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ステファニーは、12歳の誕生日を向かえた。あいもかわらず、家族や使用人と屋敷で過ごす日々だった。しかし、アルフレッドが作った温室もあり、ステファニーは花に囲まれた生活に満足していた。
ある日、リッチモンド候爵家にミルハント候爵が訪ねてきた。
ミルハント候爵のカーティスはアルフレッドの幼なじみであり、気のおけない友人だ。今日は、息子のブラッドリーとともにやって来た。
「久しぶりだな、カーティス。」
「本当だな。お前の顔を忘れるところだったよ。マリアンヌ様もお久しぶりです。相変わらずお美しいですね。そうだ、今日は息子を連れてきたんだ。」
黄色の瞳をしたカーティスは、陽気な笑顔を浮かべながら息子のブラッドリーを紹介した。
「ブラッドリー・ミルハントです。初めてお目にかかります。」
ブラッドリーは黄色の瞳の少年だった。
「ブラッドリー殿はカーティスの小さい頃によく似ているな。」
「そうか?俺の方がかっこ良かったぞ。」
そういうと、カーティスはブラッドリーの頭をがしがしと撫でた。
「旦那さま、お話はのちほどといたしませんか。美味しいお茶を用意させますわ。」
マリアンヌはそんな光景に微笑みをうかべながら、アルフレッドに話しかけた。
「そうだな。では、サロンへと移動するとしよう。」
「セドリック殿やステファニー嬢は元気にしているか?」
「二人とも元気にしているよ。あいにく、セドリックは外出しているが。」
「では、ステファニー嬢は屋敷内にいるんだろ。久しぶりに会わせてくれよ。お前がなかなか会わせてくれないから顔を忘れそうだよ。」
「それは…。分かるだろう。」
辛そうにアルフレッドは呟いた。
「大丈夫だ。息子のブラッドリーにはちゃんと話はしてある。ステファニー嬢には友人が必要だ。いつまでも屋敷に囲っているわけにはいかないだろう。」
カーティスはアルフレッドの目をまっすぐ見つめ諭すように言った。
アルフレッドがマリアンヌに視線をやると、マリアンヌは深く頷いた。すると、アルフレッドは意を決したように執事のハンスに声をかけた。
「ハンス、ステファニーにここに来るように伝えてくれ。」
「かしこまりました。」
「それと、瞳を隠さずくるように。」
「よろしいのですか。」
「かまわん。」
「かしこまりました。」