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黒炎の勇者の似非物語  作者: 勇者くん
3/10

第二説 最弱の勇者

「……そんなつまらない冗談を言う為に呼んだの?それなら私は帰るわ」



 冷ややかな視線をトラゼウスに向ける。もはや尊敬の意を微塵も示さない姿勢で私はトラゼウスに向けた視線を外すと、止めていた足を動かして歩を再開する。



「…これは嘘偽りの無い真じゃ。その証拠に、お主は既に勇者の称号が与えられておる。ほれ、試しに自身の『≪ステータス≫』を覗いてみぃ」



 そういわれてしまうと、どうもこのまま帰るには抵抗を覚える。



 ……そこまでいうなら、見てみようかな。



 仕方なく心の中で『≪ステータス≫』と唱えることにした。すると『≪解明≫』を使用したときと同様に、自分だけが見える文字が浮かび上がる。








 アルマ・レイラ LV1



 種族 : 勇者



 スキル


 治癒魔法LV1

 異常回復LV1

 特殊効果付与(身体強化 スキル強化 属性付与)LV1

 危機回避LV1

 解明LV極



 固有スキル


 勇者の加護

 能力補正(LV÷スキルLV-スキル+?)



 称号 : 最弱の勇者 解き明かし







 しばらくの間、表記された自分の『≪ステータス≫』をまじまじと見つめると、押し寄せる怒りを落ち着かせるように深い深呼吸を付く。




 ---最弱の勇者。




 多分そのまま意味で、過去に類を見ない最弱の勇者なんだろう。納得したくないけど。



「………」



 トラゼウスを見つめ、訴えるように無言の眼差しを向ける。


 ご覧の通り、私は別に強いわけではない。むしろその逆だ。独断で戦闘の先陣に赴く勇者にとって、私が現在保有する『≪スキル≫』はどれも戦闘向きではない。

 そうなれば当然、最弱という称号がつくほどなのだ。せいぜい私に出来ることといえば護衛くらいしかない。


 トラゼウスは私が保有している『≪スキル≫』を知っている。どれだけ私が弱い存在かを知っていても尚、このじじいは私を勇者に選んだのか。



 ……試したことないけど…いけるかな。



 『≪解明≫』を発動してトラゼウスを見つめる。するとトラゼウスの正体を解き明かす文字が周りに浮かび上がり、『≪ステータス≫』が表示された。







 カルバーン・トラゼウス LV96



 種族 : 国王



 スキル


 爪跡LV115

 連爪跡(爪跡+α)LV32

 業炎(球体)LV65

 激昂LV98

 激動LV89

 身体強化LV53

 魔力探知LV80

 魔力感知LV88

 跳躍LV76



 固有スキル


 王のカリスマ

 王の加護

 王の特権(スキルLV+10)



 称号 : 元勇者 先導者 王 平和主義者 カリスマ 歴史に名を刻む者 死爪の悪魔







 浮かび上がる『≪ステータス≫』を見つめ、思わず感嘆の息を漏らす。さすがは歴代の勇者といったところだろう。3桁を越えるスキルLVを持ち、本人のLVも3桁に近しい。


 王の特権というふざけた恩恵によってスキルLVに補正が掛けられているが、それが無くても『≪爪跡≫』は3桁を越える。

 悔しいが彼はただの変態ではない。認めたくはないけど、遥かに私よりは強い存在ということを『≪ステータス≫』が全てを物語っている。



 …じゃなきゃ、今頃ブチのめしに掛かっているしね。



「……ふむ。ワシの『≪ステータス≫』を覗いたか。いやはや、いつもお主の『≪鑑定≫』…いや、『≪解明≫』には驚かされるのぉ」



 ピクリと眉を動かすと、身振り素振りを一切見せることなく、何も変化が無い状態で発動させたにも関わらず、トラゼウスは見透かしたように発動させていた『≪スキル≫』を言い当てる。



 ---『≪魔力感知≫』



 私の魔法を、類を察知したのだ。



 ……さすがエロじじい、セクハラだけでなく、抜け目の無さは尚も健在してるようね。



「それでどうじゃった?何かわかったかね」



 さっきよりもトラゼウスの声音が少し弾んでいる。結果を知っていて聞いてくる。……セクラハに加え、こういういやらしい性格しているから、どうしても好けないのだ。



「意図を知りたかったのだけれども…やっぱり駄目ね。『≪解明≫』は目に見えるものを解き明かすだけで、目に見えないものまでは解読できないみたい」



 そこまで万能だとは初めからを期待してはいなかった。もしかしたら……というちょっとした考えに過ぎない。



「ふむ。それは良かった」

「……どういう意味よ」

「いや、此方の話じゃ。気にせんでいい……。それに、お主がワシに尋ねたいことはわかっておる。何故お主を勇者に選んだか…じゃろ?」



 誰もが持つであろう、至極当然な疑問。それに首を縦に振って肯定する。突然呼び出されて『お前、今日から勇者になれ』なんていわれて、一体誰が理由もなしに納得するものか。


 というか、そんな当たり前な質問を自身気に答えられても困るのだけれども。



「……まあ、何となく予想はついているけどね」



 なんとなーくだが、トラゼウスが考えている構図は想像している。まあ…さすがに確実とまではいかないけど…。それでも何故トラゼウスがひ弱な私を勇者に選んだのか、そこまでの意図は多分合っていると思う。



「ほう…してそれは?」



 私の言葉を聞いたトラゼウスは興味深そうにバネ鬚を摩る。薄っすらと笑みを浮かべるその反応を見て、内心で「しまった」と小さく舌打ちを鳴らしす。


 身体を斜めにずらして耳に手を置く。どうやら聞く気らしい。身を乗り出して、完全に説明を求めている姿勢になっている。



 ……。



 しかし私からすればいちいち話すのは面倒なため、その様子を黙って見つめる。……きっと相手が先に諦めてくれるだろうと。



 ただ、何やら「ほれ、ほれ」と話すよう促してくる声が耳障りで、地味に鬱陶しい。……私は今武器を手にしているがじじいは無防備。…いけるか?


 剣を握る腕に、徐々に力を込めていく……が、すぐに脱力してやめる。


 どれだけじじいが無防備でも、それを凌駕する圧倒的なLV差がある。後ろから殴りかかって、一度も掠りさえしたことないしね。



 一度関心を持ってしまうと、トラゼウスは頑として話すまでしつこく纏わりつく。

 それは私が本から得た知識をじじいに自慢気に話して、後々その詳しく教えてもらうまで、散々付き合わされたという苦い経験を嫌というほど理解している。


 だからこそ、トラゼウスがこうなったとき、最終的にはいつも私が先に諦めていた。



「………考えれば簡単ことよ」




 ---こんな風に。








…・…・…








 数年前、当時国王であったオーシャンによる暴挙により、父は若くしてこの世を去った。その突然の勇者の死去に、急遽跡を引き継ぐ者を探すことになったが、勇者にはある程度の条件を満たさなければ勤まらなかった。


 ここ最近、勇者としての条件を満たした者が一向に見つからず、勇者を失ったことで、無防備になった国をいつか魔族による進軍が起こるのではないかと、一時期宿の女将から懸念の声が噂されていると幾度も耳にしていたことがある。


 トラゼウスは年老いた身体ではもう勇者が務まらず、勇者であったオーシャンは、国王の座を下ろされるとともに追放者としてこの国を去り、突如行方を暗ましたオルビルも見つからなかった。


 国民の不安を鎮めるには、勇者という代行者が必要。しかし一向に見つからず、不満が募るばかり。

 そこで考えたトラゼウスは、私を勇者として選ぶことにした。


 要は勇者という存在が形だけでも存在していればいいのだ。


 ただ誰でもいいというわけではない。当然勇者には超越した力や地位が必要になる。しかし私は父の勇者の血筋を持っていることから、強さを示さないことに疑念を覚える者が現れたとしても、事が起きるまでは納得のいく範囲で収まるだろう。


 そうなれば、あとは裏で正式な勇者を探し出し、見つかったところで取り替えればいい。





「まー、ざっとこんなものでしょう?」



 トラゼウスはただ静かに黙り込んで話に耳を傾けていた。私は概ねの話し終えると、小さく肩を上下に揺らす。

 一気に喋ったから疲れた。しかも一人でずっと喋っていたからか喉が乾いて痛い。


 ただ、多少は時間の短縮になったかもしれないと思えば、まだ気が楽に思える。何せトラゼウスは一度語りだすと、中々止まらないのだ。



 しかしそんなじじいが何も尋ねず真剣に聞いていたところ、大体はあっているのだろう。



「ふむ。お主のいうことは確かにあっておる」



 関心したように頷くトラゼウス。……っふ、どうよ。見事当ててみせたわ。


 まあ当たったからどうした話なのだけれども。普通に正解しなかった方が嬉しかったわ。だってこれ、もしかしてじゃなくても勇者として公表されるのよね?



 勇者としての立場。子供からの無邪気な視線、周りから崇められる私。



 …想像しただけでも罪悪感が半端ない。



 無理よ?私子供のタックルで吹っ飛ぶくらい弱いのよ?喧嘩に巻き込まれでもしたら即刻正体がばれる自信がある。



 ……何とかして辞退しないと。



「しかし、その役目はお主ではない」

「…え?あ、そうなの?」

「うむ。実は少し前に勇者は見つけておるんじゃ」



 何だ。なら私が勇者になった理由が無いじゃない。



「じゃあ何で私を勇者にしたの?」

「そんなん決まっておるじゃろ。お主を立派な冒険者に仕立て上げる為じゃ」



 ピクリと眉を動かしてトラゼウスを固まったまま見つめる。思わず自分の耳を疑ってしまった。……はて、聞き間違いだろうか?



「……変ね、私にはここから追い出す為に、わざわざ勇者という後に引けない立場にさせたとしか聞こえないのだけれども?」

「そうじゃ」



 まさか直球で返されるとは…不覚にも唖然として口を開いてしまった。……少しは否定しなさいよくそじじい。



「へ、へえ……そ、それで?一体私にどうしろと?」

「お主は明日に、この国【イステリア】を離れて旅立ってもらう所存じゃ」



 私の有無は問わないと、そういうことだろうか。……何勝手な事決めてんのよこのくそじじい。



「…ふ、ふーん…で、でも私、旅立つにも資金が無いし、だから…」

「それなら心配いらん。既にお主の宿にはある程度の資金が手配しておる」

「……私の宿には掛け替えの無い沢山の宝が…」

「それも心配せんでいい。ワシが責任を持って保管しておこう」

「………まだ心の準備が…」

「期限は明日の日が沈む前までじゃ。無論、引き返すことは認めん」



 ---どんだけ私を追い出したいのよ。



「お主に渡した剣は、勇者として…冒険者としての新たな一歩を踏み出した記念じゃ。大事にするが良い」



 勝手に話が進められ、その準備は整い済みときた。


 トラゼウスは一度やると決めたら頑として捻じ曲げない。

 その面倒な性格のおかげで幾度なく悩まされたことから、このじじいは何をいっても聞かないことも熟知している。



「……それはどうも…」



 にやにやと微笑を浮かべるトラゼウス。その嫌みったらしいじじいの顔をしばらく見つめると、私は諦めたように肩を降ろし、深い溜息を吐いた。



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