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気弱令嬢と入れ替わった私、とりあえず不満を書き出してみることにしました。  作者: ちょこだいふく


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12/17

12.いよいよ、

馬車がゆっくりと止まった。


リナが先に扉を開ける。


「到着いたしました」


私は一度深く息を吸ってから、外へ降りた。


朝の学園はすでに賑やかだった。


制服姿の令嬢たちが談笑しながら歩き、

遠くでは噴水の水音が聞こえる。


(……いつも通り、か)


私は軽くブローチに触れた。


リナが小さく囁く。


「……ご無理はなさらないでください」


私は小さく笑う。


「大丈夫」


「今日は、味方が多いから」


リナは少し驚いた顔をしたが、すぐに静かに頷いた。


私は校舎へ向かって歩き出す。


そのとき。


後ろから、くすくすと笑う声が聞こえた。


「まあ」


聞き覚えのある声。


「今日はずいぶんご機嫌のようですわね」


振り返る。


そこに立っていたのは、グレイスだった。


完璧に整えられた金髪。


高慢そうな微笑み。


その後ろには、ベラとディアナ。


三人とも、こちらを楽しそうに見ている。


グレイスはゆっくり歩み寄ってくる。


視線が私の胸元で止まった。


「……あら」


少し目を細める。


「素敵なブローチですこと」


私は穏やかに答える。


「ありがとうございます」


グレイスはくすっと笑った。


「侯爵家の紋章ですわね」


「大事な物なのでしょう?」


私は小さく頷く。


「ええ」


「大事な物です」


一瞬だけ沈黙が落ちる。


それからグレイスは肩をすくめた。


「それはよろしいことですわ」


振り返りながら言う。


「なくさないようにお気をつけて」


ベラとディアナがくすくす笑う。


三人はそのまま校舎へ入っていった。


私はその背中を見送りながら、小さく呟いた。


「分かりやすすぎない…?」


隣でリナが小さく呟いた。


「……本当に」


私たちは顔を見合わせて少し笑う。


「ね」


それから校舎へ入る。


廊下を歩き、教室へ向かう。


教室の中にはすでに何人かの生徒がいた。


私は自分の席へ行く。


窓際の席。


机に手を置く。


そしてゆっくりと座った。


リナは入口の近くで軽く一礼してから、侍女控えの方へ向かっていく。


私は机の中を開けた。


ノート。


筆記具。


そして。


わざと見える位置に、ブローチを置く。


胸元から外して、机の中へ。


ふっと息を吐いた。


(さあ)


窓の外を見る。


青い空。


穏やかな朝。


でも今日は少し違う。


(来るなら、どうぞ)


授業が終わると、教室の空気が一気に緩んだ。


椅子が引かれる音。

令嬢たちの話し声。


「次の講義、少し時間がありますわね」


「中庭に行きませんこと?」


生徒たちは次々と教室を出ていく。


私も立ち上がった。


机の中は、あえて閉めずにそのままにしておく。


(さて)


私は教室を出た。


廊下にはもう誰もいない。


少し歩いて、角を曲がる。


そこで立ち止まった。


……少しして。


静かな足音が近づいてきた。


ベルンだった。


「……順調か」


小さく言う。


私は頷く。


「多分…」


ベルンは教室の方をちらりと見る。


「見張りは?」


私は軽く顎で示す。


「リナが」


ベルンは小さく頷いた。


「よろしい」


それから、壁にもたれる。


「少し待とうか」


廊下には静かな時間が流れた。


遠くから笑い声が聞こえる。


そのとき。


——教室の扉が開く音。


私はベルンと目を合わせる。


二人で静かに教室の入口へ近づく。


そっと中を覗く。


そこには、グレイスが立っていた。


ベラとディアナも一緒だ。


三人は私の机の前にいる。


グレイスが机の中を覗き込む。


そして。


「あら」


小さく声を上げた。


指先で、ブローチをつまみ上げる。


銀の紋章が光を受けてきらりと光った。


ベラがくすくす笑う。


「本当に置いていくなんて」


ディアナも笑う。


「おめでたい方ですわね」


グレイスはブローチをしばらく眺めていた。


それから小さく肩をすくめる。


「まあ」


「なくしてしまうよりは」


ベラが言う。


「預かって差し上げます?」


三人が笑う。


グレイスはくすっと笑った。


「そうですわね」


そして。


何の躊躇もなく、

ブローチを自分の小さなポーチの中へ入れた。


ぱちん、と金具が閉まる音。


その瞬間。


「——何をしている」


低い声が教室に響いた。


三人が一斉に振り向く。


ベルンが扉のところに立っていた。


その表情は、氷のように冷たい。


グレイスの顔から笑みが消える。


「べ、ベルン様……」


ベルンはゆっくり教室の中へ入る。


視線はグレイスの手。


そして、そのポーチ。


「説明してもらおう」


教室の空気が凍りついた。


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