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前世の記憶は、今も私の心に影を落としている。


裏切られるなら最初から信じなければいい。

最初から期待しなければ、傷つかない

傷つきたくない。


ステファニー・リッチモンドは、リッチモンド候爵の第二子として生まれた。

父アルフレッドは、赤い瞳を持ち、領民からの信頼も厚い。そして母マリアンヌは、青い瞳を持ち白百合の貴婦人と呼ばれる美しさと気品を持っている。兄セドリックは、母と同じ青い瞳を持ち、聡明で穏やかな性格でみんなに愛されていた。そんな家族の中で、闇を宿すと言われる黒い瞳の自分は、やはり異質なのだろうとステファニーは感じていた。。

しかし家族は、黒い瞳のステファニーにとても優しくしてくれた。

屋敷の中では、前髪から黒い瞳をみせても、使用人たちも優しく微笑んでくれる。時折、黒い瞳でも受け入れられる存在なのかとステファニーは思う事もあった。

でも、家族からは外出するときは前髪で瞳を隠し、決して人と目を合わせてはいけないと言われた。それは、他人からの黒い瞳を嫌悪する冷たい視線からステファニーを守る為だったのかもしれない。

でも、瞳を隠せと言われるたびに、私はこの世にいてはいけないと言われている気がしていた。そして黒い瞳の自分は家族のお荷物であると思わずにはいられなかった。


10歳の誕生日を向かえる頃は、ステファニーは外出せず屋敷で過ごすことが増えた。

外出するのを嫌がるステファニーに、父や母は悲しい顔を見せたがステファニーが望むならと無理に連れ出すことは無かった。

そして、父や母は忙しいながらもステファニーを何かと気にかけてくれた。


ある日部屋で過ごしていると、外出していた兄セドリックがやって来た。

「ステファニー、今戻ったよ。」

「お兄様どうしましたの。」

「ステファニーにお土産だよ。かわいい人形を見つけたんだ。」

「ありがとうございます。大切にいたしますね。」

外出しないステファニーに、セドリックはいつもおみやげを買ってきてくれる。しかし、ステファニーは家族から愛情を向けられるたび、作り物の笑顔を見せお礼をいうのが精一杯だった。


(今愛情を注いでくれる家族も政略結婚の駒にさえなれない私をいつか切り捨てられるだろう。

愛情は無限じゃない。期待しては駄目だ。)

頭の中にそんな言葉がこだました。

私は、ずっと愛される存在ではない。気まぐれの愛情に流されてはいけない。

ステファニーは自分にいい聞かせるように呟いた。

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