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数日後、実技の授業の時間があった。
校庭では、魔法の種類によってグループに別れ、それぞれ練習していた。ステファニーは、校庭のいろんなグループの様子をみていた。
ブラッドリーは、風を使って盾を作る練習をしているようだった。
(ブラッドリー、頑張っているわ。でも、まだまだみたいね。先生に簡単に破られているわ。)
アイリッシュを見ると、炎の威力の増減の練習のようだ。
(凄い!あんなに大きな炎を出せるなんて。)
二人はとても真剣に何度も練習をしていた。
ステファニーはというと、癒しの魔法は学園の生徒ではステファニー以外にはおらず、唯一癒しに関する魔法が使える教師とマンツーマンだった。基本、傷を治す為の魔法の練習が主のため、他のグループの怪我人を迎える救護所のようになっていた。
「オリビア先生、図書館で癒しに関する魔法を調べたのですが、良くわかりませんでした。この力は、訓練する事で他にどんなことが出来るようになるのでしょうか。どんどん強くなったら一気にみんなの怪我を治せたりできるようになりますか?私、早く強い力が使えるようになりたいです。」
救護で忙しくなる前にと、ステファニーはオリビアに自分の魔法について尋ねた。
「まだ、癒しの魔法について分からないことが多いですが、もしかした、それも可能になるかもしれませんね。でも、強さだけでなく力を抑える方法も学ばないといけませんよ。例えば、癒しの力を浴びると人はどうなるとおもいますか。」
「すごくリラックスすると思います。そして幸せの気分になるのでは、ないでしょうか。」
「そうですね。適度な癒しは、ストレスを無くし活力も生みます。では、過剰に癒しの力を人が受けたらどうなるでしょうか。」
ステファニーは、しばらく考え答えた。
「怪我もすぐに治り、幸せに包まれてより人は元気になると思うのですが…。」
「本当にそうでしょうか。人の頭が癒しの魔法に征服された時、頭は活動をやめるとされています。様々なストレスなどの刺激を受けなくなることが原因なのではといわれています。つまり、廃人になってしまうのです。」
オリビアの言葉を聞き、ステファニーは自分の魔法が怖くなった。今まで、自分の魔法は人に対しては常にいい結果を与えるはずだと疑っていなかったからだ。
「だからこそ、魔法の威力を大きくさせる練習だけではなく、制御についてもしっかりと学ばなくてはいけません。分かりますね。」
「はい。分かります。しっかりと制御についても学びたいです。」
「しっかりと学べば、あなたの魔法は、たくさんの人を助けることの出来ると素敵な魔法です。頑張りましょう。」
オリビアは、ショックで落ち込むステファニーを励ました。
やがて、怪我人達がどんどんやったきて、ステファニーは、傷にだけ力を込めることに気を使った。
(暴走しないよう、気を付けなくてわ。)
ステファニーは、オリビアから癒しの魔法の影響について教えてもらってから、制御する方法をしっかり学んでいない自分の力がいつか暴走してしまったらと怖くなった。
(今のままでは、大切な人を傷つけてしまうかもしれない。)
そう考えると、アイリッシュやブラッドリーのそばにいることさえ、怖くなってきた。そして、二人を避けるようになり、授業が終わるとすぐ家に帰るようになった。
家では、ひたすら部屋にこもり、制御の練習を続けた。
そして、大好きだった花の世話さえしなくなった。
そして一人で練習するようになって、ステファニーは、不思議な夢を見るようになった。




