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ステファニーは、部屋で本を読んでいた。
本当は温室に行きたかったが、今日は客人が来るため部屋にいるよう言われていたのだった。
そこへ、執事のハンスがやっきた。
「ステファニー様、失礼いたします。旦那様がサロンにいらっしゃるようにとのことです。」
「お父様が…。わかりました、すぐに参ります。」
暗い表情を浮かべたステファニーは、先ほどまで耳にかけていた髪で瞳を隠しサロンへと向かおうとした。
「お待ちくださいませ。瞳が見える髪型にするようにとのことです。」
その言葉を聞いたステファニーは、目を大きく開き信じられないという顔をした。
「この黒い瞳をみせろというのですか…。」
「そうでございます。すぐにエイミーに支度をさせましょう。」
ハンスは淡々と事実を述べるかのように言った。
「エイミー、後ほどステファニー様をサロンへお連れするように。」
「わかりました。」
「では、私はサロンに戻ります。」
ハンスはステファニーに頭を下げると部屋を出ていった。
放心状態のステファニーにエイミーは優しく声をかけた。
「ステファニー様、私を信じておまかせください。」
(今まで家族に嫌われないように、迷惑をかけないようにと気をつけてきたのに…。いったい、どうして。)
ステファニーは不安でたまらなかった。
「ステファニー様、鏡をご覧ください。」
エイミーに言われ鏡を見ると、流した前髪は綺麗な花飾りに止められ、残りの髪は綺麗にカールされていた。
「とても、可愛らしいですよ。」
エイミーは鏡越しに微笑んだ。
しかし、その笑みに答えることは出来なかった。
本当は、行きたくはない。ステファニーは、どんな視線をこれから浴びるのか怖くて仕方がなかった。しかし、いつまでも客人を待たせているわけにはいかないのだ。
「エイミー、サロンへ行きましょう。」
ステファニーは手を握りしめ立ち上がった。
「かしこまりました。ステファニー様、一言だけよろしいでしょうか。」
「なにかしら。」
「私はいつでもステファニー様の味方でございます。これから何があろうとずっとお側におります。」
「ありがとう、エイミー」
ステファニーは悲しげな笑みを浮かべた。