4.どうするか話さなきゃ
「あの……どうして私たち……」
アマーリエは言いかけて、少しだけ視線を迷わせた。
そして、意を決したように続ける。
「多分……入れ替わって……いますよね」
「……多分ね」
「起きたら戻れるのかしら……」
アマーリエは不安そうに呟いた。
「それとも……入れ替わったまま、なのでしょうか」
私は少し考えてから言った。
「……その可能性、ありそうだよね」
アマーリエの肩が、わずかに揺れる。
「でも」
私はテーブルの椅子を引いて座った。
「だからこそ、今のうちに話しておかない?」
「え……?」
「もしこのまま朝を迎えたら、私はあなたとして生活することになるし、あなたは私として生きることになる」
自分で言いながら、ちょっと変な気分になる。
「つまり、お互いの世界のこと、
今のうちに聞いておいた方がいいと思うんだ」
アマーリエはしばらく考えてから、小さく頷いた。
「……そう、ですね」
そして少しだけ背筋を伸ばす。
「では……何からお話ししましょうか」
私は少し考えてから口を開いた。
「先に、私のことを話しておくね」
アマーリエは小さく頷く。
「私はね、人とほとんど会わずに生活してるの」
「え……?」
「食べ物は注文すれば届けてくれるし、掃除も洗濯も全部機械がやってくれる」
自分で言っていて少し変な感じがする。
「だから多分、アマーリエちゃんは問題なく過ごせると思うわ」
アマーリエは驚いた顔をしていた。
「そのような生活が……あるのですね」
「うん。だから私の方はあまり心配しなくていい」
そこで私は少し姿勢を正す。
「問題は私の方」
アマーリエが小さく身構える。
「あなたの日記を、少しだけ読ませてもらったわ」
アマーリエの肩が、わずかに揺れた。
「……そう、ですか」
少しだけ申し訳ない気持ちになったけど、
今は遠慮している場合でもない気がした。
「うん……大変そうね」
そう言うと、アマーリエは少し驚いたようにこちらを見る。
「え……?」
「正直に言うけど」
私はテーブルの上に肘をつきながら続けた。
「あなた、かなり我慢してるでしょ」
アマーリエは目を伏せた。
「……はい」
しばらく沈黙が落ちる。
それから私は軽く息を吐いた。
「じゃあ、とりあえず」
「不満を書き出してみようか」
アマーリエが顔を上げる。
「……え?」
「問題整理の基本」
私は本棚を指さした。
「この部屋、本がいっぱいあるし。
紙とペンくらいあると思うから」
アマーリエは戸惑ったように瞬きをする。
「不満……ですか?」
「そう」
私は肩をすくめた。
「嫌だったこと、腹が立ったこと、 納得いかないこと」
「全部」
少しだけ笑う。
「遠慮しないで書き出してみよう」




