42
「だから、制御の仕方をマスターするまで二人に近づいちゃいけないの。」
ステファニーは、泣きながら二人に説明した。
すると、アイリッシュは、大きなため息をついた。
「ステフ、暴走して危ないのは癒しの魔法だけじゃないわ。火や風、水すべての魔法は暴走したら人の命を奪う可能性がある。私やブラッドも制御の仕方をマスターするまで他の人に近づかないで一人でいた方がいいのかしら。」
アイリッシュは、ステファニーを視線をそらさずじっと見つめた。
「それは…。」
アイリッシュの言葉にステファニーは何も言い返せなかった。
「ステフ、魔法が暴走するとしたら誰かに向けて発動した時だろ。ステフはいつも手当たり次第に相手に魔法を発動してるのかな。」
ブラッドリーは、穏やかに話した。
「違うわ。そんなことしていないわ。魔法を使うのは実技の授業だけよ。」
「だったら、暴走する可能性があるのは先生達がいてくれる時じゃないか。ステフは心配しすぎだよ。それに、ステフは実技の授業の時、僕達の怪我をしっかり治してくれているじゃないか。体が変になったことなんて一度もないよ。」
ブラッドリーは、ステファニーに言い聞かせるように話した。
ステファニーは、ただ下を向いて黙っていた。
すると突然、アイリッシュはステファニーに向かって泣きながら叫んだ。
「ステフ、私は怒ってるのよ。私達、友達でしょ。悩んでいるなら、何ですぐ相談してくれなかったの?訳も分からず、ステフに避けられて私がどれだけ悲しかったか分かる?何があっても私達はステフの力になるっていったじゃない。そんなに私達は頼りない?」
ステファニーは、アイリッシュの切ない叫びに胸が痛くなった。相手の事を思ってしていたことが、こんなにもアイリッシュを傷つけていたとは思わなかった。
「アイリッシュ、そんなに怒るなよ。ステフだって、悪気があってやったことじゃないんだから。」
「そんなこと私にだってわかってる。わかってるけど、悲しいの。ステフが私達を頼ってくれなかったことが悲しいの。」
「それは、僕だってその気持ちは分かるけど…」
ブラッドリーは、アイリッシュの頭を撫でた。
「アイル、ブラッド、ごめんなさい。私、二人の気持ち考えてなかった。こうするのが一番だって思い込んでいた…。本当にごめんなさい。」
ステファニーは、二人に頭を下げた。
「これからは、頼ってくれる?一人で考えこまないで。」
「うん。これから、困った事があったら必ず二人に相談する。」
「約束よ。」
「うん。」
「じゃあ、仲直りしましょ。」
アイリッシュは、ステファニーをつよく抱き締めた。
抱き合う二人の頭をブラッドリーは撫でていた。




