彼女を陥れた者達
ベアトリーチェ・アルギエーテが、どこから見ても優秀で、最年少で、しかも女性で、騎士隊長となり、度々感状、さらには勲章授与されたのは当然すぎることである、とロレンツィオは思っている。アルギエーテ伯爵家の長女ということは、色々なところで有利には働いてはいるだろうが、たいしたことではなく、つい先日までの彼女の地位、評価むは彼女自身がなしたものである・・・というのがロレンツィオの確信だった。
実家の伯爵家からは飛び出したようなものであるし、転生者と指名されてしまってはアルギエーテ伯爵家としては知らぬ存ぜぬ、そのような娘は当家にはいない、いなかった、と言って見捨てなければならなかったから、何の手助けもありえないことである。
騎士団中枢の資料には近づけないものの、彼は何とか調べようとし、調べた範囲では彼女が転生者であるという通報が寄せられたということは無かった。彼女の取り調べや彼女を転生者とした証拠、あてにならない転生者と判別する魔法機だが、それも使った結果も全く公表されなかった。普通であれば、ある程度は公表されるものである。
結果、彼の結論は、ティベント・ナンセンス、聖アテナ騎士団幹部の失脚に関わる粛清、だった。ダンテ騎士団長補佐は、名門貴族の出身ではあったが、貴族以外の者も能力があれば引き上げる、内部での平等な待遇、差別の禁止、幹部の恣意に流れない騎士団全体での意志統一の制度などの改革に尽力していた。が、その彼が失脚、追放された。そして、彼と直接関係していたわけではないが、ベアトリーチェは彼の一派であるとみなされていた。彼女の行動は、彼の考えを体現していたからである。
ただ、彼女を敵視する同僚、先輩の男女がいたせいもある。
どちらにしても、彼女は巻き込まれたというものだった。
ロレンツィオは、彼女の実家に事の次第を告げたが、彼女の両親は本心としては心配して、何とかしたいとは思ってはいたが、伯爵家として、他の加須、一族、家臣達を守るため、動きようがなかった。彼女を見捨てる選択しかなかった。それはやむを得ないと彼は思った。彼も、貴族であるから事情はよくわかった。転生者がいるということが公になれば、苦しい立場になるからだ。そのことはよく分かっていた。
彼は丁重に頭を下げ、彼女の実家を去った。去り際に、ベアトリーチェの無事を伝えると、一瞬伯爵夫妻は嬉しそうな表情を見せた。その翌日、聖アテナ騎士団で起こった騒動は、国の中枢にも及んでいたことを知った。ベアトリーチェの実家は反主流派と目され、非常に危うい立場にいたようだ。だから、より身動きがとれない状態になっていた。冤罪と言われても、それの非を訴えることができる状態ではなかったのである。
それから密かに彼は自分ができることをやって、彼女の救済に動いた。聖アテナ騎士団の秘密情報をとあるところに送った。しかし、その効果が出る前に決定が下った、彼女を含む転生者の処刑が決まった、効果が出そうにない時期に処刑の日となっていたのだ。
「実行するしかないな、この計画を。」
と呟いた。彼は、その日から昼夜兼行で仕事?を始めたのだ。昼は半ば聖アテナ騎士団の仕事と隠れての工作、夜はベアトリーチェの救出のための仕事を・・・。




