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馬鹿者め、舞雪。
本当にこれは笑えぬぞ。
縁側から外を眺める。
牛車がそこに準備されている。
舞雪はあの夜から戻ってきていない。
今朝は一人で宮中に行かせた?
まさか、そんなことあのぺーぺーにさせられない。
「御当主様…。牛車の準備、調いました。どこに向かいましょうか?」
牛の傍らに控えた牛飼童が言う。
舞雪は分かっているのだろうか、この重要さを。
私が女以外の用で外にでるのは宮中に参る時だけだと言うのに。
「あの阿呆、星にすら出ぬ動きをしている。大方、自分が見た未来を変えよとしているのだろうよ。あいつと関わりのある者を訪ね歩く外あるまい」
本当にあれは阿呆で、馬鹿だ。
百鬼夜行の発生の原因を暴き、存在ごと消したところで百鬼夜行は一つではない。
一つ消したところで他はまだまだ残る。
ましてあれは頼りにならない段階の陰陽師。
「あれが死んだら有無を言わさず吹雪を娶ってやろうか、全く…」
「私にそんなこと言われましても…。決定権とか持っ…」
「…阿呆、独り言だ。お前に許可を取る必要はない」
どこか呆けた牛飼童は悩みのなさそうな表情をして頭を掻いた。