このまま死ぬよりいいだろう?
「騎士様がそんなことを言っていいのかい?」
首に魔法抑制具を装着され、汚れた服を着て、床に座る、イスも何もなかったから、若い小柄な金髪の女は、目の前に片膝をつけて顔を突き出している、若い黒髪の立派な騎士の制服を着た長身の地味な顔立ちの若い男に悪態をつくように言った。
「私の心配はいらない。このまま転生者だから処刑されることに甘んずるつもりか?少しでも生きる可能性がある方を選びたくないのか?」
男は無表情に返した。
「その転生者狩をしている聖騎士様に言われてもなあ。」
女は疑わしそうに言った。
女は異世界からの転生者だった。イザベラ、魔導士としての才能を若くして開花させたが、特にその爆裂魔法の威力は例を見ないものだった。他国との戦いで何度も感状を与えられたものだ。庶民の出ではあったが、その功績で貴族の末端になることができた。その他の魔法も素晴らしい使い手であったし、まだ若く、賢明であり、努力家でもあり、性格的に問題もなかったから、そして美人でもあった、将来のさらなる出世の可能性は大いにあった。が、ある日全ては暗転した。転生者であるということが分かったからである。能力が能力だけに、慎重に慎重を重ねて準備した上で奇襲で彼女を拘束して捕縛した。それを実行したのは、ロレンツィオが属する聖アテナ騎士団の第33騎士隊である。聖アテナ騎士団は、転生者狩、つまり、その捕縛、拘束、そして処刑を任務としていた。
「あんたの隊長さんさ、あのお高く留まっている美人のさ、副隊長のあんたが、こんなことしていると知ったらなくんじゃないか?」
と揶揄うように言うと、彼は苦しそうな顔になり、
「隊長はな、転生者と訴えられてな、牢獄にいる。お前達と同じ日に処刑される予定だ。あ、言っておくが転生者というのは冤罪だからな。」
「え?」
彼女は彼の顔をじっと見た。そして、彼が何も言わないのに、うんうんと何度も頷いて、
「分かったよ。そういうことなら、あんたを信用しようじゃないか。私だって、こんな形で死にたくなんかないさ。もっと生きたいよ、やっぱり。話に乗るから、話してみなよ。」
彼女はわかったよ、という顔で二ヤっと笑った。
一通り聞いてから彼女は、
「あいつは大丈夫かい?私なんかよりずっとショックを受けているんじゃないか?なんせ、母親にさ・・・。」
と心配そうに尋ねた。
「まあそうだが、みんなそういうものだろう、大なり小なり。それに18歳の子供ではあっても、中身は元は立派な酸いも辛いも知っている大人なんだから大丈夫だと思う。実際、先日会って話をした分には随分落ち着いていた。」
と男は答えた。
「まあ・・・何となくわかるわ。私も、前世ではアラザーОLだったものね。そういう心持は・・・まあ、やってみるしかないか。でも、あんたは本当にいいのかい?全てを捨てることになるんだよ。一時の感情に走ってもいいのかい?」
やはり心配そうにかつ窺うように言った。
「あんたに、この話をしている段階で後戻りなんてできなくなっているよ。」
と小さなため息をつきながらの答えが返ってきた。
「まあ、それもそうだね。やるだけやる、最後まであがいてやるよ。このままで終わりたくないというのも本心だからね。」




