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第111話 日英同盟を履行するということ


「よく参られたドーセット公。本日はよろしくお願いする」

「微力ながら力を尽くしましょう」


 1943年4月某日早朝。

 首相官邸の総理執務室で東條英機(とうじょう ひでき)総理大臣と駐日英国全権大使テッド・ハーグリーヴスは握手を交わしていた。


「そろそろ時間ですね」

「うむ。こちらも準備万端で待ち受けねば」


 挨拶もそこそこに、二人は室内の打ち合わせテーブルへ向かう。

 4人が座れる大きさのテーブルに二人は対面で着席する。


 テーブルに置かれているのは、ダイヤル式の黒電話。

 その横には、ぱっと見では用途の分からない機械が置かれていた。


 待ち受けること5分少々。

 黒電話からジリリリンと、ベルが鳴る。


「ハロー。そっちの天気はどう?」


 間髪入れずにテッドは受話器を取る。

 これから始まるのは歴史的な電話会談のはずであったが、その割に第一声は呑気なものであった。


『晴れのち曇りといったところだな』


 受話器越しに聞こえてくる重厚かつ威厳のある声。

 電話をしてきたのは、英国宰相ウィンストン・チャーチルその人であった。


「オッケー。念のため使っておいたほうがいいかな?」

『そのほうが良いだろう。万が一知られたら面倒なことになるからな』


 チャーチルの了承を得たテッドは、受話器を謎の機械――史実で言うところの音響カプラにセットする。音響カプラからは食器棚サイズの装置に繋がっており、そこからマイクとスピーカーが生えていた。


「スイッチ入れたよ。聞こえてるかな?」

『うむ、ちゃんと聞こえているぞテッドくん』


 テッドがマイクに話しかけると、スピーカーからチャーチルの声が返ってくる。

 食器棚サイズの装置は、この世界初の秘話装置であった。


 ベル研究所で開発された『SIGSALY』が史実におけるデジタル式秘話装置の嚆矢(こうし)とされる。1943年から1946年まで運用され、延べ3000回以上の秘密会議がこのシステムを使って行われた。


 SIGSALYは真空管とアナログ回路の時代に作られたため、当時としては非常に大規模で複雑なシステムと化した。装置の重さは約55t、消費電力は30kwに上り、運用するためには教室並みの広さと空調が効いた部屋が必要であった。


 それに対して、現在テッドが使用している秘話装置は食器棚程度のサイズでしかない。スピーカー越しに聞こえてくるチャーチルの声もクリアなものであった。


 この秘話装置は『ディライラ』の名称で多種兵器研究開発部(DMWD)のアラン・マシスン・チューリングが中心になって開発された。なお、史実でも同様の名前で開発が進められていたが、ドイツ降伏により開発は中止されている。


 ディライラの肝は、音声信号を高レートで直接サンプリングして乱数を加えて暗号化する技術である。これをアナログ回路と真空管で構成すると、史実SIGSALYほどでないにしろ装置が大型化してしまうのは避けられない。


 しかし、この世界には蛍光表示管(VFD)という真空管の上位互換が存在した。

 真空管よりも小型で長寿命なデバイスのおかげで、この世界のディライラは大幅なダウンサイジングと省電力化を達成していた。


 史実のディライラは受信側と送信側の同期方法が未完成でノイズが発生したが、この世界では同期信号用に専用の帯域を設けることで解決していた。そのおかげで、従来のアナログ回線を使用しても高音質で安全な通話が可能であった。


「お初にお目にかかります。日本国首相東条英機であります」

『丁重な挨拶痛み入る。英国宰相ウィンストン・チャーチルです』


 スピーカーから聞こえてくるチャーチルの声を翻訳して東條に伝え、その返答を英語に翻訳してマイクで伝える。テッドが同席していたのは、秘話装置のオペレーター兼通訳のために他ならない。


 この方法は、史実日本でも英語が話せない総理が電話会談する際に用いられた。

 本来は外務省のスタッフがチームでやるところを、テッド一人でこなしているあたりは流石のオリ主チートと言うべきか。


 転生者で生まれながらのバイリンガルなので流ちょうな日本語が話せるし、駐日英国全権大使という身分は信用が置ける。国家間の電話会談にはこれ以上ないくらいに適任であった。


『……さて、挨拶も済んだところで本題に入りましょう。日英同盟に基づいてカナダへの派兵をお願いしたい』


 スピーカー越しのチャーチルの声が重くなったのは気のせいではないだろう。

 今回の首脳電話会談の本題は、カナダへの派兵要請であった。


「ご安心めされ。現在、陸軍2個師団を派遣するべく準備を進めております」


 これに対する返答は極めて明快であった。

 カナダ派兵について事前に伝えられていた東條は、電話会談に先立ち御前会議による意思統一を済ませていたのである。


『反対です。カナダ派兵は米連を敵に回しかねません!』

『しかし、我が国の国富は英国によってもたらされたものが多い。下手に断ると遺恨になりかねん』

『我が国は立派に成長した。いつまでも英国の言いなりになる必要はありませんっ!』

『仮に戦争になったら勝てるのですか!? 危険なバスに我が国が乗る必要はありません!』


 御前会議に参加した閣僚や軍人の意見は派兵反対が大勢を占めた。

 下手をすれば、アメリカ連邦との全面戦争待った無しなのであるから当然と言えよう。


『我が国と英国は対等な同盟国である。それは同盟国としての権利と同時に義務を果たす必要があるということだ。ここで派兵を拒否すれば、我が国は英国の信用を失うだろう』


 紛糾する場に冷や水を浴びせたのは、今上天皇の御言葉であった。

 あれほど騒がしかった室内が一瞬で静まり返る。


『昨今の米連の行動を鑑みれば、我が国に宣戦布告してくる可能性は否定出来まい。その場合は我が国単独で対峙することになるだろうが、勝算はあるのか?』

『『『……』』』


 誰も言葉を発することが出来なかった。

 カナダ派兵が決定したのは、まさにこの瞬間であった。


『2個師団でいいから海外展開するのに必要な物資を計算しておいてくれ。三日後な!』

『『『あ、アイエエエエエエエエエエ!?』』』


 御前会議を終えた東條が、その足で首相官邸の『タヌキの巣』へ向かったのは言うまでも無い。待機していた陸海軍の平成会派――もとい、首相秘書官ズは連日泊まり込むハメになったのであった。







「「「……」」」


 テーブル上には書類が散乱し、床には栄養ドリンクが転がる惨状を呈する首相官邸2階の大客間――もとい、タヌキの巣。結局3徹するハメになった首相秘書官ズは死屍累々状態であった。


「……」


 むくりと起き上がるモブ。

 テーブルに置かれた広口魔法瓶の中身をお椀へ入れると、濃厚な味噌汁の匂いが漂う。


「……ふぅ。生き返るなぁ」


 テーブルの大皿に積まれていたおにぎりを頬張り、味噌汁で流し込むと表情に生気が戻ってくる。味噌汁の匂いにつられたのか、他のモブもゾンビの如く動き出す。


「……なんだ、まだ朝5時じゃないか」

「んなこと言っても、腹がへりゃあ目も覚めるわ」

「食欲があるうちは大丈夫だ。食欲が無くなったらヤバい」


 早朝だというのに騒々しくなる。

 東條に無茶ぶりされることが多い最近はよくある光景であった。


「あ、そうだ。アレがあったな」


 モブの一人が取り出したるは、どう見ても史実のカセットコンロ。

 鍋が沸騰した頃合いで、これまた史実で見た茶褐色の袋の中身を放り込む。


 この世界では、カセットコンロは第1次大戦前に実用化されていた。

 しかもメイドインブリテン製である。誰の仕業かは言うまでも無い。


「んん~、これこれ。この香り。この味!」


 卵を落として、鍋に入れたまま豪快に喰らう。

 この世界では既にチ○ンラーメンが製品化されていた。


『普通のご飯も良いが、インスタントラーメンが食いたい!』

『良いんじゃね? 最悪、陸軍のレーションに使えるから損は無いし』

『資金提供して製品化を急がせましょう』


 平成の世に育ったモブにとって、インスタントラーメンはソウルフードに他ならない。インスタントラーメンを食べたいがためだけに、当時既に実業家として活躍していた安藤百福(あんどう ももふく)に資金提供して開発させていた。


 ちなみに、チ○ンラーメン実現の最大の難所が包装材の開発であった。

 この世界では防湿セロファンが既に実用化されて包装材として多用されていたが、シーリングは完璧とは言えなかった。そのため、初期の製品には乾燥剤が同梱されていた。


 この問題を解決したのが、平成計算機工業が開発したセロファンとポリエチレンとのラミネートフィルムであった。フィルムの腰、透明性、防湿性、ヒートシール性に優れており、史実でも袋麺の包装に使用されていた。


 これは従来の常識を突き破る画期的な包装材料であり、その価値は計り知れないものがあった。しかし、その開発動機はチキ○ラーメンが食べたいというモブたちの飽くなき食への欲求であった。ある意味、非常に日本人らしいとも言える。


『予想通りというか、軍の喰いつきが凄かったな』

『陸軍はともかく、海軍も大量購入に走るとは思いませんでしたよ』

『消防や病院関係者にも売れ行き好調ですよ』


 チキ○ラーメンは軍と警察消防関係者に大歓迎されたが、トン単位で舞い込む注文は家族が自宅の庭で作るだけでは到底対応出来るものではなかった。そこで、平成会派から用地の払い下げと資金提供を受けて工場を建設。史実よりも早期に日○食品が設立されることになった。


 想定外の売り先となったのが満州国であった。

 中立国を標榜しているとはいえ、実質はドイツ寄りの満州国への輸出が実現したのは奇跡に近い。


 それもこれも駐日満州国大使館の職員がチ○ンラーメンにベタ惚れしてしまったからに他ならない。特に全権大使の李紹庚(り しょうこう)のお気に入りであり、『3食いける』と常々公言する有様であった。


『いつでも温かいモノが食べられるアル!』

『炒飯を作るよりもお手軽なのは助かる。国境警備でいざという時も安心だ!』

『シンプルだが、癖の無い味だから具材との相性も良いな!』


 基本的に温食しか食べない中国人にとって、お湯だけで食べられる食品は革命的であった。人気が人気を呼び、製造工場は増産を強いられた。博多港には大連へ向かうチキ○ラーメンが箱で山積みされていたのである。


 満州国を席巻したチ○ンラーメン(鶏精拉麺)を中華民国が知るまで時間はかからなかった。袋が満州国向けにデザインされていたこともあり、当初は満州国製と誤解されて爆発的に広まった。しかし……。


『鶏精拉麺は日本製らしいぞ!?』

『なんてことだ!? だたぢに排斥しないと!』

『日本鬼子許すまじーっ!』


 チキ○ラーメンが日本製であることがバレて大規模な排斥運動が発生することになった。そもそも、日○食品も満州国側もが日本製であることを隠してなどいなかったのであるが。


『でも、美味いよな?』

『こんな美味いものを日本鬼子が作れるはずがない!』

『『『そうだ! そうだ!』』』


 なお、中華民国で突発的に発生した一連の暴動は速やかに収束した。

 これには暴動鎮圧を覚悟していた中華民国総統の蒋介石(しょうかいせき)も拍子抜けであった。


 如何に反日を叫ぼうにも胃袋が誘惑に勝てるはずもない。

 史実中国はインスタントラーメンの年間消費量が世界1位の市場だったのであるから。


「……しかし、ここまでチ○ンラーメンが成功すると次はアレだよなぁ?」

「だねぇ。先ずは容器を開発する必要があるだろうがな」

「えっ、紙容器じゃダメなのか?」

「そりゃ平成もだいぶ後の話だぞ? 当時は発砲スチロールだ」


 この世界を席巻しているチ○ンラーメンであったが、モブたちは満足していなかった。史実の某浅間山荘とか、あるいは某カリオストロとかで大活躍したアレの再現を目論んでいたのである。


「やっぱり醤油味だよなぁ?」

「何を言う。カレー味がマストだろぉ?」

「シーフードに決まっているだろうが表出ろ!」

「いや、普通に3つとも再現しようぜ……」


 3つの味はカッ○ヌードルの定番中の定番と言える。

 しかし、モブたちは定番の味に満足していなかった。


「いやいや、焼き豚しょうゆ豚骨も捨てがたいぞ! おれは箱買いしてた!」

「ジェームス・ブラウン推しの俺はミソしか勝たん!」

「バリトン味も悪くないと思うのだが?」

「熱帯シーフードヌードルも良いぞ!」

「チャイナ 旨味オイスター醤油一択だろうが!?」

「ミートキングで謎肉食いてぇ……」

「パンプキンポタージュヌードルも悪くないぞ? ちょっと癖があるけど……」

「旨辛豚骨また食べたいなぁ」


 モブたちの好みは千差万別。

 いったん火が付くと際限が無い。


 史実においても、カッ○ヌードルは多種多様な味が発売されていた。

 無駄に舌が肥えた日本人を満足させるためだったのは言うまでも無いことであろう。


 その数驚愕の常時25種。

 これに季節限定やご当地バージョンを加えるとさらに増える。その豊富さと味の良さは外国人観光客が好んでお土産にするほどであった。


「この際だからBIGも作ってもらおうぜ!」

「KINGもだ!」

「「「良いねぇ!」」」


 モブたちの趣味嗜好を押し付けられた日○食品は、筆舌に尽くしがたい困難の果てに開発に成功した。史実同様にカッ○ヌードルは世界中を席巻することになるのである。


「……失礼しますっ! 総理が皆さんをお呼びでありますっ!」


 なおもカッ○ヌードル談義に花を咲かそうとしたところを、無慈悲にもボーイが強制中断させた。モブたちはゾンビのような動きで総理執務室へ向かうのであった。


『計画書には目を通した。これで問題無いから進めてくれ』

『えっ、本当にやるんですか? 国内から船を搔き集める必要があるから、出来ればやりたくないのですが』

『もはや時勢は、やるやらないの段階を過ぎておるのだ』

『りょ、了解です……うぅ、また徹夜だぉ……』


 血を吐きながら走ったマラソンの先は、さらなるデスマーチの始まりに過ぎない。モブたちは再びタヌキの巣へ引き返して仕事に励むのであった。







『英国 帝国に加奈陀への派兵要請』

『東條首相 チャーチル首相の要請受諾か』

『問われる日英同盟の意義』


 1943年4月20日早朝。

 その日の朝刊の一面記事はカナダ派兵の詳細を伝えるものであった。


「号外っ! 号外だよーっ! カナダへの派兵が正式決定したよーっ!」


 ハンドベルを鳴らしながら、新聞販売員が号外を配る。

 道行く帝都民たちが号外に殺到したのは言うまでも無いことであった。


『帝国は日英同盟に基づき、カナダへの派兵を決定いたしました』


 同日午前中に東條総理は緊急記者会見を実施。

 カナダ派兵が真実であったことを国民は再認識することになった。


『日本がカナダへ派兵した場合は宣戦布告とみなす!』


 アメリカ連邦側の動きも早かった。

 連邦書記長レフ・トロツキーの宣言は、事実上の宣戦布告であった。


「休会中にこのような大事なことを決めるとは何事だーっ!?」

「東條総理は責任を取れーっ!」

「ただちに総辞職しろーっ!」


 昼下がりの千代田区永田町二丁目。

 首相官邸の門前には、大勢の人間が抗議のために押し寄せていた。


「うわぁ、なんだあいつら」

「民政党と政治結社の連中だろ」

「煩くてかなわん。仕事が捗らんぞ……」


 門前の様子は首相官邸2階のタヌキの巣からも、はっきりと見て取れた。

 はっきり言って、仕事の邪魔以外の何物でもない。


「民政党の連中は親米反英だから、今回の決定を気に入らんのは分からんでもないがなぁ」


 窓に寄りかかって一服するモブ。

 これ幸いと、タバコ休憩するつもりであった。


「だが、連中の資金源だったモルガン商会はイギリスに亡命したんだろ?」

「だとしたら、連中のバックにいるのは何者なんだ?」

「分からんな。今の民政党の体たらくを見て支援するような勢力は存在しないと思うが」


 民政党の有力なスポンサーだったモルガン商会は、アメリカ崩壊時に英国へ亡命していた。それ以前に政治資金規正法で国籍条項を盛り込むという、大チョンボをかましてたりするのであるが。


 対米感情が悪化している状況で米国から献金を受けたら外聞が悪い。

 この世界の民政党は自分で自分の首を絞めてしまったのである。


「単純に政府のやり口が気に食わんだけじゃね? 俺らが生きてた時代にも何でも反対する野党がいたじゃんか」

「「「あー」」」


 現在の民政党は史実の中〇連の如く与党憎しで集まっただけの烏合の衆に過ぎなかった。そんなのを好き好んで支援する勢力がいるとは思えない。考え無しに反対しているだけと考えたようが納得はしやすかった。


「おい、様子が変だぞ?」

「あいつら突破するつもりか!?」


 正門前から聞こえる怒号。

 警官の必死の制止もむなしく、暴徒と化した連中は進入を開始した。


「全小隊を官邸入口前に集結させろ!」

「これ以上の狼藉を許すな!」

「塞げ塞げ! 此処を絶対に通すな!」


 官邸側でも動きがあった。

 濃紺の衣装に身を包んだ総理官邸警備隊が警備行動を開始したのである。


「P弾撃てっ!」

「了解っ!」


 一切の躊躇なく、擲弾筒が発射される。

 暴徒の前に着弾、転がった擲弾は一瞬の間をおいて炸裂した。


「ゴホッゴホッ!?」

「目がぁ、目がぁ!?」


 強烈な刺激が暴徒たちの動きを止める。

 P弾のPはパウダーの略であり、あたりに飛び散ったのはカプサイシン系の粉末であった。


「総員吶喊(とっかん)! 無力化しろっ!」

「「「おぉっ!」」」


 防毒マスクを装着した隊員たちが、一斉に飛び掛かる。

 鮮やかなな手並みで手錠がかけられていく。


「き、貴様ら、(わし)を誰だと思っている!?」


 でっぷりと太ったスーツ姿の男が喚く。

 襟元には議員記章(バッジ)が輝いていた。


「えぇ、ヤジでお馴染みの先生ですよね?」


 そう言いながらも、隊長が後ろ手に手錠をかける。

 その動きには、全くと言って良いほどに躊躇も遠慮も無い。


「分かっているなら離さんか!? 儂は国会議員なんだぞ!?」


 怒号をあげる様子は、子供ならチビってしまいそうなくらいに迫力があった。

 生憎と、修羅場をくぐってきた隊長には全く効果は無かったが。


「先生。議会閉会中は不逮捕特権は適用されませんよ?」


 呆れたような口調で件の議員先生に言い放つ隊長。

 素人ならともかく、本職がそのような基本的なことを理解していないことが信じられなかった。


「えっ? あっ!?」


 今頃になって気付いたのであろう。

 みるみるうちに顔面蒼白となる。


「どうせ、たたけば埃が出てくる身でしょう。公安にきっちり絞られてきてください」

「い、いやだーっ!? あいつらは容赦が無さ過ぎるんじゃよーっ!?」


 場をわきまえずに大の男が泣き喚く。

 見苦しいことこの上ないが、それだけ公安を恐れている証左とも言えた。


 この世界の公安警察は史実の特別高等警察(特高)そのものである。

 その取り調べは苛烈で、じつに容赦がない。せめてもの救いは、今のところは公式発表では死者が出ていないことであろう。


「ヤメロー! ヤメロー!? 死にたくなぃぃぃぃぃぃっ!?」

「あぁもう、いい加減あきらめてくださいよ。おーい、手を貸してくれ!」


 ジタバタと暴れるデブを3人がかりで押し込む。

 いすゞ BX40型を改造した護送バスは、たちまちのうちにすし詰め状態となった。


「……いやぁ、凄いモノ見たなぁ」

「休憩中の見世物としては上出来だったな」

「今後もこんなことが起きるのかねぇ?」


 ディーゼル音も高らかに、官邸敷地を出ていく護送バス。

 その様子をモブたちはタヌキの巣(特等席)から見物したのであった。


「……さて、仕事に戻るか」

「だな。今日くらいは日付が変わる前に帰りたい」

「よし、気合入れるか!」


 余興が終われば、お仕事の時間である。

 栄養ドリンクを一気飲みして仕事に取り掛かる。


「船の調達どうしようかねぇ? 船主激怒案件だぞこれ」

「カーフェリーをかき集めるしかないな」

「補償額の計算めんどくえぇ……」


 陸軍2個師団に太平洋を渡らせるべく、首相秘書官ズはひたすら計算作業に没頭する。結局、彼らはその日も泊まり込むハメになるのであった。







「ん? これは……磁気探知機に反応有り!」


 操作員が耳を澄ませると、イヤホンから独特な音が聞こえてくる。

 数舜後に検流計の針が振れ警報灯が点滅。機内にブザーが鳴り響いた。


「信号弾発射されましたっ!」


 見張り員からは、翼内発射筒から信号弾が投下されたことが報告される。

 探知から信号弾投下までは完全自動化されており、10秒以内の早業であった。


「海面の着色を確認!」


 投下された信号弾には、フルオレセインが充填されていた。

 海面に鮮やかな蛍光色の花が咲く。


 カナダ向け船団のつゆ払いをするべく、九四式飛行艇は太平洋上の哨戒飛行に余念が無かった。この世界の2式大艇に相当する巨大飛行艇には磁気探知機(KMX)が搭載されており、潜水艦探知に猛威を振るっていた。


 この世界のKMXも航空機搭載用の磁気探知機であった。

 史実では戦争末期に実戦投入されて威力を発揮したが、この世界では海軍の平成会派の尽力によって早期実用化に成功していた。


 KMXの技術の肝は、潜水艦の磁場を機上のサーチコイルに通過させて出力電圧を増幅検知することにある。仮に3000t級の潜水艦の上方80mを220km/hで通過すると飛行機上のサーチコイル(直径50cm、巻数1万回)に誘発される電圧は160μVとなり、160mの上空にあっては10μV程度となる。


 これほど微弱な信号をピックアップするには、史実日本の電子技術では筆舌にし難い苦労があったのは間違いない。信号を拾うだけでなく、ノイズの除去と増幅までこなす必要があるのでなおさらであろう。


 平成会による技術チートにも限度がある。

 それ故に、この世界においても潜水艦の磁器検知が難しいのには変わりがない。


 しかし、一つだけ決定的に異なる要素があった。

 それはVFDの存在である。


 VFDは構造的には3極真空管であり、増幅作用があった。

 増幅作用そのものは、そこまで大きくない。しかし、段数を重ねることで増幅作用を大きく出来る。


 VFDの低ノイズと増幅作用は、真空管に拘る人間にとっては極めて有用と言える。そうでなければ、史実の蛍光表示管メーカーが製造技術を応用して音響用に専用設計した真空管アンプを作るはずがない。


 この世界のKMXはVFD技術を応用することによって、史実以上の探知精度と探知距離を実現していた。素子自体が真空管よりも小型省電力なので、装置自体も小型化出来るというおまけつきであった。


「……再び反応有り!」

「信号弾投下!」


 再び反応を検知したKMXが2発目の信号弾を発射する。

 海面に再び蛍光色の花が咲く。


「方位確定! 針路0-7-5、敵速3kt(ノット)です!」

「よし、対潜攻撃用意!」


 海面に咲く2つの花の距離と角度で、敵潜水艦の針路と速度が割り出せる。

 ここから先はサメ狩りのお時間である。


「気泡が上がってこないな。外れたか」


 とはいえ、KMXが潜水艦絶対殺すマンというわけではない。

 いくら探知精度が上がったところで、攻撃手段は無誘導の爆雷に過ぎないのであるから。


 史実においても、爆雷による潜水艦への攻撃精度の低さは問題視されていた。

 だからこそ、ヘッジホッグ等の対潜兵器が実用化されたのであるが。


 この世界の帝国海軍の駆逐艦は、英国からの技術供与でヘッジホッグを既に装備していた。しかし、航空機用の対潜兵器は未だに爆雷が主役であった。


 この問題を解決するべく、平成計算機工業では航空機搭載用の対潜魚雷を開発を試みていた。航空魚雷をベースに開発を進めてはいるものの、現状では技術的課題が山積みで試作品すら出来上がっていない状況であった。


『くそっ!? なんなんだあいつは!? こちらを捉えているとでも言うのか!?』

『音源遠ざかります……いや、また近づいてきます!?』

『もっと潜れ! このままだとなぶり殺しだぞ!?』


 もっとも、そのような事情は海面下のポーパス級潜水艦には関係無い。

 遠ざかっては近づいてくる爆音と、投下される爆雷の爆発音と衝撃にクルーの神経は現在進行形でガリガリと削られていた。


「5発目投下ぁ!」

「気泡は確認出来たか?」

「確認出来ません!」


 KMXに検知されたら磁気反応を検知した瞬間に信号弾が投下される。

 飛行艇が鈍足とはいえ、その機動力は潜水艦とは比較にならない。それ故に、一度KMXに補足されると逃げるのは極めて困難であった。


 おまけに、九四式飛行艇は16発もの対潜爆雷を装備出来た。

 爆雷の命中精度が低くても、命中するまで投下すれば問題は無いのである。


『ダメージレポート!』

『衝撃でバッテリーが破損しました! 有毒ガスが発生しています!』

『バッテリー室閉鎖! クルーは退避急げ!』


 そのような事情など海面下のポーパス級には以下略。

 回避に徹して、上空からの攻撃を逃れようと必死であった。


『ダイブ! ダイブ! ダイブ!』

『安全深度を超えてしまいますよ!?』

『すぐに圧壊するわけじゃない! いいから潜れ!』


 この時代の潜水艦の安全深度の設定に関しては、いろいろと逸話がある。

 史実のUボート(U29)が、空母カレージアスを撃沈した際に安全深度50mを超える80mまで潜って攻撃をかわしている。この報告を受けた潜水艦隊司令長官カール・デーニッツは、安全深度を80mに改めたと言う。


 これは潜水艦の安全深度がどんぶり勘定で定められているということではない。

 当時はそこまで精密に計算出来なかったというだけである。


 潜水艦の耐圧殻にかかる水圧は、水深に依存する静水圧と爆雷の衝撃圧の2種類がある。前者はともかく、後者はコンピュータの無い時代に結果を求めるのは難しい。実際に攻撃を受けてダメージを測定しないと結果を導けるものではない。


 分かりやすい目安としては、艦の全長くらいの深さしか潜れないというものがある。実際、この時代の潜水艦の深度は艦の全長に前後する程度の潜航深度でしかない。


 ポーパス級潜水艦の深度は、瞬間的に100mに迫った。

 艦内のあちこちから聞こえてくるミシミシという音に、クルーたちが生きた心地がしなかったのは言うまでも無いことであった。


「10発目投下確認!」

「しぶといな……それとも誤探知か?」

「至近弾で浸水して沈んでしまったかもしれませんね」


 爆雷が直撃しなくても至近弾であれば潜水艦にダメージは与えられる。

 それは、ある意味なぶり殺しと言えなくも無い。


「帰路のことを考えると、少しは残しておきたいであります」

「そうだな……よし、引き揚げるぞ! 念のため反応があったことを打電しておけ」

「了解!」


 攻撃を続けること20分少々。

 手ごたえが無いことを無念に思いつつも、九四式飛行艇は後続機に任務を引き継ぐべく海域を離れていったのであった。


「……エンジン音遠ざかります」

「本当か? また近づいてくるんじゃないのか?」

「否定できませんね」


 頭上から爆雷を落とされまくったポーパス級は、しぶとく生き延びていた。

 安全深度を超えて潜航したことで磁気探知から逃れることに成功していたのである。


「10分経ちました。さすがにもう大丈夫なのでは?」

「もうエアーも限界か。このまま窒息死するよりはマシだな。よし、メインタンクブロー! 浮上する!」


 艦長の命令でポーパス級は緊急浮上を試みる。

 既に艦内の空気汚染は深刻な領域に達しており、一刻の猶予も無い状況であった。


「……あの悪魔は去ったようだな」


 司令塔のハッチから素早く身を乗り出して周囲を確認する艦長。

 時刻は既に夕暮れ時であったが、周囲に敵らしいものは確認出来なかった。


「まずはダメージレポート! 次に応急修理だ。急げ!」


 安全が確保されたと判断した艦長は、艦の損傷チェックと応急修理を命じた。

 艦の内外でクルーが損傷個所を調べ上げる。九四式飛行艇が再度飛来する可能性を否定出来ないだけに、皆必死であった。


「ダメです。通信マストが折れて通信不可能です」

「バッテリーが損傷しています。パワーは半分出せれば良いほうかと」

「外装式発射管が歪んでいます。発射した瞬間に爆発しかねませんよこれは」


 あがってくる報告は酷いものであった。

 大量の爆雷の至近弾でなぶられたのあるから、この程度で済んだのは奇跡とも言えなくもないが。


「あの悪魔がまたやって来ないとも限らん。可能な限り修理を急いでくれ」

「「「アイアイサー!」」」


 かくして、ポーパス級潜水艦は応急修理のために海域に留まることになった。

 このことが思いもよらない出来事を生むことになるのである。







「まさか、エンジン故障とはなぁ」

「満州事変に使用したから、船齢はとっくに20年越えだろう? 下手すりゃ30年超えてるかもしれん」

「これが平成だったら、とっくにフィリピンあたりに売り飛ばしているよなぁ」

「違法改造されて沈むんですね。分かります」


 平成造船の技術モブたちは、さんふらわぁ丸の船橋(ブリッジ)でぶーたれていた。

 その原因は、エンジン故障でカナダ行きの船団から置いてけぼりを喰らったからに他ならない。


 カーフェリーを中核に構成されているのが、カナダ行きの船団の特異な点と言える。今回の作戦のために国内の主要航路に就役している船舶が根こそぎ徴用されていた。


 カーフェリーは、車両と旅客を同時に輸送出来て迅速な積み下ろしが出来る。

 それは言い換えれば、戦車と兵士を同時に輸送出来るということでもある。


 実際、史実冷戦期の極東ソ連軍は上陸作戦に用いられないか神経を尖らせていたという。日本国内に就役している大量のカーフェリーで戦車や陸自隊員を一気に大量輸送されたらと考えると、確かに悪夢であろう。


「艦長! 左舷4000ヤード! デカい船が航行してます!」

「なんだと!?」


 部下の報告を受けたポーパス級の艦長は、双眼鏡で確認する。

 レンズ越しに見えるのは、白亜の船体の側面に太陽を意匠したと思われる派手なマーク。船団からはぐれた子羊は狼に発見されてしまったのである。


「敵潜からの発光信号だと!? 何と言っている?」

「停船しないと撃沈すると言っています」

「この海域は掃除したんじゃなかったのか!? 海軍は何をやってたんだ!?」


 さんふらわぁ丸のブリッジは騒然となった。

 普通のカーフェリーが、目視可能な距離で潜水艦から逃れる術は無い。


「このままだと撃沈されます。船長!?」

「……この船は陸軍を乗せている。彼らの意見を聞くことが重要だろう」

「そんな悠長なことを言ってる場合ですか!?」


 若いクルーが、さんふらわぁ丸の船長に詰め寄る。

 戦争を経験していない世代のせいか、完全にパニック状態に陥っていた。


「ちょっと待ってください! なんで敵潜は、わざわざ発光信号なんて送ってきたんですかねぇ?」

「普通なら通信を入れてくるだろう。不自然じゃないですか?」


 ここで割って入ったのが、平成造船の技術モブであった。

 若手クルーと歳は大差無いのに彼らは落ち着き払っていた。


 モブたちは、この状況をじつは楽しんでいた。

 これは平成会のモブ全般に言える傾向だったりする。


 異世界転生というテンプレを身をもって体験したせいか、目の前の出来事を他人事のように捉えてしまうのである。今回の騒動もハプニングくらいにしか考えていなかった。


「何か事情があると言いたいのかね?」


 船長も、モブの話に乗って来た。

 このままでは埒が明かないと考えていたのだろう。


「おそらく損傷して通信が出来ないのではないかと。海軍さんのお掃除から命からがら逃げ伸びたというところでは?」

「ふむ、通信長。不審な通信を傍受していないか?」

「いえ、本船の定時通信に対する返信のみです」

「ならば、本船は敵潜を振り切ることにしよう」


 船長は敵潜からの逃走を選択した。

 見た目は枯れ枝の如き好々爺であったが、いざという時の肝は据わっていた。伊達に従軍はしていない。


「敵船、加速しています!」

「ブラフがバレたか!? 一発お見舞いしてやれ! それと通信マストの修理を急げ!」


 さんふらわぁ丸の動きを見たポーパス級の艦長は、直ちに攻撃を決断した。

 状況は不利になりつつあったが、まだ負けていない。やりようはある。


「レディー……ファイア!」


 ポーパス級の前部に備えられた50口径76mm高角砲が火を噴く。

 視認距離で相手は1万t級の大型船。狙いたがわず、さんふらわぁ丸の中層デッキ部分に命中したのであるが……。


「なっ!? 回避だっ! 回避運動急げっ!」


 さんふらわぁ丸から放たれる多数の発砲炎。

 一瞬遅れて、砲声と周囲に大量の水柱が上がる。


 ポーパス級の砲撃で大穴が空いた中層デッキ部分。

 そこは八七式中戦車改(キングチーハー)が駐機されている場所であった。


「よくもやってくれやがったな!」

「戦車で潜水艦を沈めたら後世まで名が残せるぞ!」

「砲弾は気にするな! 沈んだら終わりなんだから、撃ち尽くす勢いでいけ!」


 彼我の距離は4km近く。

 戦車戦ではまず考えられない距離であったが、戦車兵たちは怒りに任せて発砲しまくっていた。


「艦長!? 被弾して抜かれました。潜航出来ません!」

「なんだとぉ!?」


 下手な鉄砲もなんとやら。

 キングチーハーの47mm戦車砲から放たれた新型HEAT弾は、射程外だったにもかかわらずポーパス級の耐圧殻を貫徹していた。


「8000ヤードまで距離を取れ! こうなったら魚雷で沈めてやる」

「「「アイアイサー!」」」


 事ここに至っては、撃沈するしか手段は無くなった。

 未だに周囲に発生し続ける水柱を背にして、ポーパス級はゆっくりと移動を開始する。


「右舷雷跡! 2本です!」

「とりかじ一杯!」


 ポーパス級の雷撃を、さんふらわぁ丸は辛うじて回避する。

 しかし、急激な転舵で船足は大きく落ちていた。


(悪く思うなよ……)


 止めの雷撃を喰らわす瞬間、ポーパス級の艦長は潜望鏡越しに黙祷する。

 外装式を除く艦首の魚雷全門、この距離で扇状に撃てば確実にどれかが命中する。


「オールファイア!」


 発射されたMk14魚雷が31ktで海中を突進する。

 さんふらわぁ丸に攻撃を逃れる術は無い。無いはずであった。


「白い先端の手前を狙え!」

「多少早いヤツを狙うと思えば問題無い!」

「当てたやつは英雄だぞ!」


 中層デッキに空いた穴から海面を睨む鋼鉄の猛獣たち。

 史実において無駄に俯角が取れる日本戦車の特徴は、キングチーハーになっても健在であった。


 こちらを狙っていることは分かっているので、待ち構えているだけで事足りる。

 あとは発砲タイミングの問題であるが、命中するまでに複数トライが可能なので成功率はさらに上がる。


()ぇっ!」


 戦車隊の隊長の号令と共に、鋼鉄のバレルも裂けんとばかりに47mm砲が咆哮する。片手で装填出来るので、熟練の砲手が扱うと速射砲の如き連射であった。


 とある魚雷は、海面に撃ち込まれる47mm砲の水圧で針路を狂わされ。

 また、とある魚雷は弾頭に直撃を受けて爆発四散する。


「なんだこの音は!?」


 ポーパス級の艦長は水平線の向こうから聞こえてくる水中騒音に戸惑っていたが、聞いていると事の次第が理解出来た。それはあまりにも馬鹿馬鹿しくて、理解し難いものであった。


「艦長、艦内の魚雷全部撃ち尽くしました……」


 ポーパス級は艦内に16本の魚雷を搭載していた。

 しかし、今回の戦闘でその全てを撃ち尽くしてしまっていた。


「なんということだ!?」


 普段はクレバーなはずの艦長は切歯扼腕して悔しがる。

 不幸と偶然が折り重なった結果とはいえ、これではあまりにもあまりすぎる。


「まだ外装式の魚雷があります。損傷していますが使えるかもしれません」

「やめておこう。せっかく命を拾ったのに、ここでギャンブルをする趣味は無い」


 それでも、最後の最後で思いとどまれたのは彼が優れた潜水艦艦長だからに他ならない。満身創痍ながら、ポーパス級はハワイへ帰還することが出来たのである。







「……そうか、分かった。引き続き海軍で責任を持って掃海に努めると陸さんには伝えてくれ」


 連合艦隊司令部の長官公室。

 部屋の主である山本五十六(やまもと いそろく)海軍大将は、受話器を置いてため息をついていた。


 電話内容は、さんふらわぁ丸が雷撃を受けたことに対する陸軍からの苦情と感謝であった。苦情だけならともかく、感謝とはどういうことなのか?そこには現地の複雑な事情が関係していた。


 海軍側の掃海が不徹底なことで、さんふらわぁ丸が攻撃を受けたことは事実である。陸軍からすれば、これはクレーム案件以外の何物でもない。


 しかし、準戦時と言える現状では多少のリスクは受け入れるしかない。

 さんふらわぁ丸は多少損傷したものの、輸送している陸軍部隊には人的・物的損傷は無かった。それ故に、クレームは形式的なもの過ぎなかった。


『戦車で魚雷を撃破したぞ! これは勲章ものだろ!?』

『我ら皇軍、米連など恐れるに足りず!』

『ヤンキー相手に負ける気がしないぜ!』


 そして、お客様であるはずの兵士たちの士気は天を衝くばかりであった。

 現場に居たモブたちの機転があったにせよ、敵潜による攻撃から母船を守ったのは事実なのである。


『さんふらわぁ丸の連中に負けるな!』

『あいつらに出来て俺らに出来ないはずがないっ!』

『ヤンキーの戦艦が来ても返り討ちにしてやらぁ!』


 さんふらわぁ丸の一件を知った他の船の兵士たちの士気も爆上がりしたのは言うまでも無い。士気が低いよりも高いに越したことは無い。陸軍の苦情と感謝というのは、そういうことなのであった。


「それで、敵潜の根城は分かったのか?」

「やはり、ハワイから来たようですな。パールハーバーに大規模な潜水艦基地が建設されているようです」


 ソファに座っていた宇垣纒(うがき まとめ)海軍中将が、テーブルに調査結果を広げていく。

 帝国海軍と大日本帝国中央情報局(JCIA)の共同調査によって、ハワイのパールハーバーに大規模な潜水艦基地が建設されたことが判明したのである。


「船団は一度やって、はいおしまいでは済まん。陸さんの食糧や弾薬を現地調達するには限度がある」

「今回は不幸中の幸いで済みましたが、ボカチンするようなことがあれば総理が怒鳴り込んでくるでしょうなぁ」


 日本―カナダ間には広大な太平洋が横たわっている。

 米連からすれば、この長大な航路に付け入る隙はいくらでもある。


 史実の米帝チートならば、必要な護衛戦力を貼り付けることも決して不可能ではないだろう。しかし、この世界の日本が如何に平成会チートで強化されようとも限度というものがある。


「KMXによる潜水艦狩りは画期的と言っていい。しかし、それでも米連の潜水艦を根絶には至ってない」

「なんといっても、数が少なすぎましょう。現場からは九四式飛行艇(大艇)をもっと寄越せとの声もありますが?」

「無茶を言うな。現状でも回せる機体を根こそぎ動員してるんだぞ」


 潜水艦を一方的に攻撃、撃破出来るKMXは対潜戦術の革命であった。

 しかし、その効率はお世辞にも優れているとは言えなかった。大艇が搭載する対潜爆雷全弾(16発)を投下しても撃破確認に至らないケースもあった。


 潜水艦の暗躍を掣肘することは出来ても撃沈までには至らない。

 これが現状のKMXの限界でもあった。


 普通に考えれば、これだけでも充分過ぎる戦果と言える。

 しかし、相手が無制限潜水艦作戦を仕掛けてくると阻止するのは極めて難しいものがあった。


「KMX搭載の大艇の生産を急がせているが、あれは戦闘機みたいにホイホイ作れるものではないからな……」


 九四式飛行艇は川西航空機と平成飛行機の共同開発であった。

 機体製造を1社で完結出来ないわけで、両社での調整その他諸々で製造期間はどうしても長くなってしまう。倍プッシュで大型4発機なので、必要な生産コストは爆上がりであった。


 これに加えて、KMXの艤装には平成計算機も絡んでくる。

 高度な専門知識と微細なセッティングが必要になってくるので、なおさら生産が遅延していたのである。


「水雷戦隊で潜水艦狩りをすれば良いのでは?」

「あいつらは、今まで戦艦を喰うことばかり考えていたせいで地道な作戦を敬遠する傾向があってな……」


 水雷屋の鼻息を荒くさせた原因である特型駆逐艦は、砲雷撃には優れていても対潜作戦には向いていなかった。爆雷を積む余裕があるなら、魚雷を1本でも多く積みたいというのが彼らの本音であった。


 勉強会で矯正したにも関わらず、水雷屋の対艦番長ぶりを海軍の平成会派は危惧していた。特型改4(バッチ4)として史実島風型をベースにしたマルチパーパスな駆逐艦の建造を急ぐ理由でもあった。


 しかし、島風型は高性能故に建造に手間がかかった。

 それ故に水雷戦隊では未だに少数派に甘んじていた。


 それでなくても、対潜オペレーションは地味で精神をすり減らす作業の連続である。血の気の多すぎる帝国海軍の水雷屋が、そのようなことを真面目にやれるかは大いに疑問であった。


「そうなると、敵潜を根絶するにはハワイの潜水艦基地を破壊するしかないでしょう。長官ご自慢の機動部隊の出番では?」

「宇垣くん……君、分かって言ってるだろう?」

「さて、なんのことやら」


 現状でハワイを潰せる戦力を帝国海軍は保持していた。

 山本が構想し、山口多門海軍少将(人殺し多聞丸)が鍛えに鍛えた一航戦以下の機動部隊。動員すれば即刻ハワイを更地に出来るが、機動部隊を動かしたくても動かせない事情が帝国海軍には存在した。


 この世界の一航戦も化け物揃い。

 一般兵でもエースクラスの技量は保証されていた。


 しかし、いざ戦闘となれば人的損失は避けられない。

 戦争となれば損失は覚悟しなければならないが、問題は捕虜となった場合であった。


 旧アメリカ合衆国はハーグ陸戦条約に加盟していたが、それを米連が守る保証はどこにも存在しなかった。独ソ戦におけるソ連の捕虜への待遇と同様かそれ以下の扱いをしてくる可能性が高かったのである。


 これがハワイ攻略作戦となれば、最終的に陸軍がハワイを占領してくれるので捕虜の救出も期待出来る。しかし、現状の帝国陸軍は2個師団をどうにか絞り出してカナダへ送る真っ最中であった。


 この状況で陸軍にハワイを占領する兵力を出せと言おうものなら、総理自ら軍刀を持って殴り込んでくるであろう。冗談抜きで山本の首が物理的に飛びかねない。


 とどのつまりは、機動部隊を動かさずにハワイの潜水艦基地を壊滅させる必要があった。これは航空主兵論を常日頃唱えている山本にとっては屈辱的な状況であった。


「宇垣くん……」

「はい、長官」


 山本には宇垣が笑みを浮かべているように見えた。

 実際はそんなことはなく、いつもの鉄面皮であったが。


「……君の裁量で、ハワイの潜水艦基地を潰す作戦を即刻立案して実行してくれたまえ」

「謹んで拝命致します。戦艦が時代遅れでは無いことを証明してみせましょう」


 長官公室を退室していく背中を山本は見送ことしか出来なかったが、それはある意味幸せなことだったのかもしれない。世の中には知らなくても良いことはたくさんある。


 何故ならば、この時の宇垣は笑顔であった。

 見たら確実に夢に出てくること間違い無しな、それはそれは素敵な笑顔だったのである。







「ジャパニーズだっ!? ジャパンから援軍が来てくれたぞっ!」

「遠いところをウェルカム!」

「アリガトウ、コンニチワ……で、いいのか?」


 カナダ西岸ブリティッシュコロンビア州。

 バンクーバー港では、援加船団の第1陣が続々と入港していた。


「おいっ、なんだあれ!?」

「船から戦車が!?」

「ジャパニーズはあんな船を作っていたのか……」


 物見高いバンクーバーっ子を驚かせたのがカーフェリーの存在であった。

 片舷のランプウェイが開いて大量のトラックや戦車が自走して出てくる様子に皆が目を丸くしていたのである。

「おぉ、ここがカナダか!」


 助手席から大きく身を乗り出す一人の下士官。

 内地勤務しかしていなかった身からすれば、目に入ってくる景色は全て新鮮なものであった。


「ちょっ!? 分隊長殿!? 危ないですってば!」


 慌てて部下が止めに入る。

 彼と部下たちが乗車する八四式六輪トラックは、州内に設けられた遠征軍の兵舎へ疾走中であった。


「勘弁してくださいよ分隊長殿。そんなんじゃ敵と戦う前に命を落としてしまいますぜ?」

「俺は死なんよ伍長。もし死ぬときは、ヤンキーの司令部に肉弾自爆するときだ」

「分隊長殿が言うと冗談に聞こえないんですよねぇ……」


 言っていることは絵空事にしか聞こえないが、目の前の上司は本気でやりかねない。それを実行出来るだけの戦闘力を持っていたのであるから。


 分隊長は銃剣術の達人で中隊随一の銃の名手であった。

 卓越した技量でもらった賞状と感状は数えきれず、部隊内で射撃徽章と銃剣術徽章の2つを同時に授けられた伝説の兵士として部下たちからの信望も厚かったのである。


『あれが噂の人間ターミネーター!? サインをもらわねばっ!』

『サバゲ―で卑怯極まりない手段取って来たけど、あの人にやられたら腹が立たないのは何故だろうな』

『史実であの人がダースでいたら日本は勝ってただろうなぁ……』


 ちなみに、件の分隊長は陸軍の平成会派からは大人気であった。

 知らぬのはなんとやらで、じっくりねっとりとモブから観察されていたのである。異能生存体が目の前に居たら、会いたくなるのは当然の心理と言えなくもない。


「……ようやく着いたな」


 接岸したカーフェリーの一等船室。

 帝国陸軍カナダ遠征軍司令官山下奉文(やました ともゆき)陸軍中将は胸をなでおろしていた。


 史実においては、旅団長として最前線で指揮官先頭を実践した山下は死を恐れてはいなかった。ただ、犬死をするつもりも無かった。陸軍軍人が土左衛門になるなど、もってのほかであろう。


「閣下。そろそろ降りましょう」


 辻政信(つじ まさのぶ)中佐が退船を促す。

 兵士たちはともかく、山下を筆頭にした司令部幕僚はそういうわけにもいかなかった。


「もう少しのんびりできないのか……」


 思わず山下はボヤく。

 しかし、幕僚たちの予定は分刻みであった。


 高級将官ともなれば、外交官の真似事をする必要もある。

 カナダ遠征軍の司令官となれば、なおさらである。


『……英国と日本は友邦であります。で、あるならばカナダも当然友邦であります。日本は英国と協力してカナダの脅威に立ち向かうものであります』


 ブリティッシュコロンビア州議事堂での山下の演説は、出席した議員たちから万雷の拍手もって迎えられた。国外で公的な立場でカナダ防衛に協力することを宣言することは、それはもう公約と変わりない。


 何が何でも実現しなければならないし、理由も無く止めたらペナルティは必至。

 大歓迎ぶりに笑顔を隠せない山下ではあったが、同時に追い込まれたことも自覚していた。


 演説の内容もであるが、英語で演説したことも受けが良かった理由であった。

 山下の英語力はネイティブには程遠かったが、それでもしっかりと意味が分かる程度の発音はしていた。


 ちなみに、史実においては陸軍では英語は敵性語として教育は縮小されていった。しかし、この世界ではむしろ英語教育が拡大される代わりにドイツ語教育が縮小されていた。


 そんなわけで、現在の帝国陸軍には英語を話せる軍人はそれなり以上に存在した。代わりにドイツ語を扱える人間は絶滅危惧種と化していたが。


『遠路はるばるようこそお越しくださいました。カナダの民を代表してお礼を申し上げます』


 由緒あるエンプレスホテルでは、カナダ総督アレクサンダー・ケンブリッジが直々に挨拶に来るほどであった。カナダ遠征軍がどれだけ期待されているか、分かろうと言うものである。


「……おはよう諸君。早速だが仕事にとりかかろう」


 州都ビクトリアに設置されたカナダ遠征軍司令部。

 元々は廃業したホテルを今回のために急遽改装したものであった。


「はっ、それでは報告致します。現在、バンクーバーにて陸揚げを行っている戦力は残り半月ほどかかる予定です」


 司令部の作戦主任である辻が現状を報告する。

 カーフェリーによる積み下ろしは極めて迅速であり、港から自走出来るので運搬手段を確保する必要も無い。


 史実では作戦の神様と謳われた辻であったが、兵站に疎い典型的な作戦参謀にそれがどれほど凄いことなのかは理解出来なかった。何はともあれ、輸送計画は怖すぎるくらい順調に進んでいた。


「カナダにおける情報源ですが、英軍頼りではなく独自の情報源が必要と考えます。現在、旧MI6カナダ支部の人間に接触をはかっています」


 参謀副長の馬奈木敬信(まなき たかのぶ)陸軍少将は、カナダにおける独自の情報網整備に乗り出していた。友軍である英国とカナダを信用していないわけではなかったが、独自の情報網を持つことが必要と考えていたのである。


「そういうことであれば司令官にも存分に働いてもらわなければ。しばらくは戦はありませんし」

「おいおい、俺は武人だぞ? 戦が無いのに何をしろというのだ?」


 女房役(?)の参謀長鈴木宗作(すずき そうさく)陸軍中将の発言に、山下は呆れた様子で口をはさむ。もちろん、陸軍大学主席卒の軍刀組な鈴木が意味の無い発言をするはずがない。


「これを機会にお偉いさんと顔をつないでおいてくださいと言っているのです。いざという時のコネは金にも何にでもなるんですから。末は陸軍大臣なんですから、もっと自覚してください」

「いや、それこそ貴様のほうが適任だろうに……」


 史実の山下は武人のイメージが強いが、じつは鈴木と同様に陸大卒の軍刀組であった。陸軍の要職を歴任してエリート街道を歩んでおり、2.26事件でしくじらなければ違った未来があったかもしれない。


 この世界では2.26事件が発生しなかったうえに、旧満州派が統制派を巻き込んで自滅してくれたおかげで山下はエリート中のエリート扱いであった。この作戦が終われば陸軍大将になることが内定していたし、陸軍内部では東條に対する対抗馬としての擁立も密かに進んでいた。


「じゃあ、わたしの代わりに英国とカナダの合同司令部に詰めますか?」

「……うむ。分かった」


 あらゆるモノが不足している遠征軍で、この才能を活用しないのはもったいなさ過ぎる。鈴木は何が何でも山下を扱き使うつもりであった。


「……まぁ、ともかくだ。我らは陛下に信任された精鋭だ。米連は手ごわいだろうが恐れることはない。だからと言って慢心することなかれ。粛々と任務を果たせ」


 帝国陸軍カナダ遠征軍の任務は始まったばかりであった。

 幕僚たちはもちろんのこと、兵士たちもカナダの地で何が起きるのか予想だにしていなかったのである。






以下、今回登場させた兵器のスペックです。


いすゞ BX40型


全長:6.15m

全幅:1.95m

ホイールベース:4.00m

エンジン:6気筒直列L型 4.4リッター 70馬力 

最高速度:70km/h


いすゞ自動車が製造するバスシャーシ。

ボディ架装は帝国自動車工業(日野車体の前身)が行っている。


この世界では圧倒的なシェアを誇る中型バスであり、帝都だけでなく地方でも見かけることが多い。警視庁でも護送バスや隊員輸送用バスとして採用されている。



※作者の個人的意見

史実のBX40型そのまんまです。

詳細なスペックがなかなか出て来なくて苦労しました(;^ω^)






川西/平成飛行機工業 九四式飛行艇


全長:28.13m   

全幅:38.0m      

全高:9.15m     

重量:18120kg(空虚重量)

  :32500kg(最大離陸重量)    

翼面積:160.0㎡

最大速度:468km/h(最大) 300km/h(巡航)

実用上昇限度:8850m

航続距離:7153km(偵察過荷)

飛行可能時間:24時間

武装:20mm旋回銃5基 7.7mm旋回銃4基

   爆弾最大2t(60kg×16 or 250kg×8 or 800kg×2)

エンジン:三菱 火星二六甲型 1760馬力×4

乗員:10~13名


1934年に制式採用された海軍の大型飛行艇。

実も蓋も無い言い方をすれば、史実の二式大艇である。


サンダース・ロー プリンセスを見た平成飛行機工業の技術者モブたちは、実用的な大型飛行艇を欲した。彼らは史実の二式大艇を再現することを狙ったが、飛行艇製造ノウハウを持たないために不可能であった。


単独で無理ならば巻き込んでしまえとばかりに、平成飛行機工業側は史実で二式大艇を設計した菊原静男に接触。アイデアを伝えたうえで、川西航空機に資金と技術を提供して協業することで史実よりも早期に開発することに成功した。


心配されていた初期トラブルも無く、史実の二式を襲名(皇紀2592年に採用が内示されていた)するはずであったが、量産段階で平成飛行機工業がライセンス生産したエンジンにトラブルが多発したため、他の国産エンジンを搭載して試験を継続することになった。


最終的に三菱の火星エンジンを搭載して制式採用されたのは2年後であった。

史実二式大艇は、この世界では九四式飛行艇として採用されたのである。


1943年の時点ではKMXを搭載して対潜哨戒機として猛威を振るっている。

米連の潜水艦乗りから死神の如く忌み嫌われる存在であったが、機体数が少ないことがネックであった。



※作者の個人的意見

エンジンを火星に載せ替えたら、エンジン単体で80kg軽くなりました。

合計で320kg軽くなったので、少しばかり飛行性能が向上しています。


この世界のKMXは真空管ではなく蛍光表示管で回路を作ってるので小型軽量省電力だったりします。元ネタは某艦隊シリーズの仙空だったりします。






ポーパス級潜水艦


排水量:1310t(水上) 1930t(水中)

全長:91.74m

全幅:7.59m

吃水:4.0m

機関:GM201Aディーゼルエンジン4基+電動機4基2軸推進

最大出力:4300馬力(水上) 2085馬力(水中)

最大速力:19.0ノット(水上) 8ノット(水中:モーター使用時)

航続距離:10ノット/11000浬(水上) 5ノット/50浬(水中:モーター使用時)

乗員:73名

兵装:50口径76mm高角砲1基

   12.7mm機銃2基

   7.62mm機銃2基

   21インチ魚雷発射管6基(艦首4 艦尾2)

   外装式魚雷発射管2基(艦首2)

   魚雷18本


ヴィンソン計画によって建造された艦隊型潜水艦。

現時点でもアメリカ連邦海軍の主力潜水艦である。



※作者の個人的意見

この世界における現時点でのガトー級ポジ。

ショッカー戦闘員の如く、わらわら出てきて刈り取られるやられ役であります(酷


あまりにもやら過ぎて、ガトー級かその発展型の投入が早まるかもしれませんねw






さんふらわぁ丸


総トン数:11312t

載荷重量トン数:3831t

全長:185.0m 

全幅:24.0m

機関:MAN式2号ディーゼル4基2軸推進

最大出力:24000馬力

最大速力:25ノット

旅客定員:1124名

   大型トラック84台、乗用車204台(史実基準)

   

平成会傘下の造船所が建造した、この世界初のカーフェリーにしてRO―RO船。

史実の初代『さんふらわぁ』を参考に建造しており、白亜な船体と側面の太陽をモチーフにした絵はインパクト抜群である。


史実と異なるのは搭載機関である。

史実の伊一型潜水艦に搭載されたラ式2号ディーゼルを搭載している。史実と名称が違うのは、この世界のドイツは敗戦したわけでは無いので、わざわざ気を使って名前を変更してまで中立国経由でライセンス契約する必要性が無かったからである。


背の低い潜水艦のエンジンを搭載して縦方向に余裕が出来たために燃料タンクの容量拡大がされており、オリジナルよりも長大な航続距離を確保している。


1943年5月に実施された援加船団派遣において、米連のポーパス級潜水艦を一騎打ちで撃退したことで一躍有名となった。陸軍の戦車隊が魚雷迎撃に加わったこと、命中した魚雷がことごとく不発だったことなどもあり、この世界では史実宗谷に匹敵する幸運艦として語り継がれることになる。



※作者の個人的意見

鹿児島県民なので一度は乗ってみたいと思う、さんふらわぁが爆誕しましたw


この時代の車両(戦車含む)は、現代の基準に比べるとかなり小さいので、旅客定員はカタログスペック以上に積載出来ると思います。チハたんなんて、高さを無視すれば、ちょっとでっかいアメ車程度のサイズしか無いので、普通に200両近く積むことが出来るでしょう。


史実の伊一型潜水艦は、10ノット/24400浬という長大な航続力を誇っていましたが、同様のエンジンを積んで燃料タンクもマシマシなさんふらわぁも同様かそれ以上の航続力を確保出来るでしょう。武装すれば仮装巡洋艦に早変わりですね(苦笑






八七式中戦車改


全長:5.55m  

全幅:2.33m  

全高:2.23m  

重量:19.7t  

速度:65km/h 

行動距離:200km 300km(車体側面外部燃料タンク込み)

主砲:47mm戦車砲 

副武装:八七式車載重機関銃×2(車体前面 砲塔天蓋)

装甲:125mm/25mm(車体正面/側面) 20mm(車体背面) 

   125mm/125mm/10mm(砲塔正面/砲塔側面/砲塔天蓋)

エンジン:統制型八二式発動機空冷4ストロークV型12気筒ディーゼルエンジン改2(インタークーラー+過給機付き)440馬力 

乗員:4名


八七式中戦車の改良型。

陸軍の内部文書では改型と呼称されているが、平成会のモブからは『キングチーハー』呼ばわりされている。


改型は新型戦車が実戦化するまでのストップギャップとしての役割を期待されており、短期間での戦力化が求められた。そのため、無理に性能を追い求めるのではなく目的に特化することで要求性能を満たす方向で改造が進められた。


具体的には、仮想敵に対して不足する攻撃力は新型砲弾によって補っている。

平成銃器が開発した新型成形炸薬弾は口径の4倍近い180mmの装甲を貫徹可能であり、条件さえ良ければ3号戦車の正面装甲を抜くことが可能であった。


不足する防御力に対しては、砲塔正面と側面、車体前面に100mm厚の装甲板を溶接することで対応している。その結果、4t近く重量が増すことになった。


大幅な重量増加による機動力低下はエンジン出力向上によって解決している。

統制型八二式発動機空冷4ストロークV型12気筒ディーゼルエンジンの過給圧を大幅に上げ、さらにインタークーラーを追加したことで五割増しの出力を得ることに成功している。


既存のエンジンをチューンナップすることで馬力を確保したのは開発期間を短縮するためであったことは言うまでも無いが、強化コンロッドやピストンなど多くの部品が強化部品に交換されているので中身は完全に別物であった。



※作者の個人的意見

キングチーハーというフレーズが頭から消えずに、気が付いたらこんなん出来ちゃってましたw

カタログスペックだけなら超優秀です。実際戦闘したら思いっきりボロが出そうですけど(;^ω^)


新型HEATの威力は保証済みですが、レアメタルを多用することになるので調達コストがえらいことに。でも、性能要求で弾薬費用をケチれって言われなかったのノープロブレムです(酷






八四式六輪トラック


全長:5.4m

全幅:1.9m

ホイールベース:3.35m

エンジン:いすゞ DA40型直列6気筒ディーゼルエンジン 85馬力 

最高速度:80km/h


この世界における九四式六輪自動貨車に相当する軍用トラック。

史実オリジナルよりもエンジン出力が向上したことで全般的な性能は上がっている。


史実と異なりガソリンエンジンモデルは設定されておらず、水冷ディーゼルのみとなっている。信頼性の高い頑丈なエンジンとシャシーの組み合わせにより、軍隊だけでなく払下げ後も民間で長らく活躍することになる。



※作者の個人的意見

この世界では平成会チートのおかげで統制型ディーゼルが早期に完成したので、それに合わせて車体の完成も早まりました。

日英同盟でさんざん美味しい汁を吸ってきた日本が、ついに利子付きで取り立てられる日がやってきてしまいました。これから英国の苦労をさんざんに味わってもらいますよ(邪笑


>二人は室内の打ち合わせテーブルへ向かう。

旧首相官邸の総理執務室は意外と広かったりします。

応接セットに打ち合わせテーブル、専用トイレまであったりします。


>ダイヤル式の黒電話

まさに昭和の遺物。

おいらも子供の時にしか使ったことないというか、物心ついたときからプッシュホンでしたからねぇ。


>「ハロー。そっちの天気はどう?」

世間話ではなく符丁だったります。

『余計な虫(盗聴)はくっついてない?』(意訳)


>『晴れのち曇りといったところだな』

こちらも符丁です。

『今のところは盗聴されてない』(意訳)


>音響カプラ

受話器のトーン音を利用する通信機器です。

おいらのイメージだとパソコン通信のイメージしかないですねぇ。


>アラン・マシスン・チューリング

史実で数々の業績を上げた偉人。

暗号解読では特に有名で、同性愛者であることも有名。


なお、この世界においてはブレッチリー・パーク勤務ではありません。

ドーセット領へ移転した多種兵器研究開発部(DMWD)勤務だったりします。ドーセット領ならば、過激なLGBT同人誌も合法ですからねw


>危険なバスに我が国が乗る必要はありません!

アジアインフラ投資銀行の煽り文句でマスゴミがバス云々言っていたような気がしますが、元ネタは戦前の新体制運動の合言葉だったりします。


>『タヌキの巣』

自援SS『変態日本御遊戯事情―サバゲー編―』参照。

元々は陸軍省の島流し場所でしたが、東條内閣が成立してからは首相官邸内にお引越ししています。


>広口魔法瓶

読んで字の如く、蓋が大きくて中身を入れやすい魔法瓶。

職人の手作りで戦前から存在していました。


>この世界では、カセットコンロは第1次大戦前に実用化されていた。

自援SS『変態英国グルメ事情―WW1レーション編―』参照。


>安藤百福

日清食品の創始者にして、チキンラーメンとカップヌードルを作った偉人。

この世界では平成会のモブたちに無茶ぶりされてる可哀そうな人。


>李紹庚

史実では1940年から1942年まで駐日満州国大使を務めていました。


>鶏精拉麺

チキンラーメンを直訳したもの。

なお、史実の中国で売っているチキンラーメンは日本のモノとは別物だったりします。


>「そりゃ平成もだいぶ後の話だぞ? 当時は発砲スチロールだ」

発砲スチロール製の容器にお湯を入れてシールを貼るのが良いのです。

うさ耳でシールレスなカップ麺はちょっと…(´・ω・`)


>ハンドベルを鳴らしながら、新聞販売員が号外を配る。

当時の新聞配達員は号外を配るときはハンドベルを鳴らしていました。


>「民政党の連中は親米反英だから、今回の決定を気に入らんのは分からんでもないがなぁ」

与党政友会が基本的に親英なので、野党である民政党は必然的に親米になっちゃったわけです。


>政治資金規正法で国籍条項を盛り込むという、大チョンボをかましてたりするのであるが。

与党を追い詰めようとしたはずが、自分ところの献金の大元を辿ったら海外からが大半だったというオチ。


>総理官邸警備隊

元ネタは史実の警視庁総理大臣官邸警備隊です。

この世界のは史実の機動隊をパクった装備をしています。


>襟元には議員記章(バッジ)が輝いていた。

議員と言えば議員バッジ。

衆議院と参議院で大きさとデザインが違ったり、引退した議員用のバッジがあったりと、意外と奥深いシロモノだったり。なお、議員バッジを付けていないと議場に入ることが出来ません。


>生憎と、修羅場をくぐってきた隊長には全く効果は無かったが。

本編第86話『決起と後始末』参照。

テッド君に裸締めを喰らった隊員が出世して隊長になってたりします。


>その取り調べは苛烈で、じつに容赦がない。

史実の特高の取り調べは苛烈なものがあり、作家の小林多喜二を筆頭に多くの社会運動家や思想家が亡くなっています。


>いすゞ BX40型

この世界におけるベストセラー。

バス以外にも様々な用途に使い倒されています。


>史実の蛍光表示管メーカー

ノリタケ伊勢(旧・伊勢電子工業)のことです。

昔から注目していまして、10年以上前から小説のネタにしていたりしますw


>投下された信号弾には、フルオレセインが充填されていた。

史実でもシーマーカーとして使用されています。

蛍光色ですが無害で自然に分解される成分です。


>ポーパス級潜水艦の深度は、瞬間的に100mに迫った。

潜った瞬間に圧壊するわけではないので、安全深度って計算がムズいんですよねぇ。


>Mk14魚雷

史実の欠陥魚雷の代名詞。

太平洋戦争序盤で米国の潜水艦艦隊の動きが鈍かったのはこの魚雷のせいだったりします。


>無制限潜水艦作戦

史実の第1次大戦のドイツがやらかし。

手あたり次第に沈めていったら、アメリカが参戦するきっかけとなってしまいました。


>サバゲ―で卑怯極まりない手段取って来たけど

具体的には軍隊サバゲーにおけるゾンビ行為。


>山下奉文

史実ではマレーの虎として有名な将軍。

この世界には2.26は無いので普通にエリート街道を驀進しています。


>辻政信

ご存じ作戦の神様。

この世界ではつじーんになれるのか、それとも……?


>カナダ総督アレクサンダー・ケンブリッジ

この時代のカナダ総督の人。

詳細はよく知らんかったりします。


>軍刀組

陸軍大学を優秀な成績で卒業したものに贈られる恩賜の軍刀(おんしのぐんとう)を手にした卒業生のこと。具体的には卒業席次上位6名のことを指します。前述の山下奉文も軍刀組だったりします。


>馬奈木敬信

あのリヒャルト・ゾルゲに陸軍省の情報源と手記に名前を挙げられている人物。

経歴を見ると情報畑の人としか思えない。


>鈴木宗作

この人も軍刀組だったりします。

史実マレーの虎の司令部はガチで優秀なヤツしかおらんのか……(汗

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― 新着の感想 ―
山口多門提督のルビがwww
カナダ派遣軍に辻の名前が・・・。確かに実績はあるんだけど心配は尽きない。 KMXですが、史実で信号弾を投げ込んでいる理由は、複数回の探知で敵潜の進行方向をマーキングして、進路前方に爆雷を投げ込む為じゃ…
中◯連だか、中革◯だか、ネタを提供してくれますね〜。 日本がカナダに派兵とか胸熱。 戦艦で真珠湾攻撃とかあるんすかね!?
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