大動《たいどう》
街の大いなる危機から国を救うため大国アドで伝説の存在
《煉獄のアルケミスト》の情報を探すリュカ
西の海岸を目指す途中で煉獄の者の手がかりとなる謎の女アシュラと出会う。
姿を消したアシュラを探しリュカは西の海岸へ
到着したのであった。
アシュラとは何者なのか、逃げられた日から数日見かけた辺りを探してみたが全く尻尾を掴むことは出来なかった。あれから全く姿を見せないアシュラが何をしているのか少し気になったが《煉獄のアルケミスト》に一歩でも近づくため酒場の男の情報を頼りに西の海岸《音楽の街パ・オーマ》の港に来ていた。
到着したリュカを待っていたのは音楽の街の所以とも言える陽気なヴァイオリンの音だった。時に寂しげな音へと姿を変えるヴァイオリンの音色に故郷を思い出し自分の中の何かが揺さぶられていた。
宿に荷物を置き早速『星屑の墓場』に向かおうと思ったが昼も過ぎていたので近くの飯宿で一食腹ごしらえをすることにした。
「おやじさん肉とぶどうジュースをくれ。」
「はいよ、すぐ出すから待ってな。」
陽気なおやじの店では楽器を演奏する一団が店内を盛り上げている。故郷の街を飛び出し早一週間ほど、そろそろ家族や仲間たちが恋しくなってきていたリュカにはその賑やかさが辛かった。
肉とぶどうジュースを受け取り足早に去ろうとすると
「にいちゃん、中で食べていきな!
ここはいいぞ音楽も美味い食いもんもある。
見たところ旅でもしてんだろう、おいお前ここ変わってくれ。」
「へいっ。」
弟子であろうか。若い男が代わりに厨房に入る。
「にいちゃん一緒に食わねえか、俺もちょうど休憩なんでい。」
「しかしっ、、」
「俺の飯に付き合ってくれねえのか、なんでい最近の若者は。」
「わ、わかった付き合おう。」
おやじに押し切られて一緒に飯を共にすることになった。おやじはたんまりと積まれた野菜炒めを頬張りながら言った。
「お前さんどこから来たんでい?」
「私は…遠い街から。」
「そうかい、なんでいその喋り方ぁ。もっと砕けて喋べれねぇのか?」
「私はこういう話し方なのだ。」
「かてぇ!! どっかの騎士様みてぇだな。」
「...」
「そうだな飯はうめぇか?」
「ああ最近食べた中では一番うまい。」
「そうか。」
おやじは嬉しそうな笑顔で野菜炒めを頬張る、思えばこの旅は助けられてばかりだ。大国アドの人たちはなぜこんなにも良い人ばかりなのだろうか。
国が平和ということはこうやって他人に優しさを振り分けてあげられる余裕があるということなのかもれしれない。そう思ったリュカは尚更故郷を救い平和を取り戻さなければと強く誓っだった。
その時別の席で三人の男が同時に立ち上がるのに気づいた。三人から殺気を感じた時には男達が一斉に弓を引いて矢を放った後だった。おやじを席ごと突き飛ばすように躱す、ゴロゴロゴロと机と肉と自分たちが転がる。騒がしくなる店内に状況を把握することが出来ない。体を確認するが目立った怪我はない。
「っおやじさん!!!!!」
矢が当たったのは飯宿の店主であった。
「なぜ俺をかばったんだ。」
「がきを怪我させる大人がいるかい、こほぉっ。」
おやじの体からは出血がひどい。ここで巻き込んでは更に危険だと判断し、厨房にいた弟子を呼ぶ
「お前この人を頼む!」
店内の騒ぎで奴らもこちらの居場所は掴めていないようだ、従業員に店主を任しわざと目立つように店の外に飛び出した。
「貴様ら!追えるものなら付いて来い!」
馬を口笛で呼び飛び乗る形で店から走り去る。
『おやじさん必ず戻るぞ、頼むから死ぬなよ』
後ろからはすでに三頭の馬が追いかけて来ていた。
三人の服装は至って地味、街に溶け込みやすい格好を選んで来ているのだ。かなりのプロフェッショナルだろうと予測ができる、
走っていると案内看板に
[右 星屑の墓場 左 マオーヌ地方]
という案内があった。思わず星屑の墓場の方に馬を走らせる、日はだんだんと落ちて来ており橙色の海に太陽は沈んでいく最中であった。
先に星屑の墓場に着いたのはリュカであった。馬を逃し相手の馬が入ってくることの出来ない墓地の方に走った。
《星屑の墓場》
それはこの大国アドの西部で最も有名なスポットである。
大きく二段に別れた崖に上の段に野原が
下の段に見渡す限りの墓が広がっている。
名産である特殊な珊瑚で出来た墓石は夜になるとそれぞれの色に発光するのだが、その景色たるやまさに星空。死したものが光るこの光景を皮肉交じりに付けられた名称が星屑の墓場というわけだ。
リュカが到着したすぐ後にやつらも遅れて到着した。
「お前がリュカ=オズワルドだな。」
「特徴と一致する間違いない。」
「いかにも!お前たち何者だ。なぜ私を狙う!」
「答える阿呆がいるものか、お前たちこやつやはり七つ道具を持っているようだ。」
「あの腰の膨らみを見ろ油断はするな。」
男たちは一歩一歩横に広がって行く、
「こちらは七つ道具が一つ《馬かけのまきびし》で大きな痛手を食らったからな。
まぁもう使われることは無いが。」
『なぜこやつらがそのことを!?あれは風来坊を助けるために使ったはずだが。
見られていたのか?』
リュカは王から旅路に出た際何かあった時のためにと《七つ道具》という王国に伝わる七つの運命を逆転すると言われる道具を譲り受けていた。しかし全て古代の逸品一度使えばどれも二度と使えんであろうと念を押されて譲り受けたのであった。
男達三人は広がり三方からゆっくりと距離を詰めてくる。しかし運悪くこの状況を打開する七つ道具は無かった。日が落ち始め海風が弱くなった、するとどこからか先ほどの店で聞いたヴァイオリンの音色が聞こえて来た。
やつらはそんな事は御構い無しに鎖鎌や投げナイフを投げつけてきた、躱したナイフと鎖鎌が墓石を削り取る。やつらにとっては墓石を尊ぶ心さえないのである。
「やめろ墓石を傷つけるな!」
「知ったことかぁぁ!」
やつらは攻勢の手を緩めることは無い。墓達はやめてくれと言わんばかりにその光を灯し始めた。気づけば太陽は海の中に落ちきっていた。
暗闇の中での三方向からの猛攻にリュカは防戦一方であった。
『くそ三対一では戦いにくい!』
気づけば自分の体は傷だらけ、片方の視界は赤く染まっていた。
『ここまでか』
訳の分からない一団に狙われ自らの弱さのせいで街を救うことが出来なかったことを最後までリュカは悔やんでいた。
その時、、、、
「待たれい!!!!! 貴様らそれでも殺し屋か。
多対一とは自らの無能さを証明に他ならんな、
貴様ら《黒猫》とやらであろう。」
女の声だ、やつらの手が止まる。
「おまえ、何者だぁ?」
「わたしか?ふふふ...」
そして女は口を開いた。
「私こそ!! 煉獄のアルケミスト!!
貴様らを煉獄に叩き落とすものぞ、お前らを石に錬成してやろうか!
それともこんなトカゲがお似合いか?」
そう言った瞬間墓場の光が手に集まっていく、
「れんせいっ!!」
光は膨張と伸縮を繰り返し見る見るうちに手と足と形取られていく、最終的に光が形どったのは光で出来た大蜥蜴だった。
体長20mはあるだろうかその風貌はこの世の物ではなく、その眼は自分たち人間を食い物としか思っていなそうな正真正銘の化け物であった。
「キィィィィィィン!!!」
大蜥蜴は金切り声を上げる。
「さぁ貴様ら残さず餌になるか、蜥蜴になるか選ばせてやる。」
女の目は青く燃え上がりその目はまさに煉獄と繋がっているかのようであった。たなびく銀の髪は美しくしかしその顔には見覚えがあった。
「…アシュラ?」
「おひさしぶりリュカ=オズワルド、またついてきた。
今度は守ってあげる,,,私は煉獄のアルケミストなのだから!!!!!」
リュカ
◆持ち物:王家の七つ道具。うち1つ使用済み
おやじ
◆気のいいおやじリュカを庇い重症
三人の男(黒猫)
◆暗殺者?
アシュラ
◆煉獄のアルケミスト?
煉獄のアルケミスト
◆???