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御姉様御姉様御姉様

 御姉様は可哀そう。


 歪んだ愛を持って、過去の亡霊の面影に憑りつかれたお母様に虐待されてる。


 物心がつく前には、御姉様とお母様の確執がハッキリと分かった。

 この家にいればいずれは気がつくことでしょうが、あまりにも二人を近くで見ていたせいで、子供ながらにも理解してしまった。それ程までにお母様は醜いし、御姉様は愚かだったの。


 私? 私は別に不満はないわ。そんな家庭環境が普通だって言うならば、そうだと頷いて受け入れられる。異常だって言われるならば、そうね、アナタの中では異常なのねと、憐れみをかけてあげる。人様の家庭事情に口を挟むものではないわ。


 御姉様はお母様に一方的に虐待されても、毅然とした態度で振舞うの。美しいわ。そして綺麗。

 傷つけられて、傷つけられて、傷つけられて、数えきれないくらいの傷がついた宝石を光に当ててみなさいな。綺麗よ。


 御姉様は私にとっての宝石のような存在なの。どれだけ傷ついても、どこから湧いているかは知らない内なるエネルギーで、眩しい程の輝き放つ陽の存在。

 かたや、お母様の頼んでもいない庇護という陰で生きている私。御姉様とは対照的なの。

 だから惹かれるし、恋焦がれる。


 御姉様が傷つく姿をずっと見ておきたい。

 御姉様が傷をものともせずに輝き立ち上がる姿をずっと見ておきたい。

 

 でも物足りなくなっちゃった。

 傍観者じゃいられなくなった。満足できなくなった。御姉様の中に私と言う傷を刻み込んであげたくなった。


 だから提案したの。御姉様は私を虐めるべきだって。

 御姉様はウザイくらいにお優しいの。人としてこれ以上ない程出来上がっているの。貴族としての務めをしっかりと果たそうとしているの。まるでそう生きろと設定されたようにね。ウザッたいのにも程がある。


 でも優しいからこそ、言いくるめられた。

 御姉様は私を虐めるようになった。と言ってもふりという肩透かしですけど、それでもお母様の目には、私が虐めに合っていると映った事でしょう。


 これでずっと、永遠に、お母様と御姉様は傷つけ、傷つきを繰り返しますのよ。


 お母様はいつか自分の醜い行いの結果、お父様に見捨てられますわ。


 御姉様はいつかお母様の行き過ぎた行いによって、愚かにも命を落としますわ。


 死の淵で御姉様は一体どんな顔をしていらっしゃるのでしょう。

 気になりますわ。疼きますわ。きっと私の想像を超える表情をしていらっしゃるのでしょう。


 あぁ可哀そうな御姉様。

 いつまでも可哀そうな御姉様。


 私がずっとそのままでいさせてあげますわ。

 

 ただ気がかかりなのは、最近の御姉様はどこか違うような……私の勘違いでしょうか。

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