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序章
序章
目の前には真っ赤な炎。
支えているのは一つの命。
「頼みやんす!オレはどうなってもいい。こいつを助けてくれでござんす!」
まだ人間だったころの彼は、そう叫んだ。
すると、『鬼』は言った。
「このわたしにものを頼むというのか。それなりの覚悟が必要だぞ?」
「わかっているでござんす!」
「そうか」
『鬼』はため息をついた。
「そいつの命は助けてやる。そのかわり、お前が次の『鬼』になれ」
彼は驚いた。
「―――……それだけで」
叫ぶ。
「本当にそれだけでいいんでござんすか!」
『鬼』は遠い目をしてつぶやいた。
「それだけ……か」
そのときの彼には、その言葉の意味など知る由もなかった。
大切な何かを守るため、自らが孤独を手にする。
それは宿命。
『鬼』の宿命。
そして彼は、『鬼』になった。