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「とにかく、今は救護室に運びましょう。クラーク君、手伝ってくれる。今は、浄化の膜でくるんであるから、触れても大丈夫よ。」
「わかりました。」
「あなた達もきてくれる?」
「「わかりました。」」
ステファニーは、クラークに抱き抱えられ、救護室へとやってくるとベッドに寝かされた。
救護室には、他の教師も集まっていた。
「なぜこんなことに。」
「もし、この膜を破って力が暴発したらどうなる。学園は闇に飲み込まれるぞ。」
「だから、黒い瞳のものを入学させるのに私は反対だったのだ。」
ほとんどの教師達は、この状況を改善させる方法を知らず、ただ怯えるばかりだった。
「黒き魔法は心の闇。心の闇さえ無くなれば、力は消すことが出来る。」
「学園長!!」
学園長のコンラッドが救護室に入ってきた。
「学園長、それはどうすれば消えるのですか。教えてください。」
ブラッドリーは学園長に尋ねた。
「いろいろ方法があるが、外からの浄化が効かないのなら直接心に働きかけるしかないだろう。」
「それは、どうすればいいんですか。」
「彼女の意識の中に入り、闇を取り払うしかない。君たちに出来るかな。」
コンラッドはブラッドリーとアイリッシュの目をじっと見つめた。
「どうやって意識の中に入るのですか?」
アイリッシュが具体的な方法を尋ねたと同時にオリビアはその会話に割って入った。
「危険です。失敗すれば、その者も命を奪われかねない。そんな危険な事を生徒にさせるなど反対です。」
「しかし、この方法は、誰でも出来る訳ではない。親しいものでなければ意識の中に入ることは出来ないのだ。」
「しかし!!」
「それならば、都合のいい人を連れてきました。」
コンラッドとオリビアがいい争っていると、クラークがエドワードを連れてやってきた。
「エドワード君が?クラーク君一体どういうことだね。」
「彼女がこのような状態に陥る原因にエドワードが関わっているからです。」
クラークはエドワードを教師達の前につき出した。
「僕は関係ない。第一に王子がそんな怖い魔法に近づくなど出来るわけない。僕は、帰らせてもらう。」
エドワードは、踵を返し部屋を出ようとしたが、オリビアに阻まれた。
「クラーク君の言っていたことを説明していただけますか。」
「何を言ってるんだ。何も話すことなどない。教師が王子である僕の行く手を阻むなど許されることではないぞ。」
エドワードは、オリビアを睨んだ。
「いいえ。学園では爵位などに囚われることなく、すべての者は平等である。これは、学園の教育理念であります。エドワード君、答えなさい。」
コンラッドの言葉にエドワードは何も答えなかった。
「では、僕が代わりに話をしよう。」
クラークは、何も言わないエドワードの代わりにエドワードが学園でやってきた様々な悪事を教師達に話した。
エドワードの顔色はどんどん悪くなった。
「うるさい。黙れ」
エドワードは叫んだが、クラークは構わず話続けた。




