっています。そうならないように、全力を尽くします」
「あのチョビ髭はテッド君に任せる。MI6のマークも外しておこう」
「ありがとうございますっ!」
二人からお墨付きをもらって安堵するテッド。
円卓も決して一枚板というわけではなく、ヒトラーやスターリンを早期に消すことで、第2次大戦を回避することを主張する過激派も存在していた。円卓の重鎮である二人なら、円卓内部の過激派をうまく抑えてくれるであろう。
「ところでテッド君。あのチョビ髭……こほん、ミスターヒトラーをどうするつもりなのかね?」
「もちろん扱き使います。彼は有能な人材です。人材不足なうちは喉から手が出るほど欲しい」
チャーチルの疑問に、ニヤリと笑って応えるテッド。
史実のヒトラーは、芸術、建築、自動車、競馬、アニメなど、多くの分野で功績を残している。いわゆる、多機能マルチな活躍が期待出来る人材であり、ド田舎で人材が集まり難いドーセットでは、宝石よりも貴重な才能だったのである。
「いらっしゃいませー! 既刊だけですけど見てってくださいねーっ!」
「い、いらっしゃい……」
「ん~、表情が硬いですね。もう少し何とかなりませんか?」
「そうは言うが、こういうことは初めてなので、なかなか上手くいかんのだ」
テーブルの上に頒布品を載せて、声を張り上げるテッド・ハーグリーヴスとアドルフ・ヒトラー。テッド曰く、『まずは地元デビューしましょう!』とのことで、ヒトラーは自身の描き上げた作品を持ち込んでいた。
「この絵ください!」
「一番大きいヤツくださいなっ!」
「これとこれとこれをくれっ!」
そんな拙い接客であっても、ヒトラーの絵は飛ぶようにうれていった。
自分の絵が評価されたとご満悦であったが、残念ながら事実は異なる。テッドは気付いていたが、水を差すのはかわいそうなので黙っていた。
現在のドーセットは、オイルマネーによって油田の周辺は大いに潤っていた。
しかし、現金収入を手にしても消費出来る場所が無かった。少なくない現金を手にした周辺住民は、ドーチェスター市内で買い物に勤しんでいたのである。
現在進行中の道路整備によって、その他の集落でも多くの住民が現金収入を得ており、彼らもドーチェスターまで足を延ばしていた。先月から運行を始めたドーチェスター交通の無料バスも状況に拍車をかけており、大勢の村人が物見遊山がてらに買い物しまくっていたのである。
彼らは物の価値は分からないので、直感的に良いなと思った物を即買いしていった。そういう意味では、一見して丁寧な描写のヒトラーの絵は分かりやすかったのである。これがピカソのような極端な印象派だったら、見向きもされなかったであろう。
ロンドンを凌駕する大規模コミケを実施するべく邁進しているテッドにとって、ドーセットにおける貨幣経済の浸透は歓迎すべきものであった。とはいえ、需要と供給のバランスが崩れると物価の急騰を招くので、住民に買い物が出来る場所を提供する必要があった。それがドーチェスターで毎月開催される地方イベントなのである。
イベント会場は、ドーチェスター市内の空地に設けられた巨大テントであった。その内部では、同人誌以外にも様々な物品が販売されていた。雰囲気的には、同人即売会というよりも蚤の市であった。
今まで手に入りにくかった物品が、比較的リーズナブルな価格で手に入ることもあって、地方イベントは大盛況であった。やがて、地元民からの要請で毎週開催となり、この地区はテント周辺から商店街として発達していくことになるのである。
テッドにとって誤算だったのは、地方イベントが盛況になるにつれて、肝心の同人即売会が隅に追いやられてしまったことである。他の生活必需品分野の扱いが大幅に増えてしまったせいなのであるが、住民からすれば同人誌よりも生活必需品を優先してしまうので、こればかりはどうしようもなかった。
彼にとってこの状況は面白くないことであったが、即座に考えを切り替えた。
どのみち現状では行き詰ることは理解していたのである。
この地で本格的なコミケを開催するには、大規模なインフラ整備を行う必要があった。フローム川を挟んだドーチェスター北部に、テッドは新たな都市を作ることにしたのである。
『ニュー・ドーチェスター』と呼ばれることになる都市のグランドデザインを、テッドはヒトラーに丸投げした。さすがに史実の偉人だけあって、行動力とカリスマは抜群であり、彼は大勢の人間を巻き込んで都市計画を進めていったのである。
後にヒトラーは、ハーグリーヴス財団の特別最高顧問に就任し、ドーセットの開発に全面的に関わることになる。暴走しがちな彼を、テッドは史実知識でなだめつつ、時には二人で暴走してドーセットの発展に寄与をしていったのである。
一部の読者さまが気にされていた伍長ことヒトラーの身の振りが決まりました。
今後の彼はドーセットの開発に尽力しつつ、趣味が高じてテッド君を悩ませることになるでしょうw