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「そうでしたか、それは大変でございましたね。道中でお疲れになったでしょう、今日はお休みになってください」



にこにこと全く空気を読まない侍女は、困惑した顔の舞雪と壮絶な顔をした吹雪を交互に見て、部屋を案内しようと歩き出した。


全力猛牛が全速力で百鬼夜行から逃げ、現在どうにか大白蛇邸に着いたところだ。

そこで一通りあったことを話してのこの女中の対応である。



「待ってください、見ての通り牛が…」



舞雪が手で牛車に繋がれたままの牛を指す。

そこには未だに尋常ない勢いで足踏みをする牛が砂埃を立てていた。


そう、舞雪はまだ半人前のため術の解き方が分からないのだ。



「ばっ、馬鹿じゃないですか」



脇でまだ引きつった表情をしている吹雪が悪態をつく。



「だから、お前…兄に向かってそれはないだろう。だいたい私がいなかったらどんな目にあっていたか……」


「ふん、まず百鬼夜行にも会わなかったでしょうね!」


「ぐっ、なんて小生意気になったんだ…とにかく。大白蛇様にこれを解いて欲しいのですが…」



改めて女中に向き直ると吹雪はそう切り出した、しかし。



「生憎ですが、今晩、当主・大白蛇は出かけております故…それは不可能でございます。大白蛇が帰ってくるまでそのままにしておく外はないでしょう。今晩はもう遅いですので、お休みください」



相変わらずにこにこと微笑を称えて言う女中にまさか…と舞雪は作り笑いを浮かべた。

彼の記憶の片隅に現状と似た映像が再生される、人はこれを一般的にデジャブと言う。



「今日もまたどこぞの女性の元に…」



舞雪の言葉に女中は笑みで返す。


察せ。


そう言っているのだろう、と舞雪は受け取った。


何やらわけの分からないやり取りをしている兄と女中を端目に吹雪は凄まじい速さで足踏みを繰り返す牛の額を撫でた。



「兎にも角にも、あなたは一晩このままのようですね。乙です…」


牛はその事実を知ってか、少し疲れたような声で唸った。


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