32
落ち込むステファニーをブラッドリーとアイリッシュは心配した。
「ステフ、ごめん。僕が言い出したばかりに。」
「野菜作りはもういいんじゃないかしら。まずは、試してみようって話だったでしょ。ステフ、頑張ったわ。」
「ブラッドリー、アイリッシュ。ごめんなさい。力になれなかったわ。」
「誰だって得意なものとそうじゃないものがあるでしょ。ステフはこんなに綺麗な花を育てられるんだし、十分よ。」
アイリッシュはステファニーの手を取ると優しく握った。
「そうだ。今度気分転換にピクニックでもいかないか。小さい頃に、母やアイリッシュとよく行った森があるんだけど綺麗な花がたくさん咲くんだ。」
ブラッドリーは、綺麗な花を見ればステファニーが元気になるのではと考えた。
「それは、いい考えだわ。あの森にはかわいい動物もいますのよ。ステフ、いきましょう。」
「わかったわ。みんなで行きましょう。」
ピクニック当日、ステファニーは、久しぶりの外出に帽子をかぶり瞳を隠した。
森をしばらく歩くとひらけた場所があった。
「ここは、もう少しすると綺麗な花がたくさん咲きますのよ。でも、ちょっと早かったみたい。ステフにも見せたかったわ。」
アイリッシュは興奮気味に話した。
「また、花が咲いたら皆で見に来たらいいさ。」
「そうだ。花はまだだけど、この先でリスをみたことがあったの。ステフはリスをみたことある?」
「ありませんわ。」
「じゃあ、探しに行ってみましょう。ステフと散歩してくる。みんなはここで待っていて。」
「待って。僕もいくから。」
アイリッシュは、連れてきた使用人たちに待つように言うと、ステファニーの手を取り走り出した。
しばらく進むと、大きな木の上にリスがいるのが見えた。
「あそこにいるわ。」
「初めてみました。本当にかわいい。」
二人がリスをみていると風が吹いてステファニーの帽子が飛ばされ、木にひっかかった。
そこへ、追ってきたブラッドリーがやってきた。
「僕がとってあげるよ。本当は僕の魔法で風を使って取れればいいんだけど。でも、また変なふうに飛んで行ってしまっては大変だから、登ってとってくるよ。」
「危ないわ、ブラッド。」
ステファニーはあわてて止めた。
「大丈夫だよ。僕だって木登りできるよ。」
ブラッドリーはするする登ると帽子の引っ掛かっている枝まできた。
「とれたよ、ステファニー。」
「ブラッド。気をつけておりてきてね。」
「そうよ、ブラッド。木登りなんて久しぶりでしょ。ゆっくりおりてきてよ。」
ステファニーとアイリッシュが心配そうに声をかけた。
「大丈夫だって。あっ!」
またがっていた枝が折れ、ブラッドリーは木から下へ落ちてしまった。




