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巳の語るる事。
太陽の陽が心地良い朝だった。
庭先で白くぼやけたものがころころ、と身を転がしている。
目が悪いのだろう、そのせいでぼやけて見えるのだ。
しかしあれは…、恐らくあれは…大きな犬か猫が日向ぼっこをしている光景であろうか。
先程からずっと頬を何かが伝っている。
冷たいそれは輪郭をなぞる様に止め処なく、次から次へと顎から零れていった。
両の手で顔を覆うと、指先が額に触れる。
それが触れたこともないほどするり、と滑やかで温かかった―――…。
ゆっくりと目が開く。
目に天井のぐねぐねと自由に絵を描く木目が映る。
今度はまた一段と分からない夢…過去夢だった。
誰だかは分からないが、ただ何となく…懐かしさに似た何かがあった。
ふと指先から伝わった、滑らかで温かな肌の感触を思い出した。
布団から手を出し、額をなぞる。
外気が肌寒い。
こつん、と冷たい角に爪が触れた。