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さすらいの男・粋なやつ・危ない女

街の危機に運命を変えると言われる力を持つ者達の1人、煉獄のアルケミスト探しに出かけたリュカ。目指すは大国『アド』彼が運命に出会う日は近い。

思えば最近不可解な事が多かった。まず近くの家で殺人が起こった殺されたのは同居人の叔父、普通は身辺を調べるはずだが調べる間も無く疑われたのは友人だった。

彼はその時私と訓練所で剣の鍛錬に励んでいた、しかし憲兵が疑ったのは友人だったのだ。近衛兵である私から王に直訴した事でなんとか友人の身柄は引き渡さずにすんだが明らかに何らかの力が働いているに違いなかった。


こんな調子で街では大いなる危機に瀕してからというもの不穏な事件ばかりが起きていた。



街から飛び出して3日アド近くの森林地帯に到着していた。ここを抜ければアドまで一本道だ。

今街で何者かが暗躍していることは間違いない。だからこそこの旅は私1人での旅であり、最も信用を寄せる私を向かわせるという王の苦肉の策であった。


道中で何度かモンスターに襲われたが何とかやり過ごしこの森林地帯までたどり着いたはいいが、食料の備蓄が尽きかけていた。



その時だった。馬の足音が複数聞こえてくる。

「後ろからか。」


馬の脈が早くなるのを感じる。走ってきた道を追うように馬の足音が何頭も聞こえる、まさか何者かの手はここまで及んでいるのだろうか。


その中でも頭一つ抜けた速さでこちらに迫る足音がある、剣を抜き身体を斜に構える。

視線を前後に散りばめ集中する。


二人の馬が並ぶ前に馬の主は容赦なく切りつけてきた。明かりがほぼない中で剣の火花が散る、暗い森の中で火花が自分達の居場所を晒す。その明かりに釣られて良くないものも寄って来始めている。森の天井が開けたと同時に相手を目視する。ボロボロのマントに傘帽子の和装の老人だった、すると男が驚いた顔をして口を開く


「おや、これは失敬あんたは借金取りじゃないようだ。」


「お前は誰だ!何者か名乗れ!」


「すまねぇよぉ、借金取りの一団に回り込まれたかと。

 わちきは風来坊の風見鶏と言うもんです。旦那あんたこの先のアドに用があるんでしょう!

 ならばあちきに提案がありまさぁ。あちきはアドへの近道を知っておりまする。

 なんで後続の奴らを追い払う手伝いをしてくれましたらその近道でぐんと早く着けらぁ、

 どうだい!おいらぁ街にも詳しい頼むぜ旦那!」


とても胡散臭く怪しいが食料が尽きかけ危ない状況なのは自分とて同じである。良くないものも集まっている状況では考える余裕も無さそうだ。

「貴様力を貸そう!ただし逃げれば容赦はせん!」


「逃げるなんてとんでも、救って頂いて逃げるなんてのは風来坊の名が廃りまさぁ。」


「そうだな剣で追い払ってもいいのだが血を流すのは本意ではない。

 馬用のまきびし網を使う馬型のモンスターに襲われた際に使うものだがこれで事足りるだろう。」


「旦那あんたすげぇ男だぜそりゃ何だい、見た事ねえ!」


まきびしが付いた網を投げ仕掛ける。それから後続で騒がしい音がしたが馬の足音が付いてくることは無かった。






風来坊の言った通りアドにはほんの1日で着いた。

大きな門を潜るとそこは商業と賭博の街アドそこには大陸の様々な情報や物が集まると言う。

「助かったぞ風来坊、恩にきる。」


「旦那あちきの方こそ助かりました。街の案内でもしやすぜどうだい?」


「本当か、それなら飯でもご馳走しよう。」


「旦那はわかってらっしゃる、それにしてもその年でしっかりしとる。年は15.6じゃねぇか?」


「失礼なじゅうななだ!

 ふぅ、ただお前を見ていると我が友人を思い出す。奴は元気にしているだろうか。」


「何か複雑な事情がおありのようで、色々大変なんですねぇ旦那。」


「よし手始めに酒場に案内してくれ。」


「旦那酒がのめるんでさぁ?」


「飲めん!ただ情報が集まる場所といえば酒場だ。

 風来坊この宿に荷物を置いてくる少々待っておいてくれ。」


「へい、もちろんでさぁ。」

風来坊は傘帽子で目を隠しながら言った。


宿に荷物を置き足早に馬の所へ帰ると、風来坊の姿はすでに無かった。しかし馬の鞍に一枚の書き置きがあった、

『旦那へあちきは風来坊。誰かとずっといると身体がむず痒いんでさぁ、ただし頂いた恩にはきちんと報わせていただきやすよ!この紙の場所へ行ってくだせぇまた会えることを祈ってますぜぇ。』

風来坊より



「やつめキザな男だ。これも何かの縁だったのだな行こう。」

鞍を蹴り馬を走らせて酒場に向かう。馬の足音が一つ減っていることに少し寂しさを感じたのだった。



一つ新しい出会いがリュカを守った。旅は出会いであり別れだとリュカは旅の始まりを別れで迎えることが出来たことは幸せなことだったのかもしれない。

リュカは一歩づつ運命の出会いへと向かっていく

その時まであと3時間----




リュカは風来坊の書き置きにあった通り酒場に来ていた。賭博と商業の街だけあって周りを見渡しても怪しい奴ばかり、賭博にふけるもの酒を浴びるように飲むもの。開放的に開けた入り口からは中の様子がしっかりと確認できる。

「ここには入りたくはないな。」


どう考えても身ぐるみ剥がされて放り出される気しかしなかったので、酒場の外で聞き込みを行うことにした。しかし出てくる客といえば酔い潰れて意思の疎通が困難な者と賭けに負けた機嫌の悪い客ばかりだった。


聞き込みをそれでも続けそれからちょうど一時間ほど経った頃だ。

明らかに賭けに勝ったであろう機嫌の良い客の一団が出てきた。


「アニキ今日はがっぽりでしたね。」


「バカ言え俺は今まで負けてんだ、これでとんとんだぎ。」


「何言ってんすかアニキ100Gゲニーも勝っておいて。」


「とりあえず今日は二軒目だぎ、賭けはもうしねぇんぎ。」


100Gも勝っていればそれは機嫌がいいだろう。そこまで酔っているわけでも無さそうな様子を見て今しかないと声をかけた。


「すまない、少し時間を良いだろうか。」


「んんなんでぇガキじゃねえか。ここはガキの来るとこじゃねえよい。」


「待て待てガンナ俺が話を聞くんぎ。お前ら先行ってろんぎ。」


一団はアニキと呼ばれる男。語尾からおそらく隣の村出身の者であろうリーダー格の男、その一声で男達はのそのそと歩き出した。


「それで何がききたいんぎ?

 ガンナの言ったとおり酒場はガキの遊び場じゃねぇ、乞食ならけぇるんぎ。」


「違う!尋ねたいことがあるのだ。この街で《煉獄のアルケミスト》の情報を集めている、

 何か知らないか?」

「こりゃたまげたんぎ。まさか煉獄のそれとは、お前さんは運がいい実に運がいいんぎ。」


男はからかうようにニヤニヤとして喋る。そして何か思いついたように


「おっとっとこりゃいけんぎ、この街にはルールがあるんぎ。

 この街では等価交換が原則んぎ。情報が知りたければ10Gよこしな、

 それができねぇならお家で寝てな。」


『足元を見おって。』

ドンッ!!!

「良かろう!帰る家はない!そのくらいの覚悟は出来ている。ならば情報を聞こう。」


強く言い放ち10Gほどを皮袋から掴み取り男の胸に拳を突き出した。一瞬男の顔が固まったので失敗だったかという思いが頭によぎった、余りに動かないので街の喧騒もビール瓶が割れる音も何も聞こえなくなる。その無音を引き裂くように男は腹を抱えて笑った。


「がっはっはっは、取っとけ取っとけ!よーしお前さん気に入ったんぎ。

 何か事情がありそうだ、この街は金にはうるせえが人情にも厚い。

 困った時はお互いさんだぎ!」


「アニキは良い人なんだな。」


思わず心の声が溢れる。


「褒めたって何もでねぇんぎ

 がっはっは!ただお前さんはラッキーだぞ一度しか言わねぇよく聞け。」

「頼む!」


「お前の探していやがる《煉獄のアルケミスト》そいつぁ今この街にいる。

 そしてなんと女らしいぞ、こんな良い情報ないんぎ!まさかあの煉獄のが女だたぁな。」


『女? まさか、、』

「それが本当なら大きな前進だ。何か目撃場所に心当たりはないだろうか!?」


「そうだなあ詳しい場所はわかんねえがこの話は街の西つまり海の方だな、

 星屑の墓場の近くでこの話をおらぁ聞いたんぎ。

 まぁ行ってみな何だか知らねぇが上手くいくといいな坊っちゃん。」


「ありがとう!アニキとやらこれを!」

走り出しながらコインを1枚投げる。


「たぁガキが余計な気を回しやがるんぎ。

 気をつけるんだぎーー!!じゃあなぼっちゃーん。」


男の声援に精一杯手を振り全力で走る。これでまた故郷を救う道へ一歩近づいた。

「急がねばならない西の海岸へ、目指すは星屑の墓場!」





物語は軌道から落ちる一歩手前、彼が運命に出会う直前。彼が運命に出会うのはまた次のお話、しかしリュカが男と話している間別の酒場の中から鋭い視線が彼に注がれていたのをリュカは気づいていない。その視線の持ち主は髪の長い細みのフードを被った者であった。運命は一足先にリュカに出会っていたのであった。リュカが馬に乗り出し飛び出て行った直後、後ろからもう一頭の馬が長い髪の主人を乗せて走り出して行った。出会いはもうすぐだ――――






街を愛馬に乗って走っていると背後にピタリと距離を保ったまま追走する馬がいることに気づいた。剣の腕には自信はある、路地に誘い込むため目に届く範囲に馬を止め素早く煉瓦造りの建物の路地に隠れる。


大きな樽を見つけその後ろで息を潜めるがしかし待ってもあの馬は来ない。その時背後で空気が揺れを感じ腰の剣を火花を散らしながら全力で背後に抜き放つ、瞬間両手に「ズドン」と鉛の重さ鉄と鉄がぶつかる音、手に痺れが走る。今にでも殺されそうな剣幕で何者かは切りかかってきた。


「何者だ!」


土に背中を付ける形で押さえつけられていたが、痺れが取れた手で振りほどき転がって距離を取る。剣がちょうど振り回せるほどの路地に入った時点で剣の打ち合いで勝ちきる自信はあった。ただ油断は禁物だ、夜の闇で相手の剣の間合いがつかめていない。隙を見て詰めわずかな明かりで照らされた相手の剣を弾く、しかし相手も中々の使い手弾いた剣をすぐさま突き返してくる。その時隠れるのに使っていた樽が目に入った。


『これは使える』

樽に中身が入っていることを信じ相手に向かって剣の軌道上に樽を入れて振り切る。予想は的中し中に入っていたワインがやつの目に入ったようだ。よろけた何者かの剣を弾き喉元に剣を向ける。短時間での切り合いだがなかなかの使い手だとわかった。


「降参しろ、名乗ってもらうぞ。」


「なんでさがすの」


「えっ…?」

『こいつ女か!?』


何と剣を向けた喉元から響く声は女の声であった。剣を腰に収め少し距離を取りもう一度問う。



「貴様なぜ俺を襲う!」


「いいから答えて、何で探しているの煉獄のアルケミストを。」


「それは…」


「いいから答えて!!」


女はこの状況でも強気だった。その時薄い明かりで照らされた目元は自分と同じ譲れないものがある。そんな者であると雄弁に語っていた。


「答えようならばせめて逃げないでくれよ、逃げれば少々荒い手段を取らせてもらう。私は国の危機にかの高名な煉獄のアルケミスト様に助力を求めるためこのアドに情報を集めに来たのだ。」


「それはほんとう?」


「ああ本当だ我が国の神に誓って。」




その時月の光が暗かった路地に明かりを照らした。女の髪がまず目に入る、長く白い髪は彼女の高潔さを表している。次に目を見つめた、青い目は彼女の意思の強さを示していた。そしてその顔は何と美しくその姿まるで天女のようであった。少し垂れ下がった眉。こんな美しい娘は自分の国では見たことが無かった。


「うつ、、い。」


「ん?」


声がかすれて出るそれほどに、感激するほどに彼女は美しかった。



「次は君が答える番だ、君は一体?」


「わたしは…アシュラ、兄はシェラと呼んでいたわ。」



「あなたは?」


「リュカだリュカ=オズワルド。なぜ煉獄のアルケミストにそこまで執着を?」


「ひみつ。」




「なんだと!言わんか、言わねば捕らえる!」


「捕らえるの?」


「ああ捕らえる。」


「どうやって捕らえるの?」


「それはだな、縛って動けなくして」


「…えっち。」

『…は?』


「そ、そんなつもりで言ったわけでは!!」


彼女の発言に唖然としていると彼女の姿がどこにも見えない。


「どこに行った!」


「こっち。」


振り返ると路地の入り口から彼女がひょっこりと顔を出してのぞいていた。


「またね、リュカ=オズワルド。」


「リュカでよい!まて逃げるな!」


彼女は馬に乗って逃げ出した。その余りの逃げ足の速さにぽかんとしたまま動けなかった。






「はぁワインの主に謝らねば。」






翌朝《煉獄のアルケミスト》の唯一の手がかりである彼女を探して回ったが彼女の姿は街のどこにも無かった。


リュカは彼女を探すのを諦め酒場の男に聞いた通り西の海岸を目指すことにした。









そしてリュカの物語はようやく始まるのであった。街の大いなる危機まであと半年。



◆リュカ

主人公、命令口調の少年、次項ついに《煉獄のアルケミスト》に出会える!?


◆アシュラ

???



◆煉獄のアルケミスト

???



◆風来坊の風見鶏

ボロボロの服を着た旅人、正体不明。気さくで人懐っこい。


◆ガンナ

賭けをしていた男達の1人


◆アニキ

男達のリーダー人情に厚い


◆煉獄のアルケミスト

長髪・細み?


◆Gゲニー

通貨の名前

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