表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/66

5

ステファニーが唯一心が休まる場所があった。

それは、庭の花壇だ。

花は裏切らない。たくさんの愛情を注げば綺麗な花を咲かしてくれる。最初の頃は植えた苗が枯れたりと上手くいかなかったが、庭師のシリルに教えてもらい上手に育てられるようになった。

庭師のシリルは、仕事は丁寧だがどこかぶっきらぼうだった。しかし、必要以上の関わりを持たれることも無い関係がステファニーは心地よかった。


そして、今日も花壇で花の世話をしていると突然花の上に水が降り注いだ。ふりかえるとセドリックがいた。

「お兄様、いらしていたのですね。」

セドリックは青い瞳を持つ為、水に関する魔法が使えるのだ。

能力の大きさに違いはあるが、青い瞳は水、赤い瞳は火、黄色の瞳は風の力を持つとされている。黒い瞳の私にはこの3つのどの力も備わっていなかった。

「ステファニーは本当に花が好きなんだね。手が真っ黒だよ。」

「花を育てるのは好きです。でも、土いじりなんていつまでもしてはいけないでしょうか。もし、やめろと言われるならば…。」

手を汚れているのをとがめられた気がして、ステファニーは下を向いた。するとセドリックは、ステファニーの頭にてをのせ、寂しそうに呟いた。

「僕はステファニーから大切なものを取り上げたりしないよ。僕はかわいい妹にいつも笑って欲しいんだから。」

そういうと、セドリックは戻って言った。


部屋に戻ると花の苗が窓際の机に置かれていた。

「これはもしかしてお兄様からかしら。」

ステファニーは、部屋におかれた花の苗を見ながらメイドのエイミーにたずねた。

「そうでございます。セドリック様が先ほどお部屋に置いていかれました。」

「お兄様はどうしてこんなに私に優しくするのかしら。」

「それは、ステファニー様を大切に思われているからです。もちろん、奥様も旦那様もステファニー様を大切に思われております。」

「大切にね…。魔法も使えず、政略結婚の駒にさえなれない。そんな私は、大切にされる価値なんてないのに。」

ステファニーが寂しげに呟いた。 

「ステファニー様は愛される存在なのです。そんな風におっしゃらないでくださいませ。」

エイミーは辛そうに顔を歪めながら言った。

「ありがとう、エイミー。あなたは優しいのね。」

「とんでもございません。出すぎたことを申しました。申し訳ありません。」

エイミーは、寂しげにうつむいた。

ステファニーは花の苗を見つめながら、捨てられるその日まで家族に迷惑をかけないようにしなければと強く思った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ