幸せな日々?
聖アテナ騎士団は、以前とは大きく変わっていた。人員が大幅に減り、残っている半分以上が彼女がいた頃の者達ではなかった。ベアトリーチェに冤罪がかけられることになった内部での抗争だけでなく、それ以前の経理の不正などいろいろなことが判明、多数の逮捕者、不正財産の没収等があり、騎士団は縮小をよぎなくされた。その不正の半ばは、聖アテナ騎士団の存在を疎ましく思い、その豊かな財源を狙った各国による捏造だとも噂されていた。そういうこともあり人材も不足していた。彼女のような元隊長、優秀な騎士は喉から手が出るほど必要な人材だった。と言うわけで、副騎士団長にいきなり抜擢されてしまった。が、彼女はそれを見事に勤め、弛緩し、沈滞していた騎士団員の信頼を勝ち得、よく全員を鍛錬、教育し、士気を、実力を高めたのだった。その日々は、彼女は充実したものだと心から感じていた。
その傍らといってはおかしいが、妻として、伯爵夫人としての役割もこなした。使用人への指示、家政管理、前妻の子供達の世話、そしてサロンの主催。騎士隊長、騎士団幹部からの感覚というか、やり方で使用人の指示も家政管理もテキパキと完璧にいったし、子供達はあっという間に母親ではなく、敬愛する上官に対するように彼女に接するというようになった。無理に母親を演じようとしなかったからだ。
「あなた方の母上は、あなた方を生んで育てた立派な、あなた方の心にいる方。私をむりやり母親だとは思わなくてもいいのよ。」
というのが、まず最初の言葉だったが、その後の彼女の言動が彼らを魅惑してしまったのだ。
サロンの主催はというと、優雅と言えば優雅ではあるが、人気もあったが・・・、よく心身の芸術家、哲学者を紹介して、彼らの作品、演奏、論弁などが人気をさらに増したが・・・・
「ロレンツィオが語った人材だな。」
とふと思い出した。
なお、夜の営みも問題なく、夫を満足させたし、彼女の反応も夫が満足するものだった。
「それは夢だったのかもしれない。」
夢ならば覚める時が来る。それがある日来た。




