1-5 風来坊
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今しがた大爆発が起こった現場。サイクロプスの無差別な攻撃の発射に周囲の建物はボロボロに崩れ、重傷を負った兵士達が意識を失っていた。
そんな爆発の煙が晴れたその場には人影が一つ。自身の身をもって少女に庇うように覆い被さったコウスケだ。
「ガハッ! アアァ……ハァ……」
ソコデイ達に向けたものより強力な攻撃を受けたコウスケの身体は、誰が見ても分かる重症になっていた。
背中から大きく出血し体温も下がっている。それでも彼は抱えている少女に優しい笑顔をして慰めようとする。
「大丈夫だよ」
コウスケの顔を見て泣き止む少女。やせ我慢をし続けるコウスケだったが、すぐに表情は崩れて倒れてしまった。
「お兄ちゃん!」
少女はコウスケの身体を揺するが、彼の意識はどんどん薄れていく。彼はめげずに意志の強さで消耗している身体を意地で立ち上がらせようとするが、どうにも動かない。
「ウッ……クッ……」
コウスケにはもう攻撃技を出す余裕はない。更にここで彼はサイクロプスの動向に不審な点を見つけた。両腕はもちろんのこと、背中からも赤い光を見たのだ。
(アイツ、まさか町ごと吹き飛ばす気か! そんなことは!)
邪魔のいなくなったサイクロプスは筒の中の光を強めていく。本当に町ごと全てを破壊し尽くす気だ。
「や、止めろ……止めろぉ」
声もか細くなり腕ももう上がらない。コウスケは今にも町が破壊されそうな状況で何も出来ない無力さに強い悔しさを感じる。
(動け……動けよ! 俺はこの世界で強いんだろ?
だったらこういうときにこそ、動かないとだろ! 何してんだよ! 俺は、俺はこんなときに何も出来ないってのかよ!)
口の中に入っていたミサイルも体内に入っていた予備が装填され、発射準備が完了する。光も煌々と照らされ、今から逃げても間に合わないことを知らせてきた。
(ごめんココラ、ソコデイ、アーコ、皆……)
声も出なくなり、仲間への謝罪を思うしか出来ないコウスケ。サイクロプスが彼を含めた周囲に無慈悲なミサイル乱射しかけたそのとき、突然この場にいる人達の耳に大きな咆哮が響いてきた。
驚くコウスケや少女を余所に、彼にとって聞き覚えのある足音が近付いてくる。
(この音は、どこかで)
次の瞬間、コウスケはまた自分の目を疑うことになった。視界に現れたのは、こことは違う異世界で見た巨大な恐竜。それが攻撃発射寸前のサイクロプスの左腕に噛み付いたのだ。
準備中に攻撃を受けたサイクロプスは撃ち出しかけた砲弾を引っ込ませてしまう。
(なんで、あの恐竜がここに?)
コウスケが疑問を浮かべると、瞬きをする間に恐竜の姿は消えた。その恐竜と入れ替わるように、見覚えのある白いローブを着た青年がサイクロプスの前にの姿を見せた。
(あの男は!)
「爆発を見てもしやと思ったが、思った以上に派手にやってるな」
すると青年はコウスケの方に視線を向けてきた。
「お前は引っ込んどけ。俺がやる」
「えっ」
青年は再びサイクロプスに目を向けると、相手に向かって真正面から走り出した。
「マッ、テッ!」
コウスケは青年を止めようとするが、怪我のせいで声がかすれてしまい青年の耳に届かない。
サイクロプスは目の前の彼に何もしないはずがなく、両腕の砲門を彼に向けてすぐに撃ち出した。
「分かりやすい音だ」
何か独り言を呟き、細かく右に左にとジグザグに走る青年。砲弾は彼が直前まで走っていた場所に次々降り注ぐも、青年に一発も当てることが出来なかった。まるで事前に落ちる位置が分かっているかのように。
(どうやって? 彼の動きはさして速いわけでもないのに)
的確に距離を詰めていった青年は、右手を左手首のブレスレットに触れさせる。その瞬間ブレスレットは白く光り輝き、形を変形させて彼の右手に長剣にの姿へ変形させていた。
(ブレスレットが武器に)
青年はサイクロプスの足下に到着し、コウスケと同じように切断しにかかった。しかし彼の剣でも足を切ることは出来なかった。
「チッ、無駄に固いな」
舌打ちと軽く愚痴をこぼす彼にサイクロプスは足払いのような蹴りを繰り出した。これも彼には通じず簡単にかわされて距離を取られた。
「硬い身体に大量の砲弾か……どっちが強いのか」
動きの止まった青年にサイクロプスはすぐさま砲弾を放ち、今度はかわされることなく直撃した。
魔物はこれで倒したと判断して再びコウスケの方に攻撃を向けようとした。しかしその次の瞬間、自身の腹が爆発して大火傷をした。
何が起こったのかと事態を確認したいコウスケが青年のいた位置を見直すと、さっきまで長剣だったものが大盾に変わり、魔物の撃ち出す攻撃をはじき返している彼の様子があった。
(盾? さっきは剣だったはず)
青年は弾き返した砲弾が命中したのを確認すると、大盾の端から顔の左目までを出してサイクロプスに挑発の声を吐く。
「どうやら、お前は矛の方が強かったようだな。そして俺の盾はそれより上ってことか」
サイクロプスは言葉を受けても全く激高する様子はない。同時にまるで故障した精密機器のように動きがきしみ隙が出来る。
青年は冷静に判断して大盾を動かし、サイクロプスが撃ち出し続ける攻撃を全て弾き返して逆に相手へダメージを与え続けた。
しかし素人目にこそ簡単そうに見えるが、ある程度経験のある戦士のコウスケからすれば十分以上の驚きものだった。
サイクロプスが撃っている砲弾の弾幕には統一性がない。これを全て打ち返した上、相手の身体に的確に命中させるのは至難の業なのだ。
(凄い、あんな器用なことを)
「無計画にバカスカ撃ちやがって、余程頭にきてるのか……いや、ないな。コイツらにそんなものねえし」
一通り撃ち終えたのを見計らった青年は大盾をまた剣に変形させ、刃を相手に向ける。
「そろそろ頃合いか」
「いたっ!」
声が聞こえてすぐにコウスケの元にココラが駆けつけた。爆発を見て彼のことが心配になり急いだのだろう。
彼女もサイクロプスと戦っている青年に目は向けるものの、それ以上に倒れているコウスケに注目する。
「コウスケ、やっぱりここに」
彼女は彼の姿を見て目を丸くしながら近づき、少女を彼の側から離して彼の容態を見る。
「凄い怪我! 待ってて、今治すから!!」
ココラは杖を向け、回復術を使用した。
「<聖快>」
その場で即席で行なったため完全ではないものの、ココラのおかげでコウスケは意識を鳥も戻して息を整えることが出来た。
「ココラ、助かったよ。ありがとう」
「いいの。それよりコウスケ、あの人は?」
ココラは前へ目を向けて青年のことをコウスケに聞く。彼もこれに対してはこう答えることしか出来なかった。
「俺にも分からない。でも、戦い慣れてるのだけは確かだ」
三人の観客に見られる中、青年は怯んだ相手の隙を見逃さずに飛び出した。直後に人間業とは思えないジャンプをした青年は、サイクロプスの左足の傷に正確に剣を当てた。
傷を負った身体にこれは効果があったようで、さっきと違い出血する。
「よしきた」
しかしこれを受けても痛みにもがくこともなく反撃を仕掛けるサイクロプス。
青年はこれを予想していたかのように当たる寸前に後ろに下がり、距離を取りながら左手の平に琥珀色に輝く小さな八面体の石を取り出した。
「これ、早速使ってみるか」
青年は石を剣の刃の側面に当てると、剣は石と同じ色に輝きだし、力の余波らしきオーラが溢れ出す。
両腕を振り上げると、彼はサイクロプスに照準を合わせて目を凝らし、足を踏ん張らせる。
「今考えたお試しの必殺技、受けてみな!」
青年がかけ声を上げて力強く剣を振り下ろすと、剣から飛び出した斬撃が変形していき、外野から見ているコウスケ達に巨大な生物の頭が見えた。
その生物は大きく口を広げ、サイクロプスに噛み付きにかかった。
「剣から魔物が!」
見たままのことを口にするココラ。しかし出てきたものの正体に気付いたコウスケがそれを訂正する。
「いや違う。あれは恐竜だ!」
現れた幻影は、コウスケが気絶する前の異世界にて見かけたのと同じ恐竜の頭だった。
振り出された恐竜の頭は高速で直進し、動きの遅いサイクロプスに直撃した。
「ガアアアアアアァァァァァ!」
サイクロプスはその巨体に見合う大きな断末魔を上げ、後ろに倒れた。その際に見えた全体像は、左腕から脇腹にかけて獣に食い千切られたように丸ごと抉り取られていた。
「ざっとこんなものか」
青年は戦闘が終わったと自身の剣を左手首に当て、元のブレスレットに戻した。
一部始終を見たコウスケとココラは息を呑んだ。青年は彼等のことなど見向きもせずに去ろうする。
コウスケは彼を追いかけようとするが身体に力は入らず、声を出すのが精一杯だった。
「待てっ!」
「ん?」
青年は面倒くさそうな細い目付きをして振り返る。コウスケは彼の顔を見ながら興奮で息が上がりつつも質問を飛ばす。
「お前、何者だ!」
青年はコウスケの質問を無視して去ろうとしたが、そこにいつの間にか彼の右肩に登ってきた例のぬいぐるみが手で触れて止める。
ぬいぐるみの方は話こそ出来ないようだが、ジェスチャーをして青年を説得しているようだ。
青年もこれに折れたようで、再びコウスケ達の方に顔を向け渋々口を開いた。
「俺は……風来坊だ」
「風来坊? 旅人?」
直後、炎が風に煽られて揺らいだ煙がコウスケの視界を遮った。煙が消えると、青年とぬいぐるみの姿は消えてなくなっていた。
「き、消え……た……」
「コウスケ!」
コウスケもダメージと疲労がたたって気を失い、倒れてしまった。
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