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何もすることのなかった吹雪は、暇だったので不知火について思いを巡らせていた。

大白蛇邸を飛び出した不知火は何をするのか。


濡れ縁で太陽の光を浴びながらの思考は酷く鈍いが、まず何より不知火は馬鹿だ、と吹雪は思う。

鳥は三歩歩むと何とやらだが、不知火も同じである。

舞雪が得意な予知という名の未来予想を不知火は頭にも浮かべない。

体の赴くままに行動するのだ、隠密を主とする出抜すっぱである彼女が。

いや、最早そういう性格になる家系なのか。



(……まさか、ね。まさか、真っ直ぐ荒三位殿の邸には行かないですよね。それはない)



何だか妙に嫌な予感はするが、それはあるまい、と吹雪は一人で頷いた。



(今は相当警戒なさっているでしょうし…邸内で事を起こすよりも外で起こした方が成功するでしょう)



中々、物騒なことではあるが、現にその物騒なことが近くでうろついているのが現状。



(と、なると大内裏ですか。荒三位殿も仕事には行かれるでしょうし。今じゃ大内裏には民衆どころか乞食も入り込む始末らしいですから、不知火さんにゃあ、造作もない…はず)



女中が持ってきた水菓子を頬張りながら考えていたが、吹雪のその顔はもう真面目に考えているそれではない。

結局、万事が万事上手くいくだろう、と確信しているのだ。

不知火が操る炎は文字通り地獄の業火だ。

暴力としては打ってつけだが、下手したら都が燃え果てる。



(でも蛇殿様がいますから…都は燃えないでしょうね。火消屋、火消屋)



つい先日、その異能で助けられた吹雪だが、微塵も気にした様子はない。

だが、礼も言えていないことには一応気づいていた。


兎にも角にも、暴力そのものがあり、それを抑える力もあるのだ。

何を心配すればいいのだ。


吹雪は能天気に最後の一欠片となった水菓子を口に放り込んだ。


陽炎の任務は達成される、荒三位はこの世を去る、不知火は大白蛇邸か件のぼろ屋敷で保護される。



(しかし、件の家に不知火が来たら…ただでさえぼろぼろな家が拍車をかけそうだ……)



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