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初めまして、私(わたくし)ミントと申します

全三話となっております。

はじめまして、わたくしミントと申します。


煌々と降り注ぐ太陽の光に目を細め幸せを感じ、この身に受ける光を己の糧としている時のことでした。

鬱蒼と茂る薄暗い森を潜り抜けて、人間の集団がわたくしが光を浴びる森の開けた場所に足を踏み入れてきたのです。

そして、戸惑った表情を隠そうともしない彼らは、わたくしに問い掛けました。


何者か、と。


わたくしが何者か、ですか?

「魔物を記してある書物に名も、姿も無い」のですか?

うふふ。それは仕方無いことですわ。此方にわたくしが根付きましたのは、つい最近の事で御座いますから。


「未開の魔境から出てきた」?

いいえ。

わたくしが此方に根付く前に降りましたのは、地球という世界の大地で御座います。

そう。

最近、世を賑わしていらっしゃる『勇者』方と同じ世界より、『勇者』方と共にわたくしは参りました。


「異世界の魔物」?

いいえ。

そのように警戒しないで下さいませ。わたくしは魔物ではありません。ただの精霊ですわ。

そう、精霊です。アナタ方からは異世界である地球においては、とうの昔に存在されも忘れ去られた脆弱で小さな精霊でしかありませんでした。最早、わたくしだけでなく精霊という存在を忘れ去り、見ることも無くなった人々に踏み潰され、邪魔だと簡単に排除されるような、何の力も無い、自ら動く事も出来ずにただ在ることしか出来ない存在でした。


「そんなモノがどうやって世界を渡って来たのか」?


皆様は御存知でいらっしゃると思いますが、36人もの『勇者』がつい先程この世界に降り立ちました。

その内の一人の方が降り立った際に手にしていた一本のミント、それがわたくしでした。生来、子等を残す力は同胞達の中でも強きわたくしは、彼らと共に降り立ったその時から数年の時をかけることで、この地にしっかりと根付き、子等を広く遠くへと旅立たせるまでに成長することが出来ました。

もちろん、この世界に生まれついた身ではないのです。元の世界のままのわたくしでは本来、そこまでに成長するまでに魔物達や地球よりも過酷な環境によって駆逐され、消え失せていたでしょう。これもそれも、全てはこの世界に降り立った時に与えられた恩恵があってのこと。


『勇者の特権』


えぇ、そうです。この世界では『勇者』と呼ばれているあの子供達が全員お持ちである恩恵を、わたくしも受け取りました。

そのおかげで、自ら動くこともままならなかったわたくしも、こうして動く事が出来るようになったのです。


あぁ、暴れても無駄ですわ。


ただの植物、小さく弱かった意志だけの精霊だったわたくしも恩恵によって、わたくしを踏み潰そうとする人間を絡め取り、決して逃さぬように動きを封ずる力を手に入れることが出来ました。


「止めろ」?


可笑しな事を仰いますのね。

アナタ方はわたくしを何の躊躇いもなく踏み躙り、乱暴に切り裂いて、そして此処まで来たではありませんか。わたくしはただ、わたくしや世界に散っていく子等に危害を加える敵を捕らえ、抗うことをどうして止めねばなりませんの?


"炎よ!"

あら、そうですか。貴女は魔術師でいらっしゃったのね。

でも、わたくしには効かないようですわ。

此処まで成長するまでに、魔法、魔術というものに対しての耐性というものを強めて参りましたから。地球にはそのようなものは存在しませんでしたから、この世界に満ちている魔力に馴染み、魔族達が放つ魔法に慣れるまでには少し時間がかかってしまいましたが。貴女の魔術はまだまだ未熟なようですわね。少し前にお相手くださった魔族の方などよりも簡単です。


そんな絶望なさらないで?

怖いと思ったのは本当ですもの。

わたくしは精霊として、この世界では恩恵によって高位の格を得ることが出来た精霊とはいえ、植物ですもの。火は嫌いです。でも、そうですわね、わたくしを燃やそうと思うのならば、火を得意とされる竜などをお連れになって下さいな。ほら、この先の峰にお住みの方がいらっしゃるでしょう?あのような方を…。

古竜?

まぁ、そのように名の知れた方だったのですね。

空に舞わせたわたくしの種子を燃やしてくださったので、数回ほど我を忘れて戦った事がありますの。あの時はとても大変でした。わたくしもまだまだ未熟であった時のことでしたから、何度かこの身を燃やされてしまって。

でも、恩恵を受け取っているわたくしは、かの方が驚く程の再生力というものを得ていました。そのおかげで、消えることなく今もこうして生きていることが出来ます。そして、今ではあの御方ときちんと住み分けというものを話し合い、時折お茶会をするくらいの仲になることが出来ました。

こちらに来て、いいえ地球での日々を合わせても初めてのお友達です。


あらあら、いけない。

これは今とは全然関係の無い話ですわね。

…浮かれて、自分以外を護ることを忘れていました。

でも、これはわたくしよりも貴女が酷いのではありませんか。このような木々の生い茂る場所でそのような火力を放つなんて。高位の精霊となったわたくしは身を護る術を心得ていますが、精霊の宿っていない、宿っていても力の弱い方々は焼け死んでしまいます。雨が降らぬ限りは一帯全ての緑が焼け死んでしまう。


燃え後に種子を落として子等を育めばいいのでしょうが、あまりわたくしばかりが勢力を強めても世界の環境に悪影響しかありません。



魔術師様。貴女の仕出かしたことなのですから、貴女に存分と協力して頂いてもよろしいですわよね?

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