夢のようで夢ではない。
初めての連載小説で、このサイトは初心者なので暖かい目で見ていただければうれしいです。
「愛した人を見つけるには、心から叫びなさい。きっと、見つかるから」
僕はなにか大切なことを忘れている。
何か、大切なことを。
皆さんはパラレルワールドを知っているだろうか。現実とは全然違う、異空間。
そこには、もう一人の自分がいるという。
「ねえ、知ってる?パラレルワールドの自分と出会ってしまったら――……」
ゲームが始まる合図なんだって。
そんな会話をしてる女子や男子を見て、僕はため息をついた。
くだらない。
「臣君。何暗い顔してるの?」
僕の顔を覗く少女。同じクラスの雨宮律夏だ。特に変わったことはなく、平凡な少女。
「だって。みんな壊れた人形みたいに、同じ話をしているんだ。パラレルワールドとか、ゲームとか。どうせ君もその話を友達としていたんだろう?」
「してないよ?私の友たちはほかの子とその話をしているみたいだけど」
驚いた。雨宮さんもみんなに交じって話していると思っていたのだ。
「雨宮さんは興味ないんだ?」
「興味ないというか――」
何か雨宮さんがしゃべったが丁度チャイムの音が鳴り、聞こえなかった。
雨宮さんはゆっくりと口を閉じ、自分の席に戻っていった。
何と言ったんだろう。
“見つけた”
「――――――!?」
頭の中で、声がした。とうとう僕の頭も壊れてしまったのか?
なんて考える自分に馬鹿らしくなって、寝た。
目を開けた時、僕は唖然とした。
学校の前に僕は立っていた。さっきまで教室で机に突っ伏して寝ていたはずなのに。
(とりあえず、教室に行こう)
一歩踏み出した時、気配を感じて僕は上を向いた。
屋上のフェンスの上に座っている男がいたのだ。
かかわりたくないと思った。
なのに、僕は。
屋上に向かって走っていたんだ。
「はぁっ……。あれ」
走りながら僕はあたりを見渡した。どの教室を見ても、誰一人人間がいないのだ。
おかしい。おかしすぎる。
――まさか、これも夢?
屋上のドアを力強く開けると、やっぱり男がフェンスの上に座っていて。
「何やってるんだよ!」
そう叫ばないと、誰かと話さないと。
壊れてしまいそうだった。
男はゆっくり振り返った。
「僕だよ」
僕は目を見開いた。目の前にいるのは、僕と同じ顔をして、同じ声を持つ男。でも、僕と少し違う。威圧感があって、どうどうとしている。
僕はある言葉を思い出した。いやになるほど、聞かされた言葉。
『ねえ、知ってる?パラレルワールドの自分と出会ってしまったらゲームが始まる合図なんだって』
ゲーム?冗談じゃない。そんなの面倒だ。早く夢よ覚めてくれ。
「覚めないよ。これは夢のようで夢じゃないんだ。ここはパラレルワールド」
意味が分からない。
「僕は、立津木臣。君だよ」
「そんなのどうでもいい!夢なんだろう!?」
夢じゃなかったら、僕は漫画のような世界にいるということか。
もう一人の僕は一瞬きょとんとした顔を見せた後、笑いながら言った。
「夢じゃないんだよ。君は、夢だと思いたいんでしょ?」
そりゃそうだ。いつの間にか学校の前にいたり、どこの教室にも生徒がいなかったり。挙句の果てには、もう一人の自分がいる。こんなの、夢だと思って当然だ。
「ねえ、僕と契約して」
もう一人の僕は僕に手を差し伸べた。
「冗談じゃない!そんな怪しいことするわけ――」
爆発音が聞こえた。
「ほら。君が僕と契約してくれないから街がどんどん死んでいってるじゃないか」
僕のせい?冗談じゃない。僕となんの関係があるっていうんだ。
「ほら。早く。説明している暇なんてないよ」
その時、なぜかわからないけれど。僕はこいつと契約をしなければならないと頭がそう言っているような気がした。もうどうでもいい。どうにでもなればいい!
「分かったよ!お前と契約する!すればいいんだろう!?」
もう一人の僕は笑った。僕も笑ったらあんな顔をするんだろう、なんてのんきなことを考えられる余裕がなかった。なんてことを言ってしまったんだ、僕は。
こんな意味わからない世界で、意味わからないやつと何かの契約をしてしまったのだ。
「これで繋がった。これでゲームが始まる」
歌うように、もう一人の僕は言った。
「じゃあ、君はこれからこの爆発音を止めに僕と行ってもらおうか」
もう一人の僕は、フェンスから降りて言った。
僕は大事な何かを忘れている。
何かはわからない。
分からない方が平和で、幸せだと心の底のどこかで思っている。
小説を見ていただき、ありがとうございます!
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