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「兄上は見つかりましたか」


吹雪はいつも通りに朝餉を用意した女中に箸を手にしながら話しかけた。

女中の顔色は暗く、首を横に振った。



「蛇殿様はどこへ?」


「大白蛇は舞雪様を探しに早朝から出掛けております」


「……一体、あなた方のご主人は何を考えているのですか」



ため息交じりで冗談として呟く吹雪。


吹雪は連日、夢を見せられ訳が分からなくなっていた。

視点が違うならば、思うことも、真実として捉えることも違うらしい。



「何か夢を見られたのですか?」


「…えぇ、まぁ」



短く返事をして思う。

ここで女中が自殺したことがあったか、と聞くのがいいのではないか、と。

聞き辛いが、仕方がない。

吹雪は口を開きかけた。

が、先に女中の方が音を発した。



「大白蛇は……」



女中は目を伏せた。

次に開かれたその目は現実を見ていなかった。

まるで過去を見ているような遠い目だった。



「紫寿様を愛されていました。そして紫寿様も大白蛇を愛しておりました」



女中の焦点が吹雪に定まると、ふっと笑みをその顔に浮かべた。



「ただ、それだけでございます。これが全てで、これが一つだけなんだと思います」


「……。」



女中が笑みを浮かべた理由は昨日の件を吹雪が前向きに捉えたと思ってのことだ。

昨日は何か言いたそうに口が凄いむずむずしていたが、今日ではこんな態度だ。

手応え、あり。



「いつも女性のことを考えておられるのですよ」


「いや、それは違うと…ていうか、女中公認って…え?」



今度こそ吹雪は聞き取れないような小さな呟きを漏らした。

何か今の一言で全てをぶち壊された気分だ。


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