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愛する上司は罪深き転生者(冤罪だけど)  作者: 安藤昌益
冤罪の女上司

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12/18

ロレンツィオは私にとって何者なのだろう?

 ベアトリーチェは呆然と佇んでいるしかなかった。ロレンツィオに連れ出され、先ずは着替えをと言われて、小部屋に案内されると、そこには彼女のものである騎士団の制服が置いてあった、下着もあった。それも彼女のものだった。彼が運び出して、用意していてくれたのだということは、容易に想像はついた。囚人服を脱いで、それを着ながら、彼女は嫌なものを感じてしまった。

 何が嫌なのか?彼が自分に執着している、ということへの嫌悪感?かと思った。

「私は、彼を斬らっていたのか?」

 そうしたら、今まで彼に感謝している、高く評価している、信頼している、好きだ(友人として、戦友として、同僚として)と言い、そう思っていたのは偽りだったのだろうか?そんなことはないはずだ、と彼女は思った。今まで、こんな感情、気持ちは感じたことはなかった・・・はずである。どうして、こんな気持ちを?何かが起きたというのか?

「彼が私を愛していると知ったからか?」

と思うと愕然となった。そういう感情を向けたことが嫌悪される理由などとは、あり得ない、おかしいのではないか?自分はそこまで彼が嫌いだったのか?それでは、彼はじぶんにとってどういう存在でなければならなかったのか?犬のような存在?犬が飼い主である自分を慕っていてくれるのは嬉しいが、愛しているとなるとおぞましいことになる?それでは、私はロレンツィオを犬として見下していたのか?彼女は、短い時間の間、手早く着替えている間に、何度も何度も答えのない自問自答を繰り返していた。

 そう考えると、手の動きが止りがちになった。まるで、時間を稼げば事態が夢のように変わる、解決すると思っているようではないか、と自分自身に叱責したくなってしまった。時間が経過したらどうなるのか?脱走しようとしているところが、或いはロレンツィオが行った殺人行為が発覚してということか?自分が転生者だということが冤罪だとわかり、釈放のための者達がやって来るということなのか?前者なら、まずロレンツィオが逮捕され、後日処刑されるだろろう。後者からば、自分はロレンツィオの犯罪を伝えるだろうし、そうしなくても発覚する。やはり、ロレンツィオは逮捕され、後日処刑となるだろう。どちらにしてもロレンツィオの処刑は変わらない。

「私は、彼を、ロレンツィオを殺したいのか?」

と思うと愕然としたが、それに罪悪感を感じていない自分にさらに愕然とした。

 彼女の着替えが遅々として進んでいる状態で、部屋の外側から聞こえる声が多くなり、大きくなっていた。


「ボス。あんたが殺した屑騎士連中の顔の偽造もすんだよ。」

「ここに残していく囚人たちの記憶の改竄も完全か?」

「ばっちりだよ。あの屑騎士隊長が、今回の脱走劇の主犯だということを信じ込んでいるよ。あの屑騎士隊長達はどこかに移すのかい?」

「ああ、あのままでいいさ。」

 転生者全員の脱獄は想定してはいなかった。残していく囚人もいる。残していく囚人は、本物の転生者かどうかは別にして、悪質な犯罪、罪のない人間を殺したりした重罪人達である。そんな連中とは、今後上手くやってはいけないし、そんな連中は転生者であろうとそうではなかろうと、許されない罪を犯した連中でしかない。ここでで死のうが生きようが関係はない。ただ、かれらにより脱走の首魁が誰なのかという名が出てはならないからだ。

「そろそろ僕の爆裂魔法の番かな?」

「もうそろそろというのではないよ。まだ少し待っていてくれ。」

「わかったよ。僕は最後のしめだものね。力をため込んでおくよ、呼ばれるまで。」

「ありがとう。その時は盛大にやってくれ、頼んだよ。」

「まかせておきなって。」


「いいんだな。一気に爆裂魔法を展開するよ。」

 その言葉を、発動されながら、停止状態を保っている転移魔法魔法陣の中で、ロレンツィオの腕にしがみついているベアトリーチェは、興奮を抑えきれずに聞いていた。

 小柄の女、ベアトリーチェがロレンツィオ達とともに捕縛した転生者だった、戦場では冷酷非情に爆裂魔法を発動する魔導士として、味方からさえも恐れられていた。その彼女が詠唱を始めた。それは、ひどく長いように感じたし、短くも感じられた。

「多元爆裂!」

 それが終わると共に、至る所から爆発音というか爆裂音が聞こえて来た、鼓膜を突き破るように。天井が、床がひび割れるような振動を感じた。

「転移するよ。」

との声が響いた。

 次の瞬間、周囲が光で包まれ、視界が揺らぎ、軽い立ち眩みのようなものを監視で、僅かながらふらついた。ロレンツィオが優しく抱きとめてくれたのだが、彼女はブルッと悪寒を感じてしまった。

 そしてねどれだけたったのかはわからないが、目の前には見知らぬ光景が広がっていた。


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