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その頃、ブラッドリーは、ステファニーがどんな決断をするかやきもきしていた。
「知り合いの黒い瞳の令嬢と友達になっていろいろ助けてやって欲しい。」
最初、ブラッドリーは父親に言われた時は何の冗談かと思った。黒い瞳とは、心に闇を宿すと恐れられているからだ。そんなどんな闇を抱えているかわからない怖い娘と友達になれなんて、正直無理だと思った。
でも、父親からその令嬢は瞳のせいで屋敷の外に出るのを拒んでいるらしいと聞いて、複雑な気持ちになった。もし、自分がこれを受けなければこれから先、彼女は友達も出来ないように思えた。家族だけでなく使用人達も彼女にそばにいるだろう。しかし、使用人と友達として付き合う事など普通はありえない。つまり、彼女に友達とよべるような人はいないのだろう。
ブラッドリーも決して友達が多い方ではないが、友達と過ごす時間は何よりも大切だった。もし友達も作らず外出もせず、屋敷でずっとすごせと言われたらと考えたら、寂しさで心が闇に飲み込まれるように感じた。
ブラッドリーは、はっきりと答えが出ないまま、リッチモンド公爵家に行く当日を迎えていた。
行きの馬車でも、ブラッドリーは、本当に友達になれるのか不安だった。
(黒い瞳を見て恐怖で固まったら。そしてその闇にのみこまれたりしたら。)
ブラッドリーの目の前に現れたのは闇を纏った恐怖の存在ではなく、たった一人の可憐な少女がたっていた。そして、その可憐さに驚いてその瞳をブラッドリーはじっと見つめてしまっていた。
ステファニーは目が合うとあわてて目をそらした。そしてとても怯えていた。ブラッドリーは、それを見てここに来るまでなんてひどい事を考えていたのだろうと罪悪感を感じた。きっと今まで、瞳の色に関して嫌な思いをしたんだろう。彼女の事を何も知らないくせに、ただ瞳が黒いという理由だけで決めつけられて。
目の前にいるこの子が闇を抱えているようには見えない。むしろ、怯えてかわいそうで助けてあげたいと思った。
だからこそ、自分の口で改めて友達になって欲しいと言ったのだった。
返事を保留にされてから数日、どんな返事がくるのか心配だった。
もちろん断られるのではという不安からだ。
そんなところに返事がきた。
「今は友達ではなく、お互い知ってからゆっくり仲良くなりたい。」
ステファニーの事はよく知らないはずなのに、何故かステファニーらしいとブラッドリーは感じた。
「いつか友達に昇格出来るよう頑張ります。」と返事をした。




