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アイリッシュの腕の中の女の子が泣き出した。
「ひどい…。やっぱり、あなた達は私とステファニーの邪魔をする。闇なんてみんなもってるのに。アイリッシュやブラッドリーだって、人に対して怒りや妬みの気持ちをもつ事あるでしょ。どうして、ステファニーばかり闇を持ってるっていじめるの。ステファニーから闇が無くなったら…。闇から生まれた私はどうなるの?ねぇ、どうなるの?」
アイリッシュの腕から抜け出した女の子は必死に二人に訴えかけた。
その時、黒い球体にヒビが入った。そのヒビはどんどん大きくなった。やがてパリンという音とともに、球体が割れ、中からステファニーが現れ、ゆっくりと下に降りてきた。しかし、ステファニーはまだ気を失っていた。
「ステフ!」
ブラッドリーとアイリッシュはステファニーに駆け寄った。そして、ブラッドリーは、ステファニーを抱き上げた。
すると、うっすらとステファニーは、目を開けた。
「ブラッド…。アイル…。」
「ステフ、気がついたのね。大丈夫。」
「うん。大丈夫。二人の声、聞こえたよ。いっぱい心配かけてごめんね。また、友達になってくれる?」
ステファニーは、ブラッドリーの腕の中で涙を浮かべながら言った。
「何言ってるの。当たり前でしょ。」
「そうだよ、ステフ。」
そんな三人の様子を女の子は苦しそうに見ていた。
そんな様子に気がついたステファニーは、ゆっくりと立ち上がると女の子のところに歩き出した。
アイリッシュは、ステファニーを止めようとしたが、またブラッドリーに止められた。
「今度はステフが自分の気持ちと向き合う番だ。」
「こんにちは。久しぶりね。ずっと一緒にいたのにちゃんとお話してなかったわね。」
ステファニーは、屈むと女の子と目線を合わせた。
「ステファニーは、闇は嫌い?私とは一緒に居たくない?」
女の子は、視線を落としながら話した。
「正直、闇って言われると怖いかな。でも、あなたは怖くないよ。」
「そんなの嘘よ。私は闇から生まれたの。闇が嫌いなら私のこと嫌いでしょ。私と一緒に居たくないんでしょ。」
泣きじゃくる女の子をステファニーはぎゅっと抱きしめた。
「あなたは、闇から生まれたんじゃない。闇で私の心が壊れないようにあなたが代わりにずっと受け止めてくれていたの。だからあなたは闇なんかじゃない。私の心から生まれたの。」
「本当?」
「うん。ずっと辛い思いさせてごめんね。闇の中で一人は寂しかったでしょ。」
「じゃあ、闇が無くなったら私はどうなるの?」
「私の心に戻っていいのよ。」
「一つになれる?」
「うん。私は大丈夫。辛くなったら助けてくれる友達がいる。」
ステファニーは、ブラッドリーとアイリッシュを見た。二人はステファニーを見て、微笑んでくれた。
「だから、もう闇を溜めたりしない。だから、安心して。」
ステファニーは、腕を緩め女の子の顔を見た。
すると、女の子はニコッと微笑むと、
「わかった。ステファニーは、もう寂しくないんだね。もう大丈夫なんだね。」
と、言ってステファニーに抱きついた。。
「うん。今までありがとう。」
ステファニーがお礼を言うと、女の子は輝きだした。
やがて光が大きくなり弾けると、小さな光の玉になった。そして、その玉は、吸い込まれるように、ステファニーの胸の中に入った。
ステファニーは、自分の胸が温かくなるのを感じた。




