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「何を言ってるんだ。消すって、一体何をするつもりなんだ。」
「大丈夫。殺したりしないわ。ただ命のエネルギーを死なない程度にもらうだけ。もう、私の事をいじめない程度にね。癒しの魔法が生きる力を与えるなら、黒き魔法は命の力をいただくもの。今の私にはそれが出来る。力を取り戻すためには元凶は消して置かないとね。」
「ステフ、それは間違ってるわ。そんな事してはダメよ。」
「どうして?だって、その人達のせいで私は癒しの魔法が使えなくなったのよ。その報いを受けてもらっても、罰は当たらないわ。きっといまなら、まだ教室にいるかも。」
そういうと、ステファニーは校舎に向かって歩き出した。
「駄目よ。」
アイリッシュは、そういうとステファニーの周りに火の壁を作った。
「どういうつもり?アイルは私の力になってくれるんじゃないの?」
「私は、ステフが元気になってくれるなら協力する。でも、これは駄目。」
「そうだよ、ステフ。他にも方法があるはずだ。一緒に考えよう。」
ステファニーは、火の壁に手をかざすと呆気なく壁を消してしまった。
「そんな…。」
「二人なら分かってくれると思ったのに。」
「絶対に行かせない。」
今度はブラッドリーが、植物のつるを伸ばしステファニーの体に巻き付けると、行動を制御した。
「無駄よ。誰も私の邪魔はさせない。もう私は傷つきたくないの。私を傷つける人は居なくなってもらわなきゃ。」
そういうと、体に巻き付いているつたは飛び散った。
「二人も邪魔するなら許さない。」
そう言って、ステファニーは、二人に手をかざした。アイリッシュとブラッドリーは、とっさに魔法の壁を作った。しかし、二人にステファニーの力は飛んでこなかった。
ステファニーは、頭を抱え座り込んでいた。
座り込んだステファニーは、頭を抱えながら叫んでいた。
「邪魔するな…。お前は何も出来ない役立たずのくせに。う…駄目…二人を傷つけちゃ駄目…。アイル、ブラッド、逃げて。」
ステファニーは、何かと必死に戦っていた。先ほどの様子とは変わって必死に自分を抑えているようだった。
「ステフ、どうしたの?」
「大丈夫か、ステフ。」
そこへ、教師を連れたクラークが戻ってきた。
「オリビア先生!!」
オリビアは、ステファニーと同じ癒しの魔法を使える教師だ。
「一体どうしてこんなことに。」
オリビアは、すぐにステファニーに向かって力を放出した。すると、ステファニーは苦しみだした。しばらくするとステファニーは気を失ったようにグッタリした。そして、ステファニーの体は、光の膜に包まれていた。
「先生、ステフは大丈夫ですか。元に戻りますか。」
アイリッシュは、オリビアに詰め寄った。
「私の力では、どうしようもなかったわ。黒き力の放出を抑えることは出来たけど、浄化は出来なかった。黒き力はどんどん大きくなっているわ。」
オリビアの言葉に、その場にいるものはみんなショックを受けた。
「そんな…。彼女はどうなるんですか。」
言葉を失っている二人の代わりにクラークがオリビアに尋ねた。
「力が放出されなければ、やがて彼女の意識をすべて飲み込み、精神は壊れてしまう。命も危ないわ。」
「そんな…。」
アイリッシュは、その場に崩れ落ちた。




