彼女は気丈ではあったが
「中世・・・いやもっと後の監獄だって・・・こんなもんだろうけど・・・。」
とロレンツィオは、監獄の現状について愕然とした。
彼が謹慎させられていた半月ほどの間に、それなりに囚人たちについては過酷なことにならないように配慮されていた監獄が、外見的にはいたるところが汚れ、汚物が積み上げられているような状態であり、囚人達のほとんどが怪我を大なり小なりしていたのだ。
「ははは・・・。私も、聖騎士としての試練に対する心構えというものに欠けていたよ。まるで小娘のように泣き叫んでしまって、その日は世界を怨んだものだよ。しかし、このような監獄では日常茶飯事な事なんだということが分かったよ。そういうことがないように、最小限清潔に、食事も多少は美味しく食べられるようにしようとか考えて、実行してきたことが、こうなってみると、自画自賛かもしれないが、成果があった、みるべきものがあった、たいしたものだったと思えてくるよ。私のことは心配しなくていいよ。ここを、できるだけ元の状態にもどすようにしてくれないか?」
ロレンツィオの敬愛する女性上司、騎士隊長ベアトリーチェは、にっこり笑って、気丈にも、慌てて彼女の収監されている独房にやってきた彼に言った。それが一層、彼女の破れている箇所が所々にある囚人服を見て涙と怒りと無念さをこみ上げさせた。
監獄は、その囚人が欲望のはけ口になる場合が多かった。もちろんその程度は違った、各地の監獄で。ここ、第13騎士隊管轄の監獄ではそういうことはなかった。正確には、ベアトリーチェが隊長となる以前からもそういう程度は小さいものだったが、彼女が隊長になるとともに、そういうことは完全に禁止されていた。それが、彼女の失職で、一気にかわってしまったのである。彼女へも、それが向けられたのだ。いや、彼女が主目標となったのである。
「申し訳ありません。私が不甲斐ないばかりに。」
と彼女の前で土下座した。
「何を言っているんだ。君に1㎜だって責任はないよ。」
とやはり笑顔で彼女は答えた。
「私は全く変わっていないよ。汚い白い物を体に入れられただけさ。あといっぱいアザとかができただけさ。色々と汚れた、汚れているのは確かだな。臭っているだろうな。それでも私そのものは変わらないよ。君は、・・・そうは思わないか?汚らしくて、汚らわしくて、触りたくもないか?かつてのように、良き友ではいられないか?」
と少し弱弱しく微笑んで見せた。
「隊長は・・・会長は・・・。全く変わりません。私にとっては、立派で、尊敬する、美しい隊長で、上司で・・・です。」
と涙を流し、鼻をすする彼に、
「君は意外に涙もろい、泣き虫だったんだなむ。意外だったよ。いつかねそれで揶揄ってやろう。その時が来るならな。」
と言って、寂しそうに笑った。
それから、ロレンツィオは必死に動いて、監獄内を何とかある程度きれいにし、秩序、規則、待遇を修復できた頃、ベアトリーチェを含む召喚者達の処刑の日程が決まった。
そもそも、何故ベアトリーチェが召喚者とされたのか?




