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気弱令嬢と入れ替わった私、とりあえず不満を書き出してみることにしました。  作者: ちょこだいふく


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13.現行犯

「——何をしている」


低い声が教室に響いた。


三人が一斉に振り向く。


ベルンが扉のところに立っていた。


その表情は、氷のように冷たい。


グレイスの顔から笑みが消える。


「べ、ベルン様……」


ベルンはゆっくり教室の中へ入る。


視線はグレイスの手。


そして、そのポーチ。


「説明してもらおう」


静かな声だった。


だが教室の空気が凍りつく。


グレイスは一瞬だけ言葉を失う。


それから慌てて笑顔を作った。


「ち、違いますの」


ポーチを軽く持ち上げる。


「こちら、アマーリエ様の物が落ちておりましたので」


「預かって差し上げようと——」


「落ちていた?」


ベルンが遮った。


声は低く、冷たい。


グレイスの笑顔が少し固まる。


ベルンはゆっくり言う。


「机の中に置かれていた物が」


「どうして落ちる」


グレイスの目がわずかに揺れる。


「そ、それは……」


「それとも」


ベルンは続ける。


「机の中を勝手に覗いたのか」


教室が静まり返る。


ベラとディアナが青ざめた。


グレイスは言葉を探す。


「……それは」


そのとき。


教室の扉がもう一度開いた。


「失礼いたします」


落ち着いた声。


リナだった。


その後ろには、先ほどベルンと話していた教師も立っている。


教師が教室を見渡す。



ベルンは教師を見ると言った。


「ちょうど良いところにいらっしゃった」


そしてグレイスを見る。


「証人が必要だったのです」


グレイスの顔が白くなる。


ベルンは静かに言った。


「今」


「ヴアルディエ公爵令嬢が」


「侯爵家の紋章のブローチを」


「自分のポーチへ入れたところを目撃しましてね」


教師の表情が変わる。


「……本当ですか」


グレイスは慌てて首を振る。


「違いますわ!」


「誤解ですわ!!」


ベルンが一歩近づく。


「では」


静かに言う。


「見せてもらおう」


ポーチを見る。


「その中を」


グレイスの手が震える。


一瞬、沈黙。


そして。


教師が言った。


「……グレイス様…」


「…どうぞ、確認させてください」


グレイスの顔から血の気が引いた。


ゆっくりとポーチを開く。


中には。


銀のブローチ。


フェルナ侯爵家の紋章。


教室が完全に静まり返る。


ベルンは淡々と言った。


「なるほど」


それからグレイスを見る。


その目は冷たい。


「これで」


「見間違いではないと分かった」


グレイスは言葉を失っていた。


ベラとディアナは顔を青くしている。


教師が厳しい声で言った。


「……これは重大な問題です」


ベルンは短く頷く。


「…その通りだ」


それから静かに続けた。


「侯爵家への侮辱」


「窃盗」


「そして」


少し間を置く。


「長期間の嫌がらせ」


グレイスの目が見開かれる。


「な……」


ベルンの声は変わらない。


「証言はある」


ベルンは淡々と続ける。


「証拠も揃えている」


「私の情報網を侮らないでいただきたい」


そしてリナを見る。


「状況証拠もある」


教室を見る。


「そして」


ポーチの中のブローチ。


「現行犯だ」


完全に、逃げ道がなくなった。


グレイスは何も言えない。


ベルンはそれ以上何も言わなかった。


ベルンが教師を見る。

教師は静かに頷いた。


「責任を持って対応します」


ベルンはそれを確認してから、ゆっくり私の方を見る。


その目は、さっきまでとは少し違っていた。


少しだけ柔らかい。


「アマーリエ」


私は小さく頷く。


ベルンは言った。


「もう」


「ひとりで耐える必要はない」


教室の空気が、少しだけ動いた。


私は胸元のブローチに触れた。


それから、ゆっくり息を吐く。


「……はい」



心の中で、もう一つ思う。


(きっと)


(これは、始まりでもある)


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