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魔術会と噂と者々と

 噂の出どころの調査と、クラリスをどう公開処刑してやろうかと思案していると、あっという間に魔術会の日になってしまった。


 魔術会が開催される場所は魔術が栄え始めた町ジラーリュである。地理的にはラリア国の下の方にある平地の田舎で名物はジャガイモと、ジャガイモを揚げた菓子所謂ポテトチップス。


 王都から二日かけて辿り着ける距離だが、今回魔術会に参加する皇族はクレマンティーヌと、クラリスと、シャルの三人で、護衛の数が物凄いことになった為、三日と半日かかった。道中クラリスの我儘で隊列が何回か止まった時は、拳握りしめて修正しにいくべきか迷ったが、クレマンティーヌが諭したらしい。


 また道中のハプニングというハプニングは無かった。もしかしたら大事になる前に護衛をしてくれている兵士達が対処してくれていたのかもしれないけど、知る由もない。


「ようこそいらっしゃいませ! この館の所有者の者ですわ!」


 あたし達が寝泊まりするのは、このジラーリュの貴族が所有する館だ。シャルとあたしは一緒で、クラリスとクレマンティーヌはまた違った館で泊まるみたい。

 馬車を降りて、館の玄関を開けると、待っていた案内役兼所有者の小柄な令嬢が挨拶をしてきた。


「ごきげんよう! ってミミじゃん。なんでいるの?」

「なんでって! ジラーリュ家は私の家ですわ! そもそも事前に伝えてありますわ!」


 ミミとは舞踏会以来会っていない。王宮に行ったら舞踏会に行く頻度も減るだろうから、多分二度と会うことないんだろうなと思っていたが、数奇なもので一度紡いだ縁とは切れないものらしい。


「ごめんごめん冗談だよ」

「モモカ……?」


 見知った仲でも礼儀を欠くことには厳しいグウェンの冷ややかな目が背筋を伸ばさせる。


「旧友の顔を見てはしゃいでしまい失礼いたしました。数日ですが、館を御貸し戴きありがとうございます」


 これもまた公務の一環なので第三皇子の妻として恥じない態度で接しないといけないのは堅苦しいことだ。


「ではお部屋にご案内しますわ」


 ミミは部屋を案内してくれた。あたしとシャルの部屋は別々であるが、一応隣同士にしてくれていた。


「案内ありがとう」

「グ、グウェン」


 あたしが部屋に入ろうとするとミミが止めてきた。


「なに? お酒かけるのはやめてね」

「か、かけないわ! 約束したじゃない!」

「じゃあなによ」

「約束ですわ………グウェン私と真剣勝負するのですわよね」


 確かそんなことも言ったかな。


「うん、言ったね」

「ではどうしてダンスを辞めるのですの?」

「………あたしがダンスを辞める? どういうこと?」


 確かにここ一か月はヨランダとしか踊っていないけど、辞めるなんて一言も発言したことはない。


「え、辞めませんの?」


 きょとんとした表情で聞き返してくるミミに毅然と返す。


「いやいや辞める訳ないじゃん。今も王宮で鍛えてるし………どこからそんな噂が?」

「社交界では専らの噂ですわよ。グウェンがダンスを辞めて、政務に勤しむって」

「私がダンスを辞めるはずないでしょう! ダンスと言えば私、私と言えばダンスですわよ!」


 グウェンも心外だったようで後ろで胸張って叫んでいる。


「確かに最近はシャルの政務や公務に付き合っていたけど、次の舞踏会にも出るつもりだけど、えーっと確か再来月だっけ?」

「それはシャルル様が開催なさる舞踏会ですわよね。直近では先週にありましたよ」


 グウェンに視線を向けると。


「私も大凡の開催時期は頭に入っていますが、大体は開催前には手紙が私宛てに来ますわ。それにヨランダが情報として教えてくれますわ」


 つまり手紙が送られてきていないか、誰かがあたしの手紙を奪っている可能性と、ヨランダやシャルにも伝わらない程に舞踏会の開催を秘匿にしている輩がいるってことか。


「グウェンが舞踏会に出ないから、カミーユも来ないし、シュザンヌさんも田舎で療養していらっしゃりますし、ラインバッハ卿もいらっしゃらない。ですから………その変な噂が立っていますの」


 それはあたしがダンスを辞めるって噂の話しぶりじゃなかった。恐らくだが、イザークが反逆罪を犯す可能性の方だろう。


 今まで旺盛に社交界に顔を出していたラインバッハ家の面々がいきなり顔を出さなくなり、噂の信憑性が上がってしまったのだろう。


 だったらやっぱり王宮内にこの噂を流している人物がいる。そいつはあたしの手紙も検閲できる、もしくは口利きができる立場の強い人間だ。


「ミミ、その噂の元って分かる?」

「えっ、本当なの………ですの?」


 下から覗き見るように驚愕するミミにあたしは呆れた。


「んなわけあるか。あたしがダンス辞めると思う?」

「思いませんわ………」

「だったらどっちの噂も嘘でしょ」

「そうですわよね。グウェンからダンスを取ったら家柄しかありませんしね」

「喧嘩ならいくらでも買うよ?」

「にゃっ……え、えーっと、私は確か現在の社交界の理事をしていらっしゃる方から聞きましたわ」


 社交界理事はシュザンヌだったが、シュザンヌの他にも理事に近い役職の人間は複数いたのだろう。それらが王宮に出入りしているとは考えられない。考えられるのは王宮に出入りできる人間との横のつながりくらいかな。


「そっ、ありがとう。今度の舞踏会は行くから楽しみにしていて」

「えぇ今度はフィリップ様と共にグウェンを倒しますわ!」

「たった数か月で私を倒せるとでも? できる訳ありませんわ! オーッホッホッホッホ」


 ラスボスかお前は。

30日 21:10に更新です。よろしくおねがいします。




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