転移と偽造
転生者の中には、一見無能なスキルを持つ者が多いともとも言われている。一見、というのは実は大変な恐ろしいスキルであるという意味である。ただ、実際には無能と思われるスキルだと、それが実はすごいスキルかどうかなどは考えることもなく、転生者だ、とされる場合が多い。実際は凄いスキルかどうか調べようとはしないのである。特に、代々有能なスキルの持ち主が当主となってきた貴族の場合などはねそういうことが結構ある。だから、転生者かどうかということはどうでもいい。無能な者を一族として認められない。転生者ということで、最初から一族ではなかったということにしたいのである。そして、愛されていない子供も、それを利用して転生者として抹殺することもある。この場合は違法であるが、誰にもわからないことでもある。それがのちに露見して、処罰がなされたことがあるが、それもまた真実なのかどうかもわからない。
偽造スキル。ミカ・リエル。リエル伯爵家長女のスキルだった。それが発言した時、彼女は転生者として訴えられた、というより突き出された。多かれ少なかれ、少し遅れていたかもしれないが、結局は同じことになったろう。前妻の娘である。もちろん本妻の娘である。実家も貴族、家格の見合った家柄同士の結婚であるから、幼くして母が死んだからといっても母が連れていた使用人達もおり、小説で描かれるのように粗略に扱われることはない・・・はずであった。ただ、両家の関係の変化、母の実家の事情、そして後妻が裕福な有力な貴族の娘でもあったことから、よくある小説のような状況になってしまっていた。ただ、彼女は家を追放になるだろうとは思ってはいたが、その場合は一市民として何とかやっていけるように覚悟と準備をしていたのだが、転生者として逮捕されるとは思わなかった。前世の記憶なんかない・・・はずである・・・、冤罪だと思った。
転移スキル。こちらは、ガブリエル、ウリエル子爵家長子のスキルである。こちらも似たような事情であるが、直接的には婚約者と異母弟により陥れられたというところだった。婚約者と親し気に会食、その後食後の酒を吞んでいるところに、彼はその時まで婚約者から愛されている、自分も愛している、相思相愛の関係だと思い込んでいた、騎士団が乱入、多少酒がまわって反応が鈍くなっていた、油断していた彼を取り押さえ、魔法抑制石を装着して捕縛した。転移スキルの発動で逃げられては困るからだった。その時の彼の表情は間抜けそのものだった。優しく、介抱するように自分の婚約者を抱きしめる弟とその彼にうっとり抱きしめられる婚約者。
「怖かったろう。もう大丈夫だよ。でも、本当によくやってくれた。」
「転生者などとあのような・・・鳥肌がたつ思いでしたわ。でも、今は安心しました。」
と語り合う2人。お似合いの、そして絵もになるような2人の姿に、声にならない声を上げるガブリエルだったが、
「さあ、おぞましい転生者がいなくなったら、結婚式の予定を考えよう。」
と2人を祝福する父と義母。同時に、
「そのおぞましい者は我が家の者ではありません。直ぐに引っ立ててくれたまえ。」
と怒声る4人の、そして引き立てられていく中廊下ですれ違う使用人のおぞましい物を見たという視線。
「今までの恩を忘れやがって・・・。」
と載ろうな呟き、その後に、
「しかたがないか。」
というつぶやきが続いた。
こんな2人だったから立ち直りは比較的早かった、それでも連れて来られた当日は他の者達同様に落ち込んでいたのだが。だから、ロレンツィオの脱獄計画に彼女らはすぐに積極的に乗ってきた。そして、彼の動機を示唆する言葉に、
「彼女は幸せね。」
「彼女はいい部下?を持ったな。」
と言って微笑んむ余裕もあった。2人は脱獄そのものに重要な役割というか、不可欠な要素なのである、ロレンツィオの計画にとって。彼女らとの合意が実は一番早い時期だった。
彼女らの同意が得られたことから、彼の脱獄計画は本格的に進められることになった。そして、主要な面々の合意と計画の説明が終わった時には、それほど時間の余裕はなかった。
あとその他の入牢者には、直前に告げることにしていた。あまりに多く、広く、事前に話しておくと情報が洩れる、ロレンツィオ自身の行動が見つかり不審に思われる可能性があったからだ。




