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ある日トイレの個室に入っていると、話をしながら誰かが入ってきた。
「この前ネクラちゃんの彼氏にあったんだ。」
「えっ。あのネクラちゃん、彼氏いるの?」
「いたんだよ。会いたいな~って言ったら連れてきたんだけど、すごいイケメンなの。あのこにはもったいないと思うんだよね。」
「まさか、取っちゃうきなの。」
「やだ、人聞きの悪い。でも向こうがなびいちゃったら、しょうがないよね。」
「なに、それ~。」
楽しそうな二人の会話は、私をどん底に落とした。
友達だと思っていたまりかに裏切られた事は、私の心に想像以上の傷を残した。
仕事の帰り、通りを歩いていると、まことがこっちに歩いてくるのが見えた。手には紙袋を持ち、何か嬉しそうな顔をしていた。
声をかけようとした時、まことのとなりにまりかがいるのに気がついた。先に私に気がついたまりかは、にやっと笑うとまことの腕にしがみついた。
その瞬間、私は叫んだ。
「まことの嘘つき。ずっとそばにいてくれるっていったのに。」
叫んだ瞬間、まことが驚いた顔をしてこっちを向いた。
何かまことが叫んでいたが私は後ろを振り返って走り出した。
まりかの嘘つき。友達だと思ってたのに。信じてたのに。
まことの嘘つき。ずっとそばにいてくれるっていったのに。
もう何も信じられない。もう何も信じない。もう何も期待しない。
赤信号を無視し横断歩道を飛び出した私は、トラックのクラクションとライトに包まれた。
これが、私の前世の記憶